--リビング
ヒカリ、トウジ、ケンスケは、夜遅くなったため帰宅したが、他の3人は、泊まっていくことにした。両家の両親が今晩、家にいないためだ。
リビングに山ほどビール(もちろんエビチュ)を抱えてミサトが登場した。
「シンちゃんとアスカもビール飲むー?」
「ん?うん飲もうかな」
「あの、ミサトさん……僕達未成年なんですけど……」
「なにカタイこといってのよ~担任がOKっていうんだから大丈夫よん!」
「だから仮にも教師が勧めないでくださいよ……」
「あ、私も飲む~~~」
「「「レイはダメ」」」
「え~~~なんで~~~!?」
「だってアンタ、酔うと『笑う』、『怒る』、『泣く』、『絡む』、『落ち込む』、『暴れる』って六面に書いたサイコロを五分毎に転がすようなもんじゃない」
「アラ?上手い表現ねアスカ」
「ひな祭りの甘酒少しでも酔っ払うんだから。ビールなんか飲んじゃダメだよレイ」
「ぶぅぅぅ~~~!!」
不満気なレイはペンペン相手に愚痴を零していたが、そのうち眠くなってソファーで寝てしまった。
ミサトはぐびぐび。アスカはちびちび。シンジはジュースを飲む。
のんびりと喋りながら飲んでいると、アスカがテレビの上にある物に気が付いた。
「あ、これミサトの統合軍時代の写真?」
正装して敬礼している姿や、仲間と一緒に写っているもの、喧嘩の後だろうか?酒場で男を踏みつけピースをしているもの等などがコルクボードに張りつけてあった。写真だけではなく勲章なんかも無造作に置いてある。
「この手のようなマークって統合軍のですか?」
シンジが見ていた勲章に雷を掴んだ右手を意匠化したマークが付いていた。
「そうよん。統合軍にもNervみたいな別名があって『
「ドイツ語?」
「そ。ドイツに、地球統合政府本部が置かれてるからかどうか知らないけど、なんか地球統合政府の関係機関にドイツ語で体の一部を表す単語が使われるのよ。『
「へー」
「他にも中央行政機関『
(そして、『
少し考え込むミサト。
「ん?どうしたの?ミサト」
「ああ、なんでもないわ。ってなんか授業みたいになっちゃったわね」
「ミサトさん、右手ってあるんだから左手ってあるんですよね?」
「んん?さあ?そう言えば聞いたことないわね?噂で秘匿艦隊があるとか聞いているけど」
「秘匿艦隊ぃ~?なんか怪しいわね」
「元々、統合軍なんて怪しい集団よ。秘密だらけだしね。まあNervも似たようなもんだけど」
「アンタ、その幹部でしょうが」
「アスカも、その一員よんっ」
「僕もか……」
「ある意味シンちゃんのお父さんが、一番怪しいけどね」
「……否定できません……」
「さあ、そろそろ寝ましょうか。ペンペン!予備のお布団何処だっけ?」
「……アンタ、とことん保護動物に保護されてるのね……」
--ミサトの寝室
最初、ミサトは全員でリビングに寝ようと思ったが、アスカが『男女七歳にして同衾せず理論』を持ち出してきて、ミサト、アスカ、レイはリビングで。シンジはミサトの寝室で、それぞれ寝ることになった。
シンジにとってミサトは歳の離れた姉のような存在だったが、美人でナイスバディーなことは、万人が認めるようにシンジもそう思っていた。
その女性が、いつも寝ているベット。そこに染み付いた匂いは、思春期真っ盛りの少年にはきつかった。
「ね、眠れない……」
--リビング
シンジがモンモンとしていた頃、ミサト、アスカ、レイは川の字になって寝ていた。
「…………ミサト、まだ起きてる?」
「……ん?起きてるわよ」
ふと、レイの方を見ると完全に寝入っているようだった。
「なあにアスカ。って前にもこんなことあったわね」
「?ああ、第4使徒戦の帰りか。ねぇ、ミサト、加持さんと別れたってほんと?」
