【完結】NGチルドレン【EVAFF】   作:ガルカンテツ

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Part-B

--第一中学敷地内25mプール

 2年A組の月曜日二時限目の時間割は体育。男子は、グラウンドでサッカー。女子は、プールで水泳。A組とB組合同での授業だ。

 

 サッカーで組織的行動を学び、戦略眼を育て、水泳で心肺能力を高め、L.C.Lに適応する為……なんてことではなく、只の義務教育の範疇。市の教育委員会の方針による。

 

 月曜日の朝から体育とは、結構きつそうだが、一旦始まれば問題なし。有り余るエネルギーを垂れ流しまくる。なんだかんだ言って頭使うより体動かす方が好きなやつは多い。

 

  今、サッカーコートのライン際を全力のドリブルで敵陣に切りこんでいる黒ジャージなんか、その筆頭だろう。

 

「ヒーカーリー。何みてんのぉ?」

(びっくぅ)

 

 女子の水泳の授業では、50m自由形の計測中だ。一度に出来る人数が限られるので、殆どが暇人。

 既に泳ぎ終わってるヒカリは、金網越しにグラウンドを見ていたところをレイに話しかけられた。ものすごい勢いで振り返る。

 

 普段は、お下げにしている意外に長い髪を、真面目な彼女らしく全て水泳帽に収めていた。おでこ全開なので、大分印象が違って見える。水着は所々ラインの入った紺の競泳水着。

 

 対して話しかけてきたレイは水泳帽をプラチナブルーの髪の上に乗せているだけだ。

 

「な、な、なんでもないわよっ」

「ふ~~~ん。あ!トウジ君がシュートした!」

「え゛っ!!」

 

 レイに振り返った以上のスピードで、再び金網に噛り付く。

 

 見えたのは、ゆっくりと自陣に戻るトウジであった。

 

「マナちゃん!!タイムは!」

「おおぅ!コンマ014秒!!新記録です!」

 

 いつのまにか側に来ていた霧島マナが、ストップウォッチを見ながら叫ぶ。彼女は水泳帽も被っていない。持っているストップウォッチは、コンマ3桁なんて測れないので適当に言ったのだろう。

 

 固まった姿勢のヒカリのこめかみに汗が一筋。

 

「いやー素晴らしい記録が出ましたねぇ。解説の霧島さん」

「分析すると14歳の少女の筋力では限界以上のターン速度ですよ。実況の碇さん」

「その要因とは、一体!?」

「ずばり!恋する乙女パワーでしょう!!」

 

 間。

 

「「ぷっ!きゃははは!」」

 

 向かい合って爆笑する2人。ヒカリのこめかみには、既に汗ではなく血管が浮かんでいることに気が付かない。

 

「あ~~~ん~~~た~~~たち~~~!」

「「きゃーーーヒカリが怒ったぁーーー!」」

 

 やっぱり笑いながら逃げる。顔真っ赤なヒカリは恥ずかしさからか、いつもの迫力はない。

 

 そして直ぐにプールサイドで走っていたことをミサトに見つかってしまう3人。並んで怒られる。

 

 ヒカリはものすごく不本意な顔だ。

 

「なにやってんだか……」

 

 それを眺めながらつぶやくアスカ。

 

 北米での戦闘で、昨日まで入院していたレイは何であんなに元気なんだろう?まあ、入院といっても体はなんともなく只の検査入院だったからかもしれないが。

 

 ふと、男子がサッカーをしているグラウンドを見る。今はハーフタイムらしく、全員コートの外だ。3バカトリオが目に入る。シンジの隣に、謎の転校生渚カヲルが居た。肩に手を掛け何か話しているらしい。

 

 なんとなく、ムッとする。

 

 何故、素性もしれないものがクラスメイトになっているのか、ミサトを問い詰めたが、

「総司令が、転入を許可したのよ。これ以上は何も言えないわ。まあ、眼の届く範囲に置いておいた方が安心するっしょ」

 と、いう返事しかなかった。

 

 気に入らない。何が気に入らないかと言えば、連れて来た張本人シンジはともかく、今日初めて会ったレイも気に入っているようだった。確かにシンジの話を聞いた限りでは悪いやつではなさそうだが。

 

「ねーねーアスカー」

 

 振り返るとB組の女の子2人が目に入った。アスカは小さい頃から、この町に居たので、結構、地元の友人は多い。

 

