MUV-LUV大戦   作:土井中32

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明日も仕事だけど何とか上げられました。
最後までどっちにしようか迷いましたが、やっぱり最後はこれだよな、と。
完結まで、あと少し。どうか最後までお付き合いいただければ幸いです。

それでは最終決戦、どうぞ。




84話  紡いだ因果の果てに

 

黒と白の砲撃がぶつかり合う。

白が押し負けて黒が突き進むが、白の発射元である異形はすんでのところでそれを躱す。

 

「クソ、またか!」

 

凄乃皇を操りながら、白銀が毒づく。先ほどからずっとこの繰り返しだった。

移動基地級の防御力は人類の想像をはるかに上回っており、DGGシリーズの攻撃すらもラザフォード場で受け止めてしまうのだ。

唯一それを突破できるのは凄乃皇のみで、しかしそれは向こうも承知済み。

注意を常に凄乃皇に向けていて、躱すか装甲の厚い部分で受けてしまい致命打に至らない。

そして生半可なダメージではそのうち修復されてしまう。

XNディメンション、空間ごと断ち切る次元斬ならラザフォード場ごと一刀両断できるはずだが、その使用は九郎に禁じられているし、何よりまだ制御が未熟なうえ殺傷範囲が広すぎて味方ごと斬りかねない。使用は躊躇われた。

だがこのまま千日手が続けば、不利なのは時間制限のある凄乃皇の方だ。

 

「120秒経過、どうにかして状況変えないとまずいよ!?」

「分かってる!けど大技放つためにはこっちもチャージが必要だ、その間にこいつは他のやつに襲いかかっちまう!」

 

実際、大技を放つためにチャージを始めようと動きが鈍った瞬間、移動基地級は凄乃皇やDGGシリーズを無視して増援を押しとどめている部隊に襲いかかったのだ。

恐らくメインホールに増援を引き込んだうえで足止めに使い、自らは悠々と逃げ出すつもりなのだろう。

慌てて割り込んだことで被害は出なかったが、こうして注意を引き続けなくてはまた同じことが起きてしまう。

DGGシリーズも大技ならラザフォード場を突破して大ダメージを与えることができる可能性が高いが、こちらもやはり溜めに入ると妨害されてしまう。

その他の機体も無視されているようでしっかり捕捉されており、迂闊に近づけば体中から生やした触手の雨が襲いかかってくる。

ラザフォード場で攻撃が通らないこともあり、もっぱら移動基地級が吐き散らす首無し級の排除に回らざるを得なかった。

 

好転しない状況に、この場にいる誰もが焦り始める。

しかし素直に人類の思う通りに動いてくれるほど、BETAは優しくない。

 

 

『否定する』

 

 

突如、その場にいた全員の頭の中に言葉が割り込んできた。

 

『何だ今のは!?誰かしゃべったか!』

『通信じゃない!頭に直接響いたぞ!』

『つーかうるせぇ!音量間違ってんぞ!?』

 

『仮称、人類は生命体にあらず。否定する、否定する、否定する、否定する、否定する、否定する、否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定、ヒ、テイ、ス、ル』

 

強烈な思念波。言ってることは壊れたラジオそのものだが、それが頭に響く音量で叩きつけられてはたまらない。

 

アアアアアアアア、うるさくて通信が聞こえねェ!』

『ステラ23、10時の方向!』

『なに、何か言ってうわアアアア!?』

『あ、頭が割れそうだ…!』

 

バグを起こした重頭脳級にとって、それは意図して行ってるわけではない。

しかし結果として頭痛を引き起こすほどの思念波によって全員の動きが鈍っていく。もはや目の前のことに対処するだけで精一杯、それはDGGシリーズですらだ。

サイコドライバーである白銀と鑑だけが同じく思念波を発することで何とかそれに対抗できているが、移動基地級を抑えるので手いっぱいで味方のフォローに回る余裕がない。

このまま時間切れになれば、もはや移動基地級の逃走を誰も止められない。

 

(クソ、せめて一瞬でも思念波を止められれば…!)

