あれもこれもと詰め込んでいたらとんでもない長さに…。
やはり分割するべきだったか…?
次の話はちょっと遅れるかもしれません、ご容赦のほどを。
とある建物の中で、一本の棒が真上を向いて立っている。
しかしそれを持つ手は震え、真上を向く棒――木刀も小刻みに揺れる。
もしこれが蜻蛉の構えであればピン、と真っ直ぐ上を向いていなくてはならないのに、これでは正しく構えられているとは言えない。
しかしこの姿勢を始めて既に一時間、まだ剣術を習い始めて1年にも満たないにしては頑張った方だろう。
「下げてよし」
その言葉をかけられるとともに木刀が下ろされ、ギリギリで踏ん張っていた体が途端に激しく動き出す。
木刀を杖替わりにしながらも何とか立ち、しかし全力で呼吸をする少年に、彼を監督していた老人は呼吸が整うのを待ってから再度声をかける。
「これで今日の稽古は終わりじゃ。朝餉を頂いたらしばらく休め。今日は皆で出掛けるのじゃろ?」
「うん…父さんの…知り合いのところに…」
「ならば途中で舟を漕がないよう、今のうちに寝ておけ。…ほれ、息も整ったじゃろう。母殿の作ったご飯を食べるぞ、イング」
「うん、ひいじいちゃん」
その言葉を締めくくりに二人は道場を出る。
稲郷利秋と稲郷イング。
二人の向かう先は、家族の待つ家であった。
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誰かに揺さぶられて目が覚めた。
枕元にある時計に目を向ければ、もう8時近い。明らかに寝過ぎだ。
まあ、寝坊したからといって困ることは特にないんだが。
布団から身を起こせば、俺を揺すっていた少女が視界に入った。
「おはよう、ととさま」
「おはよう、イルイ。母さんは?」
「朝ごはんの用意。支度ができたから、ととさま起こしてきてって」
「分かった。ありがとうな」
そう言って俺は娘の頭を撫で、布団のそばに置いた”杖”を使い立ち上がる。
イルイの手を借りながら居間に向かえば、そこには俺の最も愛する女性が朝食の準備を終えて待っていた。
「おはようございます、九郎」
「おはよう、美沙。じいちゃんとイングは?」
「朝練に行きました。そろそろ帰ってくるはずです。…いい加減早起きの癖をつけるべきでは?」
「なかなか寝かせてくれないのは誰グフッ」
鳩尾を軽く叩かれた。
「子供の前です、そういう物言いは二人だけの時にしてください」
「へーい」
確かに4歳の子供の前で言うことじゃなかったな。まだ少し寝ぼけてるか。
そうこうしている間にじいちゃんと息子のイングも帰ってきたので5人で席に着く。今日は用事があって昼も夜も外食だからな、美沙の飯が食えるのは朝だけだ。良く味あわなくては。
「「「「「いただきます」」」」」
…うん、今日も美沙の作った飯が美味い。
今日は西暦2001年10月22日。
俺は稲郷九郎28歳。職業、無職だ。
「ああ、マスターが愛する家族の皆さまと穏やかな顔で食事をされている…!」
「尊い…しっかり記録して残さないと、あとみらい姉さまにも送らないと…!」
「なんか変な方向にハジけたなこいつら…」
ビデオカメラで俺達を撮っているかぐやとつばきを見て思う。
本当に俺のアレンジペルソナかお前ら…?
