【完結】NGチルドレン【EVAFF】   作:ガルカンテツ

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第1話 戦いの『始まり』
Part-A


--2015年 神奈川県第三新東京市

 朝、まだ気温も低く肌寒い。朝靄は晴れておらず風景の輪郭を暈している。

 

 芦ノ湖北岸に建設された第三新東京市は、箱根火山のカルデラ内にあり今の季節には霧が出やすい。まだ日が昇り始めたばかりでさらに霧のため視界が悪い。

 

 そんな街角で全力疾走する人影があった。かなり急いでいる様子で周囲への注意が散漫に見える。人影の進路の先にある十字路の別の方向からも、これまた全力疾走する人影。

 

 このままだと……

 

『うわっ!』

『きゃっ!』

 

 案の定、人影同士がぶつかり、お互い軽く悲鳴を上げ転倒してしまった。勢いの割にはひどい状態ではないようだが、双方とも手をついた状態で道に尻餅を付いている。

 

『いててて』

 

 最初の人影が少年の声で痛みを訴え頭を押さえる。

 

 悲鳴からぶつかった相手は少女であることは明白だが、転倒して確認できていない。慌ててぶつかった相手を見ると、スカートが捲くれて「ちらっとだけ」中が見え……た訳ではなかった。

 

 そこに見えたのは、40mほどもあるオレンジ色の巨大な単眼の人型兵器。

 

 もちろんスカートも履いてないし食パンを咥えてもいない。

 

 最初の人影も生身の人間ではなく紫色の角の生えた巨大な人型兵器だった。

 

 場所も住宅地などではなく、無機質な窓のない巨大なビルが立ち並ぶ区画で、足元の道路に描かれた白線や速度標示と比べても、その巨大さが分かる。

 

「なにやってんのよ、あんた達は~~~~~~~!!」

 

 別の場所にいる黒髪ロングの女性が、呆れ半分怒り半分といった表情で声を上げた。

 

 そこは暗い空間に巨大な3Dモニタや、サブモニタがいたる所に表示され、沢山の人員がコンソールに何か入力していたり、書類を持って移動したり雑然とした雰囲気がある。

 その3Dモニタには2つの巨大な人影が表示されていた。かっこ悪く倒れた状態で。

 

 モニタに映っている紫の巨人のそばに小さいウィンドウが開いた。そこには中性的な黒髪の少年と共に『EVANGELION 01 Shinji.Ikari』と表示されている。

 

「シンジ君、S-17を北上っていう指示だったでしょう?」

 

 指揮官である女性葛城ミサトは呆れ気味にインカムに向かって話す。通信先は紫の巨人に搭乗している少年だ。

 

『え、ここS-17じゃ……』

「そこは、S-19。先週、都市の区画拡張が終わったんで、コードの変更があったでしょう?変更後のコードマップを渡して、予習しておきなさいっていったのに……」

 

『すみません……ミサトさん』

「まあ、しょうがないわね。今日の放課後のシミュレータで、そこんとこ集中的にやるわよ!それと、レイ!」

『ひゃい!』

 

 今度はオレンジ色の巨人のそばにウィンドウが開き蒼銀の髪の少女が表示された。『EVANGELION 00 Rei.Ikari』という文字と共にびっくり顔を晒している。

 

「もうちょっと機敏に動きなさい。そんなんじゃ作戦行動に支障がでるわよ」

『は~~い』

 

 いきなり矛先を向けられた少女は、今度は不貞腐れた様子を見せている。コロコロ変わる表情が可愛い。ミサトは気を取り直して少年と少女に告げる。

 

「じゃあ今朝の訓練は、終了とします。回収ルートはシンジ君がB-15。レイがB-14ね。何時までもそんな格好をしていると恥ずかしいわよ。レイ」

『はっ!』

 

 EVANGELION零号機パイロットの少女碇レイは、自分が(正確には零号機が)大股開きの状態で尻を着いていることに気がついた。

 

『きゃっ!お兄ちゃんのエッチ』

 

 と、言って股を閉じる零号機。シナを作ったりして、ちょっち気持ち悪い。

 

『な、』

 

 EVANGELION初号機のパイロットでありレイの兄である少年碇シンジが妹に抗議しようとしたのを遮ってミサトは呆れ顔で急かす。

 

「はいはーい、じゃれ合ってる時間ないから早く戻ってね~遅刻はだめよ~」

『え、ああ~~もうこんな時間~?シャワー浴びてる時間なくなっちゃう~』

「まあ、今日は私が車で送ってあげるわ」

『『えーーー!』』

「なによ。なんか文句あんの」

『『いえ……』』

「だったらさっさと戻る!」

『『は~~い』』

「じゃあ日向君、EVAが回収ルートに乗ったらすぐ下げてねぇ」

 

 EVAがしゃがむと、四角に割れた道路ごと沈んでいった。

 

 道路は広く巨大なロボットが全力疾走しても問題ない強度がある。桝目状に区画整理された街には、兵器を満載した兵装ビルが立ち並ぶ。サイレンが鳴り響くと兵装ビルが沈み、これから人間を満載する予定のオフィスビルが生えてくる。

 

 ここは第三新東京市。地球統合政府の直轄都市であり、武装した要塞都市でもある。

 

