【完結】NGチルドレン【EVAFF】   作:ガルカンテツ

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第9話 『嵐』の二元中継
Part-A


--サハラ砂漠

『なあ、ケンスケー』

「なんだ?」

『やっぱ、なぐっちゃあかんか?』

「さっきみたいに溶解液塗れになりたいのか?」

『ちゃうねん!あれは油断しただけや!』

「油断もなにも体液が溶解液なんだから近接攻撃したら浴びるだろ。もうちょっとこっちに誘導してくれ」

『へいへい……こんぐらいでええか?』

「おーけー!シュート!」

 

 ケンスケの搭乗するEVA五号機のライフル銃から弾丸が発射される。

 

 その弾道は正確に使徒のコアを貫いた。使徒は下向き半球状の体と長ーい4本の脚を持つ巨大な虫のようだった。そして弱い。

 

 トウジが近づいて誘導しつつA.T.フィールドを中和しているとはいえ、実弾一発で終わりだった。長距離狙撃で使徒の下部にある目のようなコアに、ライフル弾を掠るように当て破壊した。

 

 ケンスケも第四次選抜適格者(フォースチルドレン)だが、銃の腕を買われて採用された……わけではなくEVAのシンクロ率が割と高目のため採用されている。

 

 適格者になる前は実銃に触ったことはなかった。精々モデルガンくらい。ただ、EVAで訓練するとき狙撃含む銃の扱いが他適格者よりも上手かった。もちろん元々生身で扱っているチルドレンには叶わないが、未経験としては、かなりの成績を収めている。

 本人によると実銃の経験はないが何時もモデルガンで想像しながら遊んでいたそうだ。EVAの操縦ではイメージが大事。好きこそ物の上手なれ。

 

 ライフル銃はレミントンM700ボルトアクション・ライフルによく似ている。ケンスケはすぐさまボルトハンドルを操作して次弾を装填した。巨大な薬莢が砂漠に落ちる。

 

「んじゃ、次ー」

『あいよ』

 

 そう、次。使徒は一匹ではない。

 

 これまでの中で最弱の使徒だが、その数が半端なかった。砂漠一面にこの巨大な虫のような使徒がうじゃうじゃいる。その手のものが苦手な人には気絶ものの光景だ。

 

 トウジ、ケンスケだけでなくEVA第二中隊全員で使徒を駆除中。

 

 使徒発見の報を受け、遠路はるばるアフリカ大陸までやってきた作戦部とEVA第二中隊だったが、使徒の多さに愕然とした。その数は百を超えている。

 

 大量の使徒は何もない砂漠で、何故か溶解液を砂に落とし続けている。砂なので溶けても直ぐに周りから崩れ埋まってしまう。使徒の目的が分からない。

 

(まあ、この下にナントカの月が埋まってるんでしょうけどね。砂漠とはご愁傷様)

 

 ミサトは作戦部の仮設発令所のテントから指揮を取っている。

 

 仮設発令所は砂ではなく岩石地帯にあった。サハラ砂漠は、セカンドインパクトによる気候変動があったのにも係らず砂漠のままだ。アフリカ大陸の3分の1近くを占める砂漠は、たった15年では変わらなかった。

 

 日向マコトがテント内の端末を操作して状況を伝える。

 

「葛城少佐、使徒の45体目の破壊を確認しました」

「そう、まだ半分も行ってないわね……適度に交代で休ませながら進めて頂戴」

「了解です。……それにしても……」

「ん?」

「ぬるいですね……」

「ええ……」

 

 テントの冷房だけでは砂漠の暑さには勝てず、足元のタライもあまり効き目がなかった。

 

 

--碇家

 一方そのころ、碇家の大黒柱と長男は並んで正座させられていた。

 

 碇家の奥方に小一時間説教を受けている。

 

 長男はもちろん皆に心配掛けたこと。そして父親はちゃんと息子の話を確認していなかったこと。滅多に怒らないユイだが、怒ると本当に怖かった。

 さすがのシンジも背をピーンと伸ばして説教を聞いている。ゲンドウも同じ。ユイのいうことがもっともだったし、自分でも反省していた。ユイのオシオキは怖いが。

 

 ユイの説教がやっと終わって憔悴しきった父子が残った。足がしびれて立てない。

 

「ごめんね。父さん」

「……いや、無事ならばそれでいい」

 

 ゲンドウはそう言ってシンジの頭に手を置く。実際シンジの無事が分かったときには腰が砕けそうになった。11年前のようなことは二度とごめんだ。

 

「フィフス……渚カヲルのことだが……」

 

 その言葉にびくっと反応するシンジ。帰ってからシンジの様子がおかしいと思っていたが、やはりフィフスのことと確信した。

 

「恐らく他のSeeleチルドレンと同じ場所にいる。あのErzengel(エルツエンゲル)は並の施設では整備できない。今情報部で全力で調査中だ。そのうち判明するだろう」

