まだだ、まだ終わらんよ!(ストック切れが近い)
「再三の停止命令に従いません、なおも接近中!!」
「通信は繋がってんだな!向こうの言い分は!?」
「メガフロート内に侵入したテロリストを撃滅するためだ、としか」
「それに戦術機持ち出す馬鹿がどこにいる!?そもそもここは帝国の領海内だぞ!!」
メガフロートの仮説指揮所は蜂の巣をつついた大騒ぎとなっていた。
接近している戦術機は実に2個大隊72機。いくらなんでも過剰戦力だし、それ以前に日本海内とはいえ明確に帝国領海内への不法侵入だ。
「見捨てたことがばれましたかね?」
「狂信者共が吹き込んだか?それで焦ったにしても杜撰が過ぎる…いや、焦っているからこそか」
「無人機の製造ラインを手に入れて軍事力を取り戻そう、という魂胆ですか」
「1号機の製造設備は高度に自動化されているから、一度生産が軌道に乗れば後は見てるだけで済むからな。連中にとっては殺してでも欲しいごちそうだろうよ」
もはや世界からどう見られるかなど考慮していない。なりふり構わない凶行に出るほど連中は追い詰められていた、ということだ。
「暴発のタイミングを外しましたか。予定ではもう少し後のはずでしたが」
「まさかとは思うが、各国の要人を人質にすることも目的のうちか?いずれにしろこのまま近づける必要はない。斯衛16大隊に指令!一機残らず叩き潰せ、責任は俺が取る!」
「了解、斯衛16大隊出撃。接近する中国軍部隊を撃滅せよ」
『クレスト1了解、第3中隊でインターセプトする。ここを空にするわけにもいかないだろう』
赤いタイプSに率いられた11機の白と黒のタイプSが飛び出す。
向かってきている戦術機はすべてゲシュペンスト、Mk-Ⅲを含む有力な部隊だと判明しているが、それを考慮しても心配するものはいなかった。
まもなく会敵し、直後に1個中隊の反応が消失した。
あっという間に中国軍が瓦解していく。
「鎧袖一触ですな」
「当たり前だ。機体性能以前に乗ってる連中が違い過ぎる」
Mk-ⅢはバージョンアップによってMk-Ⅱよりも高い性能を獲得しているが、それでも一対一の模擬戦でタイプSに勝った例はない。
教導隊が一個小隊でようやく引き分けたぐらいであり、それが故にMk-Ⅲ発表前よりもタイプSの評価は上がっていた。
そもそもタイプS搭乗資格テストをクリアするためには一線を画した実力と運、何より逆境を跳ね除ける強い精神力が必要だ。
必然的に乗っている連中はエースからさらに半歩、時にはそれ以上に人類からはみ出しており。
「もうあいつらだけでいいんじゃないか」
などと言われることもしばしばだった。
対して今襲ってきている中国軍はと言えば、権力者にすり寄って甘い汁を吸っていた連中だ。
当然まともに訓練していた奴など数えるほどしかおらず、性能を十全に生かせるわけもない。
1対6という本来絶望的な戦力差をもってして、むしろ寡兵に蹂躙されるという事態に陥っていた。
「…出来れば稲郷博士には知らせずに終わらせたいな」
「人類を守るために作り上げた我が子が殺し合いをしていると知れば、あの方は嘆きましょうな」
「むしろブチ切れるかもしれん。自分でケリつけるとか言って隕石落としかねんぞ」
「…知られる前に中国指導部を解体するべきですな、上に上申しておきます」
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『くそ!どこだ、どこに行った!?』
『後ろだ!後ろに回っ…!?』
コックピットに正確に差し込まれた光の剣によってまた二人落ちた。
最初は6倍もいたというのに、今ではこちらのほうが寡兵になってしまっている。それでいて相手は撃墜どころか被弾すらしていない。
上官は数に任せて防衛線を突破しようとしたが、敵の練度はそれを許さなかった。
(クソッタレ!だからやめるべきだといったんだ!?)
