【完結】NGチルドレン【EVAFF】   作:ガルカンテツ

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第12話 『夜』の大人達
Part-A


--赫き月

 それは古い棺に見えた。

 

 広大な部屋に棺のようなものが円形に並んでいる。その数は15。既に12の棺は蓋が外され何も入っていない。

 

 まだ開いていない棺の一つの蓋が動き何者かが起き上がった。

 

「……なるほど、これが知恵の実か」

 

 棺から起き上がったのは裸の少年だった。確かめるように手を握ったり開いたりする。

 

 少年が辺りを見渡すと近くに少女がいるのが分かった。少女は近寄り声を掛ける。

 

「おはようゼルエル。気分はどう?」

「ああ、悪くない。頭がすっきりとしたようだ。お前は?」

「私はレリエルよ」

 

 レリエルと名乗った少女は少年と同じくらいの年齢で大体14か15歳くらいに見えた。

 Seeleの制服を女性向けにアレンジした服を着ている。髪型はショートボブで、色は蒼銀。少年も同じく蒼銀の短髪ツンツン頭だ。目は二人とも赤い。

 

「そうか。一緒にリリスモドキにボコされた訳だ」

「そうね。あっという間だったわ」

「くそっ!次会ったら絶対ボコボコにしてやる!」

 

 ゼルエルと呼ばれた少年は、右手の拳を左掌にぶつけ怒りを表現する。少女は呆れたような表情で、持っていた服を差し出す。

 

「はいはい、できるといいわね。それより全裸なのを何とかしなさい」

「お?そうかこれが恥ずかしいということなんだな。イチジクの葉はないのか?」

 

 少年はにやりとして立ち上がり少女に全裸を見せる。少女は手で顔を隠し服を投げつけた。

 

「ばか!さっさと着なさい!アダム様が待ってるわよ!」

 

 着替えた少年と少女が部屋を出ていく。

 

 部屋に残された棺で開いていないのは後2つ。

 

 

--EVA初号機ケイジ

 初号機の顔の前に大きな豚の丸焼きが設置してあった。アスカが団扇でぱたぱたと初号機の方に匂いを送っている。

 

「ど、どう?」

『ん-、全然匂いしないや』

 

 初号機がちょっと首を傾げてシンジの声で答える。

 

 まあEVAに鼻はないので、嗅覚もないだろう。

 

 ちなみに初号機の頭部は素体ではなく再度装甲を付けている。アスカの「きもちわるい」の一言でこうなった。体も新規に作られた装甲で覆われている。

 

 豚の丸焼きを試す前は、ドラム缶にオレンジジュースをなみなみと注ぎ数人のスタッフの手で初号機の口に注いでみたが、味は感じなかったようだ。

 

 嗅覚も味覚もなし。EVAは消化器官がなく、口の奥、食道の下は胃ではなく行き止まり。そこに物がはいると胃液による消化ではなく、そのまま吸収されるようだ。使徒を捕食していたが何も残っていなかった。

 

「やっぱり食欲ない?」

『うん全然お腹減ってないや』

 

 ディラックの海に閉じ込められていた時は、24時間なにも食べていなくてお腹がすいていたが、今は食欲自体がない。EVA自体は2つのS2機関が稼働中でエネルギーが有り余っていた。

 

「分かったわ。シンジちょっと待ってて」

 

 アスカはそういうとインカムを触りながら振り返る。その視線の先はケイジのコントロールルームの窓があり、ミサト、リツコ、マヤ、レイの姿がガラス越しに見えた。

 

「ミサト、やっぱり食欲ないみたい」

『そう。睡眠欲もないみたいね』

 

 初号機になったシンジはずっと寝ていない。眠気自体がないそうだ。

 

 使徒戦から丸一日以上経過している。シンジがEVAに取り込まれた。いやシンジがEVAになったと言った方が正しいだろうか。

 

 初号機から聞こえる声はシンジそのもので、空想の物語でよくある声が太くなったり大声になったりはしていない。そもそもEVAに発声器官はなく、なんで声が出せているか分からない。リツコによるとA.T.フィールドの影響だそうだが、何でもありかA.T.フィールド。

 

 当初は初号機がシンジを模倣して動いているだけという懸念もあったが、碇ユイが初号機と会話して、本人でしか知らないことを確認している。母親が息子本人だということを認めているので、疑いようがないだろう。

 

 ユイはシンジだと分かると頭を抱えて座り込んでいたが、直ぐに気を取り直しこの場をリツコに任せてサルベージ計画立案に向けて動き出した。

 

