MUV-LUV大戦   作:土井中32

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7話 初期開発終了

 

 

エルザム少佐が加わったことで、ゲシュペンストの開発は大きく進んだ。

TC-OSに登録されるモーション・パターンデータは日に日に増えてゆき、より洗練された動きができるようになっていく。

特に実際の対BETA戦闘を知るエルザム少佐の意見は大変参考になった。

当の本人はゲシュペンストの性能に呆れていたけど。

ただ、彼の興味を引くことはできたらしく、最初は休暇扱いできていたのがどんな手を使ったのか、長期出張扱いで正式にこちらに居を構えることになった。

別人名義で俺が押さえてる家の一つを渡したら、奥さんと弟さんを呼んで一緒に住み始めた。

ヨーロッパに居させるのは危険と判断したらしい。最悪の場合家を残すためにこちらに呼んだんだとか。

……そこまで危機感を覚えるほど、あちらの状況は悪いようだ。

 

1980年、PTXー001の開発が終了した。

TC-OSへのモーション・パターン登録も順調だが、これ以上は実戦での試験が必要、というのがエルザム少佐の見解だ。

実戦試験が必要というのは理解しているが、こっそり作っている俺たちにはそう言った伝手はない。

ステルス装備はあるし輸送手段も用意しているからこっそりどこかの戦場でやることも可能だが、間違いなくその戦場は大混乱に陥るだろう。

それで戦線に穴が開いては本末転倒だ。

とりあえず、シミュレーターと水鳥島での実機試験で機体への習熟度を高めてもらっているが、このままというわけにもいかない。

……仕方ない。殴るのは”不知火”にしようと思っていたが、相手を変更しよう。

とはいえ、そいつもまだ開発中だ。お披露目は2年後。

それまでにできることとして、ゲシュペンストの量産仕様機である”ゲシュペンストMk‐Ⅱ”の開発を進めることにする。

今までのデータから量産向けに設計変更したデータを技術者達に投げておいたから、そのうち出来上がるはずだ。

 

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水鳥島での対人戦試験。

今戦っているのはタイプTとタイプRだ。

PTXー001は全部で3機制作した。

一機目がタイプT。最初に建造された一号機で、各種動作試験を目的とした機体だ。一番苛め抜かれた機体だが、現在でも問題なく稼働している。

二機目がタイプR。より機動性を重視した調整が行われた機体だ。

トータルバランスは3機の中で最も高く、Mk‐Ⅱの素体となったのもこいつだ。

で、3機目だが――

 

戦っていたタイプTとタイプRの間に、何かが上から落ちてきた。

途端、敵対していた2機が即座に目標を変更、土煙を上げるそれに同時に仕掛ける。

タイプTはその手に握りしめた戦術機サイズの刀を。

タイプRは両手で抱える巨大な光学砲を。

 

叩き込まれたそれを、しかし狙われた当人はあっさりと受け切って見せる。

 

巨大な光は不可視の力場に阻まれ。

刀は両の手を打ち合わせることで。

 

押し合いになる2機。が、すぐに一方が押され始める。

まあ、当然だ。あっちは心臓(●●)からして違うのだから。

 

白羽取りしたまま、タイプTを押しまくる3機目(●●●)のゲシュペンスト。

タイプRが援護しようとするが、それより早く刀ごとタイプTを持ち上げ、タイプRに投げ飛ばした。

ギリギリでかわして3機目を狙うタイプRのカメラに飛び込んできたのは、飛び蹴りの体勢で飛んでくる3機目の姿。

攻撃を中止して回避に専念するタイプRだが、3機目が空中で”停止”し、いきなり急加速して回し蹴りを放ってきたためかわし切れず、体勢を立て直したタイプTへと蹴り飛ばされてしまう。

タイプRを受け止めたために動きが止まった2機へ、3機目が胸部の装甲を開いて砲門を向け――

 

「そこまで。模擬戦終了」

 

俺の合図で、全機が止まる。

そのまま所定の位置に戻って、衛士たちが下りてきた。

 

「感想は?」

 

俺の言葉に、3人は口をそろえて言った。

 

『化け物だな』

 

PTXー001 ゲシュペンスト・タイプS

 

それがさっきまで他の2機を圧倒していた3機目のゲシュペンストの正体だ。

タイプRが”数をそろえて集団で戦う”のを目的とした機体なら、タイプSは”単機で敵陣を真っ向から切り進んで大将首をとる”のを目的とした機体だ。

そのため各種規格こそ他の2機と合わせてあるが、フレーム素材からして別物だ。

骨格であるフレームと装甲は新素材のゾル・オリハルコニウム製。

ジェネレーターは核融合炉より不安定だが、出力は上なプラズマドライブ。

胸部中央には内蔵武装として、大出力光学砲であるメガ・ブラスターキャノンを装備。

接近戦を重視した調整がされているが、性能を十分に発揮できれば文字通り一騎当千の働きができる機体だ。

何より、最大の違いが――

 

「とんでもないな、重力制御機関というのは」

 

――重力を制御できるシステムを搭載している、ということだ。

先ほど空中で急停止したが、他の2機や戦術機で同じことをやれば中の衛士はノシイカみたくなっていたはずだ。

だが、重力制御機関を搭載したタイプSならばたとえ全力機動中に急停止、再度急加速なんて芸当も可能だ。

タイプSに搭載したのは重力障壁も展開できる多機能な試作型だが、量産仕様であるMk‐Ⅱには廉価型の”テスラ・ドライブ”を標準装備する予定だ。

……というか、元々陸戦機であるゲシュペンストはこいつがないと長距離飛行ができない。

戦術機にゲシュペンストが負けている、数少ない欠点だ。

 

「これほどの機体が必要なのか?正直タイプRでもかなりぶっ飛んでいると思うのだが」

「ヴォールクデータは見たでしょ?狭いハイヴの通路内で折り重なって襲ってくるBETA相手に長物は使いにくい。そして数の利も生かしにくいとなると、ひたすらに突破力に長けた兵器でごり押しするのが手っ取り早い。そのためのタイプSだよ」

 

実際、アメリカも似たような結論に至って、あんなデカブツ(XG-70)作ったわけだし。

 

「とはいえ、こいつの性能がぶっ飛んでるのは承知している。Mk‐Ⅱ規格でもハイヴ攻略用のスペシャル仕様として少数生産の予定だけど、乗れるのは俺の設定する試験をパスできた奴だけにするつもりだよ」

 

そもそも、使っている資材が貴重だったり製造・整備に熟練の職人が必要だったりでどう見ても”兵器”としては落第だし。

乗る人間にも相当の技量を要求する難物だ。それこそ”エースパイロット”でも上澄みの連中じゃないと無理だろう。

 

さて、今できることは8割がた終わりつつある。ここからどうするべきかな。

 

 

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