おそらく最後になる閑話です。
前回からそんなに経ってないのにもう80万回越えてる…。
最終決戦前の最後の準備、決行までの10日間の各地の様子です。
○俺たちだって作りたい
ゾイドシリーズ量産1号機、コマンドウルフは優秀な無人機である。
生産性、地形走破能力、汎用性をバランスよく備え、更には高度な連携能力も備えることで額面の数以上の戦闘力を発揮した。
しかし、運用を続けることで問題点も浮上した。
バランスが取れているとはいえ量産性が重要視されたため、通常モデルの武装ではBETA大型種への対抗が難しかったのだ。
要撃級や突撃級ならば1対1であれば勝つのは難しくないものの、要塞級ともなれば最低でも10体以上による集中攻撃が必要。
しかし大抵他の種も同時に相手取る必要があるためそこまでの戦力集中ができず、結果として全体的に押されてしまうということが少なくない数発生した。
そういった大物相手としてレールガン(識別のため全体的にダーク系の塗装がされ前足のみ赤くなっている)やロケット砲を装備した重武装モデル(背部に4連大型ロケット砲、前足に戦闘ヘリから流用したロケットランチャーを装備。頭部にセンサーガードが追加されている)が存在するものの、実弾系であるがゆえに継戦能力に難があり、また人の手による整備・補給が必要なことで行動範囲もあまり広くないという問題があった。
かといってコマンドウルフのゾイドコア出力ではこれ以上の大型光学兵装の搭載は難しく。また予定よりも前倒しで実戦投入することが決められたので早急に数を揃える必要があり、生産性を高めるため最初から性能を決め打ちで設計。結果として内部容量をほぼ使い切っていて武装の変更はともかく本体の改良は難しい。
大型種とも戦える高火力、加えてコマンドウルフに追随できる機動性と継戦能力を備える新たなゾイドシリーズ。
得られた実戦データから早急に必要とされたものの、日本帝国はそれに着手できない状況にあった。
単純な話、リソース不足である。
今も前線で消費され続ける関係上コマンドウルフの量産だけで手いっぱいで、とても生産ラインの増設ができる状況ではなかったのだ。
そこで白羽の矢が立ったのがカナダにあるゾイドコア国際研究機関、通称Zi(ズィー)研である。
ゾイドコアによる放射線除去及びテラフォーミングの研究を行っているZi研には小規模だがゾイドシリーズを製造する設備(AIは日本帝国でしか作れず、また正規品のAIでなければゾイドコアとマッチングせず起動しないので無人機として成立しない)があり、それを利用して新型を開発することとなったのだ。
Zi研の開発チームが立てた方向性は二つ。
一つはコマンドウルフの設計を極力流用した、量産性と拡張性にもある程度配慮した性能向上型。
もう一つは性能のみを求めた完全独自規格機である。
日本帝国から合流したゾイド開発チームの手を借りつつ、短い期間でありながらどちらも最終決戦前に稼働試験へとこぎつけていた。
地球戦線最終作戦”G案”では第1フェイズをゾイドシリーズが務めることになっているが、欧州側ではゾイドシリーズが展開していなかったため運用ノウハウがなく、そちらの援護として急遽実戦投入されることとなった。
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欧州、ロッテルダム港。
ヨーロッパ最大ともいわれる港であり、現在は後方国家から運ばれてくる軍事物資などを受け入れる欧州連合最大の軍港でもある。
水陸両用コンテナ船の登場により直接前線基地へと乗り付けることができるようになったものの、全体で見ればまだまだ通常の船が主流であり今日も港は喧騒に包まれていた。
『おい、このコンテナどこに運べばいいんだ!?』
「11番の発着口に止まってるトラックだ!10分後に出るぞ早くしろ!!」
「コンテナが、コンテナが足らんのです…!」
『15番のトラック積み荷が多いぞ誰だ積んだの!?』
「こんなところにコンテナ置くな邪魔だ!!」
『バカ野郎足でどけるな爆弾入ってんだぞそれェ!?』
『ギャアアア積み忘れが転がってるううゥゥゥ!!?』
「」
「中尉!?しっかりしてください中尉!!誰か、中尉が倒れた!」
