--Nerv第2実験場通信室
「シンジ君!」
リツコは松代の通信室で黙って状況を確認していたが、EVA初号機が殴り飛ばれたときは思わず叫んでしまった。
初号機は2回ほどバウンドして倒れた。殴り飛ばしたのは黒いEVA。鈴原トウジが搭乗するEVA参号機だ。正拳突きの構えのまま佇んでいる。
ケンスケのEVA五号機が初号機に攻撃されたとき、後方に居たEVA参号機が一気に距離を詰め正拳突きで守った。
3機のEVAは搭乗者が意識不明の状態のまま完璧な連携を見せている。浸食している使徒のパターン学習が最大限に発揮されている様だ。
焦っていたリツコだが、そこに回収部隊から連絡が入った。急いで切断されていた初号機との通信を回復させる。
--初号機エントリープラグ
『……ンジ君!シンジ君!』
「!?」
リツコからの通信に意識を取り戻したシンジは状況を確認する。
どうやらEVA参号機に攻撃されたらしい。意識を失っていたのは数秒のようだ。
慌てて初号機を立たせる。位置は先ほどよりもかなり後方まで飛ばされた。EVA参号機の凄まじい攻撃力に焦る。
『シンジ君よく聞いて。最初のEVA十五号機のパイロットの無事を確認したわ』
「!!」
『回収班がユング・レキシントンさんを保護、状態は精密検査をしないと分からないけど大きな怪我はなし。意識もあるそうよ』
シンジはこれまでずっと閉じていた口を開きL.C.Lごとゆっくり深呼吸した。
そして再び閉じる。
ガチン!
--静岡県御殿場市付近
初号機は立ち上がった後しばらく佇んでいたが、ゆっくりと歩き出した。
その無防備な姿に困惑したのか、ヒカリのEVA四号機は二刀流を構えたまま動かない。
刀の届く範囲にくると反応し切りつけてきたが、その瞬間初号機は腰を落としEVA四号機にタックルを仕掛けた。それは柔道やラグビーのようなものではなく、がむしゃらに何とかしがみついたという感じだ。2機のEVAが絡んで倒れ濛々と土煙が上がる。
まっさきに反応したのは黒いEVA参号機だった。土煙が上がっているところに飛び込むと、人型の影が襲い掛かって来る。咄嗟に正拳突きを仕掛けるが、土煙から出てきたのはタンポポ色のEVA四号機であることが分かると正拳を寸止めした。
そのままEVA四号機とぶつかり倒れてしまう。
初号機がEVA四号機を投げつけ、倒れたその隙にEVA参号機のエントリープラグ引き抜いた。
トウジのEVA参号機がヒカリのEVA四号機を絶対攻撃しないとみて仕掛けた罠だ。EVA四号機のエントリープラグも引き抜く。
ギリリリッ ボキン
(後1機)
残されたケンスケのEVA五号機は、ハンドガンを初号機に何発の打ち込むが、ゆっくりと近づく初号機の強力なA.T.フィールドが全ての弾丸を弾く。
EVA五号機は目の前に来た初号機にさらに打ち込もうとするが、初号機はすかさずハンドガンを叩き落とす。
手を伸ばしてエントリープラグを引き抜く。ロケットモータの作動したエントリープラグを見送ると、初号機はそのまま倒れた。
--Nerv本部第一病棟
「シンジ君!」
病室に飛び込んで来たミサトだったが、シンジはベットで寝ている様だった。傍にリツコが立っている。
「しっ。シンジ君は寝ているわ」
「あ、ごめん」
ミサトがサハラ砂漠で使徒戦の後始末をしているときに、日本でまた使徒が出たことを知った。
しかもEVA第二中隊が使徒に乗っ取られたとのことだ。慌てて戻ってきたが、その時は全てが終わっていた。初号機が第二中隊全機を倒したとのこと。
シンジの性格からして人を傷つけることは酷く嫌うはずだ。ましてやいつも一緒にいる仲間であれば余計感じるだろう。
ミサトは小声でリツコにシンジの状態を聞いてみた。
「シンジ君のケガは?」
「左下第1大臼歯破折」
「へ?」
「その他の身体はケガなし。精神状態も正常よ。第二中隊のメンバーも大きな怪我はなし。使徒の浸食による影響も今のところ見えないわ」
「なんで歯だけ?」
「戦闘中ずっと力を込めて噛みしめていたみたい。成人男性の場合、大臼歯で60から70キログラム程度かかることもあるし、それで歯が折れてしまったようね」
リツコの説明を聞きながら、ミサトはシンジの顔を見つめる。
「そっか、文字通り歯を食いしばってがんばったのね……シンジ君」
続く