【完結】NGチルドレン【EVAFF】   作:ガルカンテツ

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Part-C

--高度400km 低軌道上

「EVAでEVA(宇宙遊泳)か……」

 

 アスカ率いるEVA第一中隊は遠路はるばるSSTOに運ばれて衛星軌道まで上がってきていた。

 

 衛星軌道といっても色んな種類があり、今いるのがISSなどがある低軌道上だ。以前、南米のコロンビアに行ったときは高度80kmだったのでそのときの5倍の高さ。

 

 完全に宇宙空間で無重力。EVAだけでは上手く動けないため、S装備と呼ばれるⅩ状のフレームの先端にスラスターがあるものを背負っている。

 

『うわわ、思うように動けない……』

「手と足でバランスを取るのよ」

 

 じたばたするシンジにアスカがアドバイスするが、アスカ自体もシミュレーション以外では経験したことがない。初の宇宙遊泳だった。

 

 他の中隊メンバーも同様で、このまま戦闘できるか不安だ。SSTOから離れたときに強力なジャミングで地上からの支援がない状態になっており不安が大きくなっている。EVA間はレーザー通信でなんとか会話が可能なのが救いだ。

 

「使徒は?」

『まだ見えないね』

 

 高度は同じはずだが、使徒の姿が見えない。発見時の予想位置から移動している。使徒は宇宙空間を自由に動けるようだ。

 

 中隊で全周警戒をしていると地球の夜の方から光る鳥のようなものが、太陽のように昇ってきた。

 

 幻想的な光景だがあれば敵だ。

 

「使徒発見ってとこね……」

 

 

--統合軍第二艦隊旗艦空母 CVM-002『シンギン・イン・ザ・レイン』艦橋

 電磁カタパルトで飛び立つ機体を見送った艦隊司令は、嘆息して呟く。

 

「やれやれ慌ただしいな……」

「よろしかったので?」

「特務権限を出されてはしかたあるまい。ついでに情報収集もしてもらおう」

 

 艦長の心配に答え嘆息し帽子を被りなおす。

 

 ミサトが乗って行った機体EF-6『アイスファルシオン』は高高度から電子戦・情報収集を実施する機体。艦隊に2機しかない虎の子だ。

 元になった機体はF-6A『ファイアブレード』で、通常のターボジェットエンジン2基の間に第三のエンジン、スクラムジェットを装備している。元々はSSTOの護衛として開発されたが、大気中でも性能が高く主力戦闘機として採用された。追加の燃料で宇宙空間でも移動可能。

 

 『ファイアブレード』は単座のため、複座である『アイスファルシオン』を貸し出した。

 

「それで、無人機の墜落状況は分かったのかね」

「はい、こちらにファイルがアップロードされています」

 

 タブレット端末で状況を確認する。無人機XFQ-1『ブーメラン』は撃墜された訳ではなく、前進翼の破損が原因で墜落した。ミサトの機体の挙動についていこうとして機体限界を超えたマニューバをしたようだ。

 

「有人機にマニューバで負ける無人機とは……」

「まあ葛城少佐の乗って来た機体は最新鋭ですからね。機体シルエットのバンクにもまだ登録されていませんでした」

「それで光学観測でも結論をだせなかったのか。すぐに登録を進めてくれ」

「はっ。それにしても、あれが統合軍の『勝利の女神』ですか。嵐のような人でしたな。確かに美人ですが」

「そうだな。ヴェルヌと一緒の時に会ったことがあるが、Nervに転籍していたのだな」

 

「まあ美人は置いておいて葛城少佐のマニューバは目を見張るものでした。F-7『ジャックナイフ』は可変翼なのですが、無人機に追跡された際、手動で可変翼を90度まで広げて同時に機首上げをして急激に速度を落とし無人機をパスさせたようです」

「プガチョフズ・コブラかね?」

「ええ、似たようなマニューバです。相当Gが掛かってますね。かなり無茶だったのか『ジャックナイフ』の主翼付け根に極少のクラックが入ってました」

「開発局にデータを送ってやれ。ん?このファイルは?」

「ああ、フライトレコーダーの音声情報のようですね。ちょうどそのマニューバをしたところのようです」

 

