SSWが何の略称か分かるかな?
メガフロート。一言で言えば人工の巨大な浮島である。
泳げない(というか泳ぐ必要がない)BETAに襲われる心配のない安全圏の一つであり、逃げる先の一つとして考えていた場所でもある。
今はその時考案した設計図を元に1号機を海底資源採掘から物資製造まで単独で行える移動工場として建造。日本海側での試験をしている、ということになっている。
「君がアメリカに来て以来だね、直に顔を合わせるのは」
「通信ではちょくちょく会ってましたからね。お久しぶりというのはおかしな感じですが」
メガフロート完成記念式典。その来賓控え室。
俺専用の控え室に尋ねてきたジェームズ・マーシャルアメリカ合衆国大統領と、式典が始まるまでの間雑談で暇つぶしをしていた。
「しかし、まるで金庫の中だな」
「おおむね間違ってませんよ。俺は金庫に厳重に保管された金の卵を産む鶏です」
この控室は入室までに五重のチェック受けた挙句、常時ここの様子はモニターされてるからな。
米国大統領をパンイチまで引ん剝くチェックなんぞ、後にも先にもこれっきりじゃなかろうか。
「しかしよく受けたものだ。影武者でもよかったのでは?」
「向こうにESP発現体がいる可能性があるらしく、影武者では食いつかないかもしれないそうで。でなきゃ適当な人形用意して誤魔化したんですけど」
ソ連の連中、廃棄処分品をかなり雑に扱っていたらしい。献上品や慰安係に回された何人かの行方がつかめないそうだ。
きちんと壊したうえで放出したとかのたまってるらしいが、今までのやらかし考えるとちょっと信用できない。
俺がソーラク、いや今は一条
「まあこうして極上の餌が難攻不落の巣穴から出てきてるんです。いるとわかればしゃにむに襲ってくるでしょう。巻き込まれて死なないでくださいよ」
「無論だとも。出席者は全員そのつもりで来ている。表裏含めた護衛も超一流ばかりだ。これ以上気狂いどもに邪魔などさせんよ」
正面からくれば斯衛16大隊とレッドショルダーに叩き潰される。となれば連中の勝ち筋は暗殺一点のみ。
それを防ぐためにこのメガフロートは各国の超一流エージェントでごった返している…らしい。
ここまでコンテナに詰められて運ばれてきたから、外の様子なんぞ全く知らないからな。鎧衣課長からの又聞きだ。
「連携できてるんですかね?ちょっと前までバチバチにやりあってた相手同士でしょう?」
「それも含めて超一流、ということさ。何より連中に迷惑をかけられてない国などまずないからね。上からの最優先指示は連中の殲滅で統一されているよ」
努力目標に関しては分からんが、表面上は連携できるだろう、と。
願わくばここからさらに国家同士の連携が強くなってくれればいいんだが。
「まあ、その辺はプロに任せてしまいましょう。彼等でもどうすることもできないなら、俺たちにできることなどほぼありませんから」
「その割り切り方は相変わらずだね。まあいいさ。私も君に相談したいことがあったんだ」
隅に控えていた美沙とかぐやに飲み物をお願いしつつ、大統領と本格的に話す姿勢に入る。
今日の俺はただのトロフィーだ。外のことは全部任せてしまおう。
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メガフロート内のパーティー会場。
きらびやかな衣服に身を包んだ者たちが思い思いに時を過ごしている。
主賓たる九郎やマーシャル大統領こそいないものの、世界を動かす力を持った者たちばかりだ。この機を逃さず様々な商談・謀略・飲み比べなどが行われていた。
パァン、と一発、銃声が鳴ったのはそろそろ主賓が登場する時間になる時だった。
「紳士淑女の皆様、ごきげんよう。僕はBETAを信奉する一派に所属しております、アーチボルド・グリムズと申します」
丸サングラスをつけた、見るからに胡散臭い笑みを浮かべる緑の長髪の男。
そしてその男の周りに広がる武装した集団。
「敬虔に神の使いを信奉してきた我々に、あなた方はテロリストなどというレッテルを張り迫害してきました。な・の・で、皆様にはその罰を受けていただきたく。具体的には皆さまの命をお金で買わせていただきます」
敬虔が聞いて呆れるが、言ってる本人からして神など信じていないのだから救いようがない。
何より、アーチボルドの目的は金ではない。
(ああ~~いいですねぇやはり何の力もない民間人を甚振るのはたまりませんねぇクライアントからは抵抗しなくても殺していいと言われてますがやっぱり一度希望を持たせてからのほうが格別な顔で死んでくれますからねぇ爆弾を持ち込めなかったのが残念でなりませんああああ早く絶望しきった彼らの顔を見た)
