【完結】NGチルドレン【EVAFF】   作:ガルカンテツ

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Part-F

--日本海上空 EVA輸送機コックピット

「本部。こちらウィングキャリア04。爆撃コースに入った。投下許可を請う」

『ウィングキャリア04。こちら本部。爆撃を許可する。繰り返す。爆撃を許可する』

「ウィングキャリア04、了解」

 

 EVA輸送機には支援用の武装があり、爆装も可能だ。機体の胴体前方にある弾倉が開いて大型の爆弾が顔を覗かせる。

 

「投下ポイント到達。投下まで5、4、3、2、1、投下」

 

 高高度から投下された大型爆弾は、空気を切り裂き自由落下していく。ターゲットは、第二中隊によって浅瀬に集められた『使徒甲群』の中央付近。微妙に落下方向を修正しながら海面に近づく。使徒のすぐ上で炸裂した。

 

 閃光……は、発生せず、広がった液体が使徒群を覆い尽くす。

 

 使用したのは、液体窒素を充填した冷凍弾。普段は消火用に使われる。

 

 使徒が凍らないのは既に実験で分かっている。しかし、使徒の足元には大量の海水。これを凍らせることで、足止めは可能だ。

 

 他のEVA輸送機も、次々と冷凍弾を投下する。浅瀬は完全に凍結して使徒群は動きを止めた。長時間は持たないが1時間ほどは侵攻を防げるだろう。

 

 日本海側と同様に太平洋側でも作戦が実施される。これで少し時間の余裕ができた。

 

 

--Nerv本部ブリーフィングルーム

 ブリーフィングルームミサトが入ってきた。インターカムをつけ、蛍光塗料を塗った指示棒を手にしている。室内の照明は灯っておらず真っ暗だった。只、スクリーンの明りだけが目立つ。

 

「リツコぉ、いいわよー」

 

 インターカムのマイクに向かって指示を出す。

 

 ブンッと空気が震えた音がした後、暗闇の中に人影が現れる。その人影はアスカだった。アスカだけではない。次々にチルドレンが現れた。全員、机に座った状態で。

 

『あ、ユング。そっちはどうだった?』

 

 アスカは隣に出現した赤毛の少女ユング・レキシントンに声を掛ける。ユングはアスカの方を向いて答えた。ボディーランゲージで降参を表現する。

 

『そっちと同じく全然ダメ。叩いても叩いても復活してくるワ』

 

 ケンスケが後ろのトウジに、声を掛ける。

 

『や~い、アホトウジ~。叩けるもんだったら叩いてみろ~(べろべろ~)』

『おー、ゆーたなー。どついちゃる!ていっていっ(すかっすかっ)』

『みんな!これからブリーフィングよ!静かにしてください!』

 

 ザワザワとした中、クラス委員長……もとい第二中隊隊長ヒカリが声を上げる。殆どホームルームのノリだ。

 しかし、彼らはここには居ない。全て立体映像だった。本物はミサトのみ。

 

 チルドレンは、それぞれ日本海側と太平洋側に分かれている。

 

 リツコが『こんなこともあろうかと』作ったバーチャルブリーフィングシステムだ。

 

 少しなら移動できるし、電子データ、たとえばメモなどの手渡しもできる。EVAに搭乗していれば、どこからでも参加可能。世界中を戦場にするかもしれない現状に対応したシステムだ。これで何時でも何処でもブリーフィングが可能になった。

 

「はいはい、注目~」

 

 唯一の実体、ミサトが作戦の説明を始める。スクリーンを指示棒で指す。

 

「これは今戦っている使徒のデータ。上列が『甲群』、下列が『乙群』。分析した結果、使徒の固有波長が同じものがいることが分かったの。同じ波長のペアが9対。例えば甲1と乙1がそうね。この2体がお互いを補って再生を行っていると判断したわ。つまり二身で一体ということね。この使徒を倒すには2つのコアに対して2点同時荷重攻撃しかないの。EVA2体によるタイミングを合わせた攻撃よ。でも、遠く離れた現状では、完璧なタイミングでの攻撃は難しいわ」

 

 スクリーンが日本地図に変わる。

 

「そこで、班を3つに分けます。1班は日本海側の使徒を第三新東京市に誘導。ここで使徒を攻撃するわ。2班は、太平洋側の使徒を誘導。3班は、至急ここに戻ってきて。使徒迎撃の担当よ。誘導班は河川を有効に活用して、民間に被害のないように誘導してね。第三新東京市に使徒を全て集めて2点同時荷重攻撃を実施します」

 

 またスクリーンが切り替わり使徒の3Dモデルが表示される。

 

