--セントラルドグマ メインシャフト
カヲルは重力を無視して宙に浮きながらメインシャフトの大空洞を降りていく。
生身で。
「いやー、懐かしいね。シンジ君やアスカちゃんと探検したことを思い出すよ」
第一中学制服のズボンのポケットに手を入れ、ハミングをしながら降り続ける。まるで散歩をしているような気軽さだ。
「おや?まだ解体してなかったんだね。折角だから使わせて貰おう」
--中央発令所
「使徒……あの少年が?」
「目標は第4層を通過、なおも降下中!」
いつの間にか本部に侵入していた銀髪の少年渚カヲルは、以前ここで暮らしていた。何度も身体検査を行っていたが不審な点は全くなく普通の人間だった。
「間違いないのね?」
「はい、パターンブルー。間違いありません。使徒です」
ミサトは主モニターに映るカヲルを信じられない気持ちで凝視する。何度も会話したが敵対するような様子は見えなかった。あれらは全て演技だったのだろうか。確かにうさんくさい感じはしていたが。
そこに新たな警報が追加された。
「第13格納庫で異変!封印していたErzengel参番機が起動しました!動き出しています!」
「何ですって!?誰か乗っているの!?」
「いえ、無人です!エントリープラグは抜かれたままです!」
「そんな……」
カヲルが本部から居なくなった後、残されたErzengel参番機は徹底的に調べ厳重に封印されていた。内部のS2機関は完全に停止しており、エネルギーは0で動くはずがない。
「Erzengel参番機は、封印、拘束具を破壊。壁を破壊しながらセントラルドグマに向かっています!」
「やっぱり、あの子が呼んでいるのね……」
対処しようにも稼働できるEVAは全て出払っており、本部にはなにもない。
「あ、いえ……でも……」
ただ、一機だけEVAはある。ミサトは思いついたが、躊躇する。
「目標は第5層を通過!」
「セントラルドグマの全隔壁を緊急閉鎖!少しでもいい、時間を稼げ!」
その間にも事態は進行している。冬月の指示が飛び全隔壁を下す。すると同じ場所から別の声が聞こえた。
「構わん。初号機を使え」
「碇総司令!」
いつの間にか発令所の一番上に碇総司令が戻ってきていた。
「しかし……」
「検査のための入院だ。シンジなら問題ない」
父親である碇総司令の口から「問題ない」とまで言われては反対する理由もない。これはシンジに対する絶対的な信頼なのだろう。親馬鹿か。
「リツコ!」
「もう病棟に連絡しているわ」
病室に居たシンジは元気らしい。カヲルが来たことを聞いて飛び出していったそうだ。
ミサトは宣言する。
「EVA初号機の起動準備!」
--EVA弐号機エントリープラグ
『無駄な抵抗はやめて大人しくしてないさいアスカ。オーッホッホッホ』
「くっ」
モルゲン・ツェッペリンの笑い声が耳にキーンとくる。
巻きついた光る鞭のおかげで手が動かせない。少しずつ特殊装甲を溶かしてくる。以前倒した使徒も同じ鞭を持っていた。
レバーにあるボタンを操作し、肩のウエポンラックを開く。
「くらえ!」
ラックから両肩合わせて20本のニードルガンを発射。しかし、Erzengel四番機は鞭を消して自由になり簡単に避ける。
『おっと』
「ちっ。当たらなかったか」
『相変わらず狂暴ですわね。アスカ』
「アンタにだけは言われたくないわ」
光る鞭は消え去り、自由になったEVA弐号機はソニックグレイブを構え直した。
跪いたままのEVA零号機は無事だ。レイはエントリープラグごと脱出しており、回収班が向かっているだろう。モルゲンはまったく興味を示してない。EVA破壊が目的ではないのか。
「どういうつもり?」
『さっきも言ったでしょ?教える訳ないって。もう忘れましたの?ニワトリかしらぁ?』
「ふん、大方何かの時間稼ぎでしょ。思い通りにはさせない」
『さてどうかしらね……』
ずっとニヤけていたモルゲンの反応が変わった。どうやら図星のようだ。どちらにせよ戦わないといけないらしい。
「丁度いいわ。前からアンタをブッッとばしたかったのよ!モルゲン!」
『あら初めて意見が合いましたね!アスカ!』
赤いEVA弐号機がソニックグレイブを持って襲い掛かり、血色のErzengel四番機が再び光る鞭を展開する。