 

逆転の手は、ある。九郎と重頭脳級対策について話した時、こういう状況も想定の一つとして議論したから、打開策の準備はできている。しかしそれを行うためには、一瞬でも思念波を途切れさせる必要がある。

 

「一瞬、本当に一瞬でいい、あいつを止められさえすれば!!」

 

一瞬で十分。だがその一瞬が、遠い。

そして状況を打開できないまま、ついに決断の時が来てしまう。

 

「300秒経過、もう時間が無いよ!?」

『白銀、俺たちのことはいい!なりふり構わずあいつをやれ!』

「けど!」

『間違えるな!ここであいつを仕留めなきゃ全てが徒労に帰すんだ!やれェ!』

 

選べない。そんな未来は選びたくない。

しかしここで移動基地級を取り逃がすことこそが最悪の選択。それだけは選択するわけにはいかない。

白銀が唇を噛み切りながら、移動基地級を倒せるだけの攻撃を準備しようとし――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――メインホールの暗がりから、何かが飛び出した。

 

 

------------------------------

 

 

それは、ずっとその時を待っていた。

心臓を失っても非常用のバッテリーだけで最低限の機能を維持し、ずっと自らの存在を隠蔽し続けていた。

徒労に終わる可能性が高くとも、その時その瞬間確実に命あるものを助けるため、自身のゾイドコアと仲間の自爆を囮にじっと待ち続けた。

 

クロガネが突入してきても。

首無し級が現れても。

移動基地級が暴れまわっても。

 

残り少ないエネルギーで最も彼らの助けになる瞬間を見計らい、ひたすらに待ち続けた。

そしてその時が来た時、彼は躊躇わなかった。

移動基地級が間合いギリギリに近づいた瞬間飛び掛かり。残ったエネルギー全てを爪に込め、最高のタイミングでその一撃は移動基地級に叩き込まれた。

 

シャドーフォックス最後の一撃は、ギリギリまで自らを隠蔽し続けたがゆえに触手による迎撃よりも速く。

凄乃皇を警戒するあまりにそちらばかり集中させ薄くなっていたラザフォード場を打ち破り。

移動基地級の頭部に、深い爪痕を刻み付けたのだ。

 

 

------------------------------

 

 

頭部を傷つけられたからか、思念波が途絶える。

それでも致命打には程遠い、すぐにでも修復されて再び思念波が叩きつけられるだろう。

だが、二人にとってはその一瞬で十分だった。

 

「みんな、一緒に歌ってくれ!」

「なんで、は置いてとにかく合わせて!」

 

 

立ち上がれ 気高く舞え 天命(さだめ)を受けた戦士よ

 

 

通信に乗って、歌が響く。

収まりきっていない頭痛に抗いながら、とにかく他の者もそれに続く。

 

 

千の覚悟身にまとい 君よ雄々しく羽ばたけ

 

 

戦士を鼓舞する、ただの音の羅列。

だが、それを歌うのがサイコドライバーとなれば、ただの音楽で終わるはずがない。

 

『うるさかった声が、小さくなっていく…?』

『オラ立てェ!もう頭痛は収まってんぞ!』

『どういう理屈か分からんが、こうなりゃこっちのもんだ!』

『何か知らんがやる気がみなぎってきたぜェ!』

 

戦士たちが立ち上がる。

その動きに、もはや思念波による影響は見られない。

 

『これは、重頭脳級の思念波が押し返されている…!?』

『歌を介してみんなの思念波を束ねて、奴よりも強い思念波にして押し返してるのか!』

『つーか、この歌聞いてるとやる気がみなぎってくるんだけど?』

『サイコドライバーの力で感応現象を起こして、私たちのコンディションを増幅させてるんだ…!』

 

人は不安定な生き物だ。

どれだけ練習を積もうと、訓練しようと。

本当に必要な時、人はその積みあげたものの30%も生かせないという。

ごくまれに、それを100%生かせる極限の集中状態に入ることを”ゾーン”などと呼んだりするが。

意図的に、それを呼び起こせたらどうなるだろうか。

 

