MUV-LUV大戦   作:土井中32

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来週から週一更新になりそうです。ご了承ください。




70話 東ももう長くない

 

 

メガフロート完成式典、を騙ったデカい罠から数週間後。

いつもだったら勝手に入ってくるくせに、今日はきちんとアポを取って鎧衣課長が研究所に入ってきた。

 

「預かり物を返しに来ました」

 

渡されたカプセルに入ったそれを確認する。

 

緑色に光る、米粒大の結晶を。

 

「確かに、トロニウムは返してもらったよ」

「懐からそれが取り出されたときは心臓が止まるかと思いましたよ。厳重に管理していたのではないのですか?」

 

近くに置いといた封印用のコンテナに収めつつ、それに答える。

 

「あの時も言ったろ、いざというときは囮になるつもりだった、って。おびき出すのが恭順派なら、BETAに関する何かを使う可能性が高いと踏んでた。だったらこれは囮として最高の餌だろう?」

 

鎧衣課長の顔は渋いままだ。

 

「いい加減何とかなりませんか、その投げやりな部分。あなたが倒れればその時点で人類は終了なのですぞ?」

「死ぬまで直す気ないんだ。どうしても改めたいなら洗脳なりなんなりするんだな」

 

コンテナを封印用の金庫に放り込み、課長に向き直る。

 

「それで?後始末も終わったから来たんだろ。話していい範囲で顛末を聞かせてもらおうじゃないか」

 

あの後すぐコンテナに詰め込まれて離脱させられたからな。どうなったのか聞かせてもらおう。

 

 

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まず、あの改造が施されたBETA細胞について。

 

「出所は第三計画でした」

 

ま・た・あ・い・つ・ら・か。

 

「あそこでは主目的のESP発現体の研究の他に、機密保持の方法として様々な研究が同時に行われていました」

 

特定のたんぱく質を取らないと死ぬとか、主人に設定された人間と離れると発狂するとか。

大体ろくでもない方法だが。

 

「その研究の中にBETAの細胞を培養し、人体に組み込むというものがありまして」

「その研究中にできた失敗作、あるいはスピンオフ、てところか?」

 

俺の言葉に頷き、課長は話を進める。

 

「博士も知っての通り、恭順派の指導者は元第三計画のESP発現体。内部事情を知るがゆえに人員を送り込むのはたやすかったようです」

「成果を盗み出すのも、か」

 

既に当の研究は凍結。資料はすべて処分されたそうだ。処分されたのが資料だけ(●●●●)なのかは課長は教えてくれなかったが。

 

「恭順派のアジトももれなく全て調査済みです。誰かが一から研究をしない限り二度とあれは生まれてきません」

「一度生まれたものはまたいつか現れるものだ。対処用の薬学データは残しとくべきだな」

「お願いいたします。我々の方でも目は光らせておきますが、物事に絶対はありませんので」

 

 

次に、恭順派指導者の身元について。

 

 

「やはり、第三計画のESP発現体で間違いありませんでした。押収した名簿に彼のデータが残っておりましたので」

「人員送り込んでおきながら、データを消してなかったのか?」

「あるいは自分を捨てた研究者たちへの嫌がらせのために残しておいたのかもしれません。真相は死んだ彼しか知りませんが」

 

第一世代ではまだ狙って能力を覚醒させられず、かなりの数の廃棄品が出ていたらしい。彼もその一人だった。

 

「当時から管理は杜撰だったようで、贈答や慰安に回されるのは見目麗しいものから。余ったらシベリアの大地に裸で放り出していたようです」

 

弾代すらケチったのか、あいつら。

 

「裸でシベリアの大地に放り出された幼い子供が生き延びるなど、微塵も考えていなかったのでしょうなぁ」

 

欠片も人として、いや命として見ていなかったんだろうな。

だからこそ計画完遂のチャンスを逃したし、巡り巡って自分たちの首を絞めることになったわけだが。

 

「どうやって生き延びたかについては省かせていただきます。相当におぞましい話になりますので」

 

なんとなく想像はつくが、せっかく配慮してくれたんだからそれに乗っかっておく。

 

「遺体はどうなった?」

「荼毘に付して、無縁仏として供養させていただきました。後世に名を残さぬことを以て罰とする、と殿下が」

 