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対BETA地球戦線の最終決戦から、6年が経った。
あの後、きぼうから進発した捜索隊が漂流するハガネを発見。きぼうへと曳航し、負傷者は全員もれなくきぼうの医療機関へと放り込まれた。
ハガネの損傷はひどいもので、死者・負傷者もそれ相応。水無瀬艦長も一時危険な状態だったらしいが、早期の応急処置が功を奏し何とか一命を取り留めた。
かくいう俺も一時生死の境をさまよい、意識が戻った後もしばらく病院に缶詰めとなった。
本来の限界を大きく超えた念動力の行使、加えてそのあと頭を強く打ちつけた影響は大きく。
後遺症として、俺は杖がないと歩けない体となってしまった。
まあ、愛する女性と大切な息子をその程度の犠牲で守れたのだ。歩く時のステッキ一本の手間ぐらい、代償としては安い方だろう。
オペレーションGONGは無事完遂。重頭脳級たるあ号標的はクロガネを中心とする突撃部隊によって討ち取られ、カシュガルハイヴもインド軍と降下兵団によって制圧された。
…惑星破壊級の攻撃を立て続けにぶっ放す羽目になったせいで、ハイヴそのものが耐えられず崩落したので制圧した、というのは少し違う気もするが。
ともかくカシュガルハイヴを丸ごと利用した長射程レーザー攻撃もあって人類側にも少なくない犠牲が出たものの、地球上に存在するハイヴは全て制圧に成功。
残党の処理はそこから一か月ほどで終了した。
地球にBETAが侵入して22年。人類はようやく故郷から奴らを追い出すことができたのだ。
今までの人類なら、ここでまた散り散りに分かれて取り戻したユーラシアの取り合いを始めたのだろうが。
核爆弾や劣化ウラン弾による放射線汚染の浄化に年単位で時間がかかることでこの問題は一時棚上げされた。
ハイヴならいざ知らず、不毛の大地なんぞ取り合っても損しかないからな。制圧されたハイヴは人類の共有物として国連が買い上げることになったし。
そしてBETAが人類の想像をはるかに超える難敵であること、一国家だけではどうにもならない相手であることがあの最終決戦で広く周知されたことで、人類はようやく統一政体のもとに一致団結することを決めた。
そしてめっちゃ揉めた。主に政治形態をどうするかで。
正直このままグダグダ続けてうやむやになるんじゃないかと思っていたんだが、思っていたよりも人類はちゃんとしていたらしい。
2年もかかったものの、人類統一政体として地球連邦が発足。
国連が買い上げたハイヴはそのまま地球連邦で管理することとなった。
なお、放射線汚染浄化のために投入されるゾイドシリーズの製造及び運用費は国連(後に地球連邦)の予算から払われているが、国境線のことで話し合い(ドッグファイト含む)で収まらなかった場合にはその地域に関わるすべての国・組織に汚染浄化にかかる費用を請求すると通達されている。そしてその金額は対象の面積が広いほどに跳ね上がる。
ユーラシアの半分を浄化するなんて通常の方法なら文字通り天文学的な時間と金をかけなくてはならないからな。ゾイドシリーズによって現実的な数字に収まっているとはいえ、予算は有限。肩代わりしてくれるなら肩代わりさせたい、というのが国連(地球連邦)の本音だろう。一番揉めそうな中国やソ連にそんな元気がないからこそ出せた通達なんだろうが。
とにかく発足して4年、いまだに政治的なあれこれで若干の混乱はみられるものの、人類はようやく一丸となることができた。
政治が随分と揉めたのに対して、人類全ての軍事力を結集する地球連邦軍の設立はかなりスムーズに進んだ。
地球連邦加盟の条件が軍事力の放棄だからな、ここに文句を言おうものなら袋叩きにあうだけだ。
当然ながら装備や練度どころか戦術ドクトリンに至るまでまるで違う連中を一つの組織に纏めるってのは相応に大変らしかったが、本気になった人類ってのはすごいもんだ。一年で組織化が終わり、地球連邦発足と同時に月奪還作戦が決行された。
そして半年で奪還した。あの時は開いた口が塞がんなかったわ。
まあ無人の星なのをいいことに修復の完了したハガネによる月オリジナルハイヴへの狙撃、次いで不良在庫と化していた各国の核兵器によるつるべ撃ちで月の重頭脳級を破壊。
そのあとは在庫がなくなるまで核による焦土戦術が繰り広げられた。
光線属種がいないのと後でゾイドシリーズによる放射線除去ができるからとやりたい放題である。月はテラフォーミングの予定はないから宇宙服で何とかなる程度の放射線除去で済むし、ハイヴさえ消し飛ばせばどれだけ残党が残ろうといずれエネルギー切れで活動停止するからな。
