【完結】NGチルドレン【EVAFF】   作:ガルカンテツ

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Part-E

--(強化訓練合宿第3日目)17:00 ジオフロント外周部

 Nerv本部のあるジオフロント。直径6,000m、高さ900mの円形の空間には森や湖などが存在し、地上の集光ビルからの光で照らされ地上の自然環境となんら変りない状態を保っている。

 

 今日のチルドレン強化訓練メニューは、このジオフロントの外周部をひたすら走るマラソンとなっていた。

 

『こらー!シンジ!レイ!アタシより前を走るなー!』

『えー?だってみんな遅いんだもーん!ね?お兄ちゃん?』

『うん。最初マラソンって聞いたとき、しんどそうだなって思ったけど全然平気だね。これなら何時間でも走れるよ』

 

 マラソンはマラソンでも、EVAに乗ったまま走りつづける長時間シンクロ耐久マラソンであった。先頭を走るのは第一中隊第一小隊の3名。

 

 ちなみにかれこれ12時間以上EVAとシンクロしたままの訓練が行われていた。トイレと食事休憩はあるが、強化訓練合宿も3日目になり疲労がピークのところに、この長時間シンクロ訓練だ。

 

 早朝からEVAに乗せられ戦闘訓練、格闘訓練、チーム戦ときてマラソンはかなりきつい。

 

 第一第二第三選抜適格者の3人は、幼いころからEVAに乗っているため呼吸をするようにEVAを動かせているが、その他の第四次選抜適格者(フォースチルドレン)は、こんな長時間のシンクロは経験ない。

 

 泊りがけの訓練でしかできない芸当だ。技術部は貴重なデータが取れて満足している。

 

「お、おまえらの方が変やねん……」

 

 全体通話で聞こえてくるシンジ達の会話にツッコミを入れるトウジだったがいつものキレはなかった。

 

 

--20:00 第三大浴場

 訓練も終わり、夕食後は就寝まで自由時間。訓練を終えたチルドレンは思い思いの時間を過している。ちなみに夕食は普通に本部施設の食堂だった。運動系合宿恒例の自炊などではないのでガッカリしているものもいたが、食欲旺盛な中学生達に食堂のおばちゃん達は喜んでいた。

 

 シンジ、ケンスケ、トウジ、カヲルは真っ先に風呂に入ることにした。訓練直後にL.C.Lを流すためのシャワーを浴びているが、それはそれ、これはこれということで湯舟にゆっくり浸かりたい気分だった。

 

 Nerv本部では、地上から遠く内部で寝泊りする人間が多い為か福利厚生施設が充実している。この大浴場もその一つで、まるで懐かしの銭湯のような風情。ご丁寧に壁絵まであり、しかも時間毎に絵が変るという凝ったものだ。

 

「(からから~)おお!誰もおらへん。貸切り状態や!」

「あ゛~~~疲れた~」

 

 トウジとケンスケは浴場に入るなり、そのまま湯船に直行した。広々とした湯船にどぼんと飛込みお湯を溢れさせる。

 そのまま泳ぐように奥に行き壁面に背もたれ肩まで浸かった。お湯の温度はちょっと高めだが疲れた体には丁度良い。タオルを頭に乗せ一息つく。

 

「ふいーっ、ええ湯や!」

「あ゛~~~生きかえる~」

 

 遅れて入って来たシンジとカヲルは、まず体を洗うため蛇口があるところに座る。

 

「トウジもケンスケもちゃんと体洗ってから入りなよ……」

「フンフンフン♪風呂はいいねぇ」

 

 几帳面なのか親のしつけがいいのか、きちんと体を洗ってから入るシンジとカヲル。そうでない2人に苦言を呈したが聞いている様子はない。

 

 シンジとカヲルも一通り体を流して湯船に入る。先に入っていた2人は湯と一体化せんばかりに惚けていた。

 

「2人ともそんなに疲れたの?僕はそれほどでもないけど……」

 

 今日の訓練は丸一日EVAに乗ったままだった。マラソンも自分で走る訳でもなく、淡々とこなしたシンジは全然疲れていなかった。

 

「センセと一緒にすんなボケ。ずーーーーーーっとシンクロしたまんまなんや。めっちゃ疲れるちゅーねん」

 

 首に手を当てコキコキを鳴らしながらのトウジの反論にケンスケも乗っかる。

 

「そうそう、10歳の頃からEVAに乗ってるシンジと違って、こっちは長時間乗るのに慣れてないんだよ。今日だけで12時間近くも乗りっぱなしなんだ。疲れて当然……ふぁあ~」

 

「でも走るのはEVAでしょ?どこが疲れるのさ?」

「ん~~~?なんちゅ~~~か精神的にやな。普段使ってない筋肉をずっと動かしてるみたいで集中力がいるねん」

「トウジのいう通り、ずっと集中してるから疲れたって感じだな。シンクロすると自分の腕とは別にEVAの腕の感覚が生まれるだろ?自分の腕はスティックを握ってるから動かせないけど、EVAの腕は動かす。これって結構意識してやらないと出来ないんだな。まあ慣れの問題だと思うけど」

「へー。そんなもんかぁ」

 

「そうだね。普段使ってない筋肉を使うと疲れるねぇ」

「え?カヲル君もそうなの?」

「ふふ。普段は飛んでるからね。地上で足を使ってあんなに走ったことなんてないよ。第一、優雅じゃない。僕にはそれが苦痛だったねぇ」

「あ、なるほど」

「ケッ何が優雅じゃ」

「いいなー、俺も飛びたい……」

 

