【完結】NGチルドレン【EVAFF】   作:ガルカンテツ

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Part-C

--Nerv本部技術部長執務室

 技術部長赤木リツコが、端末に向かって作業をしている。今日9機ものEVAが来て、その受け入れにてんてこ舞いだ。

 

 第三新東京市には9機もの巨大輸送機が降りられないため、まず統合軍と戦略自衛隊で共有している新厚木基地に着陸。そこから専用の輸送路でNerv本部のジオフロントまで輸送しEVAのケイジに固定する。

 

 その後もEVAの整備や第四次選抜適格者(フォースチルドレン)による起動試験などあり多忙になることが確定している。自分が2人、いや3人は欲しいところだ。

 

 そのとき、リツコはいきなり後ろから抱きしめられた。

 

「少し痩せたかな?」

 

 耳元で囁くのは、長髪を後ろで縛り無精髭を生やした男だ。リツコは振り返らずにくすくすと微笑む。

 

「そお?」

「相変わらず仕事の虫かい?」

「そうね。誰も声をかけてくれないし」

「それは、可笑しいな。俺だったら、こんな美人ほっておかないのに……」

 

 抱きしめていた男はリツコの顎に手を伸ばし、顔を自分へと向ける。

 

「……止めておくわ。後ろで、こわ~いお姉さんが見てるから」

「え゛っ!!!」

 

 慌てて振り返るが誰もいない。部屋には2人きりだった。こらえ切れずリツコは吹き出す。

 

「ぷっくっくっくっ、変わってないわねリョウちゃん。ミサトは、まだ学校よ」

「りっちゃんには、適わないなー。それにしても葛城が教師とはねー。世も末だ」

 

 『リョウちゃん』と呼ばれた加持リョウジ。ミサトやリツコと同期だ。

 

 よれよれのスーツの割には不潔感は感じられない。無償髭はあるが顔は悪くなくモテそうな雰囲気があった。いわゆるデキる男に見える。ちょっと軽薄さは見て取れるが。

 

「遅かったわね?3週間前には、日本に着いたって聞いたけど」

「ああ、惣流部長から、仕事を言い渡されてね。第二新東京へちょっと」

「ふふ、二重スパイは大変ね」

「『三重』スパイだよ、りっちゃん」

 

 と、ウィンクするNerv情報部所属の加持。情報部長惣流・ゲルハルト・ラングレーの直属の部下だ。

 

「……Seeleね?」

「ああ、惣流部長もヨーロッパで動いているが……総司令は戻っているかい?」

「ええ、3日前に戻ったわ」

「そっか、じゃあ報告に行かなきゃな」

「……なんか分かったのね」

「……Seeleが動きだした。表舞台に出てくるらしい」

 

 先ほどとは打って変わって真剣な表情をみせる。リツコも姿勢を改めた。

 

「早いわね」

「連中も、予想外の事態だったらしいな。初号機の覚醒は」

「……どう動くのかしら」

「分からん。なんか手駒を持っているらしいが……それを惣流部長が探っているんだ」

 

 思案を深めるリツコに対し、また軽い表情に戻ってリョウジは部屋の出口に向かう。

 

「じゃあ報告に行ってくるわ。葛城によろしく言っておいてくれ」

「自分で言いなさい。しばらく居るんでしょ?」

 

 それには答えず手を振って出て行った。一人部屋に残ったリツコ。

 

「Seeleか……母さん……」

 

 

--放課後の2-A教室

「あら、シンジ。まだ居たの?」

「アスカ」

 

 日直の仕事を終えて、返り支度をしていたシンジをアスカが見つける。

 

 アスカの方は、めったに出ない風紀委員会に出席していたため、この時間になった。

 普段は出ていないが、訓練が休みということを他のクラスの友達が知って出てくれとお願いされたのだ。

 

 機密事項のはずだが2年A組全員がEVAのパイロットということは、第一中学で公然の秘密となっている。まあ、第一中学がNerv関係者ばかりということもあるが。

 

「アスカも、まだ居たんだ」

「まあね、委員会が遅くなって……終わった?じゃあ一緒に帰りましょ」

 

 日直日誌を職員室に返して学校を出る。朝は大抵一緒だが、帰りに二人っきりになるのは、随分久しぶりだった。

 普段の放課後はNervで訓練がある為、帰る道が違うし、大抵レイも一緒だ。最初はなんとなく緊張していた二人だったが、すぐ、このゆったりとした時間を楽しみだした。

 

「ね、ちょっと寄ってかない?」

 

 アスカの提案で、寄り道をすることになった。そこは通学路からは外れているが、それほど遠くはない所にある高台の公園だ。眼下には第三新東京市の中心区画が俯瞰できる。

 

「そろそろかな?」

「うん」

 

 アスカは腕時計をみて現在時刻を確認する。

 

 サイレンと共にビルが生えてきた。

 

 高層建築物がにょきにょきと生えてくる様は圧巻だ。しばらくしてビル群が固定されるとライトが点灯され夜の街が完成する。

 

 しばらく眺めていたアスカは新鮮な空気を深呼吸する。

 

「う~~~ん、きもちいい!ここに来るのは久しぶりだわ。シンジは?」

「うん、僕も久しぶり。2年になってから初めてかな?」

 

 幼い頃から、ここに来ていた。シンジ達にとっては馴染みの風景。

 

