MUV-LUV大戦   作:土井中32

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フリーダムが、いない…?

大量生産してばら撒いてると聞いたので、久しぶりに一つ作ってみるかと探したら、近所では一つも見つからず…。
ジェネシックとキャリバーンは置いてるのに、なぜマイフリがない…!?これが、デリバリー格差…!?(違う)
やっぱりプラモ専門店に行くしかないのか…車で一時間かかるのに。




81話 決戦、賽は投げられた

 

 

全てが平らに均された荒野を、コマンドウルフが駆ける。

オペレーションGONGの第一段階、BETA勢力圏外周部のハイヴから戦力を釣り出すための第一次攻撃、それを担当するためだ。

作戦の中で最も被害が大きくなるとされるフェイズ1、こういう時のためのゾイドシリーズ(無人機)であるとして、予備戦力も投じての一斉攻撃が行われていた。

モニュメントを破壊する勢いでぶちまけられるビームと実弾の雨に当然BETAも反応。続々とハイヴから外敵を排除するためにあふれ出る。

目的を果たしたコマンドウルフたちは攻撃を加えつつゆっくりと下がり始める。一匹でも多く釣り出すために。

そうしてハイヴからのBETA現出が少なくなった時。

 

ハイヴ上空で光が瞬き、BETAが一斉に動きを止めた。

 

『QP撃発及びBETAの行動停止を確認、砲撃開始!』

『撃て撃て撃てェ!後がつかえてんだ、さっさと奴らを木っ端みじんにしろォ!』

『面倒だ、モニュメントも折っちまえ!』

『ヒャッハー!めくら撃ちしていいなんてなんて楽なんだー!』

『効率だけは気にしろよ、まだ先は長いぞ!』

 

ライノセラス級率いる砲撃部隊により迅速に処理されていくBETA群。

その後ろでは有人部隊がその時を今か今かと待ち構えていた。

 

『これがこれからのスタンダードになるのか、楽だな』

『バカ言え、ここで終わらせないとこれも対応されちまうぞ』

『こっちが新戦術出すたびにそれに対応されちまうって話だもんな。何としてもこの一戦でケリつけねぇと』

『そのための、本丸落としの連中助けるための俺たちだろ。くっちゃべってる暇あるならその時に備えろ、この歌を聴きながらな』

 

統合作戦本部から流される歌を聴きながら、彼らはその時を待つ。

帝国侵攻時の経験から、特定の歌が現場の兵士たちのメンタルに大きな影響を与えることが証明されていたため、作戦名に合わせた歌がオープンチャンネルで流され続けていた。

 

周辺の擬装抗に注意しつつ徐々に前進、その間も徹底的に叩き込まれる砲撃でモニュメントは既にへし折れ、噴出するBETAも少数では砲撃部隊とその護衛のスコープドッグに処理され、大規模噴出すればQPで黙らされる。

それを三度ほど繰り返せば、ハイヴはもう目と鼻の先であった。

しかし当然、BETAがそれ以上の進行を許すわけがない。

 

『緊急、超重光線級が出現!』

『撃ってくるぞ、さっさと()に連絡しろ!』

 

地面を割って現れた化け物が、近づく障害物へと目を向け。

即座にレーザーを撃ち放った。空に向かって(●●●●●●)

 

『やっぱりポンコツだな、あっさり引っ掛かりやがった』

『目には目をだ、頼んだぞ恐竜要塞!』

 

連射モードならばまだしも、衛星軌道を狙うための大出力照射は再度の発射までに若干のインターバルがある。

数十秒にも満たないとはいえ、それだけあれば充分であった。

 

超重光線級に勝るとも劣らない巨体が、地を駆ける。

 

 

ZDLーXLー03 マッドサンダー

 

 

対超重光線級を視野に入れて開発された超大型ゾイドが、真正面から突っ込んだ。

激しく回転する2連超大型ドリル”マグネーザー”がラザフォード場を捻じ破り、その巨体に深々と突き刺さる。

これだけでも十分致命傷。しかしマッドサンダーはそこで攻撃をやめない。

回転を継続させながら、マグネーザーから電撃を放ったのだ。

高圧電流によって内側から焼き尽くされ、まもなく超重光線級は沈黙した。

 