核弾頭、本来なら定期的にやってくる着陸ユニット迎撃のために相当数を消費するはずだったんだが、今後の対BETA戦略にとって重要なQP製造のためのG元素を着陸ユニットを鹵獲して得る、という作戦が立案され実行。
ペレグリン級以下宇宙戦力の充実によりマニュアル化されるほどに鹵獲作業が続けられたことで、使う機会を喪失したのだ。
それゆえの一斉在庫処分、というわけだ。地球の軍事力が連邦軍に集約された以上、後生大事に抱えていても地球上でこの先使う機会はほぼないからな。
制圧されたハイヴのG元素生成機関、通称アトリエからもG元素は手に入るが、こっちは人の手で作るよりも多いものの一基につき日に1㎏出ればいい方。
だが着陸ユニットには確実にトン単位で入っているので、手間暇を考えてもかなり効率が良かった。
それだけあれば対BETAステルスシステムもQPも作りたい放題だしな。
本来なら月の拠点化もそれなりに時間がかかっただろうが、きぼうの工場区画を一部切り離して月面に着陸させることで新たに月面基地を作る手間を省略。無人工場と万能採掘機械群による昼夜問わない生産に、きぼうを中継ステーション兼補給基地として使えることもあって月の要衝化は凄まじい速度で進み、今では立派な人類の拠点だ。
そして2年前。月の資源も使っての大規模整備計画により宇宙戦力を大幅に拡充させ、ワープシステムの実用化にも成功した連邦軍はついに火星への逆侵攻を開始。
アステロイドベルトに建設された前進基地にして管理AI”みらい”と合流。かねてからの予定通り火星ハイヴへの絨毯爆撃兼、テラフォーミングのため火星表面の温度上昇を目的としたメテオスコールを敢行。
火星のオリジナルハイヴであるマーズゼロこそメテオストライクだけでは破壊しきれなかったものの、直径10キロクラスの小惑星を立て続けに5個もぶつけられれば如何に火星最大規模のハイヴといえどメインホールは野ざらし状態。
後はそこに大気圏外からトロニウム・バスターキャノンや大型ミサイル、重力衝撃砲に荷電粒子砲を動くものがなくなるまで撃ちまくるだけである。
そうして2年たった現在。火星のハイヴはすべて破壊され、今はゾイドシリーズによる残党処理と火星の環境改善が行われている。スケジュール通りに推移すれば、火星に人が住めるようになるのはおよそ10年後の予定だ。
今の人類の状況はそんなところだ。
で、今の俺が何をしているかだが。
絶賛ニート満喫中である。
退院してすぐ、俺は一切の公職を取り上げられたのだ。
『カシュガルを落としたらいくらでも休んでやると前に言っていたな?有言実行してもらおうではないか』
と、満面の笑みを浮かべた将軍様によって。
まさかの全員協力しての完全締め出しである。自分たちの興味と欲望最優先のマッドどもですら、だ。
いつの間にか香月が俺の研究所の二代目所長に収まってたし。相変わらずマッド共に振り回されているようだが。
要するに今まで散々頑張ったんだから、残りの人生全部休めということらしい。
幸いにして金はある。なんだかんだで特許料だとかでそれなりに稼いでたからな、慎ましく生きるなら人生を百回はやり直せるぐらいには蓄えた。
戦争中は入るそばからあっちこっちに融資だの投資だのしてたが、GONG完遂後は軍事関係からは手を引いて、復興や戦没者の賠償なんかに当てることにした。
生き延びた、いや生かしてもらったからには、彼らのことを語り継ぐのが俺の義務だ。彼らが忘れられてしまわないように、本当に死んでしまわないように。
その他にも個人の趣味の範囲内で多少の融資はしてるが、まあこの辺が形になるのはもう少し先だろう。
とにかく今の俺は、あくせく働く必要はないわけだ。
つーわけで美沙と思いっきりイチャイチャしまくった。
すぐに美沙と籍は入れたが、結婚式は美沙の負担にならないよう俺たちの子供が生まれてからと決め、それまでは美沙の体に配慮しつつ今までできなかったことを二人でしまくった。
出掛けるのはやはり難しかったので今までほとんどしてこなかった家事を美沙から習ったり、二人で難しい料理に挑戦してみたり、子供の名前を考えたり、偉い人の目を盗んでやってきたハイネマンと時間を忘れて激論をぶつけあって美沙に怒られ、兵器以外で人の役に立つものを二人で考えて設計してみたり、美沙の負担にならない程度に愛し合った。
そうして迎えた出産予定日。
特に難産というわけでもなく、とてもスムーズに息子は生まれてきた。
母子ともに大過なく出産を終えることができて一安心し、俺は息子に”イング”という名前を付けた。
