MUV-LUV大戦   作:土井中32

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今月のイベントをプレイしての感想。
ハジケすぎだろネクストニンジャ…!
まさかここまでハジケたネタまみれで来るとは…!

前回ちょっと失敗しました。
楽曲コード設定すると反転表示不可になるの忘れてた…。
シナリオにほぼ影響ないのでこのままいきますが、どうしても気になる方はここスキ等で探してみてください。




76話 蹂躙と鍛冶師の苦悩

 

それはまさしく、一方的な蹂躙だった。

最初にそれを受けたのは、最後方にいたデカブツ。その片割れ。

 

『来て!』

『グラビトンライフル!』

 

再びの緑光とともに現れたライフルを装備し、躊躇なく真っ黒な光が放たれた。

狙われた超重光線級はラザフォード場で防御し、派手に吹っ飛んだ。

足が地から離れ、数百メートル単位で。

落っこちた際の衝撃が地を揺らすが、そんなものに構ってられない。

あの大質量をあれだけ飛ばすとか、あのなりでどれだけのエネルギーを放ったのか。

だが当人たちはぶっ飛ばした方には見向きもせず、残った方に一気に突っ込んでいく。

速い。瞬きする間にもう懐に潜り込んでいる。

そして背中に背負っていた2本の長刀、その片方を左手で引き抜き。

 

『T-LINKブレード、アクティブ!念動フィールド憑依確認!』

『切り裂け、次元ごとォッ!!』

 

正面から、真っ二つに叩き切った。

…嘘だろ?俺たちが決死の想いで何とかしようとしてたヤツ、その片割れがこんなにあっさり?

しかもまだ止まる気はないらしい。切り捨てた体勢のままさらに加速、さっきぶっ飛ばしたもう一体に肉薄する。

ぶっ飛ばされた方はかろうじて防御はできたようだが、ダメージが深刻なようでズタボロ。動きも鈍い。

それでも手を抜く気はないらしい。右手に持っていたデカいライフルが緑色に光り輝く。

 

『念動フィールドによる砲身の保護完了!いけるよ!』

『さっきの10倍だ、消し飛べェ!!』

 

本当に直径が最初の10倍はありそうな黒い砲撃がぶち込まれ、足だけを残して超重光線級が消失する。

…とんでもねぇデウス・エクス・マキナだ。もう帰って寝たい気分になってきた。

 

『…ハッ!?全員しっかりしろ!最大の障害はなくなったがまだBETA群が残っているんだぞ!』

 

テンペスト少佐の叱咤に我に返る。そうだ、まだやること残ってるじゃねえか。

 

「総員フォーメーション変更、迎撃態勢をととのえ」

『スライダーパージ!』

 

あ、ダメそう。

 

『ブレードオープン、突撃ィ!』

 

凄乃皇、と名乗った機体からいくつもの羽のようなパーツが外れ、展開。プロペラのような形態になって回転しながらBETA群に襲いかかる。

どうも中央部にビーム砲が搭載されているらしく、斬撃と銃撃で片っ端から血祭りにあげている。

よっぽど脅威に感じたのだろう、BETA共は俺たちそっちのけで凄乃皇に群がっている。近づくそばから細切れにされているが。

 

『目標、念動捕捉…』

 

まだ何かあるのか(白目)。

 

『BETA群、捕捉完了!いつでもいいよ!』

『悪意よ去れェッ!!サ・イ・コォッブラスタァァァァァァア!!』

 

凄乃皇から立ち上った赤い光が渦を巻き、群がっていたBETAを薙ぎ払っていく。

一体どういう理屈なのか、あの渦巻の影響を受けているのはBETAだけだ。こっちはそよ風すら感じてない。

それが収まった後に、俺たちのやることは何も残っていなかった。

 

『BETA群、全滅を確認…。何なんだ、あれは?』

 

俺が知りてぇよ。

ただ、オープンチャンネルに乗っていた声には聞き覚えがあった。

 

「HQ、多分アッシュ、稲郷博士の隠し玉だ」

『…………そうか、それならしょうがないな』

 

あ、向こうも諦めた。

とりあえず、向こうとコンタクトを…って!?

