???「強力な兵器を開発したら数を作って投入する。当たり前の話じゃ」
無人の荒野を、鋼の獣が駆ける。
獅子をかたどったロボットたちが、わき目も降らずに走り続けていた。
それを追う巨大な人型が数機。
「どうだ?」
『相変わらずの一点張りですよ。”最優先命令を受けた”と』
「どこから受けたかすら教えてはくれんか」
『と言っても、あいつらに命令できる相手なんて限られてますがね』
基地にて待機中、突然起動し外へと飛び出したライガーゼロ達を追って、カーウァイ達は防衛ラインを大幅に超えてBETAの支配地域に深く踏み込んでいた。
『大佐、狼たちですが』
「やはり動きがあるか」
『今までになく派手に動いてますよ。重装型すら防衛ラインを超えて積極的に攻撃を仕掛けてます』
大口径レールガンやロケットランチャーなどを搭載した重武装型はコマンドウルフたちにとっても切り札に近い。実弾ゆえの人の手による整備・補給が必要なため、普段は基地の近くで待機しているそれが積極攻勢に出るなど普通ではない。
『大佐、基地より通信です』
「内容は?」
『その、帝国からの要請でデフコン2が発令されたと』
いよいよもってキナ臭い。
ゾイドシリーズへ強制的に命令できるとしたら帝国にいる開発者だけだ。ゼロ達への”最優先命令”もコマンドウルフたちの積極攻勢も恐らく帝国が指示したものだろう。
ならば、そこまでしなくてはならないこととはいったい…?
『大佐、前方に何かあります!』
部下の言葉に目を前に向ける。
遠くの方にわずかだが黒い何かがある、いや、いる。
ゼロ達もそれを目指していたようだ。
近づけば、その正体はすぐに分かった。
「ゾイドシリーズ、か?」
カーウァイ達も初めて見るタイプだ。
黒を基調としたカラーリングの、4足歩行型。
ボロボロゆえに分かり辛いが、おそらくモチーフはキツネ、だろう。
紫電を走らせる足を前後に投げだし、微塵も動く様子がない。
しかしゼロとカーウァイ達が近づけば、わずかに首をめぐらせた。
まだ機能停止しているわけではないらしい。
「ゾイドたちの一連の行動は、こいつを助けるためか?」
『自爆攻撃すらいとわない彼らが、そこまでして助ける理由っていったい?』
悩むのは一瞬、カーウァイはすぐに回収作業に入る。
このゾイドを後方まで連れて行けば、おのずとわかることだろうと考え――
――直後、警報ががなり立てる。
『大佐、BETAです!こちらに接近中!』
「数は!?いや、すぐにこいつを回収して下がる――」
『振動探知!地中侵攻を確認しました!?』
カーウァイは直感した。奴らは送り狼だと。
『レーダーが真っ赤です、計測不能!』
『振動解析から地中目標は母艦級と推定!3体は確実です!?』
だが多すぎる。たった一機の追撃に送り込む戦力ではない。
逆に言えば、それだけの何かをこのゾイドは持っているということだ。
「全機撤退準備。詳細は分からんが何としてもこいつを後方に――」
再度、警報。
しかしそれは、BETAの接近を知らせるものではない。
『コードATA、自爆警報!?一体どいつの――』
『しゃどーふぉっくす?そんなやつどこに――』
――全員の目が、回収しようとしていたゾイドに集まる。
「…お前の、名か?」
弱弱しくも一鳴き。
次いでそのゾイド、シャドーフォックスは頭部ハッチを展開する。
そこには、見た目は何の変哲もないコンテナが納められていた。
『もしかして、BETAの狙いはこのコンテナ?』
『だが、これの一体何に?』
その疑問は、シャドーフォックスからの通信によって解消された。
”甲一号目標偵察全記録、及びあ号目標との全通信記録”
全員の呼吸が、一瞬止まる。
そして納得する。これだけの大部隊が送られてくる理由を。
「…貴殿の任務、確かに引き継いだ。これは我々が何としても人類のもとに送り届ける」
カーウァイはそのコンテナをしっかりと受け取り、その言葉をシャドーフォックスにかけた。
その言葉に安心したのか、シャドーフォックスはそれきり動かなくなった。
同時に、自爆のカウントダウンが始まる。
「…総員、役目を果たし、人類の希望を守り抜いた戦士に敬礼!!」
亡霊たちが一糸乱れぬ敬礼を行い。
機械の獅子達が遠吠えを響かせる。
逡巡は一瞬、すぐに撤退にかかる。
戦士の挺身を無駄にしないために、彼が守り抜いた希望を、なんとしても持ち帰るために。
全力で撤退した10分後。
後方で、巨大な爆発が起きる。
追撃してきたBETAのど真ん中で起きたその爆発は、その足を一時止めさせるのに十分で。