パァン、と。
銃声とともに、アーチボルドの横にいた男が倒れた。
「……は?」
銃声が聞こえてきた方を見れば。
一人の老紳士が拳銃を構えていた。
皺だらけの顔とは裏腹にピンと背筋を張った老人はおもむろに手を顔に伸ばし。
ビリビリと、自分の顔を破り捨てた。
「こうもあっさりかかるとは思わなかったが、話に乗って正解だったな。これで我が国の恥さらしを始末できる」
アーチボルドが呆けている間にも状況はどんどん変化していく。
とあるタキシードを着た男の袖の中から拳銃が飛び出し。
とある袴の偉丈夫は懐からショットガンを取り出し。
とある貴婦人はスカートからマシンガンの部品をばらまき、瞬時に組み立てる。
アーチボルドたちが呆けた時間はわずか数秒。
たったそれだけの間に、会場にいた来賓たちは武装した戦闘員へと早変わりしていた。
しかもそのうちの何人かは自らの顔を破り捨て、別人となっている。
「私が代表して応えても?…OK?ではそちらの提案にお答えしよう。
とっととくたばれ、クソ野郎」
直後、パーティー会場は弾丸飛び交う戦場と化した。
とっさにテーブルを盾にして隠れたアーチボルドはそもそもこの式典そのものが罠だったことに気づき歯噛みしていた。
「まさかこれほど大掛かりな罠を仕掛けようとは…!別働隊、状況は!?」
事前の計画では別口でサイブリッドが侵入し破壊工作を行う予定だったが、この様子ではあちらもどうなっているかわからない。
通信機で呼びかければ、帰ってきたのは途切れ途切れの報告だった。
『…ちら……べ…ど……足ど…を………けて…………』
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「やれやれ、後何人いるんだ?」
「まさしく害虫のごとし、だな」
タキシードを着た黒髪の英国人と不可能を可能にしそうなこちらも黒髪のアメリカ人がぼやきながら、迫りくる狂信者と戦っている。
メガフロート最下層。水中から内部に直接アクセスできるこの場所から侵入し、あわよくばメガフロートごと要人たちを抹殺しようとしていた彼らは、たった二人の男に足止めを食らっていた。
「しかしいいなこれ。サイブリッド相手だと拳銃程度じゃ大して役に立たないんだが、まさか対人用のレールガンとは」
「対人火器サイズの電磁投射砲が作れるとは、流石は世界を変えた天才科学者というところだな。持って帰るかい?」
「祖国の利益になるならそうするがね。今それをするのは損でしかない、素直に返すさ。もっとも、この状況を切り抜けられたら、だが」
想定される排除対象の最大がサイブリッド、機械化人間ということもあって希望者にレンタルされた対人サイズのレールガンの前に、サイブリッドたちは目的を達成できぬまま数を減らしていた。
「しかし外の連中何をしてるんだ。ソナーに引っかからなかったのか?」
「よく見てみろ、あいつら泥だらけだ。海底を這って来たんだ」
「そこから一気に浮上して乗り込んできたのか?ろくな潜水道具もなしで?」
「酸素ボンベなどつけてたらソナーに引っかかるからな。サイブリッドだからこそできる力技だ。そのまま速攻で破壊活動するつもりだったんだろうが、ここで足止めを受けているわけだ」
「どっちにしろ浮上するときに引っかかったはずだからそろそろ来てもいいはず…来たか」
大型コンテナを運び込む専用口のシャッターが上がり、鉄の巨人が姿を現す。
右肩を赤く塗った巨人は三角形に並んだレンズをカシャンと回転させ、手に持った36ミリ機関砲を容赦なくばらまいた。
散開して逃げようとした者は二人の男に狙撃され、固まっていた者たちは36ミリ弾の前に粉々となる。
巨人に増設されていた20ミリ機銃も同時に使われた火線の前に、サイブリッドたちは屍を晒すことになった。
「いやいや、助かりましたぞ。このまま内部に入られてはどうしようかと肝を冷やしておりました」
巨人…スコープドッグの後ろから現れた帝都の怪人に、この場所を守っていた男たちは苦い顔だ。
「ワザと隙を晒してここに誘導したくせによく言う。別に壊されても大した痛手じゃないんだろう?」
「ここまで潜って確信したよ。このメガフロートは耕作実験用の2号機の方だろう?あちこちまだ工事中だし、おいてある機械はどれも合成食料製造用の物ばかりだ」
「ええ。1号機は現在偽装を施したうえで太平洋での稼働試験中です。2号機であれば最悪沈められてもまだ立て直しは効きますので」
動力機関などが収まった心臓部たるコアブロックさえ無事であれば、外殻部はまた作り直しがきく。だからこそ式典を騙った大掛かりな罠に使うことを決断したのだ。