『叩・き・起・こ・せ!!海に放り込んでも構わん!!』
「おい次の船来たぞ早くしろ!…あれ、積んでるのコンテナじゃない?」
人間からフォークリフト、トラック、スコープドッグにF-4まで。ありとあらゆる物資移動手段が港の中を右往左往している。彼らにとってはまさに今が最終決戦。
G案発動を前に、各地からピストン輸送で莫大な物資が運ばれてきており兵站担当の者たちが殺気立つ中、一隻のコンテナ船が入港してきた。
本来なら物資の入ったコンテナを満載しているべき場所には巨大な何かを隠すようにシートが掛けられており、港には接岸せず水陸両用コンテナ船が陸地深くまで侵入していくための整備された上陸地点に停止する。
そこで初めてシートが外され、載せられていたものを見た者は誰もが度肝を抜かれた。
何せ乗っていたのは――
「デッカ!おいなんだあれ!?」
『…サイ?』
「バッカ恐竜だろ恐竜!ロボットだけど!」
『…あー、今確認が取れた。ゾイドシリーズだとよ』
「デカすぎだろ!?狼共の何倍あるんだあれ!」
――100メートルを超える、巨大なトリケラトプスだったからだ。
ZDLーXLー03 マッドサンダー
Zi研によって開発された、超ド級重陸戦要塞型ゾイドである。
サイズ別のゾイドコアの性能及び効率の比較検証用として製造された超大型ゾイドコアを流用し、ゾイドシリーズにも要塞級以上の超大型種への対抗手段を、というコンセプトで作られた。
圧倒的な防御力と遠近問わない攻撃能力を持ち、尚且つ継戦能力に難があった重装型コマンドウルフへの補給能力すら備えた、文字通りの移動要塞型ゾイドだ。
そして100メートルを超える巨体でありながら、テスラドライブの搭載により見た目に似合わぬ軽快な運動性を持ち、巡航速度は180キロとコマンドウルフに十分ついて行けるだけの行軍速度を保持していた。
コンテナ船からジャンプして地上に降り立ったマッドサンダーは、既に受領していた指令に則り移動を開始する。
彼の担当は甲4号、ヴェリスクハイヴ。
次の便で輸送されてくるZi研製量産試作機たちや何とか帝国が捻出したコマンドウルフたちとともにG案フェイズ1、ハイヴからの戦力釣り出しを担当する。
最低でも母艦級か超重光線級1体を道連れにする方法をシミュレートしながら、彼は戦場へとひた走った。
『…あ、ついでに積み忘れのコンテナ持って行ってもらえばよかった』
『「「ああっ!?確かに!!」」』
『バカ言ってないで仕事に戻れ!!弾足りなくて作戦失敗なんて笑い話にもならんぞ!!?』
○ZDLーXLー03 マッドサンダー
Zi研にて開発された超ド級重陸戦要塞型ゾイド。
要塞級以上の超大型種との戦闘を想定して開発されており、巡洋艦に迫る巨体に頑強な重装甲とビーム吸収システム、Eフィールドによる圧倒的な防御力。背部に装備するシロガネ級の副砲を移植した連装衝撃砲に大口径連装ビーム砲、各所に設置されたビームガトリング、そして頭部の決戦兵装二連大型電磁ドリル”マグネーザー”とその下部に一本の巨大衝角”サンダーホーン”を備え距離を問わない高い攻撃力を有している。
また艦船用テスラドライブの搭載によりその巨体に似合わぬ軽快な機動性も備え、やろうと思えばジャンプができるほどである。
その質量と機動性、防御力と正面に対する攻撃能力を全力でぶつける突進攻撃(開発陣曰くボルテックスチャージ)は理論上超重光線級の全力防御すら真っ向から貫き、そのまま串刺しにできるとされている。
またマグネーザーは回転にレールガンの技術が応用されており、突き刺した後電撃を内部に流し込んで内側から焼き殺すことが可能である。
その巨体ゆえに物資を積み込む余裕すらあったため、重装型コマンドウルフへの簡易補給設備を内蔵。彼らの行動半径を広げるのにも一役買っている。
3機が製造され、G案フェイズ1の担当として全機が欧州戦線へ投入された。
これはゾイドシリーズの運用ノウハウがない欧州戦線において少しでも現場の負担を減らすためである。
現場では恐竜要塞(ダイナフォートレス)の愛称がつけられた。
○ZDLー04a シールドライガー
Zi研製量産型ゾイドの試作機その1。
コマンドウルフの設計にライガーゼロのデータを加えて開発された高性能モデルである。
