『何をしている。ガギエルが来たぞ』
4人とは、また別の、アスカやミサトの知らない、カヲルとシンジは知っている声がした。
画面に顔は出ない。それほど迫力のある声でもなかったが、四人は慌て始める。
『は、はい。アンカー様!』
『オ、オウ!リヒト行くで!』
『待って!アンカー様ぁ見ててねぇん!』
『で、では、葛城大尉?今回はワタクシ達が、使徒を退治してみせますわ』
「え?」
ミサトがあっけにとられている間に、画面が切り替わった。
四体の
その内、漆黒と黄色の機体が翼を広げ飛び出す。カメラは、それを背後から追ってモニターに映しつづける。そこは、何処かの海岸のようだ。正確な場所はわからない。
沖に向けて飛び続けると海面に大きな影が見え始める。
突然、海が盛り上がり、巨大な口が飛び出す。口の奥に赤いコア。使徒だ。
その鋭い牙を持った巨大な口は漆黒の機体を食いちぎろうとするが、簡単に避けられてしまう。そのまま重力を無視して黄色の機体に向かった。
鮫とも鯨とも鯱とも言えない体をした使徒。大きさはこれまでの使徒の数倍以上はある。
一口でEVAを飲み込めそうだ。事実、黄色の機体は避けもせずに食べられてしまった。
しかし使徒が口を閉じた瞬間、内部で爆発が起き、爆煙とともに出てきた。無傷。
煙を吐きながら使徒は落下していく。海面に落ちると同時に爆発した。
今度は海面から2,3つの影が大きくなり同じ形の使徒が飛び出てくる。黄色の機体は、両手に持った2丁のマシンガンで使徒を迎撃した。
『キャハハハハハハハ!!!』
明らかに楽しんでいる笑い声がスピーカーから聞こえた。
次々と飛び出してくる巨大な使徒。
漆黒の機体は肩のウェポンラックから、棒状のものを出した。ソレを振るとケースが2つに折れて中から刃が出てくる。折りたたみ式のナイフ。いわゆるバタフライ・ナイフというやつだ。
漆黒の機体はナイフで使徒を切り刻むだけでなく、口を大きく開けて、お返しとばかり使徒に噛み付いている。
『ぺっぺっ!ごっつマジイやん!魚野郎のくせによ!ぎゃははは!』
鋭い牙を見せながら、笑うような動作を見せる漆黒の機体。そこまでシンクロしているらしい。
空中で入り乱れる使徒とErzengel。使徒は段々と数を減らす。
黄色の機体は、右肩のミサイルポッドからマイクロミサイルを連射している。両手のマシンガンとも合わせて、爆炎の花が咲き狂っていた。
『ああーーもーチョーウザイ!!!キャハハハハ!!ミンナ死んじゃえーーー!!!』
黄色の機体が戦闘エリアから少し離れると、左肩のポッドから大きめのミサイルが発射された。一瞬後に画面が全て白く染まる。
少しカメラが離れると尋常ではない規模の爆発が起きていた。
「まさかN2弾頭!?!!そんな!あれは、統合軍でも使用禁止になったはずよ!」
それまで静観していたミサトだったが、思わず叫んでしまう。しかしミサトに誰も答えることなく戦闘は続く。
爆発の後に発生したキノコ雲から、漆黒の機体が飛び出す。やはり無傷。
『このアマ!!ワイを殺す気か!!!』
『キャハハハ!!だってウザかったんだもん!』
と、いう声を残してカメラは、その場を離れ海岸に向かう。ここでも戦闘がおきていた。
使徒が海岸へ向けて、海から飛び出してくる。海岸で待ち構えるカーキ色の機体は、長砲身のライフルで口の中に見えているコアを撃つ。1発で撃破。1歩も動かずに次々と使徒を殲滅していった。
『くっくっく!簡単!簡単!まるで射的ゲームだな!』
場面がまた変わり、くすんだ赤色の機体が鞭を振りまわしていた。
その鞭にアスカは見覚えがある。あのフィリピンで戦った使徒の触手だ。鞭は伸縮自在のようで、一帯を埋め尽くすほどの勢いで振りまわされていた。口の中のコアごと切り刻まれる使徒。ハイヒールのような足で破片を踏みにじる。
『弱い!弱い!弱い!弱過ぎますわぁ!おーーーほっほっほっほ!!』
「こ、こいつら、笑わないと戦えないの??」
ひくつくアスカの、袖が引っ張られる。
「ん?何よシンジ?今忙しいから後でね」
「ねーアスカ。この映像ってどうやって撮っているのかな?」
「え?」
確かに妙だ。ヘリ等で撮影してるとは思えない。映像が安定しているし移動が早すぎる。誰がどのようにして撮影しているのだろうか?
『ほう、よく気が付いたな。碇シンジ』
また、映像が切り替わる。今度は固定カメラらしく先ほどよりも画像が粗い。映し出されたのは北米での使徒戦で目撃した、銀色のErzengel。
『裏コード:バイエルンの窓。この機体の能力だ』
銀色の機体の頭部は、EVA初号機と酷似している。
しかし初号機の角にあたる部分がなく、変わりに縦に割れた大きな三番目の眼が存在していた。
突然、背後の海が大きく盛り上がり、水柱から使徒が出てくる。今まで戦っていたものの中で一番大きい。超巨大な口を開けて見せる牙一つがEVAくらいあった。
しかし、銀色の機体は振り向かずに背中の十字架に手をかける。
『碇シンジ。良く見ておけ。オレと貴様との実力の違いを』
一閃。銀色の機体を飲み込もうとした使徒がコアごと縦に割れた。
背中の十字架は巨大な剣だった。
『今のは始祖か。ならば戦闘は終了だな。葛城大尉』
「は、はい!?」
『使徒殲滅に協力出来るのは今回だけです。残りの使徒をよろしくお願いします』
「……色々聞きたいことはあるけど、まず君が誰かを知りたいわ」
ミサトは、そう言いながらも大体予想はついていた。Seeleチルドレンは7人。先ほどの4人と渚カヲル。あと、シンジの報告にもあった碇レイ似の少女。そして……
画面が切り替わる。短めの金髪、意思の強そうな青い瞳の少年。
『失礼しました。オレの名前は、グラオベ・アンカーと言います。Seele所属の特務部隊『Erzengel隊』の隊長を勤めております。以後、お見知りおきを、葛城ミサト大尉殿』
意外にも丁寧に返答してきたが、それよりも表示された顔に驚く。
(シンジ君!?!)
その顔は、とてもよくシンジに似ていた。
しかし改めて見ると、金髪なのと青い目。何よりも、その青い目に宿る意思の強さは、いつも、のほほんとしているシンジと違っていた。
『では』
「……通信が切れました」
マコトが分かりきったことを報告する。主モニターには砂嵐が映されていた。
その3日後、残り12機のEVAが届く。第三新東京市に24機のEVAが揃った。
続く