日本人らしくない、という者もいたが、美沙はソ連生まれで俺はドイツ人とのハーフだ。それこそ見た目だけなら二人とも日本人らしくない。
そもそも身内は”二人が納得しているならそれでいい”つってたしな。
…名前の由来?息子と対面したときにこれが真っ先に思い浮かんだからだ。
美沙にその名前と俺の知る人物の話をして、その上で二人で決めた。
成長して見た目はますます彼そっくりになってきてるが、性格はわんぱく盛りの子供そのものだ。
そしてイングの誕生から1年、ようやく手がかからなくなってきたところでいよいよ結婚式を挙げよう、ということになった。
なったのだが。
身内だけで慎ましやかに挙げるはずが、将軍様と皇帝陛下(どっちも引退して身軽になった)の出席はまあ予想の範疇ではあった。ハイネマン技師やマーシャル元大統領(ホイットモア元中将に後任任せて勇退した)もありうるかもとは考えていた。
世界中から出席希望の山がくるのは予想外にもほどがある。
なんで英国女王陛下が来るんだよ、そんな軽い腰じゃないだろ。
インド首相?直接の接点なんてほぼないじゃねェか。
非武装の証明としてパンイチでも構わないから出席させてくれ?恥も外聞も放り出してんじゃねえよ中国とソ連。
流石にビッグネームだらけ過ぎて断るに断れず、あれよあれよという間に結婚式の規模はどんどん大規模になっていき。
気が付いたら、帝都丸ごとが会場というなんかすごいことになっていた。
その日は帝都を挙げてのお祭り騒ぎである。オープンカーに乗せられて帝都を練り歩き、帝都城で祝言を上げることになった。俺たち的には市中引き回しの上で公開処刑だが。
それでも白無垢とウエディングドレスを着た美沙は宇宙一綺麗だったので個人的にはプラマイゼロということにした。
あまりにも大変すぎて、式が終わった後は初夜でキャッキャウフフすることもなく二人して布団に倒れて意識を失ったけど。
流石にはしゃぎ過ぎた自覚はあったのか、その後はみんなそっとしておいてくれたが。
そして世界規模の大騒ぎになってしまった結婚式を終えてすぐ、俺たちは二人目を授かった。
…結婚衣装で二人してハッスルしたからなあ。イングの面倒をじいちゃんとかぐやたちが引き受けたうえでしばらく二人きりにしてくれたから、久しぶりであることもあって盛り上がったし。
家事にイングの面倒に美沙の補助にと忙しなく動いていたらすぐにその日はやってきて。
無事に生まれてきた娘に、俺たちは”イルイ”という名前を送ることにした。
やっぱり対面したときにピンと来たんだよなぁ。金髪なことに多少ごちゃごちゃ言う外野もいたが、そこは俺が黙らせたし。
「美沙が生んだなら見た目がどうだろうが(絶対あり得ないが)血の繋がりが無かろうが俺の子供だ。文句あるか」
つったらそれ以上は誰も何も言えなくなったようだし(実際遺伝子検査でも間違いなく俺たちの子供だった)。
それと前後するあたりで正式に地球連邦が発足し、俺はそのお祝いとしてゾヴォーク式の空間転移理論を公開した。
ゾヴォークの空間転移は装置自体がかなり大型であまり小回りも効かない。作るにも運用するにもそれなり以上の資本と技術力が必要な代物だからな。
モノにする人間が現れるまでどのくらいかかるか、などと考えてたら香月が半年で作って見せて驚いた。
タッチの差で2番になったハイネマンが凄い悔しがってたなぁ。
目の下真っ黒にしながら勝ち誇る香月に”じゃあ次な”つって今度はバルマー式とXNディメンションの論文見せたら泡吹いてぶっ倒れたけど。
ハイネマンは狂喜乱舞しながら飛びついたけど。
結局何とかワープ技術の実用化にこぎつけたことで火星への道程は大幅に簡略化され、月奪還からわずか2年で火星侵攻に出ることができたわけだ。
そこからさらに4年が経ち。
いまだにプータロー扱いではあるものの、趣味の範囲内でいろいろ設計しては連邦技術廠(各国のそれを統廃合して数ヶ所にまとめられた)や俺の研究所(いまだに出入り禁止)に送りつけ。
技術者や科学者たちが”稲郷博士の宿題”と呼ぶそれを見て阿鼻叫喚な地獄絵図を引き起こす様を鎧衣部長(出世した)に撮ってきてもらって楽しんでいる。
そんな今日、俺たちは一つの節目を迎える。
正確には俺たちではなく、彼らが、だが。
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「馬子にも衣裳だな」
「人の袴姿みて第一声がそれか…!」
しょうがねぇじゃねぇか。どう見ても着られてる様にしか見えねぇ。こいつ一応武家の血筋のはずなんだがなぁ?