カーウァイ達は、無事に防衛ラインを超えることに成功した。
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「状況は?」
『大規模BETA群の移動を感知しました。予想通りコンテナを追ってきています』
ようやく美沙の許可が出て地下研究所に戻れば、状況はかなり進展していた。
『最後のシャドーフォックスが自爆したのを確認。しかしコンテナは中国軍の部隊が回収、先ほど帝国軍駐屯地に持ち込まれました』
「そうか…」
一瞬目を瞑り、しかしすぐに動き出す。
出来れば黙とうを捧げてやりたいが、彼らがこの場にいればそんな時間があるなら己のやるべきことをしろ、と怒られる。
「コンテナは?」
『護衛付きでここに運ばれる予定です。既に輸送機が離陸準備に入っています』
出来ればシロガネ級に運ばせたいところだが、この後を考えればそんな無駄なことはやっていられない。
「届いたら香月に押し付けろ。こっちはこっちで忙しくなる」
『現場の戦力では足りない、と?事前に伝えて増強してあるはずですが?』
「念には念を、だ。現実は常に最悪の斜め上か下だ。備えられることは全部やっとかなくちゃな」
それこそ帝国侵攻クラスの戦力が来てもおかしくな――
『超重光線級の出現を確認しました』
「ほれみろやっぱり斜め下だ!」
とはいえ一体だけなら今の戦力でもなんとか――
『…超重光線級、計5体が出現しました』
「」
――いきなり本気出し過ぎだろう。
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『予想以上の過敏な反応だったようだな』
帝都城と繋いだ通信にて。
さすがに報告しないわけにはいかないので、いつものメンツに集まってもらった。
「最悪は帝国侵攻クラスだと見積もってたのに。ものの見事に予想の斜め上だ、嫌になる」
『事前に想定していて戦力を増強していたというのに、あっさりそれを上回られるとはな。特に超重光線級がマズイ。九郎、DGGは?』
「2号機と3号機は実戦テストまでこぎつけてる。1号機は操縦系の調整がまだ終わってない、出せる状態じゃないね」
『それでも対超重光線級を謳っている以上、やってもらわねばなるまい。クロガネはすでに進発してしまったが、ハガネがちょうど呉にいる。それに乗せて行ってもらう』
それしかないか。二人にはいきなり無茶をしてもらうことになるな。
『して、例の物は回収できたのか?』
「さっき研究所に運び込まれたよ。今は香月が解析してる」
『カシュガル偵察作戦、一応は成功と考えてよいようですな。骨を折った甲斐はあったようで』
鎧衣課長と榊総理にはずいぶん無茶を言ったからなぁ。
カシュガルハイヴ偵察は攻略作戦発動のための布石として行われた作戦だ。
超重光線級の登場で本当に各ハイヴに個性はないのか、と俺の主張に疑念が生じてしまったため、オルタネイティヴ4の情報収集にかこつけてこの疑念を払しょくするのが主目的だ。
その偵察作戦を成功させるために開発したのがZDL-S-02、シャドーフォックスだ。
BETAが量子波を利用していることが判明した時、これを遮断することによる対BETAステルスを思いついた。
捕獲したBETAで実験したところ有効であることも証明されたので対BETAステルス偵察機の研究も進めており、そうして出来上がったのがシャドーフォックスなのだ。
ただこいつの開発にはG元素、それもG-11だけでなくG-9や他のG元素も大量に必要としたため、オルタネイティヴ4としての強権の他に二人に無理を言って、アメリカなどG元素を保有している国や機関と交渉してもらったのだ。
そうして何とかトン単位で確保したG元素だが、それだけの量があっても4機、一個小隊の製造が限界だった。
多分ゾイドシリーズどころか、対BETA兵器では一番高価なのではないだろうか。
それだけのリソースを払って開発したのだがパッシブステルスではなくアクティブステルス、いわゆる電子的欺瞞に近い方法なため常時ステルス状態の維持はできず。いわゆる息継ぎ、インターバルを定期的に挟む必要があるのだが。
それでも地球初の対BETAステルス偵察機として、彼らにはカシュガルハイヴの偵察に出てもらった。
第一目標はハイヴ内のデータ収集。
第二目標はあ号標的、つまり重頭脳級への接触と情報収集、そして可能であれば自爆も視野に入れた暗殺。
第三目標は暗殺の成功・失敗に関わらず、収集したデータを持ち帰ること。そしてそれによるカシュガルハイヴの戦力釣り出しだ。