「そうなんだ……綾波と一緒か……」

 

 綾波レイは、出自不明な3人のSeeleチルドレンの一人だ。ただ碇レイとそっくりという話から実はゲンドウには心辺りがある。

 

(赤木ナオコ博士とSeeleチルドレンは一緒にいるのは確実だ。それが『赫き月』か……)

 

 

--中央発令所

「新たな使徒だと!」

「はい!使徒警戒網からパターンブルーが検出されました!」

 

 何時もであればミサトがマコトの報告受ける形だが、現在はアフリカに出張中のため、冬月副司令が指揮をし、青葉シゲルがオペレータ席で報告していた。

 

「場所はどこだ」

「衛星軌道です」

 

 パターンブルーを検出している使徒警戒網とは、準同期軌道上にある24機の人工衛星で構成されている。この衛星で地球全体を監視しているが、使徒が衛星軌道上に現れた。

 

「前の使徒と同じか!?」

「パターンは違うようですが……第17サーチ。目標を映像で捕捉。主モニターに回します」

 

 モニタに現れたのは、光る鳥のような使徒だった。

 

 常識を疑うような姿の前回の使徒とは大分様子が異なる。前回の使徒は『蒼き月』に落下攻撃を仕掛けてSeeleチルドレンに殲滅されたようだが、この使徒もどこかに落下攻撃でも仕掛けるのだろうか。それか衛星軌道上からの攻撃手段があるのか。

 

 冬月は対処方法に悩む。それを考える作戦部長が不在なのが痛い。

 

「しかし、衛星軌道だと手が出せんな」

「そうでもないですわ。冬月先生」

「ユイ君……」

 

 碇ユイ副司令が、戻ってきたようだ。発令所の上部に登ってくる。

 

「それにしても使徒の多方面同時展開が現実のものになりましたね……」

「うむ。備えてはいたが遂に来てしまったな……」

「ええ、そのための24機のEVAです。取り合えずミサトちゃんに連絡を。後、衛星軌道ですが、Nerv北米支部からSSTOが丁度今日届きます。フェリーして来たパイロットには悪いですが沖ノ鳥島基地から再度EVA第一中隊を衛星軌道にあげてもらいます。SSTO受領で沖ノ鳥島に行っているリツコちゃんにも手伝って貰いましょう」

 

 

--サハラ砂漠の作戦部臨時発令所

「はい、了解です。こちらから指揮します」

 

 日本のNerv本部から別の使徒発見の報があったときミサトは焦ったが、冬月副司令とユイ副司令が動いてくれて助かった。

 EVA第一中隊を使徒のいる衛星軌道まで運んでくれるようだ。使徒に近づけることができれば何とかなる。ここからでも指揮は可能だろう。

 

「こちらは順調に片付きそうね」

「はい、90%殲滅で、残り10%です。後、2,3時間で完了できそうです」

「そう、第二中隊の指揮は日向君に任せるわ。私は第一中隊の方を……」

 

 ミサトがそう言いかけたとき、マコトの端末に異常が起きていた。

 

「あれ?通信切断?衛星回線も?」

「どうしたの?」

「通信障害のようです。強力なジャミングが展開されています」

 

 他のオペレータの端末も同様のようだ。あらゆる周波数帯で通信が妨害されている。ECMいわゆる電子攻撃だが、今まで知られてる規模とは明らかに違う。人間業とは思えない。タイミングからいって

 

「使徒か……」

 

 ミサトはジャケットを着てすぐさま行動を開始した。

 

「第二中隊の指揮はレーザー通信を使用して続けて!私は宇宙に出る手段を捜すわ!」

「え!?」

 

 マコトの返事も待たず、テントを出てここまで乗って来た垂直離着陸機に向かう。

 

 正式には『近接航空支援用垂直離着陸対地攻撃機』という。統合軍に正式採用する前はYAGR-3Bで、採用後はMAV-205と名付けられた。いわゆるティルトジェットで、主翼の翼端で可動するエンジンナセルを有しているVTOL機だ。

 

「葛城少佐、どちらに行きますか?GPSも使えないので目視による飛行になりますが……」

「とりあえず地中海にでて頂戴。統合軍第二艦隊の艦船が居るはずよ」

「了解」

 

 VTOL機のパイロットに指示を出す。統合軍の艦載機にはSSTOのように衛星軌道まで行ける機体があったはずだ。通信がまったく使えない状況でまさしく手探りしながら艦船を捜す。

 

 運のいいことに近海を遊弋中の護衛空母を発見した。

 

 この辺りで出張っている軍艦は全て統合軍第二艦隊の艦船で間違いないだろう。サハラ砂漠に使徒が出現しているため、統合軍以外の船舶は出航禁止の特令が出ている。

 

 

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