機体そのものを大型化することで内部容積を確保し、コマンドウルフと同型のゾイドコアを2基搭載している。
これにより出力に大幅な余裕が生まれ、より大型且つ大出力の武装が搭載できるようになった。
オリジナルとの違いはミサイルをオミットし背面に大型連装ビーム砲(シュッツバルトのアレ。軽量化が施されたモデル)、尻尾の先にビームバルカンを搭載していることであり、構成としてはMk-ⅡやDCSに近い。
しかし大型連装ビーム砲は長射程ながらも軽量で砲身が短いため邪魔になりにくく、格闘性能も良好。
また前足はゼロやシャドーフォックスと同系のストライクビームクローに変更されている。
頭部には名前の由来であるEシールドを装備。状況によっては味方の盾となることも想定されている。
最高速度も250キロとコマンドウルフを上回り、走攻守が高次元で纏まった傑作機となった。
唯一の問題はコストだが、コマンドウルフのパーツを極力流用することである程度抑えることに成功している。
稼働試験前に欧州戦線への投入が決定、急遽増産され30機ほどが最終決戦に投入された。
○ZDLー04b ブレードライガー
Zi研製量産型ゾイドの試作機その2。
シールドライガーと同じフレーム・内部機器を使っているが、バランス型であったシールドライガーと違いこちらはより格闘性能を求めたモデルである。
背面には最高速度を底上げするために大出力アークスラスターを搭載。最高速度を315キロまで高めている。
最大の特徴は機体横に展開される大出力ビームブレード。
実体剣部分から発振されるビームはロシュセイバーから流用されており、要塞級すら真っ向両断する切れ味を持つ。
半面射撃兵装はほぼなく、ブレードの峰部分に申し訳程度のビームバルカンが装備されているだけである。
BETA群に真っ先に突っ込む切込み役を想定しており、量産試作機でありながら単純な性能では上回るゼロ・シュナイダーとの模擬戦においてほぼ互角に近い戦いを繰り広げるなど、得意な距離においては無類の戦闘力を発揮する。
シールドライガーよりも製造数は少なく10機ほどではあったが、こちらも最終決戦へと投入された。
○F-4 ワークスファントム
ワークス、などと付いているが単に跳躍ユニットをとり外しただけの元軍用機である。
ゲシュペンストやガーリオンの普及に伴い旧世代機の多くは後方国家などへ払い下げられたが、一部の機体は不要な装備を取り外して物資を移動させるクレーンの代わりとして運用されていた。
特にF-4はパッチアーマーの影響で原作よりも量産されており。また元来頑強な機体なのでまだまだ耐用年数に余裕のある機体も多く、一部パーツを外された後兵站や補給部隊配備となり年齢や負傷などで前線から離れた衛士たちにより運用され、自由度の高いクレーンとして重宝された。
最終決戦においては戦闘に耐えられると判断された機体は再び実戦武装され、スコープドッグへの近接火力支援や自走砲部隊の護衛として戦場へと舞い戻った。
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○赤い雨を降らせ尽くすまで
スコープドッグは人類の盾と称されるほどの傑作機である。
機動方向をあえて平面に限定したことで歩兵でも短時間の訓練である程度操縦可能であり、それでいて出来ることが幅広い。
中身もほぼ枯れた技術で構成されているため生産性も高く、修理と調達も容易。
まさしく現場にとって理想の兵器であった。
あまりに理想的過ぎて同じ系統の機体が現れないほどである。
既に広く普及したスコープドッグからわざわざ性能はともかくコストや部品の調達に難がある機体に乗り換える意味が薄かったのだ。
各国で試作機が開発されたもののどうやってもコストと部品調達の面で勝てず、それなのに性能はそれに見合うほど圧倒的に上というわけでもない。
大型化すれば高性能化は容易いが、当然のことながら共有できるパーツは減り、コストが上がる。
そして規格が違えば既にスコープドッグ用に用意された各種設備・装備を利用できなくなり、導入コストまで追加されてしまう。
結果として、スコープドッグの後継機は開発から10年以上が経過しても全く音沙汰がない状況であった。