この6年で成長してガタイもよくなったし、実際軍服はしっかり着こなしてるんだが。
「まあいいか。一生に一度の晴れ舞台だ、しっかりやれよ白銀。お前の場合は一度じゃすまないが」
「なんで、なんで一回で終わらないの…?」
俺に聞くなよ。そもそも自業自得だろ。
そう呆れながら、俺は式場控室で頭を抱える白銀と話す。
今日は本来なら白銀の闘いが始まる日。
だがこの世界においては、白銀と彼を愛する者たちの門出の日だ。
正確には白銀は満18歳ではないのだが、嫁ーズとの話し合いの末今日やることになったらしい。
「タケルちゃんの闘いが始まった日を、最高の幸せの日で塗り替えたい」
そう言われては、白銀も嫌とは言えなかったようだ。
結婚可能年齢に達してない問題についてもあ号標的を討ち取った英雄様だ、少々のフライング程度は見逃してもらえる。
そういうことで
「今更メソメソすんなよ、腹くくったんだろ?」
「確かに覚悟はしたしみんなと一緒になれるのは幸せだよ。だけどさ…
あと3回こんな思いをするとなると、こう、今から胃が…!」
「自業自得だろうが」
さっきも言ったとおり、こいつはあ号標的を討ち取った英雄様だ。
そして地球最強戦力の一角であり、当時地球で唯一の空間転移兵器の乗り手でもあった(GONG完遂後、あまりにも過剰性能だということでTTDは封印処置。普段は通常のトロニウムエンジンとして稼働し、所属戦隊の司令が許可しなければ使えないようプロテクトがかけられたが)。
当然のことながら自分の勢力に取り込もうと良からぬこと考える連中が現れ、手っ取り早い方法としてハニートラップを敢行した。
そしてことごとく失敗した。
別に諜報部が頑張ったとか、嫁ーズのガードが堅かったとかそういう理由ではない。
白銀が寄ってきた女、全員堕としただけだ。
プロのハニトラ要員もいたらしいが、例外なく白銀にぞっこんになり所属していた勢力を裏切ったのだ。
裏切りに対して報復しようとした連中もいたが、本当にやった場合地球最強戦力が殴り込んできかねない。
加えて裏切った連中から勢力の内部情報が流れたとなればそっちの火消しに追われてそれどころでもない。
結果として白銀の嫁ーズは20人を超え、未成年もいることから数回に分けて結婚式をすることになったのだ。
「寄ってきた女にきっちりNOを叩きつけなかったお前が悪い。ちょっとでも情が湧いたら例外なく身内に取り込んだ結果だ、甘んじて受け入れろ」
「うう、今更になって不安になってきた…ほんとに皆で幸せになれるかなぁ…?」
「お互いが想い合っているなら心配いらねェだろ。気持ちを伝えて、皆で考えて、いいことがあったら皆で喜び、良くないことには皆で立ち向かう。人間、いや家族ってのはそういうもんだろ」
「おお、さすが既婚者の言葉は説得力ある、気がする?」
「それに篁の家に比べりゃなんてことないだろ。あっちはもっと大変だぞ?
何せ兄妹で結婚したんだから」
「いや、あれを引き合いに出されても…」
ブラコン気味であるのは周知の事実だったが、まさか兄貴押し倒して既成事実で押し通すほどにこじらせてるとは誰も思ってなかったからなぁ。
しかもクリスカとイーニァが協力するとか予想外にも程があるし。
「ユウヤと一緒にいると幸せー!ユイと一緒にいるのも幸せー!だから皆で一緒にいればもっと幸せー!!」
「ユイが本気であるのは確かめたしユウヤも憎からず想っていたのは分かっていたからな。イーニァと半分こするのもユイも混ぜて3等分するのも同じことだろう?」
二人の価値観が世間一般とズレてることにもっと早く気付くべきだったなぁ。
二人の協力のもとユウヤを押し倒した彼女は一発で妊娠。ユウヤは家を出ることも覚悟で唯依を娶ると言い出し、篁家どころか武家社会全体を巻き込んだ大騒動に発展した。
血統を守るとかの理由で武家の家系図をたどれば大体の家は縁戚、つまりは近親だ。この辺つつくと武家という制度そのものに飛び火する。それを忘れて篁叩いた連中がいたもんだから、親父の方が切れてこの話持ち出して方々が巻き込まれたのだ。
…崇継の将軍就任して最初の仕事がこれの後始末で、死んだ目で後処理してたな。遠い海の向こうからミラさんの親父さんたちが首突っ込んできたし。
片やブリッジスの祖父さんは”うちを継げば戸籍上は何も問題はないな!”とか言い出すし(そんなわけがない。というか顔や態度には出してなくても腹の底では娘と孫が気になってたのか。騒動発覚してすぐに飛んできたし)。
ハイネマンも”僕の養子になるかい?”とブリッジスに声かけてたし(こっちもそれで解決するわけがない。まさかまだミラさんに未練があったのだろうか?30も年下の女性に猛アタックされて堕ちたくせに)。
結局すったもんだの果てにユウヤが3人纏めて(イーニァは年齢足りてないので婚約者だが)娶ることになった。
幸いにも生まれてきた子供は健康そのもの。遺伝子疾患の兆候もないので、おそらく普通に生きられるだろう。
…流石に二度目は勘弁願いたい。遺伝子異常がないか調べるための検査機器を爆速で用意する羽目になったからな。つーかあの家は毎回何かやらかさなきゃ気が済まないのだろうか?