『デカブツが沈んだぞ!』

『今だ!行け行け行けェ!』

 

ハイヴを守る最後の砦が処理され、もはやBETAにできるのは最大の武器である物量頼みの消耗戦のみ。

しかしQPが存在する限りその物量も効果的には運用できない。

彼らはただ、無意味に戦力をすり減らすだけであった。

 

『司令、ハイヴ内の推定残存戦力3割を切りました』

『よし、フェイズ2に移行する。戦術機部隊に指令!ハイヴ内に突入しメインホールを制圧せよ!』

『いよっしゃあようやく出番だぁ!』

『全機進軍開始、ぶっ壊れた機械どもを本当のスクラップにしてやれ!』

『『『『了解!!』』』』

 

ハイヴ各所の穴から戦術機たちが突入。

それに並行して砲撃部隊もモニュメントに対して砲撃を加え続ける。

 

『モニュメントの真下がメインホールだからな、崩落させて押し潰しちまえ!』

『潰せなくても目玉共はこっちにくぎ付けになる!衛士どもの突入が楽になるはずだ!』

『AL弾撃てェ!上手くすりゃこっちの攻撃も届くぞ!』

 

今まで通りであれば、最奥に籠城することで根比べに持ちこめたかもしれない。

しかしその最奥たるメインホールへの直接攻撃が可能になった人類に対して、その方法では対応しきれない。

崩落したモニュメントとその上から降り注ぐ砲撃に対処している間に、タイプSを破城槌の先端とした戦術機部隊がメインホールへと侵入。

今までの鬱憤の全てを叩きつけられたBETAたちにもはやなすすべはなく、アンバールハイヴのメインホールが制圧されたのは作戦開始からわずか3時間後のことであった。

 

「司令、メインホールの制圧を確認、現在戦術機部隊が残存BETAと交戦中」

「そのまま制圧し続けろ。頭脳級を破壊すると残存BETAが他のハイヴへ撤退してしまう。本丸落としの結果が出るまでここにくぎ付けにするんだ」

「他のハイヴの状況はどうなっている?」

「ヴェリスクも制圧に成功したようです。その他のハイヴでは超重光線級が複数出現したハイヴもあり未だ一進一退の模様」

「押されているのか?」

「軌道爆撃を絡めた多角攻撃で封じ込めには成功しているようです。討伐は時間の問題かと」

 

DGGシリーズはあくまで迅速な討伐用の騎兵隊。通常戦力で討ち取る方法も当然ながら研究されていた。

オリョクミンスク攻略時のデータを参考に同時多角攻撃による対処能力の飽和を狙うこの戦術は各戦線で共有され、いつでも使えるようにと訓練が繰り返されていた。

もっとも周囲を包囲して攻撃する都合上多くの戦力を張り付かせる必要があり、通常種の相手もしなければならないことを考慮すれば現実的ではないと考えられていた。

QPの登場でようやく日の目を見た戦術だ。

 

「メインホールへの補給体制はどうなっている?」

「メインシャフトから補給コンテナ及びデリバリーズによるピストン輸送が行われています。ランドグリーズも下りてますので火力が足りなくなることはないかと」

 

なお、バレリオンは自力で飛べるので補給艦まで自分で飛んで行って補給を受けている。

既にローテーションすら組まれており、半ば作業と化し始めていた。

ちなみに頭脳級による攻撃の可能性はない。

位置が割れた時点で外の砲撃部隊からの攻撃含めた射程外からの徹底的な火力投射で半壊しており、今もタイプSを含めた2個中隊がいつでも破壊できるようSー11爆弾を貼り付けたうえで大火力兵装をむけて見張っている。

 

「振動センサーに注意しろ。この状況をひっくり返すとしたら地中侵攻しかない。中国戦線で現れたという母艦級亜種にしろ通常の母艦級にしろ、見つけたなら最優先で処理しなくてはならん」

 

未だ人類には地中深くにいる母艦級を攻撃する方法はない。

ゆえにいち早く出現を察知し、迎撃態勢を整える必要があった。

 

