--Nerv本部中央発令所
「使徒発見ですって!?」
赤いジャケットを羽織りきっていないまま、作戦部長のミサトが慌てて飛び込んできた。作戦部所属のオペレータ日向マコト中尉が、コンソールを操作して主モニターに映像を出す。
「はい。これを見てください。衛星からの映像です」
「間違いなさそうね」
画面には巨大な怪物が十数体、飛行しているところが映し出された。
「場所は?」
「フィリピンのパラワン島沖100km。第三艦隊からの報告です。使徒は、高度300mほどを時速12kmで北東方向に進攻中とのこと」
「パラワン島?なんでそんなとこに?……はっ、まさか弐号機!?今どこ?」
「EVA弐号機は、現在マニラにあるフィリピン統合軍基地に運び込まれた頃です」
地図を表示し、使徒の位置と侵攻方向、統合軍基地を比べてみたが、なんとも言えない。
「う~ん、ちょっと方角が違うかしら。思えばこっちに向かってる様にも見えるし」
「微妙なところです。それにしても、前の使徒からあまり間を置かないで出現しましたね」
「ええ。裏死海文書の通りね……ん?このちっこいのは?」
赤紫の巨大な烏賊のような、丸みを帯びた三角形の頭と、ぬめりとした棒のような胴体を持った使徒。その他に、ただ三角なだけの小さめの使徒も居た。
そこに白衣を羽織りながらリツコが現れる。
「どうやら不完全体、いや幼体といった方がいいかしら?」
「リツコ!」
「衛星と統合軍からのデータをMAGIに分析させていたんだけど面白いことが分かったわ」
「面白いこと?それに幼体って?」
「あの小さいの。A.T.フィールドを持っていないわ。他の使徒は、反応が出てるのに」
「え、じゃあ……」
「そう、通常兵器で落とせるかも。大きいのはしっかりA.T.フィールド持ってるから、まず無理でしょうけどね。密集飛行してるのは、幼体を守っているのかもしれないし」
「無理で結構!全くの役立たずと思ってた統合軍が使えるなら使いまくってやるわ。ちょっとでも数が減らせるんだったらね。と、いうことで総司令。よろしいですか?」
見上げるミサト。その視線の先には碇総司令と冬月副司令。
「問題ない。必要な特務権限は全て発動する。存分にやりたまえ」
「はっ!ありがとうございます!日向君!統合軍参謀本部に連絡を取って!後、EVA零号機と初号機をキャリアへ……リツコ、シンジ君の様子は?」
「まだだめね。起動レベルまでいかないわ」
最初の使徒から、まだ数日しか経っていない。シンジのEVA恐怖症は治らないままだ。
「そっかぁ……まあしょうがないわね。じゃあ初号機なしで……」
「あ、初号機は持っていって。弐号機の起動に使うから」
「は?なんで?」
「初号機のS2機関を使って、弐号機のS2機関も起動させるのよ」
先日の初号機の暴走はNerv本部の破壊をもたらしただけではなく2つの物を残した。一つはロンギヌスの槍、そして、もう一つはS2機関の起動である。
大統一理論の候補である超弦理論を一歩進めた理論、スーパーソレノイド通称S2理論によって説明出来るエネルギーシステムであった為、S2機関と名付けられた。
提唱したのは故葛城ヒデアキ博士。ミサトの父親だ。
第2種永久機関であるそれは、一度起動をすれば膨大なエネルギーを生むが、その起動自体に膨大なエネルギーが必要。その為、これまではS2機関を使用せず、アンビリカルケーブルを通して電気を送っていた。
「つまり、もうへその緒は、いらないってわけ」
「それ凄いじゃない!作戦の幅がぐんと広がるわ!どーして今まで起動させてなかったのよ」
「起動には膨大なエネルギーが必要なだけでなく未知の物を動かす大きな危険があったのよ。本来はネバダにあるNerv北米支部の実験場で、起動試験する予定だったんだけど……」
「まあ、いいわ。儲け儲け、ある物は使わにゃそんそんってね。初号機を持っていけばいいのね?」
「ええ、シンジ君が乗ってなくても、S2機関は火が入ったままよ。今も日本中の電力にも匹敵するエネルギーを絞り出してるの。現地で弐号機に接続してS2機関を起動させるわ」
「分かったわ。初号機と、あとシンジ君も連れて行きましょう。現地で起動できるかもしれないし」
--作戦第一段階『対艦ミサイルによる遠距離攻撃』
ミサト達が、慌てて日本を出発している頃、統合軍第三艦隊によるミサト発案の対使徒殲滅作戦(但し幼体のみ)が遂行されていた。
一隻の発射管制艦を囲むように併走する六隻のミサイル搭載艦から、轟音と共に数十発のミサイルが発射される。
発射管制艦は衛星を介してMAGIとリンクされており、使徒を守るA.T.フィールドの隙間を狙う軌跡にミサイルを誘導した。
発射された極超音速ミサイル『バンディット』は本来対艦に使用されるが、A.T.フィールドという絶対的な防御を持つ使徒に対してはどうだろうか?
結果から言えば全て空振りに終わる。全弾A.T.フィールドに阻まれてしまった。
しかし、完全に無駄に終わったわけではない。警戒した使徒の進攻速度が低下した。作戦は次段階に移る。
--作戦第二段階『航空機からのピンポイント攻撃』
「ドロシー。こちら
『
「了解。護衛任務に移ります」
最新鋭の戦闘機F-6A『ファイヤーブレード』で構成されるコールサイン『
『
「
『おいおい、あんなでかい的を外したのか!?』
「うるせー!ブリーフィングちゃんと聞いてなかったな?あの化け物どもにはバリアがあんだよ。だからその隙間を狙ってんじゃないか」
『バリア?SFかぁ?』
「おまえ本当に聞いてなかったな?A.T.フィールドと言うそうだ。Nervのスーパーコンピュータと連動した攻撃でも駄目だったんだ。こりゃ無理かもな」
『バーカ。そんなもんに頼るからだ。俺が手本みせちゃる』
作戦第二段階の概要はこうだ。
航空機による攻撃は、対艦ミサイルに比べて破壊力が低い。そこで、使徒の弱点である紅玉、コアを直接狙う必要がある。
今回の使徒のコアは、首の付け根下部に存在していた。このコアを叩く為には、高度300mで飛んでいる使徒群のさらに低空から攻撃しなくてはならない。
攻撃機は低空300m以下の使徒の下に潜り込み、コアをA.T.フィールドの隙間から攻撃その後全速で離脱。これを音速くらいの速度で。と、いう曲芸まがいのことをしなければならない。
この作戦を立案したNerv作戦部長葛城ミサト大尉のコメント。
「出来ないとは、言わせないわよんっ☆」
ブリーフィング時に、このコメントを映像付き(ウィンクあり)で見せられたパイロット達の熱狂ぶりは押して知るべし。
最初に突入する隊長機が、さらに低空へ音速に近い速度で進入する。
この位の低空になると空気は粘りをもち上昇気流などで乱れており、高速で飛行するには困難を極めた。
どうせ当たらんだろと、AWACS経由で繋がっているMAGIとのリンクをタッチパネルで操作し切断。代わりに視線によるロックオンに切り替えて使徒のコアに固定した。
使徒群の下に潜り込みつつ、ここだというタイミングで多目的ミサイル『スーパーフォア』を2発発射。すぐに退避コースに機首を巡らせ全速で離脱する。
「目標は!?」
『
後方を見ると、煙を引きながら落下する小型の使徒が見えた。見事コアに当てたようだ。
「ありゃま。本当に当たっちまった……」
『なんでお前が驚いてんだよ』