「…ええいうだうだ考えるのはやめだ!男は度胸!何としてもみんなで幸せになってやらぁ!!」
ようやく覚悟を決めたのか、叫びながら白銀が立ち上がる。
まあグチグチ言ってはいたが彼女たちを幸せにしたいと思っているのは間違いないからな。
ただ単に今まで培ってきた世間一般の常識との違いに戸惑ってただけだ。そこさえ乗り越えちまえば後は勝手に何とかするだろ。
「心配すんな白銀。近く重婚法可決されるから奇異の目にさらされるのは今だけだ。嫁さん20人は間違いなく歴史に残るがな。よっこのハーレム野郎!」
「励ましてんのか揶揄ってんのかどっちだこの野郎!?」
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控室でぎゃあぎゃあやってたのがウソみたいに、今はきりっとした表情で白銀が式に臨んでいる。
鑑以下今日嫁入りする面々も綺麗に化粧して真っ白な白無垢で並んでいる。
居並ぶ面々も俺の時ほどじゃないがそうそうたるメンバーだ。
そもそも鑑が先代皇帝陛下の血縁だし、白銀は五摂家の血筋。
他の嫁ーズも同じ五摂家や今は連邦軍の上級将校、政治家、元国連事務次官、超A級スパイの娘と、間違いなく全員がお嬢様と呼ばれるような身分だ。
当然参列者もそれなりの連中が集まる。これでも身内に近い人間に絞ったらしいが。
ちなみに結納が終わったら化粧直しして今度はウエディングドレスとタキシードで披露宴だそうだ。ご苦労さんだこと。
俺たちの時は5回ぐらい化粧直しさせられたが。一条のお義母さん、俺たちを着せ替え人形か何かだと勘違いしてないだろうか。今でも美沙宛てに服が届くのだ、ちょっと子供に見せられないようなやつが。
そんなことをつらつら考えている間に結納が終わり。
新郎新婦たちは化粧直しして、俺たちはそのまま披露宴会場に移動、
というところで。
「緊急につきご容赦願います!」
そう言って連邦軍士官の制服を着た人間が走りこんできた。
「デフコン1が発令されました!軍属の者は現時刻を以て原隊に復帰、白銀少佐以下錬鉄戦隊所属の者は至急帰還せよ、とのことです!!」
静寂も一瞬、すぐに全員動き始める。
白銀たちはすぐに着替えるべく控室に飛び込み。
下士官たちは移動手段を抑えるべく外へ。
上級将校や政治家組は伝令に来た士官から話を聞いている。
一瞬体が動きそうになるが、今の俺は民間人だ。
前みたく準軍属というわけでもない、でしゃばるべきではない。
でしゃばろうとしても止められるだろうし。
とりあえず邪魔にならないよう一旦お暇しよう、と美沙と子供たちを促して移動しようとし。
「博士、少し待ってくれ」
崇継に止められた。
見れば、政治家組と上級将校組が悩ましげな顔で俺を見ている。
…どうやら厄介ごとらしい。
「プータローは今日でおしまいかな?」
「正直このまま穏やかに過ごしてほしいと我々は願っていたのだがな。どうやら力を借りざるを得ないらしい」
技術者はハイネマンが現役だし若いのも育ってきている。それを差し置いて俺にお呼びがかかる事態とは…?
