Part-A
--Nerv本部最上階総司令執務室
「葛城ミサト、ただいま出頭いたしました!」
いつもの席に座っている碇総司令の前に進み出る。
総司令の両脇に冬月副司令と惣流情報部長。ゲンドウは、机に二本線の入った襟章を転がした。
「葛城大尉、本日付けで少佐に任命する」
「は?はい!謹んで拝命致します!」
それきり黙る総司令。もう言うことはないようだ。こういうとき気が利くのが冬月副司令。
「昇進おめでとう葛城君。これからも精進してくれたまえ」
「ありがとうございます」
「チルドレンの様子はどうかね」
「はい、追加配備されたEVAもシンクロテストが終りました。今は実戦を想定した訓練に移っています」
葛城ミサト『少佐』率いる『対使徒戦術旅団』は、ようやく完全装備状態になった。
群体で襲ってくる使徒に対抗する為、全世界の力を結集して造られた24機のEVA。予備はない。これに乗るのは14歳の少年少女24人チルドレン。もちろん予備はない。
全世界から集められた子供達。いろいろな個性がぶつかり合う。熱い奴もいるし、冷めた奴もしかり。
最後の追加配備が終了した夜。受入作業が終了したEVAが駐留するケイジに熱い奴、飛鷹ノリコが居た。
「苦節二十八年!!待ちに待ってた私の乗機が、やっと来たのね!!」
「あんた、まだ14歳でショ」
冷めた奴、ユング・レキシントンも一緒に居た。
彼女達は、同じ第二中隊第三小隊のメンバー。一応、ユングが小隊長だ。
ノリコは目の前のEVAに向かって、ずびしっと宣言する。
「あなたを『ガンバスター』と名付けましょう!」
「もう、EVANGELION十六号機という名前が付いているワ」
「必殺技は『スーパーイナズマキック』よ!」
「どうせ只の飛びげりでショ」
「これで、宇宙の平和が守れるのね!」
「せめて、地球の平和にしなさイ」
「ああ、沖女のコーチ!おねえ様!天国から見守っていてください!」
「死んでないっテ」
「……」
「……」
「えーーーん!ナディア~!ユングがいぢめるよぉ~!」
「ふン」
第三小隊の後一人のメンバー、ナディア・クレマンソーも付き合ってここに居た。泣きついてきたノリコの頭をなでる。
「ヨシヨシ。でもノリコ、EVAに落書きは良くないよ」
目の前のEVA十六号機、飛鷹ノリコの乗機に、『私の(はぁとまぁく)』と書かれていた。
閑話休題。
再び総司令執務室に沈黙が下りる。ミサトは、もう用はないのかと踵を返そうとすると、ゲンドウに呼びとめられた。
「葛城君」
「はい?」
「これから君に話すことは、最重要機密だ。聞くかね?」
「え?」
ミサトは、Nerv本部の中でかなり高い地位にある。
数ある部門の中でも作戦部は重要視されているからだ。しかし司令部には及ばないし、Nervの根幹である情報部、技術部などとも隔たりがある。
だから、情報を制限されたとしても当然だと思っていたし、自分は現場の人間だから役割を果たせば、それでいいとも思っていた。
しかし……
「はい。お願いします」
ゲンドウが選択権を与えることは滅多にない。聞いたら引き返せないということだ。
Seeleという組織。
プラン
アダム。
真・人類補完計画
サードインパクト・リバース
どれも驚愕に値する内容だったが、惣流情報部長から直接聞いたことに一番衝撃を受けた。
「ミサトちゃん……これは確認が取れていない情報なんだが……君のお父さん、葛城タカオ博士が生きているかも知れない……」
--野外模擬戦場
今日も鬼少佐ミサトの怒号が響く。
「浅利君!!配置に着くのが遅れているわよ!もう一度フォーメーションを組むところから始めなさい!」
『『『『『はい!!』』』』』
「駄目駄目!!連携がなってないわ!!もう一度初めから!」
『『『『『は、はい!!』』』』』
「遅い!!もう一度初めから!!」
『『『『『ひぇ~~~~~』』』』』
「もう一度初めから!!」
『『『『『うぉーーーー!!!(やけ)』』』』』
--女子更衣室付きシャワー室
「はあ……『もう一度初めから!!』」
「止めて~~~アスカぁ~~~もうそれ聞きたくないよ~~~」
「ほーんと、今日の訓練も厳しかったわね~」
訓練終了して疲れきったアスカ、レイ、マナ。他のチルドレンも疲労困憊だ。三人は隣合わせの個室でシャワーを浴びている。
「あ、アスカ~しゃんぷー貸して~」
「んったく、ちゃんと自分の持ってきなさいよレイ。これ高いんだから。ほれ!」
シャワー個室の壁の隙間から、ぽいっと高そうなシャンプーのボトルを投げる。
「おっとっと、さんきゅ~。そういやマナちゃん戦自のがっこ~で訓練受けてたんでしょ?それでもキッツイの?今日のやつ」
今度は逆方向の個室のマナに話し掛けた。マナは戦自の学校に居たことがあるので感想を聞きたいようだ。
「んーーんん、そうねー戦略工科学校でやった訓練は、体を使うだけだからねーEVAみたいに神経ごと疲れるってことはないわね。小隊長としても気ぃ使うしー」
マナも髪を洗っているのだろうわしゃわしゃという音が聞こえる。その言葉を受けてアスカがしみじみと語った。
「分かる分かる。アホな部下持つと苦労するわー」
アスカの部下といえば第一小隊だが、この場にいるのはレイだけだ。さすがのレイも自分のことだとすぐ分かる。
「あ~~~!!ひどいアスカ!!私だっていっしょーけんめーやってるもん!!」
「だったら何にもないところでコケないでよ……恥ずかしい……」
「うぐぅ」
反論は許されない。マナが話題を変えるように最近のことを話す。
「それにしても、最近きびしくない?ミサト少佐」
「なーんかミサトが少佐になってからよね。はりきってるのかしら」
「楽しかったね~『ミサトさん昇格おめでとうパーティ』!」
ケンスケが幹事となり、ミサトの昇進を祝ってパーティが先日開かれた。アスカが、そのときを思い出しながら苦笑いする。
「相田の奴、ウチとレイの家を会場にしやがって。ただの焼肉パーティーなのにチルドレンみんな来るし。リョウコと天城は喧嘩を始めるわ、ナディアは野菜しか焼かないわ、長良はお土産のケーキを爆破するわ、ユキノと鞍馬はイチャイチャするわ、ヒカリはイヤンイヤンするわで、後始末が大変だったわよ」
マナも、そのときのことを思い出しながら、シャワーを止めバスタオルを巻いて個室から出た。
「アスカだって加持さん来て喜んでたじゃない。私もシンジくんの部屋覗けて嬉しかったな。あっ、そうそう聞いて聞いて!男子が騒いでたんだけど、シンジくんエロ本隠してたんだって~、ぷぷぷっ!やっぱりオトコノコなのね~」
同じく個室から出たアスカとレイがそれぞれの反応をみせる。
「……後でとっちめてやる!!」
「……後で見してもらお~」
実はケンスケの持ち物を隠してた。というのが真相だが。
三人とも体を拭いて髪を乾かし着替え終わる。後は帰るだけ。
「あれ?レイとアスカは帰らないの?」
「うん、今日も練習なの!」
「レイ行くわよ、シンジと渚が待ってるだろうから」
「じゃ~ね~マナちゃん!みんなー!」
「……あー、例の演奏か。大変ねー。私は絵画にしちゃったけど。ふふふ、シンジくんの『伝説のチェロ』が聞けるのねー楽しみっ」