『ゴースト3!』

『応!』

『エクセレン!』

『二人で愛の共同作業ね!』

『うっわなんだこれ見えてないのにそっちからくるって分かるぞ…!?』

『つーか聞かなくてもエレメントと阿吽の呼吸で動けるんだけど!?』

 

地球人類は例外なく念動力の素質を持つ。力の強弱はあれど、必ず。

歌を媒介に使うことで低レベルの者ともできるようになった念動力者同士の感応現象、それを応用して今この場にいる全員を”ゾーン”の状態まで引き上げたのだ。

 

『おい、なんか歌う人数が増えるほど調子上がってくぞ!?』

『全員の念動力レベルが上昇し続けている…!全員の念動力も束ねて、引き上げているの…!?』

『一人一人は弱くとも、束ねれば大きな力になるということか』

『つまり合唱に参加する人数が多いほど全員が強くなるってことだな!』

『オラお前らも歌うんだよ早くしろ!』

『全員で歌えばたかがBETAの100億や200億ゥ!!』

 

 

闇の時代を告げる 鐘が遠く鳴り響く

 

 

合唱への参加者が増えるほど攻撃の精度が桁違いに跳ね上がり、殲滅速度が飛躍的に上昇していく。

元より彼らは地球最高の精鋭たちだ。それが己の力を100%、いやそれ以上に発揮すれば、もはや通常種など木っ端も同然。

首無し級すら、生産速度と殲滅速度がほぼ一緒だったのが人類側に天秤が傾き、メインホールからその姿を消していく。

 

移動基地級は多勢に無勢の状況に追い込まれつつあった。

それでも、メインホールを縦横無尽に動き回る移動基地級を仕留められない。

体中から例の浸食する触手を生やしているため、下手に近づくとアレに捕まって制御系を乗っ取られてしまう可能性があるからだ。

しかし遠距離攻撃ではラザフォード場を抜けず、抜けても致命傷に届かない。

既に凄乃皇の全力も8分を越えた、もう時間が無い。

誰かがリスキーな選択で突破口を開くしかなかった。

 

 

戦う友よ今君は 死も恐れず

 

 

だから、そのリスキーな選択をとったのは、最初からその覚悟ができている者たちだった。

 

『志虞摩よ、今が命の捨て時ぞ!!』

『護国のため磨き上げた我らの技、とくと見よ!!』

 

赤鬼と青鬼が、移動基地級の正面に陣取る。

各々得物を構え、動き回りながらも練り続けた全てを乗せて。

 

『無限鬼道、我流奥義』

『神野無双流、極意』

 

 

宇宙の雷ィ!!

三身無双撃!!

 

 

雷のごとき一撃が。

3人が同時に繰り出したと錯覚する突きが。

轢き潰そうとする移動基地級とぶつかり合う。

 

2体の鬼の一撃は、ラザフォード場の突破こそできなかったものの。

突進の勢いを殺し、ほんの一瞬動きを止めさせた。

 

本当に一瞬、しかしそれを信じて身構えていた者たちにとっては十分すぎる時間だった。

 

『総員、斯衛の意地を見せよ!!』

『オラァ!俺たちは添え物じゃねぇぞ!!』

 

日本帝国最精鋭、斯衛軍第16大隊。

 

全員がゲシュペンストMk-Ⅱ・タイプSを拝領する猛者達が、一斉に飛び蹴りを放った。

流石にこれだけの質を伴う物量が相手では移動基地級と言えどラザフォード場だけでは止められず、足を止めて防御姿勢をとる。

 

 

瓦礫の街を染めて 沈む夕日は紅

 

 

ほんの一瞬の隙が、数秒に伸びる。

誰も、その瞬間を見逃さなかった。

 