「MAGIによるシミュレーションの結果、使徒は合体する可能性が高いの。2体が合体した場合、再生速度が高まることが予想され、迎撃が困難になるわ。そこで3班、迎撃班は、『ダンス』で攻撃します!」

『『『『『はあ???』』』』』

 

 疑問符だらけのチルドレンを無視して説明を続けるミサト。スクリーンには、組み合う2機のEVAが表示された。

 

「使徒は、合流を果たそうとするけど、それをさせてはいけないわ。2体の使徒の間に常に割り込み、タイミングを見て攻撃します。使徒の動きに合わせて動く必要があるし、攻撃に完璧なユニゾンが必要よ。だから2機のEVAが『ホールド』で動きます」

 

 モダンダンスの基本姿勢として『ホールド』というものがある。

 

 男女が向かい合う形になり、女性は男性より左に半身ずれる。男性の場合は、まず両手を横に広げ、左肘を軽く曲げ右手を女性の左けんこう骨のあたりに当てて支える。

 女性も両手を広げ、右手は男性の左手に、左手は男性の右肩の少し下に当てる格好になる。

 

「EVAの場合、背の高さが同じなのでお互い肩越しに使徒を見ることが出来ます。この姿勢を保ち常に使徒の間に居て使徒が接近してきたら同じタイミングで攻撃。攻撃にはリズムが重要よ。そこでダンスコンテスト用のステップを使います。ターンをする要領で、同時に後ろ蹴り。ワルツの曲に合わせた攻撃パターンよ!」

 

 この説明をリツコにしたとき、

 

「ね?『ダンス』の特訓が無駄にならなかったでしょ?」

「只の偶然でしょうが……」

 

 と、呆れられた。

 

 呆れるというか、呆気にとられたチルドレン。

 

 しかし、次のミサトの言葉で緊張が走る。

 

「では、迎撃班、そのペアのメンバーを発表します」

 

 ダンスのペアは当然、男女だろう。自分がメンバーの場合、相手が問題だ。基本姿勢『ホールド』は密着するから、いくらEVA越しとはいえ気になる。

 

「あ、最初に言っておくけど、レイは誘導班ね。零号機は格闘戦に耐えられないわ」

『がーーーん!!!』

「使徒が9組18体なので迎撃班も同じよ。じゃあ発表します」

 

 さらっと外されたレイをほっといて発表が行われる。ごくりと誰かが喉を鳴らした。

 

「第1組、惣流アスカさんと碇シンジ君」

『よろしくね。アスカ』

『ふ、ふん。足手まといになるんじゃないわよ!』

 

「第2組、霧島マナさんと、ムサシ・リー・ストラスバーグ君」

『よ、よろしくな。マナ(よっっっしゃーーーー!!!)』

『なーんだ。シンジくんとじゃないのかー』

 

「第3組、加賀ユキノさんと、鞍馬ソウイチロウ君」

『くらま~~~、いっしょだねっ(ごろごろ)』

『う、うん(あせあせ)』

 

 いつもクールなユキノも鞍馬ソウイチロウの前だと甘々。ラブラブフィールド形成。

 

 ここでケンスケの眼鏡が光る。

 

(ふっふっふっ。ここまでダンスコンテストのペアと同じ。と、いうことは、次は俺でマユミちゃんと一緒だ!!)

 

「第4組、山岸マユミさんと、あ……」

(『あいだ』だぁ!)

 

 確信するケンスケ。

 

「……さりケイタ君」

『え?僕?なんで?』

『浅利君、よろしくおねがいします。(なんだ、碇君じゃないのね……)』

 

(な~~~ぜ~~~だぁ~~~!?)

 

 苦悩するケンスケ。

 

「あ、相田くぅん。アンタ、またハッキングしたわね?後でオシオキよ。当然、誘導班ね」

『がーーーん!!!』

 

 うなだれるケンスケ。

 

「では、続けます。第5組、千歳カナメさんと、長良ソウスケ君」

『ソウスケとかぁ……ねぇソウスケ。ステップは憶えた?』

『肯定だ。全て記憶している』

『で、踊れるの?』

『むぅ……』

『はぁ……私がリードしてあげるわよ』

『よろしくたのむ』

 

「第6組、瑞鶴リョウコさんと、天城シズマ君」

『ええ~~~っ!コイツとぉ!?』

『へん!俺だって、ご免だ。こんな狂暴女』

『なんですって~~~~!!』

『なんだよ!』

 

「ほっといて次~、第7組、ナディア・ラ・クレマンソーさんと、ジャン・ロック・バール君」

『ヨロシクネっ!ジャン』

『うん!(どきどき)』

 