「なに?」

「A組に、カッコイイ転校生が来たんだって?」

 

 まだ2時限目なのに、もう噂が広がっている。アスカは渋い顔のまま、親指で指差す。

 

「アレのこと?」

「あ、あの銀髪の人かな!?ホントだぁ~かっこいぃ~!!」

「もっと近くで見たいよねーー。……碇君と仲いいのかしら?」

 

 2人はカヲルを見つけて、きゃいきゃいと、はしゃぐ。シンジの肩に手を回しているカヲルが目に入る。何か笑いあっているようだ。

 

「ああ~~美少年2人!!絵になるわ~~!まさに禁断の園ってカンジ~!」

「ちょっ、ちょっと止めなよ……」

「あ、アスカ……ごめ」

 

 さすがに度が過ぎたと謝ろうとしたが、アスカは2人に構わず、カヲルの方を睨みながら触れている金網をメキっと軋ませていた。

 

「やっぱり、気に入らない!」

「「ひぃ~~~!!」」

 

 

--三時限目『数学』の後の休み時間

 いつもの催眠ウェイブこと、古鷹教諭のセカンドインパクト体験記が炸裂した。本日の犠牲者は22名。体育の後とあって、平均よりも多い。

 

 アスカは分厚い現国の教科書で、シンジの頭を叩いた。

 

「ほら、シンジ。さっさと起きる!」

「んん~~もうちょっと寝かせて……」

「それは、もういいっつーの!」

 

 と、言って再度現国の教科書で叩く。他の教科は端末を使用するが国語だけは紙の教科書を使用している。読書と言えば紙媒体だからだろうか。分厚いのでバクっと重い音が鳴る。

 

「いててて。ふぁ~~~。おはようアスカ」

「おはようじゃない!」

 

 三度目。

 

「あいた!」

 

 アスカは三回叩くと、自分の席に戻ってしまった。

 

「??なんか機嫌悪いな??」

 

 疑問符だらけの頭で、やっと目が醒めたシンジ。後ろの席のカヲルに話しかける。

 

「カヲル君は、起きてたの?」

 

 カヲルは、笑顔のまま動かない。

 

「?カヲル君?」

 

 シンジは、カヲルの眼の前で手を振ってみる。へんじがない。ただのしかばねのようだ。

 訂正。本日の犠牲者は、23名でした。

 

 

 少し離れた一番後ろの席で早弁をしていたトウジだったが、真ん中分けの髪に虎縞バンダナをしている天城シズマが近寄って声を掛けてきた。

 

「おい、トウジ」

「んあ?」

 

 天城シズマも当然チルドレンだ。肌は日に焼け色黒で、その体は筋肉質だがボディービルダーのような大きな筋肉ではなく、アスリートのように引き締まっている。シズマの特技は格闘だ。

 

 使徒との戦闘では近ければ近いほどA.T.フィールドを中和しやすく攻撃が可能になる。格闘能力は使徒戦に役立つ。

 

 シズマは正当な流派の格闘術を修めているが、同じく格闘が特技の鈴原トウジは完全な我流だった。

 相反する2人だが、反発し合う分けでもなく普通に仲がいい。同じ怪しい関西弁というのもあるのかもしれない。シズマはカヲルの方を見ながらトウジに問いかける。

 

「ええんか?」

「なにがや?」

「アイツだよ。渚とかいうやつ」

 

 窓際のカヲルの方を見る。シンジやアスカと何やらもめてるようだ。

 

「ちょいまち。これ食うてまうわ」

「ったく……なあ、ソウスケはどう思う?」

 

 シズマは早弁に夢中のトウジをほっといて、隣の席にいた長良ソウスケに話を振る。彼は拳銃の分解整備をしていた。口径9mmのグロック社製自動拳銃グロック19。本物だ。

 

 第四次選抜適格者(フォースチルドレン)は、年齢からいって殆どの者は才能を買われて集められたが、ソウスケは数少ない実績を買われた者の一人だ。元々統合軍対テロ特殊部隊にいた彼はチルドレンとしてだけでなく、そのチルドレンの護衛も任務の内だった。

 

「別にどうも思わん」

 

 むっつり顔で答える。別に怒っている訳ではない。元々そういう顔なのだ。よくよく見ればイイ男なのだが。

 

「なんでや!!納得できるか!なんでいきなり来て『フィフス』やねん!敵のスパイかもしれへんやろ!!」

 