 

「おい、どうした!?」

『シュヴァルツ8、どうした!?報告は簡潔に述べよ!』

 

それどころじゃねぇ!

最後の一撃ぶっ放した場所で膝ついて停止してるじゃねえか!!

繋がったままのオープンチャンネルで呼びかけつつ、急いで駆け付ける。

外観に異常はないが、至近距離ならデータリンクで衛士のバイタルが見れるはず…!

 

『あ、あが~』

『はらほらひりはれ~』

 

…繋いだデータリンクでコックピットを確認すれば、見覚えのあるガキどもが目を回しているのが確認できた。

バイタルの方も問題はないようだ。

 

「HQ、こちらシュヴァルツ8。隠し玉の衛士は現在気絶中。それ以外に目立った異常はなし」

『HQ了解。たった今日本帝国と連絡が取れた。回収班が向かっているのでそれまで”誰も”近寄らせないでくれ、とのことだ。どうも建造中だったDGGシリーズらしい』

「納得した。了解、”誰も”近寄らせない」

 

一騎当千のモンスターマシンなら納得だ。モンスターすぎて引くが。

しかし”誰も”の部分を強調したってことは、身内すら近づけるわけにはいかないってことか。やっぱり現れた時のあれは見間違いじゃないらしい。

 

「あいつのことだから良からぬことに使う気はないんだろうが、それでも荒れちまうんだろうな」

 

毎度毎度世界を引っ掻き回す奴だ。だがまあ、今回もあいつのおかげで命拾いしたんだ、せめてこいつらが無事に帰れるよう出来ることはしてやろう。

 

「…10分の1の性能でいいから、こいつ量産してくれねぇかな?」

 

 

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空気が重い。

その原因は俺なんだが、それでもやっぱり重い。

 

俺専用の研究室。そこにいるのは現在4人だけ。

俺、部屋の端で控える美沙、そして今回やらかした白銀と鑑(特急便で帰ってきた)が床に正座している。

二人の前で仁王立ちしながら考えていた。どうしよう、と。

 

「お、怒ってる、よな。勝手に飛び出したから」

「結果だけを見ればそれで正解だったし、最終的に送り出す決断したのは俺だ。責任はお前じゃなくて俺にある」

「それは!」

「最終的に責任取るのはいつだって上の人間なんだよ。この場合はお前らの監督役である俺が責任取るのが筋なんだ。まさか未成年が責任取れるとでも思ってたのか?」

 

白銀が反論できず俯く。

…自分がやったこと(第39話参照)は棚上げで説教とか勘弁してほしい。切実に。

 

「まあ今回に限って言えば、超重光線級2体から欧州・北欧連合軍を守って10万ものBETA群無傷でぶっ飛ばしたんだから、何とかその功と相殺で厳重注意で済むとは思うが」

 

ぱあっと笑う二人に、俺もにこやかに笑いかける。

 

にっこりと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だからってやっていいことと悪いことあるんじゃボケェーーーー!!!!」

「「アガァーーーーーーー!!?」」

 

二人のほっぺを掴んでねじり上げる。ほんと何してくれるんだこいつら。

 

「普通に、ふ・つ・う・に!空飛んでっても十分間に合っただろうが!!なにXNディメンションによる空間転移なんて超ド級のトンデモ現象起こしてくれてんだこの馬鹿どもーーー!!!」

「「アベベヴァヴェヴェヴェヴェヴェーーー!?」」

 

なんか言ってるが知らん。ちょっと気が収まらない。

 