 

------------------------------

 

 

『クソ、うざってぇ!』

『諦めるって言葉を知らねぇのかこいつらは!?』

『ぶっ壊れた機械なんだから当たり前だろうが!つべこべ言わずにぶちのめせ!』

 

メインホールを制圧したものの、頭脳級が健在なためBETAの攻撃は止むことがなく。

ハイヴ内に突入した部隊はメインホールを確保し続けるため、四方八方から押し寄せるBETAを片っ端から吹き飛ばし続けるというどっちが侵攻側なのか分からない状況に陥っていた。

幸いにもメインシャフト及びモニュメント周辺は人類側の制圧下にあり、補給が途切れる心配はない。

ひたすらに目の前の化け物だけを叩き続ければいいだけだ。

いつまで続くのか分からないのが唯一の問題だが。

 

『生産設備破壊しに行った連中は!?まだ連絡ないのか!』

『こいつらかき分けながら移動してんだぞ、そんな簡単なわけないだろ!』

 

シャドーフォックスとつばきによるオリジナルハイヴ偵察時に各ハイヴの構造図も人類は入手していたが、地図があるからといって簡単に目的地にたどり着けるかと言えば大間違いである。

生産設備に向かうということは出来立てほやほやのBETAの波に逆らって進むことと同義だからだ。

ゲシュペンストMk-Ⅲ・タイプGやタイプA、タイプSで構成された特攻隊が真っ向から磨り潰しながら向かっているものの、目的地にたどり着くには今少しの時が必要だった。

 

『カタール4、上だ!』

『うわっ!?』

 

上から降ってきた戦車級が、1機のゲシュペンストに張り付く。

運悪くメインカメラを塞がれたその機体はすぐにそれを振り払うが、後続として降ってきた戦車級の群れへの対処が遅れ、機体中に張り付かれてしまう。

 

『クッソ、離れろ!』

『むやみに動くな、今引っぺがす!』

 

ゲシュペンストの装甲は戦車級に少々噛みつかれたぐらいではびくともしないが、これだけの数で一斉にやられればいつまでもとはいかない。

カタール4が振り払おうとしてやたらと動き回るため、味方も迂闊に近づけない有様だった。

ゲシュペンストの武装なら同じゲシュペンストにダメージを与えられる。36ミリでも当たり所が悪ければ小破ぐらいはするのだ、動き回られては万が一がありえた。

 

アアアアアアアアッ!!

『落ち着けカタール4!俺たちが引っぺがすから一度止まれ!』

『だめだパニックで聞こえてねぇ。隊長、鎮静剤を!』

『いや、それはそれで恐慌状態になるかもしれん、迂闊には使えない!』

 

ゲシュペンストの登場によって戦場の戦死者は大幅に減った。

しかしそれはギリギリの戦い、つまり地獄の中で生き抜くすべを磨く機会も奪っていた。

旧世代機からのベテランならば戦車級に集られるという危険な状況でもある程度冷静に動けただろう。

だがそんな状況に陥ったことのない比較的若い新兵に、味方を信じて動くな、というのは難しい話であった。

 

『仕方ねぇ、損傷覚悟でやるぞ!カタール4、事故っても恨むな――』

『――どけ、デカブツども』

 

言うが早いか、カタール4へと火線が集中する。

四方から集中したそれは、しかし戦車級だけを的確に撃ち抜き引っぺがしていく。

何発かはゲシュペンストに当たるものの、12,7ミリではその装甲に傷すらつかない。

わずか十数秒で、カタール4は戦車級から解き放たれていた。

 

『…あ、あれ?助かった?』

『カタール4、コンディション報告!』

『は、はい!装甲部に一部イエローが出ていますが許容範囲内、継戦可能です!』

 

『戦車級に噛みつかれたぐらいでおたつくな、それでも衛士か』

『お前らは…!』

 

カタール4を救った火線。その先にいたのは小さな巨人、スコープドッグ。

しかしこの場で彼らを侮るものはいない。

何せ、全機が右肩を赤く塗っていたからだ。

 

