ちょっと短い…。
いや、今までが長すぎただけかもしれませんが。
「うっはーー!壮観だな!」
「まだフレーム組み立て中だがな」
研究所最下層。
白銀が艦船ドックで組み立て中の船を見学したいというので連れてきた。まだ骨組みくらいしかないんだがな。
「しっかし、予定通りならこいつがあのゲテモノになるのか」
「見た目アレなのは認めるが、大真面目に考えた結果だからな」
まあ、ゲテモノ扱いされるのは仕方がない。
「艦首にドリルつけた戦艦は誰が見てもゲテモノだろ」
シロガネ級3番艦 クロガネ
それが今組み立て中のシロガネ級最新鋭、そして最後の船だ。
特徴は今白銀が言った通り、艦首に装備されたドリルだろう。
もちろん飾りではない、れっきとした”対艦兵装”である。
…言い訳がましいが原作スパロボOGでもこの仕様だ。
異星人の拠点にこのドリルで風穴を開けて侵入孔を作るのがこいつの役目、らしいのだが。それを貴重な戦艦で何でやろうと思ったのか。
もちろん伊達や酔狂でこのまま作るわけではない。ちゃんと理由がある。
ハイヴ攻略において現在のセオリーは戦術機による最深部への直接攻撃だ。
そのために衛士たちは文字通りアリの巣のごとき迷路と化したハイヴ内を降りていき、最深部にたどり着かなくてはならない。
が、当然内部に残存するBETAの襲撃を受けるし、そもそもかなり長いのでただ行って帰ってくるだけでも相当量の推進剤や電力、つまり航続距離を削られる。
そのうえで最深部を攻略するための余剰を残す必要があるわけだ。
速攻であれば推進剤を、地道に行けば時間と弾薬を多量に消費する。
何より衛士の消耗と精神的負荷が大きい。
ゲシュペンストの投入でハードルが大幅に下がったとはいえ、この問題は解決したわけではない。
しかし、この問題を一度に解決する方法がある。
ハイヴ最深部。
主縦孔、メインシャフトと呼ばれるそれは地表構造物であるモニュメントを貫いて、遥かな空へと続いている。
つまり、ここから降りれば敵の中枢へ一気に攻め込めるわけである。
今までやらなかった理由?下で光線属種が待ち構えてるからだよ。
遮るものなど何もないから狙い放題。ゲシュペンストでも下まで無事に降りるのは厳しいだろう。
ついでに言えば敵の中枢だからたむろしてるBETAの数も万単位。少々の数が降下成功してもすぐに物量に飲み込まれて終わりだ。
で、ここでクロガネの出番である。
クロガネにはテスラドライブが発生させたブレイクフィールドを集束回転させたドリル状のバリア、スパイラルフィールドを作り出す能力がある。
こいつを盾に直上からメインシャフトに沿って降下。
モニュメントやメインシャフトを削り開けながら主大広間へ直接侵攻する。
成功すれば戦艦一隻と搭載した戦術機2個大隊を消耗なく敵中枢に送り込めるわけだ。
今までみたいに何時間もかけてハイヴを探検しなくて済むし、クロガネの艦砲射撃による面制圧も期待できる。
加えてクロガネが開けた穴を確保し続ければ後続も呼び込みやすくなる。
攻略の可能性はかなり高い。
…最初に見せたときは頭を疑われたが。やっぱり見た目のインパクトがひどかったらしい。
今でも世界一高価な特攻艦なんて言うやつがいるくらいだし。
「仕様上、装甲を他の2艦よりも厚くする必要があるからな。フレームもより頑強に設計段階から見直したし、進水式やるまで最短でも2年はかかるな」
「完成後、慣らしたらいよいよカシュガル攻略か」
「国連の承認取れれば、の話だが」
地道なロビー活動と各国への支援で根回しに頷いてくれた国は多い。
どうやっても本丸を叩く関係上、桜花作戦のような世界規模での作戦になる。
一人でも多くの協力が必要だ。
「俺たちは、間に合わないか?」
「徴兵年齢にも満たないガキを決戦に出さなきゃならないほど、まだこの世界は追い詰められてねぇよ」
できるならば、こいつらが戦場に出る前に何とかしてしまいたい。
こいつらはもう十分戦った。その見返りとして平和を享受してもいいだろう。本人たちが望んでいなくても。
それはそれとしてヒュッケバインの開発は進めているが。
「あんたたち、こんなところにいたの」
「夕呼先生?」
目の下にクマ作った香月がやってきた。
だいぶキてんな、こいつ。
まあその原因たるマッドどもは今日も元気にろくでもないことやろうとしてしばき倒されていたが。
よしよし、いい兆候だ。このままツッコミ属性手に入れて感性が常人寄りになれば原作のようにはなるまい。