「分かってんのかてめぇら!?もう一生外歩けなくなったんだぞ!!(おもて)歩こうもんなら5秒で取っ捕まって人体実験コースだバカヤローー!!」

「「モゲッゲゲゲゲゲーーーー!!」」

「荒れておりますなぁ」

「二人の未来に関することですから、致し方ないかと」

 

いつの間にか鎧衣のおっさんが増えてる。いつ入ってきた。

 

「博士が二人の頬をねじり上げたところからですな」

「ノックぐらいは…しても気づかねぇか」

 

どうせ勝手に入ってくるんだろうが。

とりあえず二人へのお仕置きを一旦中止する。それよりこっちの方が重要だ。

 

「で、どんな状況?」

「上から下まで大騒ぎですよ。あらゆる国、勢力、組織から”あれは一体何だ!?”と問い合わせが殺到しております。まあ当然ですな」

「政府の状況は?」

「現在調査中と言い張っておりますが、きちんと説明せねば収まらないでしょうなぁ。あと榊総理の胃にまた穴が開いたそうで」

「胃薬送っとくよ。”裏”の方は?」

「情報省総出の厳戒態勢で固めておりますが、焦れた連中がいつ強硬策に出てもおかしくない状況です。事ここに至っては損切覚悟であの技術を公開するしか」

 

「ないよ」

 

鎧衣課長が、いつもの胡散臭い顔で固まる。

 

「……ない、とは?」

「空間転移、正式名称XNディメンションは構想こそしてたけど、まだ技術として確立できてない。だからDGGー07にもそれに関する機能は搭載してないんだ」

 

それがつまりどういうことか、察した鎧衣課長の顔が引きつった。

 

「…つまり、あれは」

「そこの馬鹿どもが、正真正銘自分たちの力だけで空間転移を成功させちまったんだよ。念動力の増幅こそあれ機械的な補助なしで、な」

 

だからこそ厄介なのだ。

 

「ええと、ごめん。当事者なのに何が何だかさっぱりわかってないんだ。説明してもらっていいか?」

 

白銀の言葉に一つため息を吐き、頭を整理する意味も込めて懇切丁寧に説明することにする。

 

「まずT-LINKシステムと念動力の行きつく先の一つとして、空間を切り裂いて無理やり繋げる空間転移方法、XNディメンションあるいは次元斬と呼ばれる方法があることは例の技術情報で知っていた」

 

OG世界では技術的にもパイロットの念動力的にもまだそこまで到達していないが、他の世界を知る身としてはそこに到達できる可能性があることは知っていた。

とはいえ、未だT-LINKシステムすら完全にモノにできていない状況でその先なんて目指せるはずもなく。

研究としてはほぼお蔵入りになっていた。

 

「当然のことながら机上の空論程度の技術を突っ込むわけにもいかないから、DGGー07、いや今は凄乃皇・終式か?あれにも空間に干渉するような機能はつけなかった」

 

 

DGGー07 凄乃皇・終式

 

設計ベースはエグゼクスバイン。

OG世界においては一騎当千を目的として建造された機体であり、リアルロボットサイズのスーパーロボット、とでも言うべき超兵器だ。

外観的な差異は頭部形状の変更(バイザー排除とV字アンテナの増設)と背中のストライクシールド・T-LINKセイバーの非搭載だろう。

パイロットである白銀の戦闘スタイルとして盾をほぼ使わず、また基本片手で振り回すのにセイバーではちょっと大きすぎるということで、背面装備を日本刀型のT-LINKブレード2本に変更。兵装担架で背中に下げている。

それに合わせてストライクシールド装備部分には代わりにハードポイントを設置。大型の武装やライフルなどを持っていけるようになっている。

 

頭部はバイザーを排除しV字アンテナ増設でよりヒュッケバインに近い形になった。

動力炉はメインのTTDにサブとしてブラックホールエンジンを搭載。

テスラドライブは第三世代型2基によるツインドライブシステムを採用。巡行状態ならほぼ推進剤なしで恒星間航行すら可能だ。

専用武装は重力衝撃波を撃ち出すグラビトンライフル。ただし出力が桁違いに高いため威力をそのままにマシンガンじみた連射・チャージしてデカい一発(軽く書いてるが連射モードでも一発一発が都市破壊級)が可能という超兵器と化している。