しかし、そんな状況に思うところのある者たちもいた。
スコープドッグ乗り達から勇者とすら称えられる者たち、レッドショルダーである。
彼らもスコープドッグはいい機体だと思っているが、乗り続けるうちに性能が彼らの技量に追い付かなくなってきてしまったのだ。
一人でも多くの仲間を救うため、多くの同胞を守るためより高性能な機体を。
そんな現場の声は開発元に届いた。
ただし、技術狂いたちのもとに。
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「これが、レッドショルダー専用スコープドッグ…!」
最終決戦に向けどこも準備に追われる中、中国戦線で戦う彼らのもとにもついにそれは届いた。
「暫定で
スコープドッグ・
レッドショルダーが乗ることを前提として開発された、超高性能モデルである。
本来背面には大型ハードポイントが存在するが、これを廃止して専用の高出力バッテリーを装備。稼働時間を確保した上でローラーダッシュや各関節の高出力化が図られている。
また腰にフレキシブルアークスラスターが増設され、更なる高機動化も実現。短時間なら戦術機の真似事すら可能となった。
武装こそ通常モデルと共通だが、装備可能なハードポイントが増やされ、また機体出力の強化から積載量も相当に強化された。
反面フル装備時の火薬搭載量も大幅に増え、被弾しただけで爆発しかねない火薬庫のような機体となってしまっている。
また重量バランスも操縦で補うことを前提とされており、一般的なスコープドッグ乗りではすぐにひっくり返るような有様だ。
操縦システムは既存のものを流用しつつ、より高速化した挙動についていけるように戦術機に近いものとなった。
総じて高性能だが操縦難度の高い、玄人向きの機体となっている。
「限界まで武装を積載した場合、ヘビィマシンガン1丁、ロケットランチャーポッド2基、ソリッドシューター(無反動砲)一門、120ミリレールガン一門、12,7ミリ機銃2門、近接逆手持ちブレード二振り、このほかにマシンガン用予備マガジン10個とシューターのマガジン3個を搭載して時速150キロでローラーダッシュ可能です。航続距離は300キロといったところでしょうか」
「充分だ」
戦車に匹敵する武装を載せてそれだけ動けるならもはやノーマルなスコープドッグなど比べ物にならない。
これでもっと多くの命を救える。それを直感した彼らは凄まじい笑顔で、しかし不満点を解消するため、操縦訓練前に一つだけ整備員に注文を付けた。
「右肩を赤く塗ってくれ。血のように暗い、真っ黒な赤でな」
○スコープドッグ・レッドショルダーカスタム(RSC)
レッドショルダーなどの高い技量を持つエース級向けに製造されたハイエンドモデル。ベースはかつてクレイジーダンサーと呼ばれた試作機である。
設計・開発はいつものマッドたちが行ったが、九郎によって”既存の技術とパーツを用い、尚且つノーマル仕様と6割以上のパーツを共有していること”という縛りをつけられたため、珍しくほぼそのままの設計で九郎の審査を通っている。
高機動と重火力を両立させるため全体的に出力を強化、積載量が強化されている。
武装も専用武装を用意するのではなくハードポイントの増設により既存武装搭載量の増加で対処。
機動力強化のため増設されたアークスラスターもゲシュペンストのものが流用されているなど、高性能機でありながら現場での整備がしやすいよう配慮されている。
反面乗り手には優しくなく、重量バランスはほぼ考慮されておらず乗り手の技量で補う必要があり、またフル装備時には予備弾倉が追加装甲の代わりとでも言いたげに胴体正面に張り付けられるなど、火薬の塊のような状態であるため多少の被弾が命取りになりかねない、良くも悪くもパイロット次第と言わざるを得ない機体である(それでも爆発に巻き込まれてもパイロットが生還できるようコックピット周りは頑強なままだが)。
最終決戦までに100機を超える数が前線に配備。レッドショルダーたちの手で全身が真っ赤になって色が落ちなくなるほどに酷使され、しかしその蛮用によく応えた。
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○壮行会