自分たちが世界からどう見られているかは知っていた。
すぐにでもクーデター軍に合流したかったが、上海に家族のいる身でそれはできずこちら側にとどまった。
今思えば家族を連れてクーデター側か嫁の実家がある台湾に行くべきだった。そうすればこんな無茶な作戦に駆り出されずに済んだのだから。
日本帝国が建造したメガフロートを奪取し、そこにある無人機製造ラインを使って戦力の強化を図る。
どう考えても世界中から非難は免れない。かろうじて受けられていた援助も打ち切られるだろう。そうなれば家族はどうなるのか。
上申は聞き入れられず、しかし自分とその指揮下の小隊が数少ない中国軍でも高い練度があったために最前衛に配置されてしまった。
最初の一斉飛び蹴りはかろうじて躱すことに成功し、そこからは小隊をまとめてひと固まりとなって敵機から離れるように動き回った。
飛び蹴りの時点で確信した、向かってきたのはすべてタイプSだと。
あんなデタラメが一個中隊とか冗談じゃない。これ以上指導部のわがままに付き合って命を散らすなどごめんだ。
自分には守らなくてはならない家族が、そして部下たちがいるのだ。
『
Mk-Ⅲが貫手を食らって沈黙する。
後ろで偉そうにふんぞり返っていた上官がとうとう海の藻屑となった。もう誰も我々の行動を咎める奴はいない。
「小隊全機、武装を解除しろ。日本帝国軍機、応答願う。こちらは中国軍所属暴風小隊。これより投降する。繰り返す、我々は投降する」
『――こちら帝国斯衛軍第16大隊所属クレスト25だ。投降を受諾した。武装を解除後こちらの指示に従い機体を移動させろ。妙な真似はするなよ、ここまでされてこちらも殺気立っているんだ』
当然だろう。祖国が一体どれだけ帝国に迷惑をかけたことか。
「了解した、武装を投棄する。…上海の方はどうなる?家族がいて心配なんだ」
『…それは私の管轄ではない。まあ、援助の打ち切りは間違いないだろうし、連中を守るものもいないだろうな』
やはりそうなるか。
「頼みがある。今回の件について証言する代わりに部下の減刑を頼みたい。こいつらは俺についてきただけだ。この場においての最先任士官である俺には責任がある」
『私の独断で受けられることではない。だが司令部にはその旨報告しておこう。…上海の状況についても、話せる範囲で伝えられるようにしておこう』
「感謝する…!」
カーウァイ大佐は軍でも有名な人情家だ、居住区を戦場にするのは避けるだろう。
それでも家族への心配は尽きないが、今の自分にできることはない。
帝国に協力し、部下の安全と家族の安否を祈ることだけだ。
生きてさえいれば、また会えるはずなのだから。
『こちらクレスト25、中国軍戦術機部隊の鎮圧完了。これより捕虜を連れて移動を…何、コード991!?』
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「…向こうは片付いたようですな」
「流石はインペリアルロイヤルガードの最精鋭。あっという間だな」
「それでどうする?こっちのこの状況は!!」
のんびりした会話に聞こえるが、現在彼らは死に物狂いの戦闘中だ。
何せ、通路一杯に広がったBETAを阻止していたのだから。
「どうやって持ち込んだ!?ここに持ち込まれるものは全て徹底的に検査されてるんじゃないのか!?」
「それ以前にあんな小型種いたか?闘士級でもないぞ」
「形としては人型に近いですな。運動性能は比較になりませんが!!」
鎧衣たちが簡易的に作り上げたバリケードから顔を出してソレに弾を叩き込む。
それはいまだこの世界で確認されていない新種。
九郎や武、純夏が見ればすぐに嫌悪と憎悪のこもった声で教えてくれただろう。
兵士級、と。
対人レールガンのおかげでたった3人でもなんとか阻止できているが、それもすぐに破綻しそうだ。
腕や足が吹っ飛んだだけの個体が、すぐに手足を生やして戦列に復帰してくるからだ。
「ダメだな。多少のダメージはすぐに修復してしまう。ちょっと見たことない修復、いや再生速度だ」
「対人火器では限度がある、パワードスーツは!?」
「ようやく来ましたよ」
彼らの後ろから、鋼の鎧をまとった戦士たちがやって来た。
『遅れてすまない。そこら中に湧いて出ていてな』
「謝罪はいいから早く何とかしてくれ!?」
『了解。後は任せろ』
ブローニングM2重機関銃3門を束ねた重3連機関砲を構えるのを見て、生身の3人は慌てて後退した。
12.7ミリNATO弾が、一人当たり毎分1200発×3でぶち撒けられた。
対人火器でも何とかできる相手にそんなものぶち撒ければどうなるか。
10秒もすれば、そこは血と肉片が散乱する屠殺場と化していた。
「なんて大雑把な…」
『言ったろ、そこら中で湧いて出てるって。もう丁寧に対処してられるほど余裕はないんだ。パーティー会場の連中も駆り出されているぐらいだからな』
式典というのは、最初からブラフだ。
その正体は人類に敵対的な獅子身中の虫をおびき寄せ、この場で一気に叩き潰してしまうための罠。