『レッドショルダー!?地上担当のはずだろ、なんでハイヴ内にいるんだ!』

『お前らが不甲斐ないから助けに来てやったんだろうが。このRSCなら3次元機動も可能だからな』

 

スコープドッグ・レッドショルダーカスタム(RSC)

 

レッドショルダー級の精鋭が乗ることを前提に開発されたハイエンドモデル。

腰部に増設されたアークスラスターにより戦術機の真似事が可能となった本機は通常モデルよりも3次元戦闘への適性が高いため、小型種に手を焼く戦術機の援護としてハイヴ内に送り込まれたのだ。

 

『やっぱユダヤは駄目だな。ここは俺たちに任せててめぇらはママのミルクでもしゃぶってろ』

『なんだとこの…!』

 

一瞬言い争いに発展しかけるが、すぐにそれは霧散する。

メインホール全体が地響きを立てて揺れ始めたからだ。

 

『カタール2、振動センサー照合!』

『確認しました、母艦級です!出現地点は――』

 

――その先を言う前に、それは壁をぶち破って現れた。

続けざまに3体も。

 

『一度に3体かよ!?』

『全機全力射撃用意!口を開いた瞬間に叩き込むぞ、レッドショルダーも合わせてくれ!』

『言われずとも!』

 

さっきの喧嘩腰を放り捨て、彼らは協力して目の前の脅威に立ち向かう――

 

 

 

退()けい!!』

 

 

 

――より前に、後方からの雄叫びに思わず振り向く。

ランドグリーズが、その最大の武器をこちらに向けていた。

 

た、退避、退避ー!?

散れ、散れー!!

 

這う這うの体で彼らが逃げ出し開けた射線に、何ら躊躇いなく戦場の神は大砲(それ)をぶっ放した。

 

『弾種S-11炸裂弾頭装填、たらふく喰らえミミズもどきが!!』

 

10機近い30,5センチ砲から叩き込まれたそれは、ちょうど開きかけていた母艦級の口に飛び込み。

一体あたり3発というオーバーキルに母艦級は口から爆炎を吐き出しながら消し飛び、崩れた穴だけがそこにいたことの証となっていた。

 

『あぶねぇだろうが!?俺たちまで殺す気か!!』

『逃げるのが遅かったら俺たちまで巻き込まれてたぞ!』

『砲兵の前にいたお前らが悪い。おまけに下らんことで争いやがって。そんなだからあんなぶっ壊れた人形もどきに負けるんだよ』

『『なんだとこの三枚舌野郎!?』』

 

今度はゲシュペンストとスコープドッグがランドグリーズと睨み合い。

 

 

 

『いい加減にせんか貴様ら!!戦闘はまだ終わっとらんのだぞ!?』

 

 

 

アンバール担当司令部から直接雷が落ちた。

しぶしぶ彼らは睨み合いをやめ。

 

『よーしこうしよう、勝利に最も貢献できなかった奴が全員に一杯おごる、これでどうだ!』

『いいだろうその勝負乗ってやる、破産の恐怖におびえるがいいユダヤ共!』

『そっちこそ酒ともいえないような泥水出して約束果たしたことにするんじゃねえぞアラブ共!』

『ふん、勝つのは俺たちで決まってるが、万が一負けた時は我が国が誇るビールで盛大にもてなしてやろうではないか』

『いやいいわ、不味そうだし』

『イギリス料理なんてメシマズの代表例だろ』

イッタナキサマラァ!!

 

口ではぎゃあぎゃあ言い合いつつも、彼らは戦線に復帰する。

喧嘩している割には、彼らの連携は見事なものだった。

…余談だが、イギリスで一番飲まれているのはワインだとか。

メシマズなのは伝統的に食への興味が薄く下味の類をほぼしない文化だからとか、一応擁護をしておく。美味しいところはちゃんと美味しいらしい。

 

 

------------------------------

 

 

下が騒がしい一方、地上での戦闘も終局に至り始めていた。

 

「司令、地表の光線属種殲滅が確認されました」

「よし、航空隊に打電。出撃を許可しろ」

 