「つーわけでいよいよ明日は決戦だ。腹の底から覚悟を決めてもらうためにできるだけ美味い飯を用意させた。作戦終了後はもっと大規模で美味い飯用意する準備整えてるから、これが最後の晩餐にならねぇようちゃんと生きて帰ってこい。では、乾杯!」
「「「乾杯!」」」
研究所の格納庫の一角で、乾杯の合唱が上がる。
明日の決戦で、今この場にいる彼らは最も過酷な戦場に赴く。
1%でも彼らが生きて帰れる確率を上げるため手を尽くしているが、同時に彼らに帰ってくる覚悟を決めてもらうためにこの会を企画した。
大量に並べられた料理と飲み物に、彼らは飛びついていく。
「済まねえなエルザム大佐。機体の調整で忙しかっただろうに」
「なに、良い息抜きになった。それに機体の調整もひと段落したところだったからな」
それにしたってこれだけの量を用意するのは骨が折れただろうに。何人かが手伝ったとはいえよくぞほぼ一人でこなせたものだ。
大体の仕込みは彼がやってくれたので今は美沙が陣頭指揮を執って料理を作っている。かぐやとつばきもそっちの手伝いでここにはいない。
ちなみにマッドどもや整備員たちも混ざっているが、彼らも含めてまだまだやることいっぱいなのでそこそこに楽しんだらすぐにそれぞれの持ち場へと戻っていく。
そしてこの壮行会、酒は提供していない。当たり前だが。
未成年がいるのはともかく、明日が決戦という状況で酒盛りなどできるはずもない。アルコール分解剤があるとしてもだ。
そもそも俺も飲酒禁止されてるし。
さて、乾杯の音頭とったし料理を物色するついでに少し見て回るか。
「タケル、気を付けてね」
「か、必ず帰って来てくださいね!」
「ん、信じて焼きそばパン食べながら待ってる」
「一言余計なのよあなたは!ただ一言信じてるだけでいいでしょうに!」
「純夏、タケルのことをよろしく頼む。そして必ず二人で帰ってこい」
「タケル様、必ず帰ってくると信じておりますから」
「タケルさん、純夏さん、どうか気をつけて」
「うん、絶対にクソBETAぶっ飛ばしてみんなで白無垢着るんだから!」
「早い早い早い、まだ6年ぐらい早いから」
あー、あれは原作でカシュガルに突入した面々プラス1か。
白銀の奴いつの間にか全員引っかけてたんだよなぁ。まだ迷いがあるが、全員幸せにするには自分が責任を持つしかないと認識はしているようだ。
「ああ、やはり心配です。博士、どうして私たちも行ってはいけないのですか」
「
五摂家のお姫様がアホなこと言うんじゃねぇよ。
正直白銀たちだって世界最強戦力の一角でなければ突入部隊どころか戦闘にすら出す予定はなかったんだから。
そもそもこいつら軍用シミュレーターをおもちゃ代わりにしてたし、全員がLv5以上の念動力者ではあるが、白銀たちと違い正規の軍教育は受けていないのだ。
記憶も引き継いでないので腕の方も衛士としてはやる方、という程度でしかない。
…なお、こいつらのTーLINKシステムとの接触は全面禁止である。
鑑と同じことが起きかねないし、ほんとに起こったときに今度は悪影響が出ないとも限らない。
「どうやっても今からじゃこいつと一緒に行くのは無理だ。それを悔しいと思うのならこれから精進しろ。そして実力で隣に立て。軍服着てか白無垢着てかはお前らの自由だが」
「最後で台無しだよ今の話!?」
だって俺関係ないし。
どっちの意味で取ったかは知らんが嫁どもが燃え上がり白銀が四苦八苦して鎮火させようとするのを楽しんだ後、その場を離れる。
次のテーブルにいたのは…。
「おお九郎。あいさつ回りか?」
「そっちはついでだがな。機体の調整はどうだった、斯衛の赤鬼青鬼さんよ?」
紅蓮大将と神野大将だった。この二人もクロガネの支援としてシロガネに搭乗しカシュガルに赴くのだ。
「完璧だ。すまなかったな、忙しいところにあのような無茶を言ってしまって」
「全くだ。零式の予備パーツなかったら絶対間に合わなかったよ」
「無理を通してもらった分の戦果は必ず上げて見せよう」
二人とも本来は専用のタイプSに乗っているが、今回は急遽用意した特機に乗って出撃する。
その名もソウルグレンとソウルシグマ。
名前から察せる人もいると思うが、ソウルゲインの改修機だ。