もともと理性の強すぎる人間だ、自分よりも狂ってる連中見て一緒に狂えるほどこいつの狂気は強くない。ほどよく毒気が抜かれたようで何よりだ。
「頼まれてた調査、終わったわよ。あんたの推測通りだったわ」
タブレットを投げつけつつ、明らかに不機嫌な様子で言う。
「調査?」
「00ユニット候補者への、TPパッチテスト。要するに念動力者か否かの確認だな」
投げつけられたタブレットのデータをスクロールさせながら白銀に答える。
「なるほど、やっぱり全員当たりか」
「TPレベル自体は低いけど全員が当たりを引いている以上、あんたの仮説はほぼ証明されたも同然よ。まったく、まさかこんな形で自分の理論の間違いを確かめる羽目になるなんてね」
言うほど間違ってるわけでもないだろう。
運命に干渉する、という一点においては間違いなく合ってるわけだし。
「00ユニット候補者ってことは、もしかして」
「2001年段階で生き残っていたA-01の人間、旧207訓練小隊、後は俺の知ってる持ってそうな人間も何人か。全員当たりとは思わんかったが」
外伝作品の主人公たちも合わせて調査させたが、見事に当たり引いてるとはな。
「この分だと大隊は無理だとしても中隊単位での運用は可能かもしれねえな。いろんな意味でめんどくさいけど」
「念動力者で構成された特殊部隊、ねぇ。ハイヴ攻略の切り札になるかしら」
「そんなものが必要になる前にケリつけたいんだがな。候補者にしたって徴兵年齢未満の奴が大半だし、クロガネやハガネで現状充分なはずだし」
迂闊に実績作って念動力者脅威論なんてぶち上げられてはたまらん。
「それより、接収の準備は順調なのか?オルタネイティヴ4、内定出たんだろ」
結局目に見える成果を出せなかったため、オルタネイティヴ3の中止がほぼ決まりとなったらしい。
成果物は日本帝国側で接収、次の計画であるオルタネイティヴ4で生かされることになった。
原作なら日本案とアメリカ案で熾烈な争いが起きるんだが、アメリカ案たる”G弾によるハイヴ攻略”は肝心のG弾が複数の理由で使えないことが判明。遠くないうちに全弾解体することになっている。
対抗馬がいないことで日本案である”対BETA諜報員製造”がそのまま通ったわけだ。
”対BETA諜報員など作れるのか?”という懸念も多く出たが、俺が計画に参加すると知った途端にこの手の声は消えた。
なんだかんだで俺ならやるだろう、という信頼があるらしい。
なお、量子電導脳を作る気はないし、人間の精神をコンピュータにコピーする予定もない。
…そんなことしなくてもほぼ要件満たしてるのが今日も元気に家事やってるし。
「私を誰だと思ってるの?白き結晶含めて根こそぎ全部手の内に入れてやるわ」
「…ソ連からまた恨まれそうだな」
原作にて対外的にはオルタネイティヴ3の成果物はすべて4に接収された、ということになっていたが。
実際にはESP発現体の元である白き結晶含めてかなりの資料などが秘匿されており。
ソ連はそれらをもとに強化兵士製造計画п3を密かに立ち上げたりしている。
相手の心を読める衛士を乗せた強力な戦術機部隊、を夢見ていたらしいが、原作では最終的に胡蝶の夢と消えていた。
逃走防止処置だの時限爆弾だの、余計なもの組み込んだ挙句肝心の読心能力は安定せず、どころかESP発現体自体が安定せず。おまけにクローンゆえか寿命もそれほど長くないのに力を引き出すために強化処置をしたもんだからさらに短くなり、ともはや悪循環。
莫大なコストをかけてわずか数年しか使えず、生産も不安定でしかも安定したスペックを発揮できないとか誰が見ても産廃だ。そりゃ見限られるに決まってる。
あるいは命を好き勝手にいじり倒した罰、だったのかもしれないが。
まあ、この世界においてはそんな計画起こす余地なんぞ与えんが。
知っている範囲の情報を鎧衣課長に伝えれば、あとは優秀な情報省の皆さんがきっちり調べ上げてくれた。
それら証拠をもって生き残っているESP発現体も資料も全部接収する。世間ばれしてるから咎める奴はいないし、連中のもとに残しても使い潰されるのがオチだからな。
生まれがどうあれ、この世に生まれてきた命だ。今まで苦労した分、これからが幸せでもいいだろ。
その予定、だったんだが。
「ソ連主導でのハイヴ攻略が決定しました」
アカン。追い詰めすぎたかもしれん。
空から降ってくるドリル(クロガネ)
多分これが2番目に早くハイヴを攻略できる方法かな、と。
1番早い方法?グランゾン作ってカシュガルにカチコミ。人間不信拗らせ切ってたらたぶんやってました。
今週の更新は以上です。