他の国もそれで納得させたわけか。

見方を変えれば奴もある意味被害者なわけだしな。カルトに殉教者だとか英雄に祭り上げられて死後も使われるよりはましだろう。

死ねば皆仏様だ。俺のように前世を引きずってこの世に迷い出てこないことを願う。

 

 

最後は第三計画、というかソ連だな。

 

 

「不祥事がここまで相次いでしまうともはや誰も庇いませんので。第三計画は即時中止。全ての資料をまとめて第四計画に提出することが安保理の全会一致で決まりました」

 

主導国であるソ連も庇うどころじゃないだろうしな。

 

「関係者は全員拘束され徹底的な追求と戦時裁判にかけられることとなります。現在は国連や各国から派遣された見張りのシベリアよりも冷たい視線にさらされながら資料を纏めていることでしょう。一足先にESP発現体たちはこちらに送られることになっておりますが」

「機密処置に関する資料は?」

「同時に送られてくるそうです。また彼女たちのコンディションを管理していた研究者も本人の希望で一緒にこちらに送られて来ます。彼に関しましては既に調査と量刑も確定しておりますのでその点についてはご安心を」

 

資料と直接処置をしていた研究者が来るなら、彼女たちをすぐに自由にしてやることもできるだろう。

青空(そら)の治療時のデータも活用できるだろうし。

 

「しかし物好きな奴だな。こっちに来たところで針の筵だろうに」

「直接会って話をしましたが、どうやら自分の行いを悔いているようでした。自分がどんな目に遭っても、こんなことは間違っていると声を上げるべきだったと」

 

…罪滅ぼし、か。

 

「受け入れるからには聞いとかないとな。名前は?」

「クエルボ・セロという青年ですな。元はマンマシン・インターフェースの研究をしていたそうですが」

 

…何の因果だろうな、これは。

 

「分かった。せいぜいそいつには自分を許せるぐらいに頑張ってもらおうじゃないか」

 

ついでにカウンセラーにも話を通しておくか。

第四計画の人材としてインドから医者兼心理カウンセラーが来る予定だし。

資料はまだ届いていないが、きっと彼女(●●)なのだろう。

あの世界では悲恋に終わったが、この世界では幸せをつかんでほしいものだ。

…くっつくかどうかは本人たちの自由だから、手出しする気はないが。

 

「ソ連自体も現在は政変の真っ最中ですな。恐らくは上の面子がすっかり入れ替わるものかと」

「ブレーメの飼い主たちか?」

「前指導部に全ての責任を押し付けて乗り切る腹のようですが、それで済みはしないでしょうなぁ」

 

当たり前だ。やらかしの度合いと積み重なった恨みが重すぎる。

冷や飯ぐらいだったとはいえ、それなりに甘い汁吸ってた連中には違いないのだ。

恐らく方々から叩かれ、相当にむしり取られることになるだろう。

加減を間違えてシベリア戦線が崩壊しないよう気を付けてもらいたいものだ。

 

「何はともあれ、これでBETA恭順派は壊滅。後ろ弾の可能性はほぼ消えたと考えてよいかと」

「後は国同士の連携ができるかどうか、か」

「そちらについては我々頭脳労働担当の仕事です。何としてもBETA打倒でまとめて見せますとも」

 

言ったからには任せるべきだろう。

俺にできることはないからな、専門家がやるというならやってもらう。

 

「メガフロートの被害は?」

「コアブロックは無傷。人造BETAの殲滅も確認されましたので現在は除染・消毒作業と壊れた部分の補修、建造再開の準備中ですな。半年もあれば第一陣を受け入れられるかと」

 

特に零式が押さえていたデカブツが面倒だったらしい。

ぶった斬ったり殴り飛ばしても損傷した細胞共喰いしてすぐ復活。光学兵器はともかく爆発系は細胞が飛び散って後片付けが大変になるのでダメ。

結局薬ができるまでタコ殴りにしてちょっとずつ小さくするしかなかったとか。

出来上がった薬を零式が口から突っ込んで無理やり飲ませてようやく仕留めたらしい。

それでも30分近く共喰いで小さくなりながら暴れ続けたらしいが。

 