本来なら攻略作戦と同時にやるべきなのだが、超重光線級の存在を考えると軌道上に戦力を配置したとたんドカン、の可能性が高い。
なので攻略作戦に先駆けて本丸の間引きが必要となったのだ。
見事に彼らは仕事を完遂し、戦力の釣り出しに成功した。
…成功しすぎて頭抱える羽目になってしまったが。
帝国軍派遣部隊のみならず米軍、国連軍にも偵察作戦とそれにより起きる影響予想は伝えており、最悪帝国侵攻クラスの戦力に対処できるほどの準備が整えられていたんだが。
さすがに超重光線級5体は想定外の戦力だ。シロガネとクロガネがいるとはいえ真っ向からぶつかれば勝てても相当な被害が出る。
『攻略作戦を前にして余計な被害は出せん。DGGの調整は万全に頼む』
「またぶっつけ本番か。勘弁してほしいよほんと」
シロガネの時とは違ってきちんと組みあがってるのだけが救いか。
「アメリカの4号機は?あてにしていいの?」
『すでにヴァルキュリア級とともに進発したそうだ。想定される戦闘開始時間には間に合うだろう』
「となると、留守番は1号機だけか。叔父さんのことだから零式で出るだろうけど、どこまで食い下がれるか」
オリョクミンスクの時は多角攻撃ができるほどの味方が近くにいたから何とかなった。
だが今度はタイマンに近い状況になる。BETA共も零式を脅威目標としてマークしていてもおかしくない。
正直、1号機の完成まで待つべきだ。
…そう言っても待ってはくれないんだろうけど。
『最悪、ハガネの艦首特装砲で薙ぎ払うことも許可する。決戦時に対処される可能性は高くなるが、正面戦力をここで消耗するよりはましだろう』
確かにあれの威力ならラザフォード場なんぞ無理やりぶち抜いて周りの雑魚ごと消し飛ばせるだろうが…
「とりあえず了解した。2号機と3号機はハガネに移送する。ほかに回せる戦力は?」
『すでに最低限の戦力以外はすべて大陸組に編入されている。練成中の新兵を送るわけにもいくまいしな』
『教導隊を送る、のは無理か。母艦級対策で本土に残すのが決まってしまっている』
『帝国侵攻時のように試作部隊を送り込むのは?この一戦だけ持てばいいのだろう?』
「もともと整備性とコストがネックでお蔵入りしたやつばっかりだ。独自規格も多いから送り込んでも壊れりゃそれで終わり、現場での修理も難しい。弾も共用出来ないもの使ってる奴もあるしな」
『やはり、現場の者たちに頑張ってもらうほかないか』
これが後ろにいる俺たちにできる精いっぱいか。
せめて補給は途切れないようにして、あとは現場の人間を信じるしかない。
『物資の輸送、補給体制は万全に整えよ。これはまだ前哨戦にすぎぬのだ。失ってよい戦力など一人としてない。各々できることがあるならそれをやり切れ。よいな』
「『『『『御意』』』』」
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「やっぱり待てない?」
「ああ。ここにいても俺にできることはほぼない。ならばできることがある場所に行くべきだ」
予想通り、おじさんは零式で出ることを決めた。
せめてあと一日待ってくれれば1号機の調整が終わりそうなんだけど、それまで待てないそうだ。
「生きて帰ってきてよ。乗り手のいない機体完成させるなんて御免だからね」
「任せろ」
そう言って叔父さんは零式に乗り込む。
「博士、心配するな。私たちもいる」
「何としても人員だけは回収して見せましょう」
そう俺に声をかけてきたのは、DGGのパイロットたち。
一人は2号機のパイロットであるエルザム大佐。そしてもう一人は――。
「…最悪、機体はどうなってもいい。だから必ず生きて帰ってきてくれ、エルザム大佐。ラダビノット准将」
――パウル・ラダビノット准将。
原作オルタネイティヴにて、国連横浜基地の司令官を務めていた元インド軍の猛将。
この人が来た時にはびっくりしたもんだ。現場指揮官というよりは後方から指示を飛ばす戦域司令とかその手の人間だもの。
気になって本人に聞いてみたところ、原因は3号機の仕様にあった。
「単独での戦闘能力もさることながら、指揮能力も高い。それを最大限に生かすための人選です。心配はいりません、わたしもタイプS搭乗資格を得ておりますので」
実際3号機の能力を最大限に引き出しているのだから、インド軍の人選は間違ってなかった。
「無論、最悪の状況ではそうするとも。だが心配はいらない。君が作り上げたDGGと、私たちならばね」
