--Nerv作戦部簡易指揮所
撤退する東アメリカ軍を見送った後で、同じ場所に簡易指揮所を建てる。EVA輸送機は、まだ上空で待機中だ。
「あーちょっとスッキリしたわー。ぷぷ、あのときのおっさんの顔ったら」
「あんまり、挑発しないでくださいね。別に彼らと戦うわけじゃないんですから……最近、不機嫌だなー。加持さんと、なんかあったのかな?」
「ひゅ~~~がく~~~ん。なにか言ったかな~~~?」
最後の方はミサトに聞こえないように小声で言ったマコトだったが、しっかりと聞かれてしまったようだ。
「いっいえ!!なにも!あ、そろそろEVAを降ろした方がいいんじゃないでしょうか?」
「ん?んんそうね。アスカ辺りブー垂れてるでしょうから」
「では、使徒と離れた場所に降下させましょう」
誤魔化せてほっとしたマコトはEVA輸送機と連絡をとり指示を出す。
EVA輸送機は、その巨大さから、着陸できる場所が限定される。今回のように着陸できないときは、低空からEVAを投下することになる。
まず、弐号機のアスカから。
--EVA弐号機エントリープラグ内
「んったく、何時まで待たせるのよ。ミサトったら」
既に、プラグスーツに着替えて乗り込み、エントリーを終え、出撃命令を待っていたアスカは、やっぱりブー垂れていた。そこに輸送機パイロットから通信が入る。
『惣流少尉。指揮所から降下許可が出ました。準備はよろしいですか?』
「あ、はい。お願いします。降下タイミングは、そちらからどうぞ」
『了解。ロック解除のカウントを開始します。……5、4、3、2、1、ロック解除』
輸送機オペレータの宣言と同時に、浮遊感生まれた。吊り下げられていたEVA弐号機は、後方にスライドして落下を始める。輸送機はミリタリーパワーで急上昇し離脱。
EVAには、パラシュートは付けていない。両手を広げて少しでも抵抗を減らす。かなりの速度で着地するが、EVAの全身をばねの様にして衝撃を吸収。そのまま運動エネルギーを横にして地面を滑る。数百mほどしたところでやっと停止した。
「ふう。こちら弐号機。着地完了」
『こちら指揮所、了解。そちらで待機していてください。次は、初号機が降下します』
「弐号機、了解。大丈夫かな?シンジ」
EVA初号機も、弐号機と同様のプロセスで降下を開始。しかし、輸送機を離れたとき、今まで沈黙していた使徒に変化が見られた。
簡易指揮所で使徒をモニターしていたオペレータが悲鳴を上げる。
『使徒内部に、高エネルギー反応!!』
EVAの降下は、使徒とかなり離れた場所で行っている。降下地点も丘陵地の影で使徒からは見えない場所のはすだ。しかし、空中で攻撃されては防ぎようがない。
『降下中止!!他の輸送機も退避させて!!』
『駄目です!!初号機は既に分離されました!!』
『円周部を加速!収束していきます!』
ミサトが中止命令を出すが、時すでに遅し。使徒は明確に攻撃をしようとしていた。オペレータのモニタでは使徒のエネルギー収束が見て取れる。加粒子砲のようだ。
『シンジ君!!』
ミサトが悲鳴を上げたとき、アスカは即座に行動を開始した。
初号機の落下地点へ全力で向かう。初号機は降下を続けていた。下手に姿勢を崩すと落下の衝撃に耐えられない。
まだ、使徒から攻撃が来ないが着地を狙っているのだろうか。事実、着地の直前使徒から凄まじい光が放たれた。ブラインドになっていたはずの丘を消し飛ばす。
着地の瞬間、シンジが見たのは、弐号機の足の裏だった。
初号機を蹴飛ばした弐号機の後ろを、高熱の光の束が通り過ぎる。
「シンジ!!大丈夫!?」
『あてて……う、うん!ありがとう!アスカ!』
「直ぐに、ここを離れるわよ!第二射があるかもしれないわ!」
--簡易指揮所
「ふう。アスカの機転で、なんとか助かったわね」
ミサトはとりあえず安堵したが、使徒は、その後第二射もなく沈黙を守っている。
