MUV-LUV大戦   作:土井中32

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いつまでも寝てたい…(あったかくなったり寒くなったり雪が降ったり雨が降ったり忙しい)。




68話 望まぬ再会

 

「あああああ!胸糞悪いィィ!!」

「博士、全員思ってることは同じですからこらえてください」

 

これが黙ってられるか!!

あいつらこんな胸糞悪いもの作りやがってからに!!

 

「実際のところ、どういう原理なのです?」

「何のことは無ェ、有機物を糧に異常増殖・分裂してるだけだ。人間にぶち込めば髪の毛一本残さず食らい尽くして人間大BETAの出来上がりって寸法よ」

「…つまり、BETAに変身しているのではなく、BETAに食らい尽くされているだけ、ということですか。当然そこに元の人間の意思など残ってない、と」

「豚肉食った人間がブヒブヒ言い出すなら可能性あるかもな」

 

メガフロート内にいきなりBETAが現れたもんだから無理言ってサンプル解析したんだが、結果はおぞましいの一言に尽きる。

今の状況はゾンビパニックそのものだ。幸いなのは噛みつかれても感染しないことぐらいか。

 

「増殖能力こそぶっ飛んでるが、外気に触れると増殖できなくなるらしい。返り血を体内に取り込んだりしない限りは感染の心配はないな」

「対応班に徹底させます」

 

なまじある程度制御可能ってのが余計に神経に触る。

こんな形でBETA鹵獲技術の軍事利用が日の目を見るとは…!

 

「九郎、落ち着いて。それは(●●●)あなたがやったことじゃない」

「分かってる、分かってるんだ…」

 

美沙の声を頼りに、何とか正気を保つ。

何より胸糞悪いのが、それに対してどうすればいいのかわかってしまうことだ(●●●●●●●●●●●●●●●●●●●)

俺の頭ン中に詰め込まれている技術情報は機械系だけじゃない。

生理学、人体工学、医療系も含まれている。

最初は何でこんなものまで、と疑問に思っていたが、検証するうちに気づいた。

 

これは、実際に人間を使って蓄積された情報だ、と。

 

スパロボOGには何人ものマッドサイエンティストが登場する。

アードラー・コッホやアギラ・セトメ、イーグレット・フェフなど、文字通り人間を実験材料にしか考えておらず、人を壊すことに何の感慨も感じない外道どもだ。

 

マッドと呼ぶべき人間は他にもいるが、医学関係の技術元は恐らくこいつらだ。

機械と脳の有線接続の仕方だとか、脳をいじって思い通りに操作する方法なんてものを詳細に脳裏に描けたときは思わず吐いた。

そこから半日は吐きっぱなしになった。

何せ詳細な人間の壊し方の実施映像が頭から離れないのだ。よくあそこで狂わなかったものだと思う。

以来そっち関係の技術はアンタッチャブルにしてできるだけ触れないようにしていたのだが、こんな状況故解禁せざるをえず、頭の中で展開される人間を思い通りに切り刻んで従順な奴隷にする方法だとかを押しのけながら必死に今の状況を変える方法を検討せざるをえなかった。

正直、美沙が干渉してくれなければ自分で頭をかち割っていたかもしれない。

美沙が後ろから抱きしめて、能力を使って荒れ狂う俺の精神を落ち着かせている。

胸からこみあげてくるものに必死に抗いながら、今はワクチンを作っているところだ。

 

「ようは最悪に狂暴な寄生虫みたいなもんだ。致命的に体をぶっ壊される前に周りごとえぐり取るか、人体に無害で相性の悪い化合物を叩き込んじまえばいい。元が奴等でもそこに手を加えたのは人間だ。なら更に手を加える方法もあって当然…!」

 

アポトーシスは無理かもしれないが、増殖を停止させる命令物質なりを合成してスプリンクラーだとかでばら撒ければ…!

 

「急いでください博士!」

「超特急でやってるよ!」

 

護衛の連中が焦るのは分かるが、本来年単位でやるべきことを数時間でやろうというのだ、余り焦らせないでほしい。

例え、外が兵士級だらけでも。

 

なまじ耕作地にする予定で色々持ち込まれていたのが裏目に出た。植物だの家畜だのが実験のためにある程度運び込まれていたもんだから、増殖するために必要な有機物に事欠かなかったのだ。

今も全力で掃討作戦が展開されているが、連中バラバラにされた仲間の死骸すら食らって再生・増殖するもんだからなかなか根絶できない。

俺には即時退避するよう指揮所から命令が飛んできたが、このままでは処理能力を超えた連中にメガフロートを占拠されてしまう。発生が初期段階の今しか被害を抑える方法はない、と指揮所に言い返して俺は金庫から飛び出したのだ。