 何気に艦隊司令が音声データを再生する。

 

『くぅぅ!おっぱいが千切れる~』

 

 大音量で流れたミサトの声に、艦橋内で気まずい空気が流れた。

 

 

--サハラ砂漠

「スズハラ!状況はどんな感じ?」

『いいんちょお疲れさん!あと少しや!』

 

 大規模なジャンミングが発生したとき、作戦部の日向マコトが、支援に来ていた第二艦隊陸上部隊の駐屯先まで行って、無人機によるレーザー通信網の構築を依頼する。

 

 その通信網が構築される間、中隊長の洞木ヒカリが散らばっている小隊を回って指揮をしていた。小隊は四方向から使徒群を囲み、誘導役と狙撃役に分かれて使徒を攻撃している。

 

 直径約5kmの円状を走り回ったヒカリは殆どマラソン状態だった。

 

 しかし、その苦労も使徒殲滅できれば報われる。レーザー通信で連絡があり他の小隊は殲滅完了したようだ。残るはこの隊の最後の一匹。

 

『おっしゃ!ケンスケ!こいつで最後や!』

『おう!シュート!』

 

 ケンスケのEVA五号機が放ったライフル弾が最後の使徒のコアを貫いた。

 

『おっしゃ!最後の使徒殲滅確認や!』

『やった!』

「よかった……」

 

 小隊の2人の戦果を確認してほっとするヒカリ。他の小隊と作戦部に連絡しようとするが

 

「え?」

 

 そのとき使徒の死骸が、パシャっとオレンジ色の液体になり弾けた。見渡す限りの使徒の死骸が全て同じように液体になり砂に飲み込まれる。その液体は溶解液でも他の使徒のような血の色でもなかった。

 

「L.C.L?」

 

 理由は分からないが一番身近な液体の色にそっくりに見えた。謎の現象に警戒していると、地面が地鳴りと共に揺れ始める。このタイミングで砂漠に単なる地震などありえない。

 

「中隊全機!全力で離脱!」

 

 ヒカリが直感でEVA全機に指示を出す。

 

 その指示と同時に使徒群が散らばっていた円の中心が盛り上がり始める。全力で走りながら後ろを確認すると盛り上がった砂がこちらに押し寄せてくるのが見えた。

 慣れない砂の上はかなり走りづらいが止まれば砂に飲み込まれてしまう。ヒカリは他のEVAにとにかく全力で逃げるように伝える。

 

 5kmほど走るとやっと盛り上がる砂の範囲から外れたようだ。他小隊もなんとか無事なのを確認する。ほっとするのも束の間。砂の中から出てきたのは、先ほど殲滅したはずの使徒だった。それも比べ物にならない巨大さで。

 

 

--サハラ砂漠の作戦部臨時発令所

「なんだこりゃ」

 

 他の作戦部スタッフと同じ感想をマコトが呟いた。ミサトに指揮を任され、やっと殲滅完了と思ったら、また使徒が出てきた。今度は数ではなく大きさか。

 

「無人機の観測では、使徒の直径が10km超えています……」

 

 オペレータの報告にも反応できず、ぼーっとしてしまう。

 

 上空からの映像では今までの使徒で最大の使徒が映っていた。大量に居た使徒の体を上下2つ合わせて楕円球のようになっている。例えるならどら焼きのような形だ。足は4本ではなく無数にある。目のような模様は横にずらっと並んでいた。それぞれの目がぎょろぎょろと動いているのが不気味だ。

 

「コアの位置が同じなら下部の中心になりますが……」

「半径5km先か。それも下からの攻撃が必要になる……しかしこの砂漠では……」

「ともかく攻撃を。足を壊して動きを止め……」

「使徒内部に高エネルギー反応!円周部を加速!収束していきます!」

「加粒子砲か!?中隊に連絡を!最弱から最強に進化したな……」

 

 

--高度400km 低軌道上

「くっ!避けるなー!」

 

 アスカの攻撃は使徒にスカされた。光る鳥のような使徒本体は攻撃して来ず、こちらの攻撃に対しては最小限の動きで避けられる。まるでこちらを観察しているかのようだ。

 