まあ終わったことは置いておき、2号機が完成したら最初は帰る場所と仕事を失った九州の人たちの移住が優先される。

各国からの移民を受け入れるのはその後になるが、まあ一月そこらの違いしかない。

表層での農作業から内部での合成食料製造まで仕事はいくらでもある。賃金も割高に設定されているので不満もそれほどでないだろう。

…畑が優先されるせいで歓楽街なんかの娯楽がほぼないのが問題ではあるが、その辺は俺の考えることじゃないしな。総理と現場の人間に頑張ってもらおう。

 

「そういえば、中国の方はどうなった?」

 

メガフロートに襲撃かけた後始末を、俺はまだ知らない。

俺が事を知ったのはここに帰って来てからだが、知った瞬間にそのままかぐやにメテオストライクの指示出しかけたからな。美沙に鎮圧されたけど。

 

「準備が完全に整ってはいませんでしたが、クーデター組による上海への攻撃が即日実行、その日のうちに陥落させたのち国連軍に投降しました。統一中華戦線はもはや維持不能として解消、中国側の政府機能は台湾ごと国連の保護下に置かれることとなります」

「ソ連が立て直す云々はうやむや、いや向こうもそれどころじゃないか」

「そういうことですな。徹底した膿み出し後台湾、中国両国の軍は国連軍指揮下に入り今までと同じく中国大陸戦線の維持に努めます。クーデター組に関しては予定通り前線配置とすることで反乱の罪を償う、ということになりました」

 

優先して最新鋭の装備が回されるうえ、補給も健全化する。一ヶ月後にはゾイドシリーズも投入されるから当面は持ちこたえられるだろう、とのことだ。

 

「長かったが、ようやくBETA戦に集中できる下地が整いつつあるか」

「例の録音を流したおかげで各国の派閥同士のいがみ合いも抑制できつつあります。何せ逃げ場もなく話し合いの余地もないとなれば、隣の敵を気にしつつも手を取り合うしかありませんから」

 

少なくとも地球から奴らを追い出すまでは続けてもらいたいものだ。

…テーブルの下では蹴り合ってるんだろうが。

 

「了解した。BETA打倒で纏められるならようやくこっちの計画も進められるな」

 

仮初でも、人類が一つにまとまりつつある。その結果に一抹の不安とある程度の期待を感じながら、タブレットに準備中だった計画の概要を出す。

そこに書かれていた計画名は二つ。

 

”プロジェクト・DGG”

 

そして。

 

”甲一号目標偵察計画”

 

 

鋼の巨神が。

鋼鉄の獣が。

 

ついに表舞台に上がる。

 

 





〇因果応報

九郎「そういえばグリムズってどうなったんだ?絶対殺すってとくにイギリスの連中が息巻いてたって聞くが」
鎧衣「あの場で確実に始末されましたよ。ええそれはもう確実に」
九郎「…どんだけ念入りにトドメ刺されたんだあいつ」
鎧衣「しかも欧州でさらし首になるそうです。よほど方々から恨まれていたのでしょうなぁ。指導者の遺体を引き取る交換条件にされたぐらいですし」
九郎「…まあ、外道の末路なんてそんなもんだろうさ」


〇本編にも出れない人たち

豚1「き、貴様ら、これは人民に対する裏切りブヘェ!?」
カーウァイ「裏切ってきたのは貴様らだろうがこの豚共がァ!!」
クーデター組1「カーウァイ大佐、殴るのは構いませんけど俺たちの分も残しといてくださいよ?」
クーデター組2「そうそう。殴りたいって希望出してるやつそれこそ千じゃきかない数なんですから。殴ってる途中で死なれちゃ困るんですし」
クーデター組3「死体じゃ殴る気にはなれないもんなぁ。最後の一人が殴るまで無理矢理でも生きていてもらわなきゃ」
豚2「き、貴様ら悪魔か!?」
カーウァイ「俺たちを悪魔にしたのは貴様らだろうがぁ!!」
豚2「グヘェ!?」
クーデター組1「だから大佐殴り過ぎですってばぁ!?」

なお拷問によって身ぐるみ全部はがされた後、広場に繋がれたまま放置されてリンチされた模様。


今週の投稿は以上です。

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