いろいろ悩んでいて遅れました。
そろそろ週1投稿になりそう…。
某国、難民キャンプを監視できる場所にて。
夜の闇に溶け込む真っ黒で本格的な対人装備に身を固めた男たちがそこにいた。
「動きはあったか?」
「いえ、今のところは静かなものです」
難民キャンプという、本来そんな重装備での監視の必要性の薄い場所を見張る二人の軍人。
しかし、その顔は厳しい。
「今度こそケリをつけたいもんだな」
「全くです。あんなキチガイどもにこれ以上引っ掻き回されてはたまりませんよ」
BETA恭順派。
かつての日本帝国襲撃以降、世界中で摘発が行われたカルト集団だが、魔女狩りもかくやという激烈な摘発を逃れたものも相応におり。
彼らはそんな人類の敵を狩るために米軍を中心として組織された国連直下の秘密部隊の人間であった。
「宇宙人と戦ってる最中に、同じ地球人と戦う羽目になるなどごめんこうむりたかったが。人類総自決を促すなんぞもう地球の同胞じゃない。前線で命張ってるやつらのためにも、人類団結の邪魔になる存在には消えてもらう」
「こんな後ろ暗いことをするのはこれで最後にしたいですね」
「まったくだ。奴らを潰すために何人死ぬ羽目になったか」
マンハントというどう言い繕ってもバレれば後ろ指差されるようなことをしているのは間違いなく。下手をすれば自分たちが人類の団結にヒビを入れかねない。
ゆえに彼らは全員希望者のみ、それもいざとなれば自決することも覚悟した者のみで構成されていた。
「今回は上も気合が入ってるからな。失敗したら俺たちごとドカン、だそうだ」
「うへぇ。サイレントファントムだけじゃなく重爆撃仕様のスコープドッグがいたのはそのためですか」
「これまで何度も取り逃がしてるからな。やむを得ない犠牲の範囲が広がっちまったのさ」
失敗すればドカン。
それはつまり、難民キャンプごと証拠隠滅が図られることを意味する。
誰が恭順派なのか区別する方法がない以上、排除には最も確実な方法を取るしかない。彼らが秘密組織である理由の一つだった。
「どっちがカルトかわかりませんね」
「みんなで仲良く死にましょう、よりはマシだと信じるしかないさ。作戦開始までもう少しだ。それまで――」
――警告音が二人のインカムを震わせる。
ここに至るまで散々聞き慣れたそれに、二人は緊張よりも苦々しさを表に出した。
「コード991、”また”か!?」
「奴らほんとにBETAと通じてるんじゃないだろうな!?」
ここまで何度も取り逃がした原因。
いいところまで追いつめたときに限ってBETAに動きが起こるのだ。
非合法とはいえ彼らも軍人。怨敵が動いたとなればそちらを警戒しなくてはならない。
結果として、その間隙をついて奴らは何度も逃げおおせていた。
あまりにも間が良すぎるため、”恭順派はBETAと意思疎通が取れる”などという与太話が半ば信じられるぐらいには。
『緊急、現時点を持って突入を開始する。これ以上奴らの好きにさせるわけにはいかない、オーダーはただ一つ。見的必殺だ』
「レイス13了解。くそ、またか」
「レイス18了解。全部終わったら神に懺悔しに行きましょうか」
見た奴は殺せ。関係のない一般人でも。
今までにもこなしてきたことだが、やはり簡単に慣れるものではない。
もっとも難民キャンプに近かったがゆえに、最初に着いた二人は音もなくキャンプ内を捜索する。
はずだった。
「…レイス18、止まれ」
レイス13が突然立ち止まる。
レイス18も疑問よりも先に立ち止まり、周囲を警戒する。
自分よりも長く戦場にいた上官の判断は、常に自分の命を救ってくれていたからだ。
「何か感じましたか?」
「静かすぎる。夜半とはいえ寝息の一つも聞こえない、だと…?」
二人の脳裏を、いやな想像がよぎる。
さらに警戒を強め、一番近くにあったテントに忍び込む。
布団にくるまっている難民を見つけ、警戒しながら揺り起こす。
もっとも、彼はすでに二度と目覚めない眠りについていたが。
「レイス13、これは」
「また、俺たちは間に合わなかったらしい…」
