MUV-LUV大戦   作:土井中32

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久しぶりにプロットが進んで気分がいいので初投稿です(大嘘)。
最後まで途切れずに行けるのか、俺?




61話 窮鼠、怪物に挑む

 

 

「オルタネイティブ3中止が秒読みとなって焦ったのでしょうな。前線部隊のほぼ全てを投入して甲13号目標、オリョクミンスクハイヴ攻略に動いています」

 

将軍執務室。

いつものメンツで集まっての相談だ。

原作では23番目のハイヴだが、この世界では俺の介入によって出来てないハイヴや順番の変化が起きている。

欧州、というか西側はアンバール以降のハイヴ建造を許していないが、その反動か東側はかなり押されていたのでもっと後の時代に作られるハイヴがすでに現出している。

具体的には中華戦線は現在重慶より少し下がった辺りで一進一退の攻防をしているし、北欧・欧州戦線は甲4号目標・ヴェリスクハイヴへ向けて前線を進めている最中だ。ソ連領なので攻略するか否かで揉めてるらしいが。

そしてシベリア方面が現在ヤクートのあたりで侵攻を食い止めていた、のだが。

 

「よく国連が承認したな」

「承認せざるを得なかった、が正しい。形式的にはオルタネイティヴ3の要請に主導国であるソ連が応えた、ということになっているが。発表と同時にソ連側の部隊が移動を始めていて、もういつ戦端が開かれてもおかしくない」

「前線部隊を人質にハイヴ攻略を認めさせたのか。バンクーバー協定が形無しだな」

「だがここでソ連側の前線が崩れれば反抗作戦どころではなくなるのも事実だ。責任追及は後回しにしても手を貸さざるを得んよ」

 

軽く言うけどさぁ。

 

「実際のところ、帝国に出せる戦力あるの?」

「ない。ハガネの準備はさせているが、あれは反抗作戦の切り札でもある。ここで失うリスクは冒せんし、軌道上からの狙撃を今見せるのも不味い」

 

きぼうや建造が最終段階に入ったメガフロートの警備、九州絶対防衛線と中華戦線に派遣中のシロガネ含む戦力。帝国侵攻とテロで低下した戦力でこれだけの場所を何とかやりくりしてるのだ。虎の子である16大隊ですら九州に派遣されている有様で、この上絞り出せる戦力など帝国軍にも斯衛にもない。

 

「だが、失敗すればこちらにもしわ寄せが来るのは必然。無視という選択肢もない」

「ゾイドシリーズは?量産が始まっているはずだ」

「第一陣投入はクーデター軍の自首後だよ。それにまだ10機ほどボディができただけだ。試作機で得られた稼働データの移植と最適化はデスマーチで2週間はかかるよ」

「現場までの移送を考えればとても間に合わんか」

「やはりシロガネを北上させるしかないのでは」

「今の不安定な中華戦線を放り出してか?国連軍の増派もまだなのだぞ?」

 

無い袖を振る以上、どうしてもどこかにしわ寄せが出る。なにがしかのリスクを覚悟で部隊を引っこ抜くしかないか、と決まりそうなところで、紅蓮のおっさんが俺を見た。

 

「そういえば、あれはどうなった?あの零式とかいう大型機は」

「グルンガスト零式?改修してとりあえずハンガー占領してるけど」

 

TGCジョイントも実用化し、製造技術的未熟によってオリジナルに及ばなかった稼働時間なども大幅に改善した。

まあ、それでも軍との連携なんてできるわけないから研究所で肥やしになってるけど。

 

「ならばあれを出してはどうだ。性能的にはあの時よりも上がっているのだろう?」

「部隊が出せないならば一騎当千の戦力を、か。一考の余地はあるか」

「どうです、博士?」

 

悩む。

ジェネレーターもブラックホールエンジンに換装し、むしろ出力過多気味なぐらいだ。

一番のネックだった戦車級対策も排熱を利用することで一応のめどを立てた。

装甲そのものを排熱板の代わりにすることで数百度の熱を持たせ、触っただけで火傷、下手すると勝手に燃えて炭化する。

連中が炭素系由来のソフトスキンだからこそできる防御方法だ。

味方も物理的接触をしづらいというデメリットもあるが、これで戦車級をはたき落とす必要はない。

プラズマジェネレーターではパワー不足なうえ、装甲にも特殊処理が必要で手間とコストがすごいので戦術機には採用できない技術だが。

光線級対策もGテリトリーに加えてABフィールドの二重防壁、更にようやくダウンサイジングが叶ったビーム吸収システムを搭載したもはや歩く要塞だ。

 

正直、単機でBETAの一万や二万、余裕でぶっ飛ばせるだろう。

しかし…。

 

「問題、というか個人的な不安が一つ。他に乗って試す人がいなかったから、OS含めて叔父さん専用に調整されてる。今から再調整するのはちょっと厳しい」

 