 当初アスカの第一小隊で使徒を攻撃。他の小隊はバックアップの予定だったが、使徒の翼から分離した光の羽が、他小隊を攻撃し始めた。

 

 自在に動く光る羽を迎撃しようとするが、無重力空間では上手く動けない。ポジトロンライフルを撃った反動で後ろにすっ飛んだり、アクティブブレイドで切ろうとしてもふらふらだったりと、まともに攻撃できていない。

 

 アスカは中隊長として指揮に回りたいが、目の前の使徒本体で手一杯だ。その本体にも全然攻撃が当たらない。焦りは募るばかり。

 

 そのとき、新たなレーザー通信が入った。

 

『ごめん!お待たせ!』

「ミサト!?」

 

 ジャミングで地上からはまったく通信ができないはずだ。レーザー通信ということはミサトがわざわざこの衛星軌道まで上がって来たらしい。

 

 

--EF-6『アイスファルシオン』後部座席

「みんな落ち着いて!小隊単位で敵を固定!3機で光る羽を囲むように攻撃!ここのシステムを借りるわよ」

 

 最後の言葉は前部座席に座るパイロットに伝えたものだ。

 

 後部座席には大きなディスプレイがあり、この機体で戦闘指揮をするためタッチパネルを操作する。敵をマークし小隊毎に割り当てなどを行いつつ通信で指示を出す。段々EVA中隊の行動が整ってきた。

 

 チルドレンもミサトの指揮で落ち着きを取り戻したようだ。

 

 ライフルなどの攻撃は当たるようになってきたが、A.T.フィールドに阻まれて有効打撃になっていない。近づいてA.T.フィールドを中和しつつ近接攻撃が有効そうだが、無重力で踏ん張れないため自在に動く光る羽には当たらない。

 

『くそ!地面があれば!』

 

 ソニックグレイヴを装備しているムサシ・リー・ストラスバーグからの言葉で、ミサトは思考を始める。

 

(地面?踏ん張り……抵抗……抵抗って確かEVA2機で落下したとき……)

 

「みんな!よく聞いて!A.T.フィールドを使うの!足元に抵抗があるものをイメージして!それを蹴る感じで!」

 

 と、言ったものの直ぐにはイメージできず、足をスカすばかりのようだ。

 でもミサトはコロンビアでEVA初号機と弐号機が、A.T.フィールドを利用して空気抵抗を作り出し無事に落下したことを覚えている。イメージできればEVAなら可能なはずだ。

 

「足元になんでもいい!壁でも地面でもブロックでも何かがあることをイメージして蹴っ飛ばして!」

 

 しばらく経つと、ムサシのEVA七号機の蹴った先に赤く光る六角形が生まれた。蹴った反動で動くこともできる。

 

『やった!できた!』

『ムサシ!すごい!どうやったの!?』

 

 ムサシの喜びの声に小隊長のマナがやり方を聞いた。

 

『シンジの顔を思い浮かべた!』

『は?』

『え!?なんで僕!?』

『『『あー……』』』

 

 ムサシの回答に困惑するマナとシンジだったが、他のメンバーは納得したようだ。別にシンジと仲が悪い訳ではないが、マナがシンジ好きを公言しており思うところがあるのだろう。そこのところ良く分かってないシンジにとっては、とばっちりだが。

 

 そんなこんなでコツをつかんだムサシは空間を蹴り自在に動き出した。他の中隊メンバーも同じようにA,T.フィールドを反動に使えるようになってきた。

 

 ときどき「このやろう!」とか「死ね!」とかいう物騒な掛け声は聞かなかったことにしよう。

 

 みるみるうちにEVAの動きが良くなり、光る羽の撃破もできるようになった。後は本体だ。

 

 第一小隊の3人でA.T.フィールドを蹴りつつ攻撃を仕掛けるが、光る羽より動きが早く捉えられない。しかし光る羽が全滅したとき、使徒本体が動きを見せた。

 

 クチバシのようなところを開いて何か光線のようなものを発射した。EVA弐号機に向けて。

 

『きゃー!!!!』

「アスカ!?」




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