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「…ちっ!こいつらもハズレか!」
監視していた難民キャンプから離れていく戦術機部隊を捕捉したため追いかけたが、動きから陽動だと悟る。
しかし奴らの向かう先は人口密集域だ。逃すわけにはいかない。
内訳はバラライカ4、ゲシュペンストMk-Ⅱが1。
…一人でも何とかなるか。
「レイス1、エンゲージ」
戦闘を宣言し、機体コンディションをサイレントからコンバットに変更。
隠密性をかなぐり捨てた幽霊が、一気に加速する。
こちらの存在に気づいた連中からバラライカの小隊が向かってくるが、もう遅い。
パッチアーマーすらないバラライカを突撃砲の3点バーストで撃墜。しかし味方が爆散したことへの動揺が見られない。
「向かってきているのはすべて自律機か」
舐められたものだ。
即座にもう一度の3点バーストで1機。更に投げつけた短刀が管制ユニットをぶち抜く。あと1機。
武器を捨てて突っ込んでくる。自爆か。
「邪魔よ」
足の力だけで跳躍、バラライカの背中に飛び乗る。
蹴り飛ばしながらノールックで突撃砲で処理、爆散。前方への加速に利用する。
稼げた時間は5秒にも満たない。
そしてその程度なら、いかな亡霊でもこの静かなる幽霊からは逃げきれない。
『う、うわぁァァァァ!!来るな来るな来るなぁ!!』
逃げていた連中の最後の1機、有人のゲシュペンストMk-Ⅱが喚き散らしながらビームを乱射してくる。棒立ちで。
なんて無様。乗り手が違えばこうも容易いのか。
奴のテコ入れがあったとはいえ、あいつらは乗ったばかりの機体であれだけ暴れたというのに。
ビームを搔い潜って接近、スライディングで足を払う。
無様に転がった亡霊に馬乗りになり、袖から飛び出した棒をコックピットに突きつける。
「有益なことを吐けばちょっとだけ生かしてあげるわよ?」
『しゅ、主よ、我らをお導き』
棒から光が飛び出し、コックピットを貫く。
即座に向こうのシステムに接続、自爆タイマーを停止させる。
旧式化しつつあるとはいえまだまだ貴重な機体だ。簡単に自爆されてはたまらない。
「こちらレイス1、戦術機を無力化。残念ながら捨て駒、ほかは?」
『レイス1、こちらレイスリーダー。どうやら今回もハズレらしい』
思わず舌打ちが出る。
あと一歩まで追いつめても毎回するりと逃げられる。そろそろお互い手の内を晒し切り、膠着状態に陥っていた。
「やはり、イキのいいエサが必要かしらね」
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「…最後に寝たのいつだ?」
「2時間前」
布団に入ったのはその一時間前だけど。
しかし会って直ぐに言うことがそれか、白銀。
「ちゃんと寝てる?」
「徹夜した日はないぞ」
「美沙さん、絶対嘘ついてますよねこの人」
「今週の平均睡眠時間は4時間を割っています。今すぐにでも意識を断って布団に放り込みたいのですが、急ぎの仕事が重なっているのも事実でして」
流石に昔ほど自分のことなんかどうでもいいってわけじゃないからな。寝るときゃ寝る。
今はそんな場合じゃないけど。
「メガフロート1号機と2号機の監修、ゾイドシリーズのAI最適化、各種基礎技術の研究、持ち込まれるヘルプ要請への回答、帰ってきた派遣部隊の機体からデータを吸い出しての分析と機体のオーバーホール、は馬鹿どもに投げたっけ?合成食料製造機の改良、それから」
「超重光線級のサンプル解析は香月博士に投げましたから、現状はそのくらいですね」
めっちゃ恨みがましい目してたけどな。あっちはあっちでいろいろタスク抱えてるし。
G元素は…マッドどものおもちゃになってたか。
オリョクミンスク攻略の際、超重光線級作ったときに余ったのか約50キロとかなり少量だが手に入り、米国と山分けになったのだ。
ソ連の分?現場にいた連中は”何も知らないし見ていない”って言ってたそうだよ?