「ですから博士はどっしり構えていてください。あなたが引っ張ってきた今までのすべてを信じて」
「…その言葉、
その言葉に一つ頷き、二人も自分の機体に乗り込む。
強き炎を宿して動き出す巨人たちに、俺は願う。
「頼んだぞ、2号機、3号機。
いや、
アウセンザイター、ヴァルシオン」
黒き騎士が。
赤い戦神が。
作り主と乗り手の思いを乗せて、ついに戦場に立つ。
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「九郎!!」
叔父さんたちを見送った俺に、大声で呼びかけながら近づいてくる奴がいた。
「なんだ白銀、これから1号機の調整しなきゃならねぇんだが?」
「何だじゃない!中国戦線でまた大規模な戦闘になるんだろ!?なら」
「7号機を出すってんなら無理だ。まだ完成してないって前にも言っただろ」
「けど!」
「そもそもお前らもT-LINKシステムを起動ラインまで持っていけてないだろ。そんな状態で完成なぞ無理だ。分かったらシミュレーターで練習でもしてろ」
そう言い残して俺はその場を離れる。
…白銀も鑑もまだ徴兵年齢にも達していない。あのコンビの技量がすでに並みのスーパーエースを超えるレベルに達していても、戦場に出さねばならない必然性はない。
どんなに本人たちが望んでいても、だ。
…それに、未完成なのも事実だ。
DGG7号機は完成すればその性能はそれこそ単独で星の1つや2つ簡単に破壊できる決戦兵器級の化け物だが、それだけの性能を発揮するためには乗り手に極めて高い念動力を要求する。
あの二人ならばいずれその領域に踏み込むかもしれないが、それは今ではない。最低でもあと数年はかかるはずだ。
完成させるために必要なパーツは
俺が失敗した時の保険として、あいつらにはまだ生きていてもらわなくちゃならないのだ。
人類最後の希望として。
「そんな時が来ないことを、願ってはいるんだがな」
英雄の末路はいつだって悲惨なものだ。
あいつらはもう十分それを味わったのだ、いい加減普通の幸せを享受してもいいだろう。
「英雄の末路は俺が贖罪ついでに引き受けてやる。だから戦士なんぞ諦めて幸せになれ、白銀」
地獄に逝くのは、俺一人で十分なのだから。
なお伊達くんは直談判に行く前に相方に拳骨もらいました。
”歩くこともできない機体を出させてもらえるはずないだろう!!”とこっぴどく怒られた模様。
〇除け者
九郎「やっぱり中国やソ連にも偵察の件、きちんと伝えるべきじゃないのか?」
将軍「そうしたいのはやまやまだが、指導者層があまりにも俗物すぎる連中でな、ことが起きた時に全部ほっぽり出して逃げ出しかねん」
榊「逃げ出せない状況に引きずり込まないと腹をくくってくれないんだ。機密性を保つために現場にも話せない」
九郎「…せめて補給物資は潤沢に送っとかないと。後々に響くよこういうのは」
将軍「分かっておる。向こうには何かしらの件で譲歩することで穴埋めせねばな」
榊「何、現場に迷惑かけないよう手綱はしっかりアメリカや欧州と協力して握っておくさ。ゾイドシリーズに食料含めた各種物資、こちらに大きく出れる要素など何もない有様なのだからね」
○ZDL-S-02 シャドーフォックス
地球初の対BETAステルス偵察機として開発されたゾイドシリーズ。
BETAの持つ量子観測能力を欺瞞する”クオンタム・ジャマー”を搭載することでBETAに対しほぼ完全なステルス能力を得た機体である。
しかしクオンタム・ジャマーはアクティブステルスに近いシステムなため消費エネルギー量の観点から常時稼働させられず、また有人機に搭載した場合無人機よりも解除状態時に狙われやすくなるという理由から無人偵察機となった。
そのコンセプトから戦闘能力よりも機動性及び情報収集のためのセンサー性能に重点が置かれており、その身軽さは陸上型ゾイドシリーズで最も高い。
またステルス性能追及の副産物として対人ステルス能力も獲得している。
武装は両前足のストライクビームクロー、背部ビームガトリング。
またオリジナルとの差異としてスモークディスチャージャーには量子波をかく乱する物質が詰め込まれている。
甲一号、カシュガルハイヴ偵察のため4機が製造され投入、全機損失するもコンテナを持ち帰り目標を達成した。
レーザー兵器はBETAを連想するとして嫌がられるんじゃないかと思って名称変更。見た目や性能的にはあまり変わりませんが。
そもそもオリジナルの徹甲レーザーって何なんでしょうか。〇ッズライフルみたく回転でも与えてるんだろうか…?
今週の更新は以上です。