十中八九、叔父さんを行かせることになる。そして性格を考えれば、失敗した時は殿を買って出るはずだ。

BETA相手に殿を一人でやって、帰ってこれるか。胸を張ってできる、と自信を持てない。

 

「案ずるな、九郎よ。一人で行かせるわけではない」

「手を貸さないわけにはいかんが、それで貴重な人材を失うわけにはいかん。機体はともかく人員は必ず帰還させる」

「戦力を出すのは帝国だけではないのだ。最低限撤退ぐらいはできるだろう」

 

不安が消えたわけではない。だが、信じることも必要だ。

 

「分かった、零式は準備しとく。それで、他の国の出す戦力は?」

「欧州はちょうど前線の押し上げを始めた矢先でしたから、余裕はないでしょう。物資の提供で精一杯かと」

「インド方面は最近圧力が増しているらしい。こちらも動けんだろうな」

「中華戦線ですが、クーデター組が積極的攻勢に出るつもりのようです。少しでもBETAを引き付けて援護するつもりだとか」

「物資不足でやばいのによくやるよ。自分たちも迷惑かけてる側だからせめてもの罪滅ぼし、か?」

「まあ、戦場に”放棄”された物資が結構多かったので、それで何とかなるそうですが」

 

出来たばかりの水陸両用コンテナ船、九州と中国との往復回数がかなり増えてるらしいしな。

 

「国連軍も戦力の抽出を始めていますが、とても間に合うとは思えません」

「突然すぎたもんなあ。そうなるとやっぱり当てにできそうなのは…」

「米軍だな。編成中だった軌道降下兵団がきぼうから進発したそうだ。現場には直接例の突入カプセルで向かうことになる」

「カプセルの輸送方法は?装甲駆逐艦では無理なはずだし、輸送型のタウゼントフェスラーも空きがなかったはずだけど」

「ペレグリン級の試作艦が間に合ったそうでな。それで引っ張って運ぶそうだ」

「見せ札にするにはもったいない手札だが、間に合いそうなのはそれくらいか。試作艦とか、軌道降下兵団も部隊編成中なのに出してくれたのは感謝だけど、それで足りるか?」

 

目標のオリョクミンスクハイヴは推定フェイズ3、現地のソ連軍を当てにすれば落とせる可能性はある。かなりギリギリだが。

 

「そこはアメリカも分かっているようだ。…XGシリーズの出撃が許可されたそうだ」

 

思わず全員が顔を見合わせる。

 

「実戦配備間近とは聞いてたけど、もう出せるの?」

「試験中だったが、最悪の状況を考えて出さざるをえないという結論に達したらしい。d型の改修機2隻が投入されるそうだ」

「大盤振る舞い、いや、そのくらい危機感を感じてるってことか」

「だが、聞いている通りの性能なら荷電粒子砲の殲滅力は期待できる。米軍も本気だな」

 

最悪の場合、生存者をXGシリーズに回収、そのまま海を越えて本土に帰るつもりなんだろう。戦術機の積載能力はないだろうが乗っけるだけならどうとでもなるだろうし。

 

とりあえずこちらも出す戦力は決まった。

グルンガスト零式に加えて教導隊からタイプS含む1個中隊が参加。

現地へはタウゼントフェスラーで一度軌道上に出て、光線級を避けながら降下。そこから徒歩で向かうことになる。

途中でXGシリーズと合流する手はずになった。

 

「急ごしらえですが、何とかできそうな布陣ではありますな」

「ほんとに可能性だけだけどな。成功にしろ失敗にしろ、ソ連はこの後をどう納めるつもりなんだか」

「巻き込まれた側としては、追及は厳しいものにせざるをえませんな」

 

いや、マジでどうするつもりなんだか。

まあ、そこは政治担当と情報担当のおっさんたちに丸投げしよう。

俺は零式の準備と参加する教導隊の機体を整備しないと。

 

 

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「…で、なんでここにいるの?」

 

叔父さんは二つ返事で遠征参加を了承。今は機体の最終調整中だ。

教導隊からはMk-Ⅲの他タイプS3機の投入が決定、オーバーホールの真っ最中。

本来なら俺はその全体指揮をとらなきゃならんのだが。

目の前の3人に時間を割かねばならなくなっていた。

 

「なに、休暇で観光に来ていたのだがこの騒ぎだ。何かできることはないかと思ってな」

「欧州連合からは”好きにしろ”とのお達しだ。この騒動が収まるまで好きに使ってくれ」

「ダイジョーブダ。モンダイナイ」

 

居間で茶を飲みながらそういう3人。

エルザム大佐とホーカー少佐、そしてもう一人が家に来ていた。

…そのもう一人の様子がおかしいけど。

 

