--東西アメリカ国境付近
「なんやこれ?」
現地に到着し、使徒を確認したEVA参号機のトウジが最初に発した言葉がこれだった。
正八面体の使徒を殲滅した地の上空で、定点回転を続ける光る輪っかの使徒は、EVA参号機に対してなんの反応も見せない。
以前の使徒出現の時は東アメリカ軍やNerv作戦部などが居たが、今回はEVA参号機だけだ。
使徒の残骸は既に回収されており、地下空間に続く3つの穴も埋められている。地下空間を調べるためのプレハブ施設が建築されているが、研究チームのNerv北米支部のメンバーは既に退避済み。
EVA参号機には待機の命令が出ており、トウジは使徒を眺めるしかできない。
「待つのは性に合わんのう」
--サハラ砂漠
ついこの間まで戦闘していたサハラ砂漠に、EVA四号機のヒカリが到着し光る輪の使徒を確認した。ヒカリは戦闘というより、長時間走り回っていた印象が強く、無性に疲れたのを覚えている。
真面目で働き者のヒカリだが、さすがにうんざりしてため息が出してしまう。
「はぁ……なんでまたここに……」
前回の巨大な使徒の残骸は既に残っていないようだ。コアを貫いたなんとかの槍?を回収するときに解体、回収したと聞いている。
地下に球状空間は確認されたが、完全に埋まっていて調査は打ち切られた。
日中の砂漠は当たり前に暑く、ゆらゆらと陽炎も見える。その先の光る輪も揺れていた。
「今回は早く終わるといいな……いや!油断はだめ!気を引き締めないと」
--オーストラリア大陸中央部
エアーズロックがあった場所は、巨大なクレーターになっていた。
大きな使徒が衛星軌道から落下してきて、エアーズロックを跡形もなく破壊し、その地下の球状空間も破壊されつくして何も残っていない。調査自体も行われていなかった。
EVA五号機のケンスケは巨大クレータの淵に近寄り内側を確認すると光る輪が見えた。
「使徒を肉眼で確認っと」
待機命令が出ているが、いつでもスナイパーライフルを撃ちこめるように伏せて狙撃体制で待機する。
「スナイパーは待つのが仕事ってね」
--EVA初号機コア内部
心配ないわよ。全ての生命には、復元しようとする力があるの。
生きてこうとする心があるの。生きていこうとさえ思えば、どこだって天国になるわ。
だって生きているんですもの。
幸せになるチャンスは、どこにでもあるわ……
太陽と、月と、地球が、ある限り。大丈夫……
--中央発令所
「空間の歪みを検知!三か所同時!使徒の上空です!」
「何!」
EVA参号機のカメラからの映像を発令所の主モニターに映し出される。光る輪の使徒の上に巨大な赤い円状の現象が発生していた。以前、第三新東京市上空に発生したものと同じだ。
--東西アメリカ国境付近
『翼を持ったEVANGELION』が黒い穴から降りてきた。
「なんやこれ?」
トウジが本日2回目のセリフを放つ。
『翼を持ったEVANGELION』は、Seeleのチルドレンが乗っているErzengelという機体だったはず。モニタには『Erzengel05 Winter.Bismarck』とある。
Erzengel五番機は、トウジから少し離れた場所に翼を羽ばたかせ着地。シュルシュルと背中の装置に羽を畳み込んだ。
色は漆黒。EVA参号機も黒だが艶消しの黒色に近い。形状はEVAに近いが、口が開くようになっていてギザギザの牙が見え隠れする。
羽を格納し終わると突然通信をして来た。
『オバンデスー』
通信ウィンドウが開き顔が映し出される。短い金髪、青い瞳の少年はニヤニヤとしていた。確か名前はヴィンター・ビスマルクといったか、訓練で散々聞いた名前だ。敵として。
『モウカッテマッカー』
「なにいうてんねん」
『サルの言語に合わせて挨拶しとるんやろが。ボチボチデンナーって返せや』
「知るかボケ。で、なんの用や。使徒殲滅を手伝ってくれるんか?」
『は?なんでワイがそんな面倒なことせなアカンネン』
「じゃあ何しに来たんや。後、お前の関西弁ヘンやぞ」
『あ゛?』
「あ゛?」
--サハラ砂漠
「私はNerv本部所属対使徒戦術旅団EVANGELION大隊第二中隊隊長洞木ヒカリ少尉です。あなたの所属、階級を教えてください」
カナリアの羽色のような少しくすみのある黄色のErzengelは、空中の黒い穴から降りてからなんの反応も示さなかった。
ヒカリは正式な手順で通信を試み、こちらから所属、階級を伝え応答を待つ。
『いやぷー』
「ぷー??真面目に答えてください!」
『だってメンドくさいもん!』
「ふざけないで!貴女の目的はなんですか?!」
『まっじめ~。ベーっだ』
「んなっ!?」
通信ウィンドウにはツインテールの金髪の少女が舌を出しているところが映っていた。
彼女はSeeleチルドレンの一人、Erzengel六番機のリヒト・ザイドリッツであることは分かっているが目的が分からない。
リヒトは、ふざけてばかりで真面に会話しない。ヒカリはペースを乱されっぱなしだ。
--オーストラリア大陸中央部
「あれ?」
ケンスケは空中の黒い穴にライフルの標準を合わせ監視していたが、何も降りてこない。
他の2か所はErzengelが降りてきたとのことなので、こちらにも来ると思ったが。首を捻るケンスケ。
--EVA初号機コア内部
「そう、もういいのね」
『ユイ』はずっと見守っていたのだ。
『シンジ』も正しい道を選ぶだろう。
もう心配ない。ユイは安心してシンジのところに戻った。
「母さん」
「シンジ、待たせたわね」
「うん、どのくらい経ったか良く分からないけど……で、どうだったの?」
「問題ないわ。あの子は大丈夫よ」
「そっか」
シンジの声色で安心したことが分かる。ユイは確信した。
「……なるほどEVAがシンジを縛っていたんじゃなくて、あなたが『シンジ』を心配して留まっていたのね」
「ん?僕がどうかしたの?」
「なんでもないわ。じゃあ皆が心配してると思うから帰りましょう」
「うん。……あれ?どうすればいいの?」
「会いたい人を強く思い浮かべなさい」
「分かった」
シンジは目を瞑り拳を握る。徐々にプラグスーツ姿がおぼろげになり薄くなっていく。
「じゃあ私も戻りますか」
ユイはレイ、アスカ、リツコ、Nervの人々、冬月、そしてゲンドウを思い浮かべる。
「さようなら『ユイ』。私は貴女とは違う方法でシンジを導くわ。太陽と月と地球がなくなっても生きていけるように……」