【完結】NGチルドレン【EVAFF】   作:ガルカンテツ

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第15話 『鳥』のような自由を
Part-A


--EVA弐号機エントリープラグ

『オーッホッホッホ!全然攻撃が届きませんわよアスカ!DOGEZAしたら許してあげないこともありませんわよ!』

「誰が土下座なんかするか!」

 

 とは言ったもののEVA弐号機は防戦一方だ。

 

 Erzengel(エルツエンゲル)四番機は光る鞭を振り回すことで、まるで結界のように近寄れない。

 

 鞭は上級者が使うと先端が音速を超え衝撃波から音が出るらしいが、それがEVAサイズになると凄まじい破壊力を伴う。しかも以前使徒が使っていた光る鞭は、建物などを簡単に切断できる威力を持つ。EVAの特殊装甲もダメージを受けるほどだ。

 

 ダメージ覚悟で、高速で動き回る鞭を掴んで止めようとしても光る鞭自体を消すことができるようで、せっかく掴んでも振り出しに戻されてしまう。

 

「こうなったら……」

 

 アスカはソニックグレイブを回転させ盾として突撃する。体育の授業で習ったバトンを参考にしてみた。意外な技能が役にたつ。

 

「どりゃー!!」

『くっ!』

 

 一気に鞭の結界を押しのける。焦ったモルゲンは光る鞭を消してしまうが、アスカはその隙を逃がさなかった。

 

 ソニックグレイブの刃で、鞭のグリップを切断する。そして返す刀でErzengelの右上腕の特殊装甲も切り捨てた。装甲が落ち中身が見える。素体のはずが何故か包帯のようなもので覆われていた。

 

『ふん!なかなかやりますわね。それでは、本気を出しましょうか?』

 

 アスカは警戒して距離を取る。Erzengel四番機の右腕の包帯がしゅるしゅると垂れ下がり始めた。

 

『見せてあげますわ!裏コード:トリノの聖骸布!……(ピピピ)……あらグラオベ様!了解ですわ!……アスカ命拾いしましたわね!ではごきげんよう!』

「は?」

 

 モルゲンは言うだけ言って、Erzengel四番機を羽ばたかせ、空中の黒い穴に飛び込んでいった。後には呆然としたアスカが残される。

 

「何だったのよ……」

 

 そのとき発令所から通信が入った。EVA初号機と使徒渚カヲルの顛末を知る。

 

「え?渚が!?」

 

 

--芦ノ湖湖畔

 芦ノ湖は現在一般人立ち入り禁止になっており、使徒との戦闘が激しさを増し退避命令が出ていた。

 誰も居ない夜の湖畔で、シンジが膝を抱え座っている。

 

 そこにアスカが訪れた。

 

「シンジ」

「……アスカ」

 

 シンジは振り返らず顔をみせない。アスカは後ろに立って様子を探る。

 

「聞いたわ。渚カヲルが使徒だったんですってね。あの渚がねぇ……変わったやつとは思ってたけど」

「……うん」

「使徒は倒すべき相手。シンジは悪くないわ。悪いのはSeeleチルドレンよ」

「……グラオベ君もいい人だったんだ。もちろんカヲル君も綾波も」

「そう。まあ他の四人は悪人だけど」

 

 アスカの冗談かどうかわからない断定に、シンジは表情を和らげる。

 

「ははっ、カヲル君は最後に『またね』って言ったんだ。なんだかそれが信じられるんだ。EVAの中に居た時になんか確信したんだけど、よく覚えてないや」

「じゃあまた会えるかもね。そん時は文句言ってやりなさい。アタシもひっぱたくから。じゃあ帰りましょ。夜の芦ノ湖は冷えるから風邪ひくわよ」

「そうだね。ありがとうアスカ」

 

 

--長野県 第二新東京市 某所

 暗闇の広い部屋の中、中央に冬月が拘束されていた。パイプ椅子に座らされ後ろ手に手錠が掛けられている。

 

 その暗闇に光が差し込んだ。厳重なはずのドアが開けられ男が入ってきた。

 

「君か……」

「ご無沙汰です。外の見張りには、しばらく眠ってもらいました」

 