『人間の三大欲、食欲、睡眠欲がないか……あとは……』

「え?マジであれやるつもり?」

『いいじゃない。減るもんでもないだろうし』

「減るわよ!色々と!」

『私が変わってもいいわよ?』

「くっ!いいわよ!やってやるわ!これも隊長としての務めよ!」

 

 くるりと再びEVA初号機に向き直ると顔を真っ赤にして怒鳴る。

 

「シンジ!こっち見なさい!」

『う、うん』

 

 初号機の視線を感じながらスカートの端を掴む。今は第一中学校の制服、水色スカートと白シャツに赤リボンを着けていた。その水色のスカートを徐々にたくし上げていく。羞恥心から手も赤くなっている。

 

 心の限界まで上げるとシンジに問いた。

 

「ど、どう?」

 

 耳まで真っ赤にしたアスカに問われた初号機は、ちょっと合間を置いて

 

『何が?』

 

「うがぁぁああああーーーーーー!!!!!!!!!」

 

 スカートから手を放し、頭を抱えて絶叫する。

 

『性欲があるかどうかよく分かんないわね。アスカもういいわよ』

 

 ひどく冷静なリツコの声が返ってくる。背後からミサトとレイが爆笑しているのがリツコのマイク越しに聞こえてくる。

 

「だったらやらせるなー!」

 

 アスカの叫び声がコントロールルームの中まで聞こえてくる。ちなみにスカートの中はスパッツなので最後の乙女の何かは減っていないはずだ。多分。

 

 

--EVA初号機ケイジ コントロールルーム

「まあ笑いごっちゃないんだけどね……」

 

 ミサトは散々笑った後に嘆息した。ケイジではまだアスカと初号機になったシンジがぎゃいぎゃいとやり合っている。主にアスカが一方的に。

 

「欲というか、なんか感情が安定しすぎているって感じね。前のように悩んでいる感じでもなく憑き物が落ちたというかなんというか……」

「感情がないわけではないわね。ただこの状況で余りに落ち着きすぎているわ」

 

 先ほどのアスカの奇行でEVA初号機の熱的変化などを確認していたリツコも同意する。マヤもコンソールを操作しながら確認していた。

 

「そうですね。精神状態を診断するために、いくつか心理テストを行ったのですが精神的には正常です。以前やったシンジ君のテスト結果とも離れていません」

「まあ、あのトボケ具合はシンジ君よね……」

「そうそう、お兄ちゃん以外なにものでもないよ。こんなに大きくなって……およよよよ」

 

 レイのボケにはツッコミを入れず、ミサトは話題を変えリツコに確認する。

 

「ところで初号機が分身?していた理由って分かった?」

「分からないわ。データでは、まるで同時に複数の状態を取る量子の重ね合わせ現象にも見えたけど……。後、残された装甲板を調査してもらっているけど、素材、塗料、果ては内部に刻印されたシリアルナンバーまで同じだったらしいわ。質量保存の法則とかどうなっているのかしらね……」

 

「そういえば9体が突然消えたのも不思議よね」

「あれね……該当時間に丁度シンジ君の意識が覚醒したデータがあるから、もしかしてシンジ君を観測者として量子状態が収束したのかも?」

「よく分かんないわね……まあ消えたお陰で言い訳ができたけど」

 

 突如として現れたEVA初号機は、使徒として説明している。外見は真っ赤で獣のような動きをしており、第三新東京市以外では最終的に消えたことで、その説明は疑われていない。

 

 あまりのインパクトに使徒の恐怖が世界中に知られ、それを撃退したNervが評価されたおまけつきだ。実際はなにもできなかったが。

 

「それにしても第二中隊に続いて第一中隊も半壊とは……頭痛いわ」

 

 世界中に派遣されていた第一中隊のEVAは、殆どが使徒の攻撃で腕などが切断され中破していた。無傷なのは、第一小隊の弐号機、零号機だけ。

 

「それに関しては第二中隊ほど修理に時間は掛からないわ」

「そうなのリツコ」

「ええ、切断面が恐ろしく綺麗だったわ。早ければ一週間くらいで直りそうよ」

「それでも一週間か……第一小隊だけでは厳しいわね。初号機はこんなだし」

 

「その初号機なんだけどSeeleから封印命令が来ているそうよ」

「聞いてるけど、この状況だし碇総司令なら無視するでしょ。Seeleから誰か監視に来るのかしら」

「多分リョウちゃんが特殊監査部でもあるから、その役目なんだろうけど……最近見ないわね?」

 

「ああ、加持だったら、ドジったみたいだから第二中隊の子たちに迎えに行ってもらったわ。アレ持って」

「アレ?」

「加持レーダー」

 

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