QPの登場により、限定的ながら人類は制空権を取り戻した。

ならば、それを活用しない手はない。

後方のコンテナ船から攻撃ヘリが飛び立ち、未だ地上に残るBETAに攻撃を加えていく。

ソフトターゲットはロケットでまとめて吹っ飛ばし、ハードターゲットは対戦車ミサイルで風穴を開けてやる。

戦術機と比べれば火力投射量は少なく見えるが、そこは数と反復攻撃のしやすさで補えばいい。

撃ち切ったらコンテナ船に戻って補給し、また飛び立つ。

武装の流用などはされていたが本体は廃棄するのも金が掛かると結構な数がモスボールされていて、乗り手も半ば引退していた連中が引っ張り出されて運用されている。

掃討戦に移りつつあり、砲兵が地下の援護に追われる状況において、地上における神は間違いなく彼らであった。

 

その神の援護を受けて、地上を鋼鉄の獣たちが駆ける。

コマンドウルフたちが集団で攻撃を加え、地上の残存BETAを牧羊犬よろしく望む方向に誘導する。

彼らの攻撃から味方を守るように要塞級が前に出てくるが、直後遠方から放たれた2条の光線が正面から貫通、力を失い崩れ落ちる。

光線の発射元にはコマンドウルフよりも大型で、より大型の大砲を備えた新たな機獣がいた。

 

 

ZDLー04a シールドライガー

 

 

Zi研にて試作された、新型ゾイドシリーズである。

大型の余裕あるボディにコマンドウルフと同型のゾイドコアを2基搭載。これにより出力に大きな余裕が生まれ、大型ビームキャノンを背中に搭載している。

しかし見た目とは裏腹にこの大砲は軽量で、鈍重と侮って近づけば見た目を裏切る軽快な動きで接近戦を仕掛けてくる。

頭部にはエネルギーシールドも備えた、走攻守が揃った万能機であった。

その横を、よく似た機体が駆け抜ける。

体の横に展開された実体剣から光を伸ばし、すれ違いざまに突撃級を真っ二つにしていく。

 

 

ZDLー04b ブレードライガー

 

 

シールドライガーの兄弟機で、より格闘に特化した機体である。

背中に大出力アークスラスターを搭載するなど整備性を犠牲にしたが、その性能は格闘戦に限れば試作機であり単純な性能で上回るライガーゼロ・シュナイダーと互角に戦えるほどであった。

 

ライガーたちが要塞級や突撃級を優先的に排除することでコマンドウルフたちが密集戦術を行いやすくなり、弾幕の濃度が上がっていく。

鋼鉄の獣たちに徐々に削られながらも愚直に追いかけるBETA達は彼らの目論見通りに誘導され、手ぐすね引いて待っていた狩人たちの前に飛び出した。

 

『ヒャッハー!まだまだ俺たちだって現役だァ!』

『陸戦の王者の名は伊達ではないぞ!』

『日本帝国からライセンス生産した新型の火力、存分に味わいやがれ!』

 

日本帝国からライセンスを得て製造されたフュルギアを筆頭とした、かつて戦場を我が物顔で走り回った戦車たち。

人類が攻勢に移るに従い戦場で求められる機動力が上がり。そのスピードについていけなくなり、活躍の機会などほぼ無くなっていた。

しかし敵が向こうから近づいてくるなら話は別である。

正面装甲の頑強さを盾に砲撃陣地を構成、真正面へと誘導されたBETAにその変わらない大火力を存分に叩きつけていた。

一部の車両など突貫改造でレールガンを積載している状況である。

 

アンバールにおけるBETAの命数は、風前の灯火であった。

 

 

------------------------------

 

 

「統合作戦本部より打電、甲6号、エキバストゥズハイヴへの攻撃が開始されました。現在超重光線級2体の出現を確認」

 

衛星静止軌道上、ハガネのブリッジにて。

統合作戦本部で集めた情報はこちらにもフィードバックされ、各地の戦況がすぐに分かるようになっていた。

 

「対処は間に合いそうか?」

「軌道上の囮艦隊に食いついたようです。包囲は八割完成、予定通りに推移すれば討伐完了は4分後かと」

 

