--ミャンマー東部森林地帯
「くそっ!ドジった!」
加持リョウジは森林地帯に追い込まれていた。
Seeleメンバーの情報入手のため、ミャンマー軍の基地に忍び込んだが、軍用犬に見つかり逃げ出してきた。
途中で入手した迷彩服はもうドロドロだ。基地にはミャンマー人だけではなくSeeleの私兵、特務軍の軍人も居たようで執拗に追ってきている。加持リョウジであることはばれていないが、捕まったらまずい。
既に丸一日逃亡を続けている。
「まあ犬に罪はないからな……」
追手は特務軍の特殊部隊のようだ。加持の行動を読み確実に追い込んでいく。
手持ちは拳銃ベレッタM93R一丁とナイフ一本のみ。随分心許ない。残弾を確認しながら息を整える。森林の大分奥まできた。なんとか敵を撒きたいところだが包囲が狭まってきている。
「こっちだ!」
加持の痕跡を見つけられた。銃声に追われるようにさらに森の奥に逃げる。
「ハァ!ハァ!ハァ!」
ずっと走り詰めで息が切れそうだ。体力には自信があったが特殊部隊の軍人には叶わない。まるで機械のように確実に追い込んでくる。
走っていると左後方から足音が聞こえてきた。いつの間にか追い付かれたようだ。拳銃の3点バーストで牽制する。
そのとき右側に別の気配を感じ咄嗟に拳銃を盾にすると、ナイフの攻撃を受け止めることに成功した。鈍い金属音が森に鳴り響く。
「くっ!」
同士討ちを懸念してかナイフで音もなく攻撃してきた。
黒ずくめの兵士はナイフを持ち換えて距離を詰めてくる。こちらもナイフで応戦、低い姿勢から足や腕を狙って突いてくる。殺さないで生け捕りにするつもりか。
なんとか防いでいるがこのままではジリ貧だ。
バランスを崩したと見せかけて咄嗟に土を掴み相手の目に向けて投げつける。ひるんだ隙に前転でその場を逃れようとしたが、もう一人左側から詰めてきた。ひるんでいた敵も立ち直って同時に襲ってくる。
「ちいぃ!」
咄嗟にM93Rの折りたたみ式フォアグリップを掴みフルオートで発砲した。
息を整えながら覆いかぶさって来た2人分の死体を退かす。銃を確認すると残弾が0になっていた。敵から装備を奪いたいが銃声のため追手がすぐそばまできている。直ちにその場を離れた。
多少距離を取れたころ、休憩のために木のうろに身を寄せて草などでカモフラージュルする。手持ちはナイフのみだ食料も飲み物もない。既にかなり疲労している。
遠くから物音が聞こえてきた。もう追い付いてきたのか。足音から4、5人は来ているようだ。真っ直ぐこちらに向かってくる。
「この辺みたいだ」
すぐそばで声が聞こえた。できれば見つからないで通り過ぎてほしいが加持は覚悟を決めてナイフを握る。
バサリとカモフラージュしていた草が取り払われた。
払った人影にナイフを突きだす。
「わ!俺ですよ!相田ですよ!」
「え?」
咄嗟にナイフを止めて相手の顔を見る。確かに見覚えのあるNervの
「おーい!加持さん居たぞー!」
周りに居た人影が集まって来る。全員知っている顔だった。
「大丈夫っすか?師匠」
浅間ヒデアキの手を借りて立ち上がる。他には鈴原トウジ、鞍馬ソウイチロウが一緒にいた。周りを警戒しているようだ。
「なんで君らがここに?」
4人の
「葛城少佐からの命令っす。師匠を連れて帰って来いって」
「葛城が……なんで俺の居場所が分かったんだ?」
「それはこれです」
ケンスケに渡されたものは懐中時計のような機械だった。時計盤ではなく丸いディスプレイになっていて地図のようものが表示されている。中央に赤い点があった。
「その赤い点が加持さんの位置です。使徒警戒網を応用して登録した人間の固有パターンを地球全域で追跡できるとか」
「そんなことが可能なのか……?」
「自分は専門外なので分りません。赤木博士と発明に関わったジャンなら分かるかも」
「まじか……俺はドラゴン●ールかよ……」
昔マンガで見た道具のようだが、個人をここまで追跡できるとなるとスパイ活動している加持に取っては致命的だ。シャレにならない。頭を抱えているとケンスケが拳銃を渡してきた。
「ミサトさんから伝言です。『この加持レーダーは世界に一つしかない。処分は自分で決めて』だそうです。後、連絡しましたので、もうすぐ迎えのヘリが到着します」
「そうか」
加持は躊躇せずに加持レーダーを放り投げて銃で破壊した。
(やれやれ、子供に助けられるとは。もう現場は引退かなこりゃ)