また内蔵武装として敵味方識別型先制広域攻撃兵器サイコブラスターを搭載。本家はIFF(敵味方識別装置)で攻撃対象を選んでいたが、こちらはT-LINKセンサーで目標を識別している。そしてジェネレーターが桁違いに強力なので効果範囲も本家を遥かに上回る。敵だけを消し飛ばす核ミサイルとかどんな悪夢だろうか。作ったの俺だけど。

後は両手首にロシュセイバーを仕込んでいるくらいか。

 

防御面に関してもDGGシリーズ共通のビーム吸収システム、放熱装甲に加えてGテリトリーやブレイクフィールドも展開可能。装甲そのものも高純度のゾル・オリハルコニウムによる再生機能付きで、多少の損傷は即座に修復可能だ。

ここまでくるともう戦術機サイズの要塞だな。

…正直、ちょっとやりすぎたとは思ってる。反省する気はないが。

 

素体が素体だし、重力が空間に影響を与える関係で空間振動センサーの類はあるが、こちらから意図的に干渉するような機能はついていない。

その状態で空間転移をやってのけたとなると、答えは一つだ。

 

「アカシックレコードに干渉したな」

「抽象的になるけど、何かを書き換えたのは自覚してる。何を書き換えたのかはわかんないけど」

「私も何かに触れたのは覚えてるんだけど、具体的なところはさっぱり…」

「今の二人のTPレベルはアレに乗る前より上がったが観測可能な範囲で安定してる。恐らくサイコドライバーの領域に踏み込まないと観測どころか認識すらできないんだろう。正直そんなポンポン踏み込んでいい領域じゃないんだが」

 

アカシックレコード。

 

運命、とでも言おうか。何人も逃れられないさだめ。サイコドライバーはそれに干渉して捻じ曲げることができるという。

ツインコンタクトによって一時的にその領域に足を突っ込んだ白銀たちは、アカシックレコードに干渉。XNディメンションが可能だと世界を一時的に改変した。そうして次元斬を成功させたのだ。

実際、超重光線級との戦闘でも長刀でラザフォード場ごとぶった切った際に空間異常が観測されている。恐らく空間ごとぶった切る防御不能の攻撃をお見舞いしたのだ。

 

…では、それの何が問題なのか。

 

「どこにでもすぐに駆け付けられるって、いいことなんじゃないの?」

「それが問題なんだ。今のお前らが外の連中にどう思われてるか教えてやろうか?対処不可能な核爆弾だよ」

「「ええ…?」」

 

ええ?じゃないのだ。攻撃に転用できたということは制御ができているということで。

そして精度の高い空間転移は、それだけで戦略級の核爆弾だ。

 

「極端な話、敵国の首都に核爆弾転移させれば戦争に勝てちまう。あらゆる勢力がそう思ったからこそ、この大騒ぎなんだよ」

「対抗手段を得なければいつ自国の首都を吹っ飛ばされるか気が気ではないでしょうから。下手をすると帝国以外の全ての勢力が団結して襲ってきかねません」

 

交渉の余地なんてない。今すぐ技術を差し出さねばせっかく纏まった世界がまた散り散りに分かたれてしまう。

が、差し出すべきその技術はない。個人的資質に関わる再現方法不明のもはや超能力の(たぐい)だからだ。

 

「素直にゲロって、納得してくれるわけないよなあ?」

「表面上はともかく、裏側の緊張状態は解けないでしょうな」

 