 カヲルのちょっと惚けた意見に三者三葉の反応を見せる3バカトリオ。取り留めない会話をしながら温泉でもない単なるお湯に満足げな4人だった。

 

「さて、体も十分温まったし、シンジ君背中の流しっこをしないかい?」

「え?」

 

 湯船から上がったカヲルは何も隠さずシンジの目の前に立つ。

 

「……さて鈴原さん、後は若い二人にまかせて退散しますか」

「そやな相田はん、ほな先にあがっとるでシンジ、カヲル」

 

「あ!待ってよ!僕を置いていかないでよぅ!!」

「ふふふ。君は繊細だね。好意に値するよ。スキってことサ」

「うわああああーーーー!!!」

 

 なんてことがあったり、風呂上りに飲むのはコーヒー牛乳かフルーツ牛乳かで揉めたり、でも腰に手を当てて飲むのは同じだったりしながらも入浴時間が終った。

 

 あとは寝るだけ。薄暗い通路を歩いて泊まっている大部屋に向かう。

 

「良い湯だったねカヲル君」

「…………」

 

 カヲルは通路の奥を見つめたまま黙っていた。シンジもその方をみたが暗くて何も分からない。

 

「カヲル君?」

「あ、いやなんでもないよ。さ、部屋に戻ろうか」

 

(……もう来たのか。早いな……イロウル)

 

 

--21:10 本部宿泊施設

「「「「呪いのDVDぃ~~!?」」」」

 

 碇レイ、山岸マユミ、飛龍キミコ、飛鷹ノリコの4人がハモった。

 

「そ。そしてこれが現物」

 

 霧島マナが、DVD-RAMを持ってヒラヒラさせている。

 

 場所は本部宿泊施設の廊下の突き当りにある共用スペースで、ソファーやテレビ、自動販売機などが設置されている。

 時刻は消灯時間である21時を過ぎており、辺りは常夜灯に切り替わって薄暗い。本来なら男女別の大部屋で布団を敷いて寝ている時間だが、今日日中学生が21時で寝つける訳もなく、それぞれがこっそり起きていた。

 

 学校行事でもないので教師(ミサト)が見回りにくることもなく、唯一雷を落としそうなイインチョは現在作戦部でミーティングを行っている。

 

 少女5人で集まって何やっているかというとお互いの怪談を披露し合っているようだ。

 

「うさんくさ~い」

 

 と、しかめっ面でレイがマナのDVD-RAMを眺める。

 

「あんたにだけは言われたくないわ!」

 

 すかさずマナが反論に出る。

 

「えー、怖くなかった?『追いかけてくる黒猫』」

「最初の辺りはちょっと怖かったけど、オチの後のカンガルーはないわー。飛脚が飛び出してきたときは爆笑だったじゃない」

 

「てへへ、ウケたウケた」

「ウケたじゃないわよ。お笑い話じゃなくて怪談だっちゅーの」

 

 舌を出して照れているレイにツッコミを入れる。他の3人も苦笑いだ。

 

 ちなみにキミコはとても怪談が苦手だったが、ノリノリのノリコに引っ張られていやいや参加させられている。同じくノリノリで参加し、これまでの怪談で一番怖い話をしたマユミが、ケースに入ったDVD-RAMを確認していた。

 

「こんなのどこから入手したんですか?」

 

 DVD-RAMのラベルは白いまんまだ。ただ『検閲済み。問題なし』と付箋紙が張られていた。

 

「なんかね。警備部におじゃましてた時、山積みされてたのよ。そこらに居た人に聞いたところ、なんか事故があって、その場にコレがあったらしいの」

「そんなもの持ってきていいんですか?」

「まあいっぱいあったから大丈夫じゃない?なんか『呪いが掛かっているかもな』と警備部の人は言ってたけど」

「ダメでしょそれ……」

 

 マユミはため息を付きながらマナにDVD-RAMを返す。マナは人懐っこい性格のため本部の色んなところに知り合いを作っている。警備部に行ったのはアスカの代理で連絡しに行ったため。

 

「まあまあ、冗談っぽく言ってたし『検閲済み。問題なし』だし大丈夫でしょ。後で返してくるわよ。んでは早速……」

 

 共有スペースにあるテレビ台のDVDプレーヤにケースから取り出したDVD-RAMをセットする。

 

「さあ、何が映るかな~」

 

 わくわくのマナを誰も止めない。実際興味はあった。リモコンの再生ボタンを押す。ザァーっという砂嵐の後、映像が始まる。

 

 それは先日死亡した愛宕ミツオが見た意味不明な映像だった。

 

 5人は何も言わず。食い入るように画面を見ていた。そのとき

 

「こら!何やっているの!」

「「「「「ひぃ!」」」」」

 

 一斉に振り返るとジャージ姿のヒカリが仁王立ちしていた。

 

「もう消灯時間過ぎてるでしょ!部屋に戻りなさい!」

「「「「「ごめんなさーいい」」」」」

 

 慌ててDVDとテレビを止めて部屋に退散する。鬼のイインチョは女子にも厳しいのだ。

 

「まったくもう……」

 

 嘆息しながら部屋に戻るヒカリを最後に共有スペースに静寂が訪れる。

 

 しかし何故か誰もいない場所のテレビが再び点いた。

 

 ザァーっという砂嵐が映し出される。

 

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