装着型モーショントレーサーの実験機であったソウルゲイン1号機と、急遽組み上げた2号機にグルンガスト零式用の予備パーツを組み込んで突貫改修した機体だ。
本来実戦を想定していないため特機でありながら飛び道具や広域攻撃能力がほぼない格闘戦専用機であるものの、モーショントレーサー回りはダイゼンガーからのフィードバックもあって二人の超人的な戦闘技術を過不足なく機体に反映できる。
放熱装甲やビーム吸収システムも何とか載せられたし、雑魚狩りは不得意だが要塞級以上に対しては文字通り無双してくれるだろう。
イヤー大変だった。徹夜しすぎていつも以上にハイになったマッドどもの手綱握りながらだったからな。他の仕事も山積みだったし。
で、なんでこんな無茶する羽目になったかというと。
「使えそうな機体を残しておくとかの方がな…」
「最終決戦であるというなら朕が先頭に立たずして誰が立つというのだ、と言い張って聞かなかったからな…」
二人のゲッソリした顔を見て察してほしい。
とにかくこれで日本国内にある特機は全て乗り手が決まり、一機も残らない状況だ。
唯一グルンガスト零式が残るが、これはほぼ大破状態で予備パーツもソウルゲインの改修に使ってしまったので現状修理不可能。
パーツの製造から始めなくてはいけないのでどうやっても決戦には間に合わない。
タイプSどころかゲシュペンストは全て前線配備だし、これでかの方が勝手に飛び出す心配は(俺たちは)しなくていい。
後は
懸念事項が一部解決して晴れやかな顔で飯を貪る二人と別れ、俺は次のテーブルへ。
「これは稲郷博士!お会いできて光栄です!」
「ラウ大佐か。楽しんでるか?」
次のテーブルにいたのは中国軍のカーウァイ・ラウ大佐だった。
クロガネにはDGGシリーズと斯衛16大隊のほか、各国から選抜されたエースが乗り込む。その一人として彼も選ばれたのだ。
「以前からお会い出来たら感謝と謝罪をしたいと思っておりました。我々を支援して戴いていたこと、まことにありがたく。しかしその恩を仇で返してしまったこと、同じ国のものとして誠に申し訳なく。私一人が頭を下げたところで償いにはならないでしょうが、それでも下げさせていただく」
そう言って頭を下げてきた。
生真面目な男だ。だからこそこいつについてきた連中も多いのだろうが。
「頭を上げてくれ。あんたたちが命を懸けて戦ってきたことは理解しているつもりだ。国が受けた損害は国同士で話し合って決めるべきことで俺が口出しすることじゃないし、バカやってた連中は責任を取って既にいない。俺個人としては中国に対する恨みつらみは既に解消したつもりだ。それでも申し訳なく思っているのなら…」
数瞬考え、ニヤリと笑いながら彼に罰を課した。
「決戦が終わって国土復興を成し遂げたら、美味い中国料理を食わせてくれ。料理人に頼むんじゃなく、あんた自身の手でな」
少しの間呆けたラウ大佐だったが、すぐに笑いだした。
「承知いたしました。その時は本格四川麻婆豆腐を振舞いましょう」
そのあと2,3ゼロたちのことなど話をし、ラウ大佐は機体の調整作業に戻っていった。
「さて、次のテーブルは、と…」
お、あれは…。
「叔父さんと、ネートさんか」
ソフィア・ネート。
OG世界でも叔父さん、ゼンガー・ゾンボルトと関係の深い女性だ。
この世界では帝都大学への留学生で、いろいろあって叔父さんと知り合い、かなりいい雰囲気になっている。
…あそこに割り込むのは野暮だな。どれ、ほかのテーブルに――
「アオオオオオォォォォーーーーーン!!」
「…犬の遠吠え?」
――振り向いた先には、確かに犬がいた。
ただし、酒に狂っていたが。
「グルルルル…!」
「神宮司まりも!?」
香月が自分の権限でこの壮行会に連れてきてたが、なんで狂犬になってる!?酒は提供してないぞ!!
「た、退避、退避しぐぶぇッ!?」
「武ちゃーん!?」
ああ、フリーズしてる間に白銀がやられた!
「よくもタケルちゃんを!ドリルミルキィ」
「ギャオンッ!!」
「へぼぉ!!?」
「「「「「「純夏(さん)ー!?」」」」」」
鑑までやられた。必殺の一撃にクロスカウンターを合わせられて一発で撃沈。絶望的なまでにリーチが足りなかった…!