砲撃部隊や兵站を高速移動させる方法(水陸両用コンテナ船やライノセラス級)があるからこそこれだけ高速でBETA勢力圏内側のハイヴまで戦力を投射できてるが、逆に言えば完全な電撃戦で補給線が追いついてないからな。引き際を誤らないでほしいところだ。

 

「囮艦隊はまだ持ちそう?」

「撃ち落されたのが現在3割ほど、このペースで推移すればあと5時間は持つものかと」

 

超重光線級の登場で人類は軌道上に戦力を張り付かせることができなくなった。

だがそこは人類である。そこを逆手に取ることにした。

 

すなわち、撃ち落とされても構わない囮を軌道上に配置して、超重光線級の目をそちらに向けてしまおう、と。

 

この時のために旧式化してすっかりお役御免となった再突入型駆逐艦や廃材にロケット括り付けて作った張りぼて、デブリなどが周回軌道上にぶちまけられ、無線操作で軌道爆撃の”ふり”をすることで超重光線級に軌道上への攻撃を強要し、その間に地上部隊が包囲の準備を整える、という作業が繰り返されていた。

…後片付けが大変だな、これ。人工重力発生装置によるデブリ回収船の設計でも引いとくべきか。

 

「報告。インド軍がヒマラヤを越えました。これより砲撃部隊による準備砲撃が開始されます」

「いよいよか」

 

カシュガルに最も近い位置にいるインド軍はヒマラヤ山脈を越えて進軍、甲一号目標の地上戦力誘因を行うことになっている。

通常戦力でやるなら無茶苦茶もいいところだが、元から飛行能力を持つ戦術機部隊が縄(カーボンナノチューブ製、そのうち軌道エレベーター造る時に使おうと思って研究していた)持って山越えし、ランドグリーズなどはその縄を頼りに登るという荒業で戦力の移動を成功させていた。

イメージ的にはロープウェー、ゴンドラの代わりにランドグリーズが昇っていくという感じだろうか?

旧世代機なら絶対に航続距離が足りなくて出来なかった方法である。

コンテナ船やライノセラスなどは流石に無理だが、そこは制圧が完了したハイヴから確保したルートで向かわせる予定だ。

ちなみに火力投射が足りなくなる心配はしていない。

 

「準備砲撃始まりました」

静止衛星軌道(ここ)からでも見えるとは、さすがDGGですな」

「伊達にトロニウム積んじゃいねえよ」

 

インド軍を指揮しているのはインドきっての猛将、そして彼が乗るはDGGの一角たる赤い戦神である。

ハガネのブリッジからも観測できる赤と青の螺旋がカシュガルハイヴに向けてぶっ放された。

流石に遠かったのかモニュメントには当たらなかったようだが、あんな大火力飛んでくれば当然連中も対応する。

 

「ヴァルシオンより報告、超重光線級3体を確認。このままくぎ付けにするとのことです」

 

あの距離ではクロスマッシャーでも超重光線級のラザフォード場を抜けないだろうが、それは連中も同じことだしな。

しかも超重光線級はラザフォード場展開中は攻撃ができない。逆もまたしかり。

つまりどういうことかというと。

 

「特攻艦降下開始。目標超重光線級」

 

囮艦隊に交じっていた爆弾満載した再突入型駆逐艦が降下を開始する。

このまま特攻(無人だけど)を許せば超重光線級どころかカシュガル一帯が更地になるので、当然迎撃せざるを得ない。

が、迎撃中は当然ラザフォード場を展開できないので。

 

 

 

『消し飛べェい!!クルゥオォスゥマッシャァァァァァッ!!』

 

 

 

無防備な横っ腹に赤青の螺旋が突き刺さる。そのまま横なぎに振られれば、そこにはアンバランスな足しか残っていなかった。

 

「超重光線級の排除を確認。後続確認できません」

「カシュガルハイヴ周辺よりBETAが噴出、インド軍に向かって進軍開始しました」

「…頃合いだな。艦首特装砲発射準備」

「了解、艦首特装砲発射シーケンス始め!」

「バイパス開放、エネルギー充填開始します!」

 