 市議会はあるが、実質統治しているのは地球統合政府の重要機関、ドイツ語で神経を表す単語でもある『Nerv(ネルフ)』だ。

 

 時は西暦2015年、新世紀を迎える前に起きた大災害、セカンドインパクトにより世界は一変していた。

 

 

--第三新東京市立第一中学校2年A組教室

 教室には横6列縦4列で24個の席が置かれている。地球統合政府の直轄都市にしては一クラス24人は少ないようだが、セカンドインパクトという大惨事の世界では珍しいことではない。

 

 時刻は8:25で朝のホームルーム5分前。生徒はほとんど揃っている。

 

「なんや、シンジ達遅っそいな~また遅刻かぁ?」

 

 黒髪短髪に黒ジャージの少年が、窓際の席で椅子に寄りかかりながら暇を持て余した様子で独り言ちた。その独り言に傍にいた眼鏡の少年がハンディカメラをいじりながら反応する。

 

「いや、今日は確か、早朝訓練だったぜ。実機を使った」

「そやったか?そういやミサトセンセもまだ……」

 

 眼鏡の少年に、ジャージの少年が話そうとしたとき大きなエンジン音が響いた。

 

 この特徴的はエンジン音は知っている限りではミサトのアルピーヌ・ルノーA310だけだ。クラッシックカーを右ハンドルの電気自動車にしているはずだが、本来電気自動車はほぼ無音でありこれほど大きな音はしない。

 

「おっ!ミサトセンセや!」

 

 ジャージの少年鈴原トウジが叫ぶまでもなく窓に駆け寄る男子生徒達、眼鏡の少年相田ケンスケは既にハンディカメラを構えて録画を始めている。

 

 豪快なスピンターンで綺麗に職員用駐車場に入れた。どこにもぶつけない自信があるのだろうか。確かレストアが終わったばかりで33回ローンが残っていると言っていた気がするが。

 

 まず車から出てきたのは碇兄妹で2人とも首を垂れてフラフラしている。

 

 エンジンを停止し運転席から出てきたミサトはピンピンしており、なにかすっきりした表情であった。

 

 校舎の窓に連なる男子生徒を見つけると声援のする方を向いてピースサイン。また歓声が上がった。第一中学校の葛城ミサト教諭は、長い黒髪の美人で気さくな性格の為、男子生徒のみならず女子生徒にも人気があるようだ。

 

 5分ほどした後、碇兄妹が教室に到着。まだふらふらしている。

 

「お、おはよう……」

「おはようさん。災難やったな」

「うん……」

 

 トウジの近くに来たシンジが同情の声を掛けられながら席に着く。

 

 妹のレイも椅子に座るなり机に突っ伏した。女子が心配そうに声を掛けているようだ。校舎に入るときミサトは職員室に向かったので、まだ来ていない。

 

 既にHR開始の時刻を過ぎており、生徒は大体席に付いている。ようやく落ち着いたシンジがノートPCを開こうとしたとき、おさげの少女が近づいて話しかけてきた。

 

「碇君、アスカ見なかった?」

「ん?アスカなら朝本部に行った後、学校来るって言ってたけど」

「それがまだ来ていないのよ」

「あれ?」

 

 言われて幼馴染である惣流アスカの席を見ると確かに来ていない。今朝、碇家恒例行事の兄妹叩き起こしを受けたばかりだからとっくに着いていると思っていた。

 

「まだ本部なのかな」

「何かあったのかしら?」

 

 クラス委員長であり、アスカの親友であるおさげの少女洞木ヒカリも心配そうだ。

 

 そこに教室の扉を勢いよく開けてクラス担任のミサトが入ってきた。

 

「あ、きりーつ!」

 

 ヒカリは直ぐさま委員長としての責務を果たすため急いで自席に戻り、担任が教卓に着くと朝の号令を出す。クラスメイトも号令に従い立ち上がった。

 

「礼!」

「「「おはようございます!」」」

「はい、おはよう」

 

 今日はレモンカラーのスーツで教師らしく見える。笑顔で挨拶を返し目線でヒカリに促す。

 

「着席!」

 

 ガタガタと全員席に付き教師の反応を待つ。表面上はいつもの笑顔だが、何となく雰囲気が違うことが皆に分かった。教室が静かになり数秒後ミサトは切り出す。

 

「本日の授業は中止です」

 

 ざわっとし掛けたところに次の言葉で緊張が走る。

 

「先ほどコードA-503が発令されました」

 

 誰も声を発しなかった。その言葉を飲み込むように喉をゴクリと鳴らす者もいる。その様子を見渡してミサトは軽く頷いた。

 

「コードの意味は分かっているようね。では全員本部に移動して頂戴。あ、碇シンジ君とレイは先に総司令執務室に行って総司令に会って来てね」

「は、はい」

「よろしい。他の皆は着替えて本部ブリーフィングルームで待機。では」

 

 教師ミサトはそれだけ伝えると教室を足早に出て行く。残された生徒はしばらく固まっていたが、ミサトの退出の後緊張が解けたのか各自動き出した。

 

「ついに来たか」

 

 ケンスケがぽつりと発した言葉はクラスメイト全員の心情と一致していた。

 

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