--21:30 B-11通路
「はー、遅くなっちゃった……」
龍驤ホノカは、夕食の後、第2闘技場で日々の鍛錬である素振りを一人でずっとしていて、その後シャワーを浴びていたらこんな時間になってしまった。
彼女は千歳カナメ、瑞鶴リョウコと同じ第二中隊第二小隊のメンバーで
黒髪黒瞳でショートカットの小柄な少女だが、剣術においてはチルドレンの中では3本の指に入る。得意とするのは抜刀術。
古い剣術流派の家に生まれ、幼いころから真剣を扱ってきた。その家系では古くは妖怪退治としていたという話はあるが、彼女自身はそんなものは見たことがない。ただ、気と呼んでいる気配を読む修行が流派にあり、一族は
普段している赤いバンダナは着けておらず、シャワー後で濡れそぼっている黒髪を揺らしながら消灯後で薄暗くなった通路を急いでいたが、
「はっ!?」
何かの気配に気が付き足を止める。
通路の前後を見渡しても暗いだけで何も見えない。ただ彼女の直感は「何か」がいることを告げている。
考えるより先に体が動き、帯刀していた刀を腰だめに構える。気配を探るため目を瞑り姿勢を低くする。音もないが確実に何かが近いづいてきていた。
ここぞというタイミングで神速の抜刀を見せる。その瞬間目の前の空間に赤い六角形が浮かんだ。それはEVAと使徒との戦闘でしか見たことがない現象だ。
「A.T.フィールド!?」
--21:35 中央発令所
中央発令所に警報が響いた。
当直のオペレータがミーティングを行っていた作戦部に連絡し、どやどやとスタッフが集まってくる。ミサトとマコトも走って入ってきた。
マコトはすぐさまオペレータ席について状況を確認する。
「状況は!?」
「使徒警戒網からの連絡です。パターンブルーを検知!場所は……」
「どこ!?」
「第三新東京市……Nerv本部内!?」
「なんですって!?」
--21:50 ブリーフィングルーム
Nerv本部内に使徒が現れたとして大騒ぎになっている。各ブロックの隔壁を閉じ状況を確認中だ。チルドレンも急遽ブリーフィングルームに集合となった。
「使徒と戦闘した?」
「はい、結局は逃げられましたが」
すぐに龍驤ホノカから驚くべき報告があった。
他のチルドレンも同様にびっくりしている。これまで使徒と言えば、EVAで対峙する巨大なものだ。信じがたいことではあるが、真面目なホノカが嘘を付いているとは思わない。実際に警報が出たのだから間違いないだろう。
ホノカによると、通路で突然襲われたとのこと。使徒の姿は不定形で素早く良く分からなかったらしい。ただ刀で撃退後に逃げうせたようだ。
「生身で使徒と戦闘ができた……」
ミサトは使徒の存在もだが、ホノカが使徒を「切った」ということに驚いていた。
A.T.フィールドを確認しているのだが、EVAではない生身で使徒にダメージを与えられた。想像の範疇外のことが起きている。
ともかくホノカが戦闘した通路の監視カメラを確認すると、その様子を複数のカメラで捉えていた。使徒とみられる物体は猛スピードで動き、なかなか姿を確認できない。静止画でもブレブレだった。
ホノカも良くこんなものと戦えたと思う。そして、A.T.フィールドの現象の後、刀で使徒の一部を切っているところも確認できたA.T.フィールドごと切れているように見える。
その後の使徒の動きが奇妙だった。ホノカに切られた後、監視カメラに突っ込んできたところが映っていた。画面一杯に使徒の白っぽい姿が映った後、使徒が消えていた。
使徒が監視カメラにぶつかったように見えたが監視カメラは無事だ。作戦部のスタッフが直接確認しに行っても傷一つなかった。
使徒が消えたことは事実なので捜索は続いているが、何も発見できない。作戦部でいろいろ検討しているが、まったく手がかりが掴めない状況だ。
ミサトは迷わずある人物に頼ることにした。