最初からここに殺されて困るような来賓は来ていない。いるのは軍人と極上の餌と来賓その他に化けていた超一流のエージェントたち、そして一部の”殺されると困るけどなんか死にそうにない連中”のみである。
「恭順派のクソ共も俺たちもうまく誘導されたわけだ」
「誘導などととんでもない。我々はすでに運命共同体ではありませんか」
「今は、だろう?昨日の敵は今日の友。その逆もまたしかり。俺たちはそういう間柄だ。人類が滅ぶまでそれは変わらんさ」
「では人類が滅ばなくて済むよう、これからも協力していただきたい」
「…あの録音、本物なのか?」
各国の諜報機関にリークされた謎の録音内容。
変声機を通されたそれは、BETAとおぼしき存在と何者かが会話するというもので。
どの組織もそれをデマだと断じていたが、諜報員の中でも超一流と言われる連中はそれが本物である可能性が高いと考えていた。
とりわけ漏洩元が帝国情報省であったことも、判断材料の一つだった。
「私に許可されているのは、あれの出所が稲郷博士であることを伝えることまでですな」
二人して頭を抱える。
否定せず出所を明かした。つまり分かっていてリークしたということだ。
しかも出所が過去何度もBETAの行動を予測して見せたという天才科学者。偽情報だと断じるには相手への信用が高すぎる。
「10の37乗とかどうしろと?」
「ブルドーザー相手にここまで苦戦してんだぞ。戦闘型とかどんだけ強いんだ?」
「大いに悩んでください。そして上の方々を説得していただきたく。もはや一つの星の上でケンカしてる場合ではないのだとしっかりわからせてあげてください」
「「最初からそれが狙いだなこの野郎ッ!?」」
リークからこの状況まで全部こいつの手の平だったと思うとスパイとしてのプライドとかが痛く傷つけられるが、見抜けなかった自分たちの責任だとかろうじて飲み込む。
今考えるべきはこの状況の打破と、政治屋たちをどうやって説得するかだ。
肩を落として相談を始めた二人をしり目に、鎧衣は通信機を取り出す。
「下のほうは片付きました。回収・分析班をこちらへ。今度こそパトロンを捕まえて連中を根絶やしにしましょう。…問題発生?」
雲行きが怪しくなってきたことを察した二人が、鎧衣の方を向く。
そのまましばらく通信を続けていた鎧衣が引きつった顔で二人を見た。
「中国軍が、攻めて来ました」
どこまで迷惑かけるつもりだあいつら。
3人同時に吐き出したため息を、レッドショルダーだけが聞いていた。
なお対人レールガンは部品一つ一つどころか弾にまでシリアルナンバーが彫られている模様。
ハーケンとかファントムの投入も考えたんですが、ゲームとか漫画の描写を見る限り結構横幅があるので、屋内じゃ使い辛いかな、と。
そういうのほしければそれこそハーディマン系列魔改造すればいい話ですし。
〇ほんとに叩き折られるかもしれない
九郎「ところで厨房とか大丈夫なのか?毒でも入れられたら」
マーシャル「心配いらないよ。料理長は君もよく知る最凶のコックだ」
九郎「…厨房においては最凶か。じゃあ大丈夫だな」
マーシャル「他にもあの時のメンバーが警備に混じってる。対人の方も何とかなるだろう」
九郎「…ご愁傷さま、だな。後で詫びでも送っとくか。ところで護衛よりも護衛対象の方が強そうなことに関してどう思う?」
SP「…ノーコメントで」
○出血大サービス
九郎「やっぱ着てるだけで疲れるな正装ってのは。タキシードとか初めてだったか?」
美沙「とてもお似合いですよ」
九郎「…護衛だからと言い張ってメイド服着てる奴に言われてもな。婚約者なんだからドレス着て横にいるほうが守りやすいんじゃないのか?」
かぐや「実家から送られてきたドレスが煽情的過ぎて嫌がったんですよ。”私の体を見ていいのは九郎様だけです!!”って言って」
美沙「かぐや!!」
九郎「…………」
美沙「…ふ、二人だけの時だけですよ!?」
マーシャル「あれでまだ婚約者なのかね?」
かぐや「さっさと籍入れろって話ですよね」
〇私怨
MI6「逃がすな!ここで絶対にグリムズのクソッタレを仕留めるんだ!!」
アーチボルド「ちょっと殺意がボクだけに向き過ぎじゃありませんか!?」
MI6「うるせぇ!てめぇのせいで英国貴族の信用は下がるばかりなんだ!!さっさと死んでこれ以上俺たちに迷惑かけるな!」
アーチボルド「グリムズ家は既に没落してるんですけどねぇ!?」
MI6「そんなこと外の連中が考慮してくれるわけ無ェだろ!!てめぇのせいで英国紳士も貴族も風評被害ばっかり受ける羽目になってんだ、女王陛下のご下命だここできっちり後腐れなく死ねぇ!!」
アーチボルド「理不尽が過ぎる!?」
今週の投稿は以上です。