「第8組、ユング・レキシントンさんと、シロツグ・ラーダット・ミズーリ君」

『…………(ぼぉ~~~)』

『シロツグ、これが初登場でショ?喋らなくていいノ?』

『…………(ぼぉ~~~)』

『駄目だ、こリャ』

 

「ラスト~第9組、龍驤ホノカさんと、鈴原トウジ君」

『なんや、龍驤とか。よろしゅうな』

『な、なんで私が鈴原と!?いや~!ヒカリぃ、そんな目で見ないでぇ!』

 

「以上!」

『『『『がーーーん!!!』』』』

 

「えーっと、洞木さん誘導第1班の指揮をお願いね」

『はい……』

 

「後の第1班は、残りの相田ケンスケ君、飛鷹ノリコさん、浅間ヒデアキ君ね」

『ああ~沖女のコーチ!お姉さま!ノリコは、こんなことでは負けません!』

『こ、この僕が余り者とわ……メリーランド計画がぁ!!』

『……』

 

 燃え尽きてるケンスケ。

 

 

「誘導第2班は、碇レイちゃんと、飛龍キミコちゃんでお願い」

『レイさん、よろしくお願いいたします』

『うん!キミコちゃん!』

 

「じゃあ迎撃班は至急戻ってきて。誘導班は残って使徒の誘導。いいわね!?」

『『『『『了解!』』』』』

 

「じゃあ、以上で全体ブリーフィング終了。行動を開始して!なお、この作戦を『Shall we dance?作戦』と呼称します!解散!」

 

--第三新東京市中心街

 夕日の中、サイレンと共にビルが地下に沈んで行く。普段なら代わりに兵装ビルが伸び上がってくるが、今日は違うようだ。全てのビルが沈むと、中心街に平らな土地が出現した。

 

 ここが迎撃作戦の場所。約2km四方の四角い舞台、EVA用の巨大な『ダンスフロア』と化す。

 

 日がすっかり暮れて星が見え始めたとき、都市の東側と西側がヘリ等で騒がしくなった。

 

 18体の使徒の登場だ。中心街にライトが照らされる。舞台は整った。道路の一部が開口し、18機のダンサー、EVAが『ダンスフロア』に現れる。

 

 男子の操るEVAが女子の操るEVAの手を引いて入場してきた。ドレスも燕尾服も着ていない為、少々華やかさに欠けるが仕方がない。

 

 ダンサー使徒群が『ダンスフロア』に侵入してくる。合体を目指しているようだ。2体の使徒が引き合うように近づく。すかさず、ホールド態勢のEVAが間に割り込む。

 

『いいわね?シンジ。最初からA.T.フィールド全開。フル稼働最大戦速でいくわよ』

『分かってる。ワルツの曲『QUE SERA SERA』が終わるまでにケリをつける』

「ミュージックスタート!『Shall we dance?作戦』開始!!」

 

 ミサトの命令と同時に曲が流れ始めた。

 

 ワルツは3拍子の奏でる優雅なダンスだ。スウィングダンスとも呼ばれるモダンダンスの代表的な種目。ワルツにもウィンナーワルツとスローワルツがある。現在流れている『QUE SERA SERA』は、ウィンナーワルツと呼ばれ60小節/分のテンポで踊る曲だ。

 

 EVAと使徒が円を描く。まるで一緒に踊っているように。

 

 

 ~♪

 

 曲が終わったとき、使徒は1体も立っていなかった。殲滅完了。『Shall We Dance?作戦』は一応、成功に終わる。

 

 

 しかし、EVAも1機も立っていなかった。

 

『バカシンジ!!なにずっこけてんのよ!』『ア、アスカだって!』

 

『ふっふっふっ。ムサシぃ~~~覚悟はできた?』『お、俺のせいなのか??』

 

『くらま~(ごろごろ)』『加賀ぁそんなに引っ付かないでっ』

 

『ご、ごめんなさい!』『僕のほうこそゴメン!』『いや私が!』『僕が!』

 

『ソウスケ足が逆!!』『すまん』

 

『この筋肉お馬鹿!』『なんだとデカ女!』

 

『アイタタタ。ジャン大丈夫?』『えへへへ……』『アノ、どいてくれる?』

 

『……(ぼぉ~~~)』『……はァ。つっこみがいがなイ』

 

『やっぱりだんすなんて、ワシの性に合わんの』『ヒカリ~許してぇー』

 

 但し、騒がしいくらい元気だったりして。

 作戦後、Nerv本部技術部長のコメント。

 

「ブザマね」

 

 

  続く

 

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