タイミングを見てQPを叩きつけ、同時にハガネのトロニウム・バスターキャノンでモニュメントごとカシュガルハイヴを攻撃。これがフェイズ3。

それで片が付けばよし、BETAの行動に変化が見られないなら待機中のクロガネがメインシャフトをめがけて降下、メインホールまで進攻し搭載する機動部隊と共に重頭脳級を捜索、見つけ次第全力を以て破壊する。

これが最終、フェイズ4だ。今はフェイズ2から3への移行中、と言ったところか。

 

…不安だ。順調すぎる(●●●●●)

 

この時のために準備し続けたとはいえ、イレギュラーの一つや二つはあり得ると考えていたのに。

今のところ全体的に人類が優勢、既にいつでも首を獲れる頭脳級が4体はいる。

本丸たるカシュガルすらこのままいけばインド軍だけで何とかできそうな状況だ。

 

(BETAの対応能力は、こんなものだったか?)

 

ぶっ壊れているとはいえ、自分たちが不利な状況に陥っていることは重頭脳級も認識していたはず。

にもかかわらず。超重光線級の後は母艦級亜種が出現したものの、現状はこちらの予想の範疇を出ない。

本当にこれで、奴らの対人類の対策は打ち止めなのか…?

 

「艦首特装砲、エネルギー充填120%!」

「総員対衝撃・閃光防御!!」

「QP射出されました、起爆までマイナス30秒」

「最終安全装置、解除!」

「トリガーオープン、カウントダウン開始!」

「発射5秒前、3、2…」

 

悩む俺を他所(よそ)に、バスターキャノンの準備は進められ――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「か、カシュガルに高エネルギー反応!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――考える前に、光が飛んできた。

 

 

------------------------------

 

 

何が起こった!?

 

突然の事態に、さしものラダビノッドも叫ばざるを得ない。

カシュガルハイヴのモニュメントから凄まじい光が立ち昇ったと思いきや、ハガネとの交信が途絶えたのだ。

予想がつかないわけではないが、それでも信じられない思いが強かった。

 

『静止衛星軌道上に待機していたハガネとの交信途絶えました!本部からの応答にもこたえません!!』

『シロガネより報告、ハガネは攻撃を受けた模様、通信繋がらず損害不明!!』

「…信じられん、奴らは正気か?」

 

たった今見た光景、それに入ってくる情報を加味すれば、何が起こったかは一目瞭然だ。

 

 

 

ハイヴを丸ごとレーザー砲台にしただと…!?

 

 

 

メインシャフト、さらにはモニュメントを丸ごとレーザー加速器にすることで静止衛星軌道への攻撃を可能としたのだ。

超重光線級では災害(●●)に対処しきれなかった。数を用意してもその成果は想定以下に留まっている。ではどうするべきか。

そうして思考の果てに打ち出された、更なる対策がこれだった。

 

「いかん、これでは突入部隊が降りられん!総員モニュメントに攻撃を集中、何としてもあれをへし折って攻撃を止めろ!!」

 

ハイヴ中枢たるメインホールに直通するメインシャフトをこんな形で塞がれては、事前に立てていた突入作戦が破綻する。

それ以上に宇宙にいる味方が危険だ、最低でもモニュメントをへし折らなくてはならない。

 

しかし、BETAがそれを許すはずもない。

 

『ハイヴに再び高エネルギー反応!』

「2発目か!?早すぎるが、こちらに影響は…」

 

ただ上に撃つだけなら、すでに地上に展開しているインド軍にはさほど影響はない。

 

 

 

…本当に?

 

 

『モニュメント直上に重力場を検知!ラザフォード場です!』

 

 

 

その指示は、考えるよりも早く飛び出した。

 

 

 

「全機散開!薙ぎ払いがくるぞ!!」

 

 

 

その指示に、インドの精鋭たちは即座に対応し。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

直後、ヒマラヤ山脈は世界最高峰から脱落した。

 

 

 





結束したからってそう簡単に勝てるわけないでしょう?

劇中のBGMはセルフで。前みたく入れようかと思ったのですが、描写入れまくり過ぎて歌詞との整合性合わせする前に力尽きました(泣)。


今週の更新は以上です。

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