ESP発現体対策として最もおいしそうな餌には来ていただいたが、その他は九郎が用意したバッフワイト素子と偽装思考でそれっぽく振舞っている超一流エージェントの皆様だ。
のこのこ乗り込んできたら全員でお出迎えの予定だったが、既にそんなエージェントの力を借りねばならないほど混沌とした状況に陥っていた。
「それで、こいつらどこから来たんだ?湧いて出てるっていうなら相当数を運び込んでなきゃおかしい。だがそれならさすがに検査の段階で気づけるはずだ」
『それなら稲郷博士が解き明かしてくれたよ。ものすごく胸糞悪い内容だったけどな』
「おとなしくしていてくれませんでしたか…」
「それで?胸糞悪いとはどういうことだ」
若干遠い目をする鎧衣課長をよそに、一緒にいた英国紳士は続きを促す。
『今暴れてるBETA共は元人間だそうだ』
流石にその言葉は信じられず、3人は顔を見合わせる。
『有機物を糧に異常増殖するよう改造されたBETA細胞をぶち込まれた連中の成れの果てがこいつらなんだそうだ。有機物さえあれば際限なく増殖・再生するせいで、再生できないほど徹底的に破壊しなくちゃならん。そのせいでこんなゴツいもの屋内でぶん回す羽目になっちまった』
馬鹿みたいな火力ぶっ放すわけである。完全に破壊しないと再生してきりがないのだ。
「なるほど。BETA細胞を持った恭順派が自分で使ったり周りの連中に使った結果がこの状況というわけですか」
「クソ面倒すぎる…!こんなのばら撒かれた日には対処方法なんぞそう多くないぞ!?」
「徹底的に潰す理由がさらに増えたな。これはもう潰す以外の選択肢がない」
自分の国の首都で
しかも早急に対処しないとウイルス以上の速度で被害が拡大するのだ。
「とりあえずこの場を何とかいたしましょう。なに、この罠を張った時からこのメガフロートに接触したすべての人間、組織は捕捉済みです。後はそこから我々全員で調べ上げれば――」
――ドカンと。
メガフロートの一角が、盛大に吹き飛んだ。
「…派手ですな」
「言ってる場合か!爆弾でもしかけられたか!?」
「…いや、違うようだ」
爆発した場所から、何かが立ち上がる。
戦術機を優に超えるそれは、どう見ても機械ではない。
体のそこここでギロギロと周りをねめつける眼球。
その巨体を支えるがっしりとした両足。
食いしばった歯は晒しながら、目を閉じたままの顔。
両腕は突撃級の外殻に近い形状で、殴られでもしたら戦術機でもただでは済まなそうだ。
「…BETAの、新種か?」
「あのサイズでたった一匹だけ見逃すとは思えませんな。あの辺りは確か実験的に畜産が行われていたはず。信じたくないですがあれは」
「大型の人造BETA、だと?」
とても信じたくない事態だったが、答え合わせは早かった。
『フハハハハハハハ!!みろォ!我々はとうとう天使と一体化するすべを見つけたのだ!この薬を打てば誰でも天使となり、その力を行使できる!!この力をもって忌々しい悪魔を踏みつぶし、人類すべてを天へとみちびぎゃ――』
人造BETAが近くの建物を踏みつぶした瞬間、騒いでいたスピーカーも沈黙した。
人造BETAはめちゃくちゃに暴れ出した。理性のかけらも感じられない。
すでに帝国軍が阻止攻撃をはじめたが、体中の眼球からレーザーを発し、致命打は腕の甲殻で防がれている。
「…ある意味、爆弾よりもたちが悪かったですな」
「俺たちにはどうしようもない。インペリアルアーミーと――」
どこからともなく飛んできた鉄拳が人造BETAの顔面に突き刺さる。
吹っ飛んだ相手をしり目に鉄拳の持ち主は己の腕を回収しつつ、人造BETAの前に立ち塞がった。
「――ビッグオーガに任せよう」
クレスト25「弱すぎる。各自余裕があるなら損傷は最低限にとどめろ。修理して今度こそ人類のために役立ってもらわねばな」
○いつものやつ
ハゲた刑事「畜生!俺はNYの刑事だぞ、ニュー・ヨー・クの!なんで日本まで来てこんな化け物共の相手しなけりゃならねぇんだ!?」
ターミネーター「ぼやく暇あったら一匹でも多くぶち殺せ!!ミニガンでも固め撃ちしなけりゃ殺せなくてめんどいんだ!!」
ベトナム行ってない「対人ライフルじゃ話にならん!もっとデカいガンはないのか!?」
黙らせるコック「そっちにM2転がってたぞ。しかしCQCじゃ効果が薄いな。電子レンジ持ってきてくれ、まとめてチンしてやる」
有機物さえ十分なら40メートルを超える巨体に大変身!!これぞBETA恭順派脅威の科学力!!
…いやマジで脅威だわ。出しといてなんだけどどうしようこれ。
メガフロート1号機の方は機密性が高いので秘密裏に、そして関わった人員は徹底した身元確認と監視がされてましたが、2号機の方は最初から罠に使うこと前提でコアブロック以外は難民解放戦線とかが潜り込む余地がありました。ただしそれは尻尾を掴むための釣り餌で、一度でも接触してきた人間・組織はどこまでも辿れるだけ辿ってがっつり調べられてます。
次話は明日投稿予定です。