そこから本来獣医学用の研究室に駆け込み、連中を一網打尽にできるいわば毒薬を製造しているところだ。

護衛の連中には負担を押し付けて申し訳ないが、あんなキチガイどものせいでメガフロートを最悪完全処分しなくてはならないとかとても許容できない。

できるのなら、ここで何とかしないと。

 

「…よし、誰か、これを奴らにぶち込め!」

 

出来上がった試作品を外にいる護衛に投げ渡す。

麻酔用の銃弾に詰め込まれた試作品はすぐさま近づいていた兵士級に向かって撃ち込まれた。

 

撃ち込まれてすぐは元気に向かってきていたが、5歩も歩かないうちにピタリと動きが止まる。

その場で突如もがき苦しみながら徐々にやせ細っていき、ついには骨と皮だけになってばたりと倒れた。

 

「…何やったんです?」

「本来BETAに地球由来の有機物を消化する能力はない。だから元に戻してやった」

 

そのあたりは後付けなのは間違いなかった。なので有機物を消化する酵素を中和する化合物を合成。撃ち込まれた人造兵士級は活動・再生源である取り込んだ有機物をエネルギーに変えることができず、やがて同じBETA細胞同士で共食いを開始。その果てに餓死したのだ。

 

「後はこいつを大量生産してメガフロート全体にばらまくだけだ。生産設備は確保できてんだろ?」

「薬はまだか、と催促が酷いです。指揮所からは怒声しか飛んできませんし」

「負担かけてすまない。化学式送ったら金庫に戻るからもうちょっとだけ――」

 

「――それは困りますね。あなたにはここで死んでもらわねばならないのですから」

 

殺害予告が飛んできた方向を見る。

兵士級をかき分けて(●●●●●●●●●)、一人の男がやってくる。

客観的に見れば偉丈夫。

整った顔にやたら豪奢な服の上からでもわかる引き締まった体。

首のあたりできっちりと切り揃えられた銀髪は照明の光を跳ね返し、頭に天使の輪っかを作り出している。

年は俺とさほど変わらないように見える。随分と若いな。

…なるほど、こんな奴が神がどうとか説けば信じてしまいそうな雰囲気だ。

 

「いきなり現れてお前を殺すとは物騒なことだ。せめて俺を殺す相手の名前ぐらい知って地獄に行きたいんだがな」

「地獄に落ちると自ら認識しているとは、悪魔でありながら自らの罪をしっかりと認識している。よいことです、そのまま地獄に落ちて自らがいかに罪深いことをしたのか反省してください。

ああ、申し遅れました。私オラクル・ヴェールユシチイと申します。BETA恭順派の指導者(マスター)をしております」

 

目配せで護衛連中に戦闘準備をさせつつ、会話で情報収集と時間稼ぎを行う。

本当に指導者なのかは分からんが、兵士級がこいつに襲い掛からないというのは明らかに不自然だ。タネが分からないうちは迂闊に仕掛けるべきじゃない。

 

「指導者自らの出陣とは、いよいよもって後がないらしいな。ちょうどいいからここできれいさっぱり消えちまえ」

「何を言います。天使に仇なす悪魔であるあなたを殺し、全人類を天国へと導くことこそわが使命。それをなすまでは死ぬわけにはまいりません」

 

恭順派と言うだけのことはある。頭おかしいな。

 

「ちょうどいいや。前から聞いてみたかったんだけどさ、一体何をもってあれを天使だと考えるんだ?人類を裁きに来たというには、いろいろと食い違う部分が多いと思うが」

「それは愚かなる人類が彼の天使たちを理解できていないだけです。彼らはまさしく業を極めた人類を裁き、この星を浄化するために使わされた使徒。ならば人類はそれを粛々と受け入れねばならない。ほら、今もこうして彼らは私たちに語り掛けてきているというのに」

 

…もうちょっと論理的な回答が返ってくると思っていたんだがな。やっぱりキチガイのアタマはキチガイか。

 

「だというのに、あなたは不遜にもほどがある。我々は彼らの声に耳を傾け、ただその通りにするだけでよいというのに。天使の声を聴くのではなく、自分から語りかけようとするとは」

「…何の話だ?」

 

本気で分からん。例の交信内容か?でもあれに俺の声は記録されてない。変声機を通したとしても口調でそれはわかるはずだ。語りかけるというのは違和感が――

 

 