『ゼンガー!』

『ダイゼンガーよ、今こそ星を薙ぐ時だ!』

『舞来い!今度こそ決めてやる!』

『無茶よリュウ!R-GUNが耐えられないって』

『砲身をより強い念動フィールドで包めばいい!今ならみんなの念動力を貸してもらえる、チャンスはここしかないんだ!!』

『賭けるだけの価値はあるか…!』

『わ、わかったわ!舞、後はこっちでやるからあなたは脱出を』

『リュウも彩姉も命を懸けるんだ、私も懸ける!』

『行くぞジガンスクード、今こそ世界を救う盾となれ!』

「武ちゃん!」

「悪い九郎、一瞬だけ約束破るぞ!来い!」

 

打ち合わせも何もなく、それぞれが最善に向かって突っ走る。

この好機を必ずものにするために。

 

 

愛する地球の未来を 守るため

 

 

流石に危機感を感じたのか、移動基地級が全力を発揮してタイプS達を弾き飛ばす。

四方八方、それこそメインホールの反対側までぶっ飛んだ者もいたがそれに構わず、移動基地級が向きを変える。

明らかに逃げようとしているが、それを許すものなどここにはいない。

 

『その名が伊達ではないと証明せよ、大将軍!!』

 

紫のゲシュペンストが肉薄する。

移動基地級が16大隊を弾き飛ばした一瞬、ラザフォード場が消えた瞬間に懐へ飛び込んだのだ。

 

侍の意地、受けてみよ!!

 

 

おお 神の刃は 人類(ひと)の愛 

 

 

頭部のセンサーマストから光が伸びる。

全エネルギーを頭部センサーマスト兼プラズマカッターに集中する、タイプS・VG最後の手段。

 

 

『これが、(まげ)の太刀だ!!』

 

 

 

祈りを 込めて 貫け

 

 

振るわれたそれは、移動基地級に確かに届いた。

 

左の腕2本を切り飛ばしたのだ。

 

一瞬動きを止めるも、すぐに移動基地級は攻撃を再開する。

懐に飛び込んできた最大脅威に向かって。

しかし一撃見舞った時点ですでに崇継はバックステップでそこから離脱しており。

 

『はいはーい、そこ、動かないでね

『全弾持っていけ…!』

『父祖の大地を返してもらう!』

『亡霊の底力を見せてやる!!』

『全砲斉射、砲身が焼けても構わん!!』

『縫い留めろ、最悪ぶつけてでもだ!!』

 

 

立ち上がれ 気高く舞え 天命を受けた戦士よ

 

 

ゲシュペンストが。

ガーリオンが。

シロガネ級が。

この瞬間を待っていた者たちが、全力を叩きつける。

あまりの勢いに移動基地級が怯むも強引に突破しようとし、しかし一瞬だけ遅かった。

 

『Gテリトリー反転、重力加速最大!』

 

上から偉大なる盾が押し潰しにかかる。

ラザフォード場を抜くことはできなかったものの、その質量と重力制御を利用した超重量は移動基地級をその場に縫い留めることに成功する。

しかしそれも一瞬だけ。すぐにじりじりと動き始める。

全員の攻撃を叩きつけるためには、あと数秒動きを止めなくてはならない。

なりふり構わないジガンスクードの全力でもなお止めきれない現状に、ウォーケンが叫ぶ。

 

『頼むジガンスクード、俺の命がどうなってもかまわん!俺たちを、人類を勝たせてくれぇ!!』

 

 

たとえ傷ついて 力尽きても

 

 

その叫びに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ならば、俺たちの命も持っていけェ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

上から降ってきた赤い戦神が、応えた。

 

『ヴァルシオン!?』

『メインシャフトを降りてきたのか!?』

 

状況の変化を感じ取った統合作戦本部が、ソ連側の援護に振り分けていたヴァルキュリア級を全力で南下させ、カシュガルの援護に投入。

彼らに地上を任せ、ラダビノットは一人メインシャフトへと飛び込み。

今、この場に間に合ったのだ。

 

『耐えろよウォーケン!メガ・グラビトンウェェェェッブ!!