加粒子砲の通過後は地面が溶けてガラス状になっており、それが地平線まで続いていた。作戦部オペレータがその様子をモニタで確認しながら驚いている。
「それにしても物凄い熱量ですね、あの加粒子砲は。直撃していれば恐らくEVAのA.T.フィールドを貫通していました。葛城大尉、どうしましょうか?これでは、うかつに近づけません」
「目には目を。歯には歯をってね。こちらも超長距離からの狙撃よ」
--使徒狙撃地点
使徒から遠く離れた地点で、EVA十四号機が、うつぶせになって狙撃姿勢を取っていた。
十四号機の搭乗者は、山岸マユミ。彼女が選ばれた理由は単純に今居る中で一番射撃の成績がいい為だ。世が世なら、オリンピックの射撃競技で、メダルを取れるだろう。只、実戦経験がないため、チルドレン全体では2,3番目の位置付けだ。
構える銃は、EVA用陽電子砲『ポジトロンライフル』。戦艦でも一撃で消滅する。
小隊長である加賀ユキノの、EVA十弐号機から通信が入る。
『いい?マユミ。撃ったら、直ぐ移動するのよ』
「はい。ユキノさん」
続いて、同じ隊の飛龍キミコからもメッセージが入った。
『マユミさん!がんばってください!』
「ありがとう。キミコさん」
仲間の励ましを受けながら狙撃の準備をする。
狙撃用のスコープを被るが、目標は点のようだった。距離からしても、使徒が地平線にギリギリ隠れないくらいある。これくらい離れると、陽電子は、重力、地球の自転、磁場など大きく影響してくる。もちろん、MAGIからの支援もあるが狙撃手の感覚も必要だ。
(あれも、生物なのかしら??)
既に射撃許可は出ている。最大望遠でも、ぼやける使徒をスコープ越しに睨みつけながら、彼女はトリガーを絞った。
着弾の確認をせずに、その場を離れる。
すぐさま反撃があり、背後で爆発が起きた。マユミの背中を衝撃が襲うが前転受身を取ってなんとか勢いを殺す。間一髪避けられたようだ。
視界の片隅に使徒がA.T.フィールドで攻撃を弾くのが見えた。
--簡易指揮所
作戦部スタッフで先ほどの戦闘を分析している。モニターには、使徒と、直角に曲がる陽電子砲の射線と、その間に輝く八角形が映っていた。
「攻守共に、ほぼパーペキ。まさに空中要塞ねぇ……」
「相転移空間を肉眼で確認できるほど超強力なA.T.フィールドですからね。どうします?」
「ん~~まだ色々試したいことはあるのよね……ちょっち、リツコに連絡を取るわ。検討を続けててちょうだい」
別棟のテントにある通信室へ赴く。常夏になってしまった日本と違ってかなり肌寒い。
セカンドインパクト後、世界各地で気象の変動が起きている。今まで砂漠だった場所に雨が降り、永久凍土が溶け出し、不毛の荒野に草原が出現した。作物の種類も大きく変わるだろう。食料を、肥沃な大地を人類で奪い合う。今も至るところで紛争が起きている。
使徒がやろうとしていることを思えば、それどころではないはずなのに。
そんな、とりとめないことを考えながら歩いていたミサトは、気が付くと通信室に着いていた。暖かなテントに入った途端、オペレータに呼びとめられる。
「あ、大尉!今呼びに行こうと思ったところでした」
「何かあったの?」
「はい。暗号化命令書が届きました。開封の承認をお願いします」
「めーれーしょぉ?なんでそんな物が?碇司令ではないでしょう?」
今まではこんなことはなかった。身に覚えのない命令書に困惑する。
「その辺も開封してみませんと何とも……」
「変ねぇ……あるとすれば
「では、このマイクに向かって認証してください」
「ほい。あーあー、Nevr作戦部長葛城ミサト大尉。承認します。コードは、46495963」
ミサトのやる気のなさそうな声と、いかにもテキトーに決めたコードで承認を行う。
MAGIは、その声とコードから現場最高指揮官と認証して、暗号化された命令書を復元する。命令書の内容は『作戦を一時中断せよ』。発令者はSeeleと記されていた。