「そんなことをするから、天使はお怒りになって帝国を真っ先に浄化しようとしたのですよ」

 

 

――血の気が引いた。

頭の中で、点がつながる。さっきまで流していた、ただの情報が。

改めて、指導者を凝視する。

 

銀髪。

俺と変わらない年齢。

胡散臭いロシア語の偽名。

俺がBETAと会話しようとした、という発言。

その結果が、帝国侵攻だという主張。

 

…マズイ。こいつは最低最悪のジョーカーだ。

例え刺し違えてでも、ここで確実に始末しなくてはならない。

 

「護衛任務を五摂家が一人、斎御司九郎の名の下に解除する。あの男を己の命に代えても殺せ。それは他のあらゆる命令よりも優先される、結果として俺が死んでもだ。全ての責任は俺が持つ」

 

いきなり俺が出した”命令”に帝国軍からの護衛はギョッとするも、付き合いの長い斯衛の連中はすぐに臨戦体勢に入った。文字通り刺し違えてでも奴を殺すために。

流石だな。理由は分からずとも俺がそうせねばならないほどの脅威だと理解してくれたらしい。

 

「おや、私を殺せるつもりでいるのですか?無駄ですよ、私には天使の加護がある」

「人の腹から生まれてないから、自分は人間ではないってか?失敗作として捨てられたことには同情してやるが、ずいぶんと選民思想をこじらせてるな」

「…ほう、私の素性にもう気づいたのですか」

 

クソッタレのソ連め、何が適切に処分しただ。

全くできてないじゃないか。

 

「オルタネイティヴ3で生み出されたESP発現体、それも最初期の第一世代の失敗作だろ。お前は連中の求めるテレパシー能力を持ち合わせていなかった。だから捨てられた。もっとも、別の能力を持って生まれてきたようだが」

「その通りです。私は生まれた時から天使の声を聴くことができた。連中はそれを理解できず私を破棄しましたが、今では感謝しています。こうして天命を全うすることができているのですから」

 

天命?そんなわけがあるか。

奴が生まれつき持っていたのは居もしない天使の声を聞く能力ではない。

 

”量子通信を受信する能力”だ。

 

BETAは量子通信を使ってハイヴ間での連絡を取り合っている。こいつは、この男の脳は、本来特別な機械かBETAでなければ受信できないそれを、生身で受信しているのだ。

何のことはない。オルタネイティヴ3はその目的を半ばまで達成できていたのだ。連中がそのことに気づかなかっただけで。

 

「本気で残念だ。変な思想にかぶれなきゃ、お前は人類の救世主になれただろうに」

「御心配には及びません。これからなるのですよ、全人類を天国へと導いた英雄として」

 

本当に残念だ。

量子通信を受信できているなら、あとはそれを解読するだけだ。

難航はするだろうが、原作の情報を加味すれば00ユニット並みのコンピュータとESP発現体、それも第六世代の協力があれば翻訳できる可能性はかなり高かったはずだ。

解読できた情報がどれだけの人類を救えたか、もうこの男にはわからないのだろうな。

 

「今となっては、お前は人類にとって最大級の脅威だ。ここで、確実に、死ね」

 

受信能力だけなのは不幸中の幸いだ。送信能力を備えていたら人類は終わっていただろう。

加えてこいつは量子通信の内容を知らない。ただ受信しているだけだ。でなきゃBETAを信仰したりはしない。想定される内容はただの事務的な報告だけのはずだからな。

それでも、この先送信能力に目覚めない保証はない。解読だってやり方はいくらでもある。そしてそれを解決できたなら、こいつは人類の情報を漏らすことを躊躇わない。

だから、確実にここで死んでもらわなきゃならない。

最悪、このメガフロートを犠牲にしてでも。

 

「やってくれ」

「承知。我らの命に代えても始末して見せまする」

 

ゾル・オリハルコニウム製の刀を持った前衛が飛び出し。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺の真後ろに、男が現れた。

 

 

「九郎ッ!?」

「マスター!!」

 

隣にいた美沙が悲鳴を上げながら押し飛ばそうとしている。

周りにいた護衛もかぐやも慌てて俺の守りに入るが、間に合いそうもない。

恐らくは、天井の暗がりにずっと隠れていたのだ。

そして直掩の手練れが飛び出したタイミングで飛び降り、その勢いのままナイフを俺に突き立てようとしている。

見えてないはずなのに、なぜかそれが知覚できた。無意味だけど。

狙撃をしなかったのは銃を持ち込めなかったのか、火薬の臭いでばれるのを防ぐためか。

 

間に合わないとわかった時、俺は逆に美沙を押し飛ばそうとして――

 

発砲音を耳にしながら(●●●●●●●●●●)

 

――体ごとぶつかってきた美沙に負けて押し倒された。

 

「…生きてる?」

 

どう考えても間に合わないタイミングだったのに?