二人が凄乃皇に乗りツインコンタクトして初めて、サイコドライバーの領域に足を突っ込めるのだ。逆に言えばその状況さえ封じられれば煮るなり焼くなり好きにできる。

つまり、下手を打てば白銀と鑑はホルマリン漬けが可愛く見える阿鼻叫喚の地獄絵図に放り込まれることになる。

BETAに取っ捕まった時とどっちがましか、そんな目に。

それだけは絶対に避けなければならない。

 

「技術としての確立にどれほどかかりますか?」

「年単位は確実だよ。今回の件でデータが取れたとはいえ、発動にバカ高い念動力が必要なのは変わりがない。つまり念動力増幅装置としてのT-LINKシステムの性能が向上しなくては、こいつら以外での再現が不可能だ」

「…世界中で念動力者の誘拐・拉致が横行しそうですなあ」

「一体いくつホルマリン漬けの脳みそが量産されるか分かったもんじゃないな」

 

ようやく事態の把握ができたのか、白銀と鑑の顔が真っ青になっている。

 

「ご、ごめん。俺たちのせいでそんなことに」

「人助けしたこと自体は悪いことじゃない。むしろお前らのおかげで大勢の命が助かったんだ、そこは誇っていい」

 

移動手段は選んでほしかったが。

 

「とはいえ、”ない”では済まされません。何とか状況をコントロールせねば」

「代替手段としての空間転移技術に関しては当てがなくもないが、やっぱり実用化には時間がかかる。今すぐは無理。となれば」

「凄乃皇の封印、の方向で動かざるを得ませんか」

「そんな!?」

 

白銀が叫びをあげるが、こればっかりはどうしようもない。

そうしなきゃこいつらは一生軟禁生活だ。むしろこれでもまだ足りないかもしれない。

 

「運用には国連常任理事国全ての許可が必要、てのが落としどころか?」

「そのあたりで収まれば万々歳、というところでしょう」

 

人の手には余りにも過ぎた力だ。もっと追い詰められていたならともかく、今の段階では火種にしかならない。

原作よりも余裕があることが、こんな形で裏目に出るとは。

 

「待ってくれ、せめてあと一戦だけ許可を」

「カシュガル戦への参加って話ならだめだ」

 

言い出すとは思っていたが駄目だ。

 

「今回はあくまで緊急避難、他に手がないから許した。だがお前たちが未だ軍人でない以上、次を認める気はない。それ以前にこれ以上、アレの稼働を他の勢力が認めるはずがない」

 

正直な話今すぐ解体しろ、あるいは一切合切まとめて引き渡せという要求が飛んできてもおかしくないのだ。

 

「心配すんな、お前らに頼らなくても人類は勝てる。それだけの底力はちゃんとあ」

「そうじゃない!!」

 

白銀の叫びが部屋に響く。

 

「俺たちが、俺たちの手でケリをつけたいんだ。あの世界で俺たちが抱えた無念を、後悔をこの世界に持ち込まないために」

「…厳密に言えばお前たちじゃないし、わざわざ背負う必要もないはずだ。それでも背負うってのか?」

「その記憶も含めて、今の俺たちなんだ。そうなる可能性があると知ってしまった以上、もう他人事じゃない。並行世界とか過去とか未来とか、戦う力があるとかないとかそんなの関係ない。守りたいもののために、俺たちは戦いたいんだ」

 

俺と白銀の目が、真っ向からぶつかり合う。

 

「…どのみち、凄乃皇は解体する」

「九郎!」

「あんな無茶な組み立てして、何の不具合もないわけないだろう。一度ばらしてオーバーホールだ。封印するかどうかはどのみち俺一人では判断できねぇ。将軍様たち、さらに国連にも相談しなきゃならないだろう。その間にもっかい考えろ、自分達が行くべき道を」

 

そう言い捨てて、俺は白銀たちを部屋から追い出した。

 

「将軍様には俺から説明する。予定組んでくれ」

「調整がつき次第ご連絡します。まあ今日明日なのは間違いないですが」

 

そう言って鎧衣課長も出て行った。

 