アメリカではわからんが、帝国では未知の物質止まりで貴重な戦略物資ってわけでもないからな。
興味があるという研究機関に多少渡した後はうちのマッドどもがあれこれ弄り回している。
…結果として一週間たたずに生成に成功した時には開いた口が塞がらなかったが。
まあ現状ではうちの設備使っても年間わずか12グラム、しかも1グラム作るのにプラチナがキロは買えるコストがかかるが。
「…休めてる?」
「休めてるように見える?」
白銀は無言で首を振る。
正直もっと仕事投げられる相手がいれば楽になるんだが、香月は既に一杯いっぱいだしなぁ。
あまり仕事漬けにしすぎて原作みたくハジケられても困るし。
…マッドども?論外。
「とはいえそれももうすぐマシになる。メガフロート1号機が完成すれば2号機の監修は現場の連中に投げられるからな。ゾイドシリーズのAI最適化もほぼ終わってるし」
そこまで行けば寝る時間も確保できるだろう。
せいぜいあと一週間ぐらいさ、ははは。
「なかなかに極まってますなあ」
「帰れ」
いつの間にかいた怪しいおっさんをノータイムで追い出す。
部屋に備え付けられたロボットアームでつまみ出そうとするが、なかなか捕まらない。
「まず、話を、聞いてから、にして、もらいたいですな!」
「大抵碌な話じゃなかったじゃねえか!みりゃ分かんだろいっぱいいっぱいなんだよこれ以上はつぶれんだよごめんなさい勘弁してください今すぐ帰れ」
「…キてますね、相当」
「他者に頼る範囲を広げてから割と本音を表に出すようになりましたから。かわいいと思いませんか?」
10分ほどして俺が諦めるまで続いたが、このおっさん息一つ切らしてねえ、クソが。
「前置き挟むと今度は殺されそうですな。では本題を。メガフロート完成記念式典への出席を」
「死んでも嫌だ」
ふざけんな馬鹿野郎。
「即断すぎませんか?式典出席中は仕事の手を休めていいと殿下からも」
「今までの俺の遠出で何が起こったかよ~~~~~っく思い出してみろッ!!」
鎧衣課長が目を逸らす。
ドイツに行ったら輸送機ごと攫われた。東ドイツが消えた。
アメリカ行ったら殺されかけた。政権交代が起きた。
謎の小惑星調べに行ったら昔打ち上げたAIが戻って来ただけだったけど、結果として国連が荒れた。
しまいにゃ帝都のホテルで殺されかけた。帝都が半壊した。
「今度はせっかく完成したメガフロート沈める気かッ!?ぜってえ行かねえ!!」
「…なんつー引き篭もり思考」
「なまじ実績があるだけに説得しがたいですな」
これ以上自分の行動でマイナスイベント起きるの耐えられないんだよ!?
「現地は斯衛と帝国軍が徹底した警備網を張っています、そうそう何か起きたりは」
「帝都でテロ起こされたのにか?」
「だからこそ両者とも気合が入っておりますよ。不審者は即殺許可が出てるくらいには」
「物騒すぎる」
「それだけガンギマってるということですな。現場には斯衛16大隊が配されておりますし、スコープドッグも全てレッドショルダーという念の入れようです」
「世界と喧嘩でもするつもりか?」
たかが警備に投入する戦力じゃねぇぞ。
「完成式典には各国の要人も来られますからな。アリ一匹入る隙間すらありませんよ」
「むしろ襲う理由増えてるだろ」
何かあれば世界が大混乱だ。狙うやつは枚挙にいとまがないだろう。
「国連総会でもないのに何で世界中から人集めてんだよ、馬鹿か?」
「国土を失った国にとっては福音そのものですからな。1号機と2号機の使い道はすでに決定してますが、3号機以降はまだ用途が決まっていませんから」
「まだ建造すら始まってないのにこの機に乗じて暫定領土として認めてもらおう、てか?その交渉のために来るのは分かるとして、なんで俺まで」
「メガフロートの主任設計者で、その使用用途にも口が出せるあなたが出席するとなれば、式典に来る国も増えるでしょう?」
「俺は撒き餌かッ!?」
余計なものまで引き寄せるだろうが絶対!!
「カシュガル攻略のためには一国でも多くの国の協力が必要です。メガフロートを餌にすればいくつかの国は釣れるでしょう。未来のために少し骨を折っていただけませんかな?」
「メガフロート叩き折られそうだからいやだっつってんだよ」
犬は歩けば棒に当たるが、俺は歩いたらトラブルが機銃掃射してくるんだよ!
「心配いりませんよ。これはあぶり出しも兼ねてますので」
「ガチで俺撒き餌じゃねえか!?」
「前回のテロ騒ぎで徹底的に叩いたのですが、いくらか逃げられてしまいましてね。これがなかなか捕まらない。そしてこれ以上人類に迷惑かけるような連中にかかずらっていられない、という点に関しましては参加国全てと意見が一致しまして」
「結束できたのはうれしいが俺を巻き込むなよ!?」
「ぶっちゃけた話あなた以上のおいしい餌はありませんので」
畜生、そこだけは納得してしまう。
「博士の警備体制の厳重さは殿下よりも上ですし、式典へ出席していることを確認させたら速やかに研究所に戻っていただきます。水中から極秘裏の予定ですが、タイプS含む有力な部隊が付きますので仮に潜水艦やイントルーダーを持ち出されても対処は可能です」
ちなみに式典には零式も出して欲しいらしい。
超重光線級にトドメ刺したことが知れ渡って、一目見たいという声が多いんだとか。
「何より、式典会場は1号機、
「…そうか」
それなら万が一があっても復旧は難しくない、か。
「そのこと知ってんのは?」
「会場がそうであることを知っているのはいつものメンツだけですよ」
だいぶ前から準備してたなこれ。メガフロート一つ丸ごと罠にするとは、思い切ったもんだ。
撒き餌が俺じゃなければ拍手の一つもしたんだがな!