じゃあ、代わりに受けたのは誰だ?

 

うめき声の方に目を向ければ、そこには俺を襲おうとした男がいて。

大口径弾で撃ち抜かれたのだろう、手首から先が吹っ飛んでいる。

当然ナイフもいっしょにどっかへ吹っ飛んでいた。だから助かったのだ。

 

そして。

 

「マスターに何をしようとしたァーーーーーー!!!!」

 

かぐやの全力ストレートが、そいつの顔面に突き刺さった。

戦闘系のスキルがインストールされていないとはいえ、その膂力は人間の域をはるかに超える。そのパワーでの全力パンチを喰らえばどうなるか。

きりもみ回転しながら男は吹っ飛んでいき、壁に頭から叩きつけられた。

そのまま逆大の字で壁に張り付き、またも頭から床に落ちた。

 

「…殺してないよな?」

「マスターに危害を加えるなど万死に値します!!」

 

それでもお前を人殺しにするつもりはないんだが。

とりあえずあっけにとられていた護衛の面々が動き出してそいつを拘束していく。

…一応、死んではいないらしい。サイブリッドだったようだ。

 

「…美沙っ!?怪我は!?」

「大丈夫です。九郎様以外には何人たりともこの身に触れさせはしません」

 

覆いかぶさっていた美沙にも怪我はなく、ほっとした俺はようやく周りに目を向けることができた。

指導者はすでにおらず、飛び出した斯衛も見当たらない。

恐らくは失敗した時点で逃げに入り、それを追っているのだろう。

周りの人造BETAはパワードスーツと毒薬持った連中の連携で駆逐されつつある。当座の安全は確保されたとみていいはずだ。

 

俺を狙った刺客はパワードスーツが体重かけて押さえている。

凹んでいるが紳士面したその顔には見覚えがある。確か難民解放戦線のリーダーで、通称は執事(バトラー)

相当に改造したサイブリッドだという話を聞いたから、おそらく心臓まで止めて仮死に近い状態で潜んでいたのだろう。斯衛が見逃すわけだ。

 

護衛の一人が、折れたナイフを回収している。

真ん中に通された穴から気味の悪い液体が流れ出ているので、それで俺も兵士級にするつもりだったのだろう。

刺客の持っていたナイフには、例の改造BETA細胞が仕込まれていたのだ。

注射のように体内にBETA細胞を打ち込み、致命傷に届かなくても体内に打ち込まれたBETA細胞が内側から食い殺してくれる。

 

「…命拾いしたな」

 

連中がなりふり構わず狙撃で決着をつけに来ていれば、俺は死んでいただろう。

狂信者であったゆえに、俺は命を拾ったのだ。

そして、俺を救ったとおぼしき相手がいるほうへ目を向ければ。

 

護衛に囲まれ銃を突きつけられながらも、余裕しゃくしゃくと言った感じで笑みを浮かべる女が。

…年を取っているが、俺はその顔に見覚えがあった。

10年も前の、冬の東ドイツで。

 

「久しぶりね、九郎」

 

あの日、BETAの海に消えた妄執が、俺の前にいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…老けたな、ベアトリクス・ブレーメ」

 

憤怒の形相でぶん殴られた。

グーじゃなくてパーでぶん殴ってきたのは、一応手加減だったのだろう。

 

 





◯なぜならあなたは

マーシャル「どけぃ!こんな状況で私一人だけ油売っていられるかぁ!!」
SP「アンタ守るのが俺達の仕事だって何度言わせる気だ!?全員死んでも上からどくなよ!」
SPたち「「「応!!」」」

10人掛かりで押さえつけられるアメリカ大統領と押し問答する護衛の一幕。
なおドサクサに紛れて九郎は金庫から脱出した。


○仏の顔も三度まで

クーデター組1「アホ共がメガフロート襲撃したぁ!?」
クーデター組2「ゾイドシリーズの生産ライン強奪しようとして返り討ちにあったってよ」
クーデター組3「もう勘弁ならねぇ、今すぐカチコミするよう大佐に上申を…あれ、大佐はどこ行った?」
整備員「予備機のMk-Ⅱで飛び出してったけど?」

この後上海に一人でカチコミかけて散々に暴れまわった模様。
クーデター組がたどり着いた時には既に指導部組は半壊していたとか。


今週の更新は以上です。

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