 

重力衝撃波で広範囲を薙ぎ払うヴァルシオンの広域攻撃兵器。それを応用して超重力を加算する。

要塞級すら一方的に押し潰す超重力に、しかしジガンスクードは耐え切り。

 

今度こそ、移動基地級の動きが止まる。

 

『今だぁ!!』

『メタルジェノサイダーモード起動!』

『トロニウムエンジンフルドライブ!!』

『砲身保護の念動フィールド150%!リュウ!!!』

 

数多の力を束ねる仮面の巨神が、執念の一撃を放つ。

 

 

一撃必殺ゥ!バスタァァァァキャノンッ!!

 

 

緑の極光は過たず移動基地級に直撃。余波に煽られジガンスクードとヴァルシオンが吹っ飛び、周囲に甚大な被害を与えつつ砲撃が終息する。

星を貫通して余りある一撃、しかし。

 

『耐えた!?』

『押し潰されることを許容してラザフォード場を集中展開、それに尻尾を犠牲にしたのか!!』

 

全体的に焼け焦げ、尾も八割方消失。しかしそれだけ。

戦闘能力を消失していないことを証明するように、右手をこちらに向け。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『誰がお前のターンだなんて言ったよ?』

 

隆聖の嘲笑と共に。

仮面の巨神が、目前に迫る。

 

『一度見せた手が二度も通用するなんてこっちも思っちゃいないんだよ!』

『Z・Oソード射出、刀身形成!!』

『フルドライブ継続、限界まで30秒!』

『喰らえぇぇェェェッ!!』

 

ゾル・オリハルコニウムの刃が、深々と突き刺さる。

咄嗟に体を捻られたため腹に刺さったが、それで十分。

自ら折る時間も惜しいと、隆聖はそのまま止めを放った。

 

 

『念動、爆砕ッ!』

 

 

刀身が、爆ぜた。

SRXが爆風で吹っ飛んだが移動基地級の腹から下も吹き飛び、今度こそ移動基地級はBETA生産能力と移動手段を失う。

しかし、重頭脳級は諦めない。壊れていても、いや壊れていなくても彼らはプログラム通りに動くことしか知らない。ゆえに諦めることを知らない。

腹から下を失ってもなお、健在な腕と体中から生やした触手で攻撃を続ける。ズリズリと這って移動しながら。

 

『往生際が悪すぎだろ!?』

『クッソ、ラザフォード場が復活してる!攻撃が通らねェ!』

『あと、あともう一押しなのに…!』

 

その言葉に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『俺を呼んだか!?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

巨いなる騎馬武者が応え、移動基地級に迫る。

 

『駆けよトロンべ、その名の如く!!』

『吼えろダイゼンガー、武神の如く!!』

 

 

赤く燃え 見事に散って 星になった命よ

 

 

その手に持つ大剣が、伸びる。どこまでも、際限なく。

多大な液体金属の消費と引き換えに星を両断するほどの刃渡りを実現する、参式斬艦刀とツインドライブが揃って初めて可能となる、究極の奥の手。

 

『斬艦刀――』

『――星薙ぎのォ、太刀ィィィィィィィィィィィイッ!!!

 

大上段から振られたそれは、ハイヴを文字通り両断しながら移動基地級に襲いかかり。

 

胴を、袈裟に両断した。

 

『やった!?』

『まだだ!!』

 

武人の勘がゼンガーに告げる。

仕留めそこなった、と。

 

移動基地級の首が、飛んだ。

 

『ハア!?』

『どうなってる、誰か御首級(みしるし)とったのか!?』

『ンなわけあるかバカ!敵の大将首だけになって逃げる気だ!!』

 

あまりの事態に出遅れ、誰も追いつけない。

首の付け根から光を放ってどんどん上昇していく。

遠距離武装持ちが攻撃するが、ラザフォード場に阻まれて通らない。

ここまで来て逃すのか、と絶望が蔓延しかかり――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「逃がすわけ、ないだろ」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――移動基地級の首が、止まる。