「一体何があったのさ?」
「正体不明の宇宙船団が、太陽系に接近中だそうだ」
崇継「一応の確認ですが、博士の仕込みですか?」
九郎「流石に太陽系外まで手は出してねぇよ。やる一歩手前まで行ったことはあるけど」
○そっちも18禁ゲー仕様
九郎「しっかし20人も娶るとか思い切ったよな。大丈夫か、特に夜の方」
白銀「大丈夫なわけないだろ、一晩に満足させられるのはせいぜい10人かそこらだし。軍務もあるから毎日全員の相手なんかとてもとても…」
九郎「睡眠時間確保した上で10人相手できる時点でおかしいと気づけ」
テオドール「コツ教えて…?」
◯変態国家を無礼るな
特撮業界「業績伸びないなぁ…」
玩具業界「そっちはまだマシでしょう、時代劇のおかげで。こっちはけん玉も百人一首も全然売れなくて…」
漫画業界「一度買えばよほど乱暴に使わない限り何十年と使えますもんね。こっちは光るものがある人間はいるんですが、お金がないからろくに支援も出来なくて…」
アニメ業界「戦争に勝つ事が最優先で、勝ったと思えば今度は復興と軍備増強。おかげでこっちは二の次三の次で予算がないし人材も回ってこない。アイデアだけが溜まっていく…」
特撮業界「くそぅ、結局は金か。金さえあれば人を雇えるし、機材も揃えられる。溜めに溜めたアイデアを存分にぶち込んだ絶対に面白い物語を創れるのに…!」
◯郎「金はいくらでも出す。機材もできるだけ良い物を用意させる。時間がどれだけかかっても構わない。…あなたたちが誇れる、最高のものを創り出してくれ」
特撮・玩具・漫画・アニメ業界「ハイヨロコンデー!!」
変態(マッド)に予算と時間を与えたら何が起こるかPART2。
このあと10年足らずでP◯3やニンテンドー◯S相当のゲーム機が発売され、巨人が怪獣と戦う特撮系やジャパニメーション、日本式漫画が空前の大ヒット。
インペリアル・サブカルチャーが世界を席巻し、各国に”あいつら軍事力を封じられたから文化的侵略かましてきやがった”と戦慄させた。そして対抗するために各国でもサブカルチャーへの支援が開始され、急速に娯楽文化が発達していく事となる。
なおこの状況を作り出した元凶は妻の尋問に対し”家族でマ◯パがしたかった”と供述している模様。
そして赤字覚悟で出した金が1000倍になって返ってきて戦慄しているらしい。
○最強の防犯手段
マッド1「まあなんやかんやありまして、軍事技術に関する研究は連邦軍にて一元管理することになりました」
マッド2「ついてはある程度の独立性を保ちつつも最低限の技術レベルは共通化させるべく、ソ連や中国、あと欧州連合から一部の技術者がうちに学びに来ましたので、顔を覚えておくように」
ソ連・中国・欧州技術者「「「よろしくお願いします」」」
マッド1「まあとにもかくにもまず足りてない知識を身に着けてもらわないと話が先に進みませんので、うちの資料庫にしばらく缶詰ですな」
ソ連技術者(いきなり論文の類を見せてもらえるとは…)
中国技術者(開示制限ありとはいえ、大きく出遅れている我々にとってはまさに宝の山)
欧州技術者(何としてもものにしなくては…!)
マッド2「で、ここが資料庫です」
ソ連技術者「…あの、この雑多に積まれた紙の山が資料なのですか?」
中国技術者「適当に平積みされてるだけで全く分類されてない…?」
欧州技術者「この論文ページが抜けてる…この山脈のどこかに埋まってるっていうのか…!?」
マッド1「稲郷博士が口酸っぱくして論文にしろと言うのでみんな書くことは書くんですが、書いた後は資料庫に突っ込んで放りっぱなしなんですよね」
マッド2「どうせ後から見る奴なんていませんし」
ソ連技術者「ぎ、技術や理論を利用する時に見返す必要があるはずでしょう!?」
マッド1「ないですよ。稲郷博士はここに置いてある資料全て暗記してますし」
マッド2「私たちも自分の専門分野に関しては全部暗記してますから、わざわざ紙の資料を見ながらやることなんてありません、時間がもったいないですから。当然データベース化もしてません」
ソ連・中国・欧州技術者「」
マッド1「開示制限に引っかかるヤバめな資料は別の資料庫で管理していますので、ここにある資料はいくらでも見てかまいません。写しは許可されていませんが」
マッド2「一週間ごとにどの程度理解できたのかテストしますが、テスト結果があまりよくない時は皆さんの派遣元と相談の上人員の増加や入れ替えとなりますので」
マッド1・2「「それでは頑張ってくださいね」」
ソ連・中国・欧州技術者「「「…………」」」
研修に来た技術者との一幕。
兵器開発はある程度統廃合されたものの競争原理を持たせるためにいくつかの場所で分かれて行うこととなり(内部の透明性を高めるため人事交流は活発に行われている)、大きく出遅れている3か所の開発局から最も進んでいる稲郷研究所に技術者が派遣されることとなった。
