--東西アメリカ国境付近
国境付近に展開した東アメリカ軍の目の前を、巨大な、そして奇妙な物体が通り過ぎる。一言で表現するならば、青い正八面体だ。それが浮遊していることも驚きに値する。
「……なんだありゃ……」
使徒に対応するため出動してきた大隊の隊長が、双眼鏡で使徒を見た後の第一声がそれだった。副官が資料を見ながら真面目に答える。
「あれが、使徒と呼ばれるものとは聴いていますが」
「それくらい知っておるわ!しかし化け物と聴いていたが、あれは生物なのか?」
「さあ?でも人工物のようにも思えませんが……」
「いずれにしろ不気味なものは排除するに限るな。攻撃を開始しろ」
「はっ!!攻撃開始!!」
命令が各隊に行き渡り攻撃が開始された。
多連装ロケットシステムや155mm榴弾砲から猛然と火が放たれ、一瞬の内に使徒が爆炎に包まれる。爆音が数キロ離れた指揮所まで響く。
「……攻撃止め!」
「はっ!!攻撃停止!!」
大規模攻撃が停止されても、まだ煙が晴れず戦果が確認できずにいる。
隊長は嘆息し副官に愚痴をこぼす。
「やれやれ。やり過ぎたかな。これでは跡形も残らんか」
「そうですね。戦技研の方から、サンプルを回収してくれとは言われていますが」
「破片くらいは残っているだろう。しばらくしたら回収班を組織して向かわせてくれ」
「はい。……煙が晴れてきましたな。……なっ!!!!」
「なに!!!」
予想した結果と全く違い驚愕した。使徒は未だに健在で、傷一つ付いていない。相変わらず青い宝石のような輝きを放っている。
「ぐぬぬぬ……攻撃再開!!!」
「イ、イェッサー--!!攻撃再開!!」
以後、空軍の爆撃も含めて三度攻撃が行われたが、まったくの無傷で弾の無駄に終わった。使徒の方も問題にしていないのか、反撃すらせず淡々と移動している。
--V-22『オスプレイ』コックピット
「後、10分ほどで、東アメリカの国境を超えます」
機長から報告を受け、ミサトは神妙に肯いた。
「多分、要撃機が飛んでくるから、来たら報告して」
「了解」
一度、中立州ネバダのNerv北米支部に寄って、ティルトローター機に乗り換え、再びEVA輸送機編隊と合流した。
日本から持ちこんだEVAは6機。第一中隊第一小隊のアスカ、シンジ、レイと、第一中隊第三小隊の加賀ユキノ、飛龍キミコ、山岸マユミの6人のチルドレンが参加している。
残りの第二中隊第一小隊のヒカリ、トウジ、ケンスケと、第一中隊第二小隊の霧島マナ、ムサシ・リー・ストラスバーグ、浅利ケイタ及び待機チルドレンは第三新東京市でお留守番。
「状況は?」
キャビンに戻ったミサトがノート型端末を操作中の日向マコトに声を掛ける。
「東アメリカ軍の攻撃は四回行われましたが、全て失敗に終わりました。使徒は、依然移動を続けています」
「へっ!ザマーミロってのよ」
「それにしても、なんで第三新東京市ではなく、こっちなんでしょうかね。方角も南下しているだけで、関係なさそうですし」
「さあ?使徒が何考えてるかなんて知ったこっちゃないわよ。殲滅あるのみ。EVAの追加配備が間に合ってよかったわ。安心して作戦ができるし」
「前回は、一種の賭けでしたからね。第三新東京市を留守にしたんですから」
「使徒の多方面同時展開なんて事態は、願い下げだけどね……」
2人で会話していたところに、コックピットから連絡が入る。
『葛城大尉!東アメリカの戦闘機が接近中。警告を受けました!』
窓の外を見ると機影が確認できた。配備して10年以上経っているF-22『ラプター』だ。
「こっちに回して!私が交渉するわ!」
『はい!……あ、ちょっと待ってください!……警告が解除されました!こちらを誘導してくれるそうです!』
「は?」
--東アメリカ北部展開軍臨時司令部
無理やりにでも突破しようとしていたミサトには拍子抜けだったが、地球統合政府から再度、東アメリカ政府に要請が行った為、ギリギリで入国許可が出たようだ。攻撃に失敗したことも関係しているのだろう。
誘導されて使徒の迎撃を行った北部展開軍の司令部に来た。大型テントの中で、司令官と対峙する。明らかに歓迎されてない。
「北部展開軍第17師団フレッチャ-大佐だ」
「地球統合政府直属機関Nerv作戦部長葛城大尉です」
握手する、しかめっ面の生粋軍人と目は笑っていない笑顔の女性。
「先ほど政府から連絡が入った。本作戦の指揮権は君達に移る。お手並みを拝見させてもらおう。まあ、おもちゃのロボットに何ができるとは思えんがね」
笑顔だったミサトのこめかみに血管が浮き出る。
「使徒はA.T.フィールドを持っています。それに対抗できるのは、同じA.T.フィールドを持ったEVANGELIONだけです。四回も攻撃に失敗して、傷一つ付けられないことからもA.T.フィールドの強固さは、お分かりとおもいますが」
ミサトが『四回も』を強調すると大佐は顔を引き攣らせた。
「我々が目標に対し無力だった事は素直に認めよう。だが、君らなら勝てるのかね?」
「そのためのNervです」
Nerv総司令ばりのニヤリとした顔を見せた。