「そこまで進んでるってことは、出席は強制だな?」
「あなたの生存は今回の作戦における最優先目標です。絶対に生きてここに帰ってきていただきますとも」
既に決まってんなら、どうしようもない。
「いつだ?」
「2週間後です。当日はジェームズ・マーシャルアメリカ大統領などそうそうたる面子がそろいますよ」
「頼むから警備しっかりやってくれ。何かあったらその瞬間終わるぞ」
「無論、承知していますとも」
そう言って鎧衣のおっさんは帰っていった。
「博打に出たなぁ。そこまでしなきゃいけないほど追い詰められて…追い詰められてるか」
「そう、なのか?」
白銀は知らないことも多いか。
「オリョクミンスクハイヴの攻略でBETAの支配地域は後退したように見えるが、攻略時にソ連の中核部隊がごっそりやられた。しかも前線押し付けられてたロシア人以外の異民族がソ連からの離脱を表明、彼らの指揮権は国連軍へと移譲され一部の希望者は各国へと亡命する騒ぎに発展した」
「…ソ連側戦線は、防衛どころじゃない?」
「仕事押し付けてた相手がいなくなったうえ、代わりに前線に出すべき連中がきれいさっぱり消し飛んだからな。軍の再編が終わるまで何もできないだろうし、できても以前ほどの戦力には数えられないだろうな」
今はまだ押し付けられてた異民族の人たちが前線にいるが、国連軍に入るとなればいずれは再編でいなくなるはず。
それまでにソ連は前線部隊を再編せねばならず、そんなに急いだ部隊がまともに機能するとはちょっと思えない。
「アメリカは今回のハイヴ攻略に増援を出したが、おかげで遊撃に回せる戦力は払底した」
「ソ連側戦線への助太刀不可能、てことか」
「出来たとしてもソ連が拒むんじゃないか?見栄を捨てたら今度こそソ連崩壊まっしぐらだろうし」
すでに崩壊してるようなものだが。
崩壊するならするで勝手にしてくれとも思うが、その後始末は自分たちでできないだろうからこっちでやる羽目になる。これ以上面倒ごとに関われる余裕は西側にもない。
中国の解体も来月ぐらいに行われる予定だし。
今まではカーウァイ大佐が秘密裏に指導部側についた連中を説得できないか試していたが、これ以上は指導部に露見するからと見切りをつけたらしい。
下手打つと豚さんたちが兵士の家族を人質に取りかねないからな。
国連軍の増派が今月には完了して、そしたら後は電撃作戦の予定だ。
…つまり、予備戦力を吐き出した国連軍にも余裕がない。
「…あれ、もしかしてどっかに大規模攻勢かけられたらどこもそれを助けられない?」
「そーだよ、だからこんな危うい賭けしてでも人類側をまとめる必要があるんだよ」
後ろ玉を気にせず戦力を動かすために、テロリストには人類団結の生贄になってもらおう、ってことだ。
「とはいえ、100%トラブルが起きるとわかっているのに何の対策もしないのは愚の骨頂だな。なんか作るか」
2週間もあれば、まあ何か作れるだろ。
美沙「自分で仕事を増やさないでください」
九郎「やらなきゃ命に直結するんだよ」
○Fー4S サイレントファントム
マクダネル・ドグラムが秘密裏に建造した機体。
見た目こそFー4・パッチアーマーだが、動力源は核融合炉、テスラドライブも搭載されるなど見た目とフレームぐらいしか共通部分がない。腰の跳躍ユニットも中身は大出力アークスラスターである。
最大の特徴は”対人戦特化ステルス機”であることで、ステルスモードであれば第二世代機ですら至近距離での捕捉は困難な隠密性を備える。
また後先考えない全力時であればその機動性はゲシュペンストMk-Ⅱとも互角に戦えるほど。
BETA恭順派国際秘密対応班、通称レイス用に12機だけ製造された。
ベースがF-4なのはゲシュペンストと比べて移動に関する監視が緩く、敵の油断を誘えるためである。
また自爆処理することになってもテロリストの機体として誤魔化しやすい、という理由もある。
武装は戦術機共通の物のほか、光学兵装も使用可能。ただし秘匿任務の関係上、装備・使用することはめったにない。
第三世代機に匹敵しうる高性能機であるが半面機体寿命を犠牲にしており、フルスペックを発揮できるのは長くて2年ほどと想定されている。
次話は明日投稿予定です。