「九郎」

「悪い美沙、ちょっと胸貸してくれ」

 

そう言って俺は美沙の胸に頭を突っ込む。

 

「…俺の、俺がやってきたことは余計なお世話だったのかな?」

 

眼を背けたくなるような地獄を戦い抜いたあいつらに、もうこれ以上苦しんでほしくなくて。

英雄に、勇者に頼らなくたって星の一つや二つ救えるんだって信じて、今までやってきたのに。

結局、最後の最後で彼らに頼ってしまった。

あいつらは、戦う覚悟をちゃんと決めていたのに。世界を変えられる力をちゃんと持っていたのに。

俺がいなくても、あいつらなら原作のように、いや経験がある分もっといい形で世界を救えていたのではないだろうか?

俺はあいつらをまだ子供だと決めつけて、世界が救われる邪魔をしていただけだったのではないだろうか?

 

「それは違います」

 

美沙が優しく、俺を抱え込む。

 

「勇者だけが、戦っているのではありません。全てを勇者任せにしていいわけがありません。あなたは勇者たちが無事に帰ってこられるよう最高の剣を、盾を、鎧を打ち上げました。そして一人でも多くの戦士が共に戦えるようにと、強力な武器を作り上げました」

 

俺に言い聞かせるように。優しく美沙は言葉を続ける。

 

「彼らが大切なものを守れるほど強くなれたのは、間違いなくあなたがいたからです。だから、自分を責めないで。どうか闇だけでなく、光にも目を向けてください。あなたがいたからこそ救われた命があることを忘れないでください。

 

少なくともここに一人、あなたに救われた人間がいるのですから」

「……ん」

 

 





○神様にだってできないことはある

鎧衣「サイコドライバーが神に近い存在ということは聞いておりましたが、実際どこまで可能なんです?」
九郎「おおよそ超能力と呼ばれるような力は大体使えて、それを最低でも㎞単位で周囲に影響を及ぼせる、てのが大雑把な指標だな。やろうと思えば物理法則への干渉すらできる。本人への負担がでかいんで限界はあるが」
鎧衣「あの二人に関してはどうなのです?」
九郎「普段の力はちょっとカンが鋭い程度に収まってるし、凄乃皇に乗った上でツインコンタクトしてようやくだから、そこまで強力な力は行使できない。本人たちの体力的にも時間制限がつくし、不可逆な影響が出るようなことはできないだろうな」
鎧衣「では、サイコドライバーである間に誰かを洗脳したり、肉体に不可逆な改造を施したりということは?」
九郎「サイコドライバーである間なら可能性はあるが、そういった干渉はかなり負担がでかいからな。あの二人の場合だと凄乃皇から降りたとたんに元に戻るんじゃないか?」
鎧衣「なるほど。つまりサイコドライバーになっている間に自分を絶倫に改造する、などということは無理ということですな」
白銀「いきなり何を言い出すんだアンタ!?」
九郎「ああ、確かにこいつには必要だよな。この先最低でも7人は娶るし、たぶんもっと増えるし。でもそっち方面からのアプローチはたぶん無理だな。そもそも鑑と息を合わせないとできないから鑑の協力を得ないことには」
白銀「クソ真面目に何考察してんだ九郎!?」
九郎「そもそも必要か?既に皇室と武家に伝わる秘伝に基づいた食生活と薬学での体質改善始まってるじゃねェか」
白銀「初・耳・な・ん・だ・け・ど!?」
鎧衣「長い帝国の歴史できちんと効果が保証されておりますが、アプローチの手段は多いにこしたことはないでしょう?特に娘のような息子が嫁ぐ相手ですから、ちゃんと孫を見せてもらうためにもこの鎧衣左近、できることは何でもする覚悟が」
白銀「まず説明責任果たしやがれェ!!?」


せっかくの連休なのでもう一話頑張ります。
次話は明日投稿予定です。

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