全力で光を放つが、その場から一ミリも動けない。

念動フィールドで、その場に固定されてしまったからだ。

どれだけもがこうと、すでに処刑台に繋がれた囚人でしかなかった。

そして、処刑人が得物を持って現れる。

 

凄乃皇・終式。

その手には巨大な大砲が握られていた。

 

ブラックホール・バスターキャノン

 

ブラックホールキャノンの発展型にして、地球最強の攻撃力を持つ兵器。

フルチャージして放てば、地球すら一撃でチリにする禁止級兵装のそれは今、想定外の使われ方をしていた。

 

砲身から黒い刃を伸ばすという形で。

 

本来なら撃ち出すブラックホールを刃の形にして留め、近接兵装に応用しているのだ。

なぜ、そんな面倒なことをしているのか。

 

 

「「これから先二度と、お前たちに世界は微笑まない」」

 

 

今この場にいる全ての人間の念動力を加算され、サイコドライバーでもさらに上位の領域に足を突っ込んだ二人には見えていた。重頭脳級の中にある、何か(●●)が。

知識のない二人にはそれに付けられた名前が分からなかったが、それがある限り世界はBETAに味方する、ということだけは分かる。

 

だから、ここでそれを断ち切る。

次元も因果も断ち切る、未来を切り拓く刃で。

 

「TTD、出力120%…!!」

「この一刀を以て、因果地平を断ち切る…!」

 

 

時を越え その名前を 胸に刻もう

 

 

凄乃皇が両手で得物を握り、構える。

暴れる重頭脳級の命数は、既に尽きていた。

初手で全力の逃走を選ばなかった時点で、重頭脳級の負けは決まっていた。

 

彼らは最後まで無礼(なめ)ていたのだ、人類を。

 

 

 

「「因果、断絶けぇぇぇぇぇェェェんっ!!!」」

 

 

 

迸った気合とは裏腹に。

決着は、ひどく静かなものだった。

 

緑色に光る黒い刃を受けた重頭脳級は、あっさりと真っ二つとなり。

超重力によって開かれた因果の果てへ、消え去った。

 

 

 

「「これが、人間の力だ。俺たちを無礼るな、BETA…!!」」

 

 

Just Forever

 

 

-----------------------------

 

 

「………そもそも天井がねぇな」

 

気が付いたら視界は真っ白だった。

思わずあのセリフを言ってやろうかと思ったが、天井がないのでは言いようがない。

上も下も左右前後も真っ白。しかもどうやら地面すらないらしい。

このよくわからない空間にプカプカと浮いているようだった。

 

「作戦はどうなった…?美沙は、ハガネと水無瀬艦長は…!?」

 

トロニウム・バスターキャノンを撃ったところまでは覚えているが、そのあとの記憶がない。

もしや死んで地獄にでも来てしまったのだろうか、と考えた時。

 

 

「ほう、よもや貴様と直接相まみえるとは」

 

 

知っているが聞けるはずのない声が、後ろから聞こえてきて。

慌てて振り返った俺が見たものは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二対の目ン玉が刻まれた、イカだった。

 

 

「………………チェンジで」

「不可だ」

 

嘘だろ?地獄への案内人がよりにもよってこいつかよ!?

 

 





ギャグ「いまだいけっ!ゴーゴーゴー!」
シリアス「アアアア!負けてたまるかアッ!」


なお、メインホールなんて狭い場所で惑星破壊クラスの攻撃をぶちかましまくったせいで、この後すぐにカシュガルハイヴそのものが崩落してえらいことになった模様。崩落による死者は出なかったようだが、地上にいたインド軍から”加減しろバカ”と言われたとか。
(そんな生易しい相手でなかったことは彼らも承知していたが、巻き込まれかけた側としては文句の一つも言いたかったらしい)


唐突に登場した謎のイカ。一体何ゼス・ゴッツオなんだ…!?


今週の更新は以上です。

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