 最初は、近所で一人暮しをしていた女子高生ミサトに時々連れられて。ミサトが大学進学のため第二新東京市へ行った後は、子供達だけで遊びに来ていた。

 

 工事中のビル群。それが、シンジ達の原風景といってもいい。

 

 自然と、話題が昔の話へと移る。

 

「でね!レイったらレモン味と、ソーダ味アイスキャンディーどっちを食べるか考えているているうちに、両方とも溶けて地面に落ちちゃったの!」

「あははは、レイらしいね」

「そういうとこアンタとそっくりね!」

 

 アスカの何気ない言葉に、ぐさっとくるシンジ。笑顔で固まる。

 

「あのとき、宥めるのに苦労したなぁ。なんで同い年なのにって思ったし」

「アスカの方がお姉さんしてたね。僕ら3人の中では」

「アンタが頼りないからでしょ。半年も年上のくせにぃ」

「あはは」

「あはは、じゃないでしょーもう。考えてみれば、あの頃はレイとずっと一緒だったなぁ……ねぇ……レイのあれって最近どう?」

「……最近はないよ。もう大丈夫なんじゃないかな」

「ならいいけど……大分日が傾いてきたわね。帰ろっか?」

「うん」

 

 日も落ち掛け辺りは大分暗くなっていた。電灯はあるがまだ点灯していないようだ。

 

「……それにしても暗いわね?電灯って点かないのかしら?」

「ああ、今日停電なんだって」

「停電?」

「うん。16:00からだって」

「……レイって先に帰ってるのよね?」

「う、うん。確か霧島さん達と一緒に帰ってたけど……」

「……何か胸騒ぎがするわ。急いで帰りましょ」

 

 言うやいなや、アスカは鞄を持って走り出した。シンジも慌てて着いて行く。

 

 公園からマンションまでは、それほど遠くない。走っているうちに街頭に火が灯り始めた。停電が終わったのだろう。が、マンションを見ると、11階の碇家に明りが点いていない。シンジも不安になってきた。足を速める。

 

 

--コンフォート17マンション11階碇家玄関

 鍵は開いていたが、電気が点いていない。

 

「レイ!!」

 

 アスカが叫ぶように呼んでも返事がない。手分けをして探す。

 それほど広くはないので、すぐ見つかる。レイはリビングの隅にうずくまっていた。

 駆け寄っても反応はない。膝を抱え震えている。

 

「レイ!アタシよ!アスカよ!」

 

 肩を掴んで揺する。レイの目の焦点が合ってきた。

 

「……ア……スカ?」

「もう大丈夫よ。大丈夫だから……」

「……ううぅ……アスカぁ~~」

「よしよし……シンジ~!こっちよ!」

 

 レイは、言わば孤独恐怖症のようなものだった。

 

 普段は、とても明るく、人懐っこいレイだが、時々、孤独を強く意識すると際限ない恐怖を感じてしまう。酷い時は、心神喪失状態にまで陥る。

 

 多くの精神科の医師に診てもらったが直らなかった。幼い頃からの症状だが、両親は愛情込めて大事に育てたので、何かトラウマがあるようなことは起きていない。

 

 ただ、一つだけ思い当たる節がある。それは、レイの生立ちに関連していた。

 

 

--Nerv本部最上階総司令執務室

「……そう……ごめんなさいね、今日は帰れそうにないのよ……うん……お願いね……あ、アスカちゃんと代わってくれる?…………アスカちゃん?ごめんなさい……うん……そう……じゃあ、お願いできるかしら……ええ、キョウコには、私の方からも言っておくわ……ありがとう……いえ、いいわ。……おやすみなさい……」

 

 携帯電話を畳むユイ。先ほどまでは、情報部加持リョウジの話を聞いていた。

 

 彼は、特殊監査部も兼任している特別な存在でもある。直属の情報部長が不在のため総司令副司令に直接報告していたところだ。

 

「ごめんなさい加持君。私用で報告を止めてしまって。続けてくれる?」

「よろしいのですか?」

「ええ、こちらの方が公的に重要ですから」

 

 私的な電話で中断させたことを謝罪して加持に先を促すユイ。

 

「……では、続けます。が、さっきので殆ど終りです。後は、報告書を御読み下さい。最後に一つ……」

「なんだね」

 

 碇総司令がいつものポーズのまま疑問を投げかける。

 

「綾波という姓をご存知ですか?」

「……いや心当りはないが……ユイはどうだ?」

「私も知っている方のなかではありませんわ」

「そうですか。用途不明データの中に日本名があったものですから。では失礼します」

「うむ」

 

 退出する加持。執務室に残るは、碇夫妻。公的なことから私的なことへ話題が移る。

 

「レイの孤独恐怖症の症状が出たわ。ここのところなかったんだけど……やっぱり停電が切っ掛けになってしまったのかしら……」

「……すまん。私がちゃんと教えていれば……」

 

 珍しく、自分から謝るゲンドウ。ユイも自省して顔を曇らせている。

 

「いえ、私も伝えてなかったので同罪ですわ……あ、シンジの顔に落書きした件は、別ですからね。後でオシオキです」

「う、うむ」

 

「今晩、アスカちゃんがレイに付き添ってくれるわ。……こんな時に帰れないなんて……母親失格ね……」

「ユイ……」

 

 ユイを気遣って肩に手を置く。ゲンドウ自身も父親としての役割ができているとは思っていない。特殊な状況を鑑みても両親とも失格と思っていた。

 




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