Part-A
--南米コロンビア共和国メデジン市
花の都とも言われるメデジンは人口約200万人のコロンビアでも最大規模の都市。
盆地で気候は常春、景色もきれいで特産品はラン。というのはセカンドインパクト以降も変わっていない。‘94ワールドカップで自殺点を入れてしまったアンドレ・エスコバル選手が殺された町、麻薬マフィアの町、というのも。
そのとある街角にあるカフェに鍔広の白い帽子を被った日本人女性が居た。
老女、とまではいかないが、それなりに年齢を重ねている。子供は既に成人して、第2の人生を満喫中の有閑マダムといった感じ。
しかしフルムーン旅行にしては旦那が見当たらないし荷物もブランド物のハンドバックだけだ。なにより紅茶を飲む姿は落ち着きすぎている。そして唇のパープルルージュが妖艶さを醸し出していた。単なる旅行者ではないだろう。
「ちょっとよろしいですか?」
その女性に日本語で話しかける男がいた。ここはコロンビア。スペイン語圏。
「はい?」
「おお!やはり。赤木ナオコ博士でいらっしゃますよね?電子工学権威の」
「確かに私は赤木ですけど、あなたは?」
「ああ、これは失礼しました。私はこういうものです」
と、名刺を差し出した男も日本人だった。長髪でくたびれたスーツを着ている。赤木ナオコ博士と呼ばれた女性は、渡された名刺を確認する。
「……『バズーカ山寺』さん?」
「はっはっはっ。まあペンネームのようなものです。『おはスタ』という報道番組の記者をしています。たまたま、そこを通りがかったところ貴方を見かけ、もしかしたらと思いまして。やはり赤木博士でしたか」
「よく私をご存知で」
「当然です。私は科学関係の記事を担当していますが、それでなくても赤木博士は有名ですよ。何せ現在の情報の中心、スーパーコンピュータ『MAGI』の開発者、そしてそのOSである『人格移植OS』の開発もしていらっしゃる。第7世代コンピュータというハードと、OSというソフトを同時に開発できる天才ですな」
「あら、『MAGI』の開発には沢山の方のご支援があればこそですわ。それに新システムの開発はハード・ソフト両面でのアプローチが必須ですの。別に私は天才とかではありませんわ。もっと他に天才と呼ばれるに相応しい方がいらっしゃいますから」
「そうですか……ああ、そうそう。何故こんなところに?とても博士にご用がある場所とは思えませんが……」
「……ぷっ!あはははは!」
突如、笑い始めた赤木ナオコ。堪えきれずに吹き出したと言う感じだ。
「な、なんです!?」
「あー、可笑しかった。我慢できなかったわ。おはスタは子供番組よ『加持君』」
「ありゃ。俺のこと、ご存知でした?」
「ええ、いつも娘がお世話になっています。以前りっちゃんからメールで写真を見せてもらったわ。大学時代にも一度会っているのよ?憶えてない?」
「いやー、大学の時は、ちらっとだけだったんで憶えていらっしゃるとは……りっちゃんとは、今も連絡を取り合っているんですか?」
「5年くらいは取ってないわ……あの子は元気にやってる?」
「はい。Nerv技術部長として活躍していますよ。……お会いになりませんか?」
「……もう、私はNervの人間ではないから……」
「……Seeleですか……」
「ええ……」
赤木ナオコは顔を伏せて呟くように言った。
加持が、さりげなく辺りを見まわすと、店内に2,3人の男女が居たが、その内の誰かはSeeleの人間であろう。もしかしたら全員かもしれないし、店自体Seeleのものかもしれない。
外には人影がなかったが、対面の建物の上に気配を感じる。狙撃用スコープの的に収まっているのだろう。少しでも妙な動きをしたら、バン!だ。
「アラ、心配しなくても大丈夫よ。手は出させないわ」
警戒している加持にナオコが宣言した。
確かに赤木ナオコのSeeleでの地位は絶大だろう。下の者にとって、その命令は絶対だ。しかし、さらに上のSeele幹部の命令ならそちらを優先する。
なんにしても長居は不用。早速本題に入る。
「教えていただけますか?この国になんの用があるのか」
「もう、本題に入るの?もうちょっとゆっくりしていけばいいのに」
「はは、そういう訳には行きません。勤勉なスパイなもんで」
「スパイさんも大変ねー。いいわ教えてあげる。といっても詳細は駄目なんだけど」
と、言いつつハンドバックを探る。思わず身を乗り出す加持。取り出したのは、小さな猫の置物。白と黒の2匹。
「こ、これは?」
「それ、りっちゃんへのお土産。お願いね」
「あ、あのですねぇ……」
「あ、あったあった。はいこれ」
取り出したのはA5サイズの写真のようだ。
何かコンピュータ処理をしたもので左上と右下にデータが書いてある。赤い色を背景に黒い楕円が中央にあった。ドットが粗くぼやけているが卵のようにみえる。内部で『何か』が丸まっていた。
「ネバド・デル・ルイス火山って知ってる?2日前、その火山を調査中に、溶岩の中でそれが発見されたの。これは……」
「これは?」
「……はい!ここまで!」
「へ?」
「詳細は教えられないと言ったでしょ? その写真はあげるわ。後は自分で調べなさい。……アラ?もうこんな時間?私はこれで失礼するわね」
そう言って伝票を持ち席を立つナオコ。
「あ、奢りますよ。教えていただいたお礼にね」
「そう?悪いわね。じゃあサービス。もう一つ情報をあげる。すぐにこの国を出なさい。12時間後にコード『A-017』が発令されるわ」
「コード『A-017』!?」
伝票を受け取りつつ驚く加持。コード『A-017』は、地球統合政府が発令する特別法の一つで、主な内容は『国家に対する能動的介入』、『現資産の一時的凍結』。国家レベルの犯罪が発覚した場合の強行措置だ。
踵を返そうとするナオコに全然別の質問をする。
「最後に一ついいですか?何故あなたほどの人が、あの老人達に従うのです?」
「老人?……あ、ああそうね。まあ色々あるのよ。じゃあね。ごちそうさま。お話できて楽しかったわ」
何故かそそくさと席を離れるナオコの背中を見ながら加持は、今のセリフに違和感を感じていた。
(彼女は、Seele幹部、12人の老人に従っているんじゃないのか?)
何か心に引っかかるものを感じながら、清算しようと伝票を見る。
「……高いな……」
--Nerv本部ブリーフィングルーム
「と、いう訳でみんな、ミサトに奢って貰いなさい」
「「「「「当然!!」」」」」
「え~~~~~~!?」
リツコにダンスコンテストで賭けをしていたことをばらされて、チルドレンに奢ることになったミサト。抗議してみたが、あっさり却下される。
ちなみに賭けの方はどうなったかと言うと、2年A組の面々特にトップ4(シンジ、レイ、アスカ、カヲル)が居なくなって今一盛り上がりに欠けたが一応コンテストは行われ(終了後、避難命令が出た)、しっかり賭けは成立していた。
もちろんミサトは、大負け。2年A組にしか賭けていなかったのが敗因。まあ、隣の2年B組担任も負けていたのが唯一の救いか。優勝は3年B組の人でした。
「ごめん!全員は無理!お金ないの!人数を絞って!」
観念して拝み倒すミサト。高給取りのはずだが万年金欠らしい。
「もう、しょうがないわね。何人ならいいの?」
何故かアスカが代表して聞く。
「んーーー、6人かな?」
「「「「「じゃーーーんけーーーん……!!」」」」」
「早っ!!」