「我々の『敵』は使徒だ。やつらがスパイなんか送ってきたら、それこそ驚きだ。軍事機密目的の線は、あるかもしれないが、やつはEVAに乗って来ている。あれ以上の機密はないだろう。ともかく上官が問題ないと判断したんだ。気にするな」

「だってよぉー」

「ワシもソウスケに賛成やな」

 

 早くも弁当を食い終わったトウジは爪楊枝を使いつつ会話に加わる。昼は昼で残飯処理をする予定。

 

「トウジもソウスケと同意見かいな」

「まあ、得体の知れん奴やが、仮にもシンジのツレや。悪いやっちゃないやろ」

「シンジの?根拠ないやろ」

「シンジの人を見る眼は確かなんやがな。そんなに気になるんやったら、本性を引きだしゃええやろ。なあソウスケ?」

「肯定だ。今日は『近接格闘訓練』だな」

「なるほど……」

 

 その意味を理解したシズマは獰猛な笑みを浮かべる。トウジは呆れ顔だ。

 

「……手加減したれよ?なんか弱そうやん」

 

 

--昼休み

「ちょっと、メシ買ってくるわ。先行っててくれ」

 

 ケンスケは、いつも購買でパンを買う。ついこの間まではトウジと一緒だったが思わぬ裏切りにあって一人でいくはめになった。ちょっと寂しい。

 

「あ、相田君。僕もいっしょにいっていいかい?」

「ん?ああ、いいぜ」

 

 そこに謎の転校生カヲルが声を掛けてきた。彼も購買に行くらしい。道中沈黙にならないようにケンスケから話し掛ける。

 

「えーと、渚もパンなのか?」

「カヲルでいいよ。お弁当を作ることなんで出来ないからね」

「じゃあ、俺もケンスケでいいよ。そっか、今ジオフロントだっけ?」

「うん。そのうち部屋を用意してくれるそうだよ」

 

 最初は、話しづらいケンスケだったが、実際話してみると、そうでもなかった。あっという間に打ち解けて、旧来の友人のように接する。

 

「そうなんだよ。トウジのやつが裏切りやがってさ」

「ふふふ、そうか洞木さんがねぇ。彼女はトウジ君のどこを好きになったのかな?」

「それは、いいんちょ本人に聞いてくれ。もっとも教えてくれるとは思えないけどね。あ、おばちゃん!俺、カツサンドとオレンジジュースね!」

「はいはい、320円ね」

 

 購買部のおばちゃんにお金を渡す。ここでパンを買う生徒は少数派だ。それほど混んではいない。カヲルも野菜サンドを買う。

 

「あれ?飲み物はいいのか?」

「ああ、それは持参してきたんだ」

 

 

--校舎の屋上

 2人が屋上に到着すると、シンジとトウジが既にシートを広げて場所を取っていた。直ぐ側にアスカ達5人が輪になって食べている。

 

 屋上に出たカヲルは深呼吸した。常夏の日本だが意外と涼しく過ごしやすそうだ。

 

「うーーん。結構、気持ちイイね。もっと暑いかと思ったけど」

「ああ、この辺は標高が高いんだ。風も涼しいしな。さ、食おうぜ」

 

 カヲルとケンスケもシンジ達の所に行って座る。

 

「待ちくたびれたでぇ。腹減って死にそうや!いっただきまーす」

「トウジ、3時限の休み時間も食べてなかった?」

 

 そんなトウジとシンジの掛け合いを聞きながら、カヲルが一旦教室に寄って持ってきた鞄を探る。ケンスケがそれに気が付いて、気になったことを聞いてみた。

 

「カヲル、飲み物って何持ってきたんだ?」

「これさ」

 

 と言ってビンとグラスを出す。きゅぽっ。とくとくとく。コルク栓抜きで開けるとワイングラスにソレを注ぐ。

 

「んーー、いい香りだ。やっぱりワインは白だね。(こく)んん喉越しもいい。芳醇な風味が楽しめるよ。どうだい?ケンスケ君も」

 

 固まる一同。

 

「?どうしたんだい?」

「あ、あのねカヲル君。日本じゃ、お酒は20才からなんだ」

「そうだぜ?それにいいんちょに見つかりでもしたら……」

 

 ケンスケの忠告も空しく、既に背後にヒカリが立っていた。

 

「ふっっ!不良よぉーー!!!」

 

 当然「フケツ」ではない。お食事中だし。

 





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