「前線の押し上げ中じゃないの?そんなときに休暇って」

「そういうことになった、ということだ。ソ連側の戦線が崩れるのはまずいが、シュミットの一件がいまだに尾を引いていてな」

「戦力の抽出に待ったがかかった、と」

「無理やり巻き込んだのも不味かった。結局物資の提供でお茶を濁すことになったが、それで最悪の事態になっても困る」

「で、最低限ソ連軍が撤退できるようにエースクラスを秘密裏に派遣して援護しよう、てところ?」

「無茶ぶりにもほどがあるのは俺たちも承知している。なので例のカシュガル攻略計画、欧州連合は全面的に協力するということで帝国と話をつけた。遠征組に相乗りさせてもらう」

「…そっちのポンコツも?」

「ダイジョーブダ。モンダイナイ」

 

さっきからそれしか言わない赤毛の男に、俺は不安しか感じない。

死んだ目で宙を見るテオドール・エーベルバッハに。

 

こいつがここにいるのは、実は予定通りではある。

エーベルバッハがタイプSを受領して約10年。オットー班長達もがんばってはいたがいい加減開発元でのオーバーホールが必要ということで、機体ごとここに来る予定だったのだ。

…来た時からずっとこの調子だが。

 

「どうもオーバーホールが終わるまで会えないということで奥方達に大分絞られたようでね」

「この調子で不安だから付き添いが必要、というときにソ連のやらかしだ。介護ついでに行ってこいと放り出されたというわけだ」

「だったらせめて身一つじゃなくて機体も持ってきてよ…」

 

誤魔化す暇がなかったのかもしれないけど。

 

「流石に戦術機の輸送となると、な。例のテロの影響でそのあたり厳しくなったので置いてくるほかなかった。なに、試作機でも構わん。この一戦だけなんとかできればいいからね」

「苦情と発生した損害は欧州連合にツケてくれ」

 

まあ、試作機でもいいなら。実戦に耐えられる機体をピックアップし、タブレットに表示する。

 

「2時間以内にこの中から選んで。シミュレーターで試せるけど、実際との差異は移動中か実戦で確認することになる、それを忘れずにね」

「ダイジョーブダ。モンダイナイ」

 

タブレットを持ち、エーベルバッハに肩を貸して研究所へ降りていく二人。何とか作戦までには元の調子に戻しておくそうだが。ほんとに戻るんだろうか?一応あいつの機体も最優先でオーバーホールを進めておくが。

土壇場で戦力が増えたのは喜ばしいことだが、おかげでスケジュールがさらに厳しくなってしまった。

 

「…もうちょっとむしり取ってもいいか」

 

香月の言うとおり、ケツの毛までむしり取っとくべきだったな。あの時すぐに。

 

 





○ペレグリン級
国連軍管理下のもと、きぼうで建造されていた地球初の航宙専用巡洋艦。
オリジナルと同じく左右に張り出したコンテナブロックを換装することで多彩な任務に対応可能なマルチロール艦である。
これは現状の地球では用途別の専用航宙艦を製造する余裕がないため。
コンテナに戦闘力を依存しているわけではなく、本体側もビームキャノンやVLSが設置されている。
現在砲艦用の大型ビームキャノンコンテナや艦載機運用のための格納庫コンテナ、対地爆撃用の爆装コンテナなどが製造・実験中である。
今回は建造されたばかりの試作艦を大気圏突入カプセル輸送用のコンテナに換装した輸送艦仕様で運用する。


○ハーレムの参考資料(二人目)
九郎「ほんとに大丈夫か?」
エーベルバッハ「大丈夫だ、問題ない。もうすぐリィズが3人目を産むからな、こんなところで死んでられねぇよ」
九郎「…ビッグダディは大変だな」
エーベルバッハ「そうだとも。こんなところでしんでしんででででであばばばばばばびびびび」
九郎「おいまだバグってんぞ!?ほんとにこの状態で戦場に出せんのか!?」
エルザム「問題ない。叩けば直る」
九郎「…白銀、よく見ておけ。あれが嫁達に主導権を握られた奴の末路だ。こうならないように気をつけろよ」
武「どう気をつけりゃいいんだそれ!?」

なお、リィズさんは退役して全員の子供の面倒を一手に引き受けている模様。
心の病の問題もあるし、”お兄ちゃんの子供なら実質お兄ちゃんと言っても過言じゃないよね!”と言って喜んで面倒見ているとか。
心理カウンセラー資格持ちの保母さんの補助を受けながら日々を幸せそうに過ごしているらしい。


ペレグリン級って公式には戦艦なのだそうで。ずっと巡洋艦だと思ってました。
この世界ではきぼうに詰めていた艦船設計チームがシロガネ級の稼働データを基に設計・建造した宇宙専用巡洋艦になります。
建造費などは国連から出ており、所属的には国連宇宙軍になります。
もっとも、実際のところ宇宙空間での作戦能力を持つのはアメリカと日本帝国ぐらいで、現在は2国の協力のもと準備を整えている最中だったりします。


次話は明日更新予定です。


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