この後彼らは国の垣根を超え、寝る間も惜しんで紙の山と(物理的に)格闘し、文字通り死に物狂いで技術を習得した。
アメリカが参加しなかったのは開示されるレベルの技術を既に習得していることと、ハイネマン経由で研究所の実態を知っていたからである。
ちなみに資料庫はやばい技術の論文を収めたものも存在するが、どっちも大きさは体育館サイズで、資料は天井に届くほどに平積みされている。
マッドを対象とした引き抜き、ハニトラ、誘拐も計画されたことがあったが、そもそもこいつらが外に出ること自体ほぼないし(帝国技術廠に潜り込んで騒動を起こすことはあったが、基本突発的に事を起こすので準備が整う前に回収される)、三大欲がすべて開発欲に統合されている上にそれを存分に満たせる場所などここ以外ない、と誰も首を縦に振らなかった。
○状況が違えば対応も変わる
NASA職員1「まさか今頃になってイカロスⅠからの信号を受信するとはな」
NASA職員2「30年も経ってから応答があるなんて考えもしませんでしたよ」
NASA職員3「で、送られてきた情報の解析は?」
NASA職員2「すぐに信号が途絶えたので限定的ですが、このデータを信じるならば蛇使い座方面のバーナード星系に適合度AAの地球型惑星が存在することになります」
NASA職員1「6光年先か。近いのか遠いのか…」
NASA職員3「どちらにしろ俺たちだけで判断できることじゃない。ホワイトハウス、場合によってはもっと上に上げることになるな」
ホイットモア大統領「6光年先の地球型惑星か…」
NASA職員「得られた情報が限定的で断言は致しかねますが、可能性は大いにあるものかと」
ホイットモア大統領「だが、地球は今BETAから取り戻したユーラシアの復興と地球連邦の発足、そして月奪還作戦の準備の真っただ中だ。流石にそんな遠くに目を向ける余裕はない」
NASA職員「やはり、月の後は火星に?」
ホイットモア大統領「月の結果次第だが、6光年先よりは近いからな」
NASA職員「当面は塩漬けにするしかありませんか」
ホイットモア大統領「とはいえ、将来的な移住先として有望であるのも事実。現在開発中の惑星間無人長距離偵察機が完成次第そちらにも飛ばしてもらえるよう、私の方から働きかけておこう」
NASA職員「ありがとうございます」
なおこの話をした矢先に九郎からワープ技術が公開され、偵察機は同一規格でワープシステム非搭載の”前期型”とワープシステムを搭載し単独で恒星間航行を可能とした”後期型”に別れて開発が進むこととなる。
当然バーナード星系偵察は後期型開発後となり出発予定は年単位で後ろ倒し、それについてNASA関係者は複雑な顔をしていたとか。
火星を手に入れる算段がついてるのでそりゃ片道60年より先にそっちに注力するよね、という話。
…個人的には原作におけるこの話、どこまで本当だったんだろうと疑ってます。最低でも97年時点での発見は嘘だったんじゃないかな、と。
バーナード星系までの距離は光の速さで6年。イカロスⅠはその距離を36年かけて走り切りましたが、地球への信号は当然光の速さなので6年かかる。
つまり30年で観測可能な距離まで近づいた、と。
…光速の20%(秒速6万km)の速度で巡航したのか、こいつ…?
無人機だからこそできたのかもしれませんが、G元素使って60年かかる距離をその半分で走破するだけのロケット技術があってなんで負けてるんだ…?
月面戦争の時点でこの速度のロケットによる質量爆撃で広範囲吹っ飛ばせたはずでは…?
そもそもイカロスⅠは最初からバーナード星系を目指して発進したわけではないので、この30年宇宙を結構ふらふらしていた可能性もある。すると巡航速度はさらに上がり…。
自前でそれだけのロケット技術があるのに、G元素使った最新式の船で最初から行先も確定してるのに60年かかるの…?
地球上ならともかく、宇宙における有人と無人の差ってそこまでデカいんだろうか…。
火星侵攻の件ですが、原作でも主力はXGシリーズの改良型で主砲は荷電粒子砲であったようなので、恐らく設定上存在するというBETA戦闘型との交戦には至ってないんじゃないかな、と。
BETA戦闘型が火星に存在するならその戦闘力は(あくまでも)採掘機械の魔改造品である超重光線級の比ではないはずですし、改良されたとはいえ超重光線級の攻撃で危うくなるXGシリーズごときに負けるような性能はしてないと思われます。可能性としては真っ先にオリジナルハイヴを吹っ飛ばされて、戦闘型の生産命令が出る前に終わったんじゃないかな、と。
そもそも地球に来た重頭脳級がバグっていたのはいいとして、それを送り出した月なり火星なりの重頭脳級はバグってなかったのか、というのも疑問ですし。
拙作においてはバグっていた原因は特異点のせい、ということにしましたが、次の星に渡る着陸ユニットへユニットへと受け継がれてきた、ということにしてます。受け継いだ重頭脳級をことごとくバグらせながら。
今週の更新は以上です。