「こりゃまた唐突ね……んー、そうね。そういうことになるかな……」
「どうして?昔に家に加持さん連れて来たとき、あんなに仲良かったのに……」
--西暦2000年
ミサトが14歳のとき、セカンドインパクトの唯一の南極からの生還者として、日本に帰ってきたが家族は誰も生きていなかった。そしてショックで失語症になってしまう。
そんなミサトを引き取ったのが、ドイツに居た惣流家だった。
ミサトの父親は、惣流キョウコの恩師であったのが、その理由。またキョウコもミサトを小さい頃から知っていた。
惣流家の夫婦は、ミサトを本当の子供のように接した。しかし、ミサトの失語症は直らず、医者も精神的なもので時間を掛けるしかないと匙を投げていた。
その後日本の第三東京市に引っ越し、碇家の隣で暮らすようになる。ミサトは幼いアスカ、シンジ、レイの面倒を忙しい両親の代わりに行っているうちに失語症の改善が見られた。
子供たちに感謝しつつも、既に19歳になっていたミサトは自立を意識する。
ミサトはこれまでの遅れを取り戻ずべく猛勉強し、第三新東京市の高校受験に合格した。
当時は混乱が続いており、満足に通学できていた子供の方が少なくミサトの様に遅れて入学するのも珍しくなかった。
そして、ミサトは惣流家から出ることを決意した。もちろんキョウコや夫のゲルハルトは反対したが、物心つかない頃からの家族ならともかく、もうすぐ20歳になるミサトには、前の家族を忘れるということが出来なかった。どこか遠慮というものもあったかもしれない。
幸い今は亡き両親の財産もかなり残っており別のマンションを借りることが出来た。気楽な一人暮しの始まり。酒もこの頃に覚える。もっとも、しょっちゅう惣流家に来て夕食をご馳走にはなっていたが。
ミサトが、第三新東京市の高校に通っている間は、引き続きシンジ、レイ、アスカの面倒を見ていて3人の子供も良く懐いていた。高校卒業後、第二新東京市の大学に通う為に引っ越すまでの間、それは第2の家族との幸せな時間だった。
第二東大卒業後、なんの因果か統合軍に入り、Nervに転属して今に至る。
--再びミサト家リビング
「そうねー。加持君と別れた理由かぁ……まあ切っ掛けはアイツが浮気したからなんだけどね。でもあくまで切っ掛けであって理由ではないわ。当時のあたしは加持君に父親の姿を重ねていたの。研究ばかりしていた父。家族をないがしろにしていた父。でも最後に命がけであたしを守ってくれた父。そんな父親の幻を求めていたのね。それを意識したとき、別れようと思ったわ。恐くてね」
「恐い?」
「そ、加持君もね。本気じゃなかったと思うわ。どこか他のものを見ていた。だからこんなあたしを本気で愛してはくれないじゃないかって恐怖が生まれたの」
「……」
「『彼の方』と書いて彼方と読むってね。女にとって男は遥か彼方の存在だわ。脳の構造から違うっていうから。絶対、理解しあえないでしょうね。一生」
「一生?」
「分かったつもりになっても、それは違うかもしれないわ。自分のことだって分からないんだからね。でも、いい?アスカ。シンちゃんに理解されてないと感じても分かろうと努力していたらそれは認めてあげなさい。それがイイ女ってやつよん」
「な、なんでシンジがっ……!」
「し~~~~~~」
今のアスカの大声でも、レイは起きなかった。むにゃむにゃと寝返りをしただけだ。
「ところで、その話、誰に聞いたの?」
「ん?浅間のやつだけど。なんか加持さんをナンパの師匠とかぬかしてたし」
「……あんにゃろ~~~。加持もナンパの師事なんかしてんじゃないわよ」
夜も深けてきたが、女同士の会話は明け方まで続いた。