白銀の嫁ーズ武闘派が何とかしようとしてるが勝ち目はおそらくない。そして戦闘はからっきしの俺にできることはない、急いで逃げて警備員を呼ぶしか――
「グルルルル…!」
――やっべ、目が合った。
「ガオオオオオオオオォッ!!」
「うわこっち来た!?」
クソ、せめて体を丸めて受け身だけでも…!
「させんぞ!」
「叔父さん!」
間一髪、叔父さんが割り込んでくれた!
神宮寺が振り回した瓶を叔父さんが切り捨て…。
………待て、何の瓶だ…?
直後、叔父さんが倒れた。
「叔父さん!?」
「…Zzz」
寝てるー!?やっぱさっきのは酒瓶か!中身ひっかぶって叔父さん酔っぱらっちまったんだ!!
「アオオオオオォォォォーーーーーン!!」
でも叔父さんが割り込んだおかげでターゲットが切り替わったらしい。ほかのテーブルへと神宮寺は駆けていった。
すまん叔父さん。あなたの犠牲は無駄にしない、すぐに警備員呼んでくるから…!
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10分後、警備員や斯衛20人がかりで狩り出されようやく神宮寺は捕獲された。
アルコール分解剤を無理やり飲ませて鎮圧されるまでに軽く50人ぐらい被害にあったが、幸いにして決戦に影響があるような大事にはならなかった。
…なお、原因の酒は香月が持ち込んだものだった。
この世界の香月は成人前にうちの研究所に入り浸るようになったから、神宮寺と酒盛りしたことがなくその酒癖の悪さを知らなかったらしい。
一杯だけ付き合わせてこの地獄絵図である。
俺は彼女に今回の責任として、一つの罰を課した。
「禁酒。破ったらあれと一緒の部屋に閉じ込めるから。あと今回の補償全額お前持ちな」
「」
その後、研究所内の酒類はすべて処分された。高いのも安いのも関係なく強制的に。
香月はしばらくマッドどもから嫌がらせを受けた。主に自重しない暴走をさらに自重しなくなる、という形で。
○ソウルグレン・ソウルシグマ
モーショントレーサーの実験機であったソウルゲインを突貫改修した機体。
改修にはグルンガスト零式の予備パーツが使われており、特に頭部形状が搭乗する衛士の頭部に似た形に変更。
ソウルグレンは赤色に、ソウルシグマは青色に再塗装されている。
データリンクなどオミットされていた軍用装備を搭載した他、ジェネレーターは零式用のブラックホールエンジンに換装され、放熱装甲とビーム吸収システムも装備。
武装はソウルゲインから引き継いだものの他、手持ち武器として零式が使っていた特機用シシオウブレードや薙刀が追加された(零式斬艦刀は大破し予備パーツもなく、また参式斬艦刀の試作品群は既に処分されていた)。
…腰回りだけ虎縞模様に塗装して金棒を装備する案もあったが、見た目が完全に赤鬼青鬼だったので没案となった。
○ネーミングセンス
九郎「お前らが動かすんだからお前らで話し合って決めろ」
隆聖「俺に任せろ!天下無敵大明神なんてどうよ!?」
九郎「だせェな」
ライ「却下」
彩「私もそれはちょっと…」
舞「わ、私はいいと思う…」
隆聖「2対2か、じゃあ隊長決めてくれ!」
ヴィレッタ「………」(チラッ)
九郎「さっきも言ったぞ、お前たちで決めろ」
ヴィレッタ「…彩、任せた」
彩「ええッ!?えっと、じゃあダイアヤ…そのままSRXで!」
○継承
将軍「崇継。此度の戦、そなたに余の名代を務めてもらう。ついては余の代わりにこれに乗って行け」
崇継「大将軍、いやタイプS・VG…!よろしいのですか、これに乗るということは」
将軍「以前から決めていたことよ。次の将軍、そなたにやってもらう。だからこそこの戦で死ぬことは許さぬ。何としても生きて帰ってこい」
崇継「ハッ!!その勅命、しかと承りました!」
将軍「…大将軍よ。長い付き合いではないが、どうか頼む。あの若人達を守ってやってくれ」
今週の更新は以上です。