 男は加持リョウジだった。冬月の拘束を解除すると、慎重にドアの外を伺い逃走経路を確認する。

 

「帰国していたのか。この行動は、君の命取りになるぞ」

「ええ、これでスパイごっこは終わりですね。これが最後の仕事になります」

「そうか。ともかくありがとう。老人には堪えるよ。折角、日本政府との折衝の後、空いた時間でユイ君と観光しようとしていたのに」

「それはご愁傷様です。Seeleはどうでしたか?」

「どうも碇を切り捨てるようだ」

 

 

--技術部長執務室

「大丈夫かしらね。シンジ君」

「アスカに任せたわ。まあアスカならなんとかするでしょ。それにしても、あの渚君が使徒だったとは。身体検査でなんにも出なかったわよね……会話も自然だったし」

 

 ミサトはリツコの執務室に、使徒渚カヲルの情報を確認しにきていた。この間まで普通に接していた少年が使徒だとは実際に見ても信じられない。備え付けのコーヒーを飲みながら思案に暮れている。

 

「ええ、血液検査、レントゲン検査、MRI検査、DNA検査でも普通だったわ。アルビノではあるけど、人間としか思えない数値ね」

「そうよねぇ。パターンブルーもなかったし。彼が死んだ場所から何か分かった?」

「L.C.L溜まりに混ざっちゃって良く分からないわ。血液の反応だけはあったようだけど」

 

「あれ?骨とか肉とか髪の毛とかは残ってないの?」

「ええ、L.C.Lの原液に溶け込んでしまったのかも」

「まあ握り潰したことは間違いないんでしょうけど。反応も消えたし」

「残ったのはErzengel参番機だけね。渚カヲルが消えても、S2機関は稼働したままだわ」

 

 カヲルはどうやってか分からないが、エネルギー0の状態からErzengel参番機を起動。エントリープラグがない状態でも無人で動いていた。

 

 そのときの状態からカヲルが消えてもS2機関には火が入ったままで、外されていたエントリープラグも電源が入った状態になっている、

 

「後は、遺言?ね。シンジ君によるとあたし宛で『キーワードは希望』だとか。なんかの隠語かしら」

「ん?そういえば再起動したErzengelのエントリープラグでパスワードを要求してきたプログラムがあったわ。以前調べたときはなかったのに」

「そのまんまパスワードとかって?まさかー」

 

 ミサトもリツコも半信半疑で、リモートで繋がっているErzengel参番機のエントリープラグプログラムにパスワード"KIBOU"を打ち込んでみた。

 

「なにこれ」

 

 プログラムで表示されたのは、『31.5、35.5、384,400』という3つの数字だった。

 

 

--神奈川県 第三新東京市 某所

「よぅ、遅かったじゃないか」

 

 加持が振り向いた瞬間。銃声が鳴った。薬莢が床に落ち高い金属音を上げる。

 

「これで良かったの?」

 

 ミサトは拳銃を上に向けて発砲していた。天井に穴が開いている。

 

「ああ、これで『加持リョウジ』は死んだ。ここにいるのは幽霊だな」

「もう、冬月副司令の誘拐をしてNervを追われ、救出してSeeleから追われるとかマッチポンプもいいところじゃない。こんなのすぐバレるんじゃないの?」

「そこは惣流部長がなんとかしてくれるさ。これで自由に動きやすくなるしな」

 

「まだなんかするの?」

「最後の仕上げが残ってる。そのための幽霊さ」

「そう始まるのね……」

 

 そういって俯くミサトを加持は引き寄せてキスをした。

 

「ちょ、いきなりなにするのよ!」

「全てが終わったら結婚しよう」

「……それって死亡フラグじゃないの?幽霊さん」

「既に死んでいるから無効さ」

「バカ……あんた、ほんとにバカよ……」

 

 そういって再び2人は重なった。

 

 

--Nerv本部会議室

「EVA24機全機移送ですか!?」

 

 ミサトが激昂し席から立ち上がる。会議の席には総司令を始めNervの幹部が勢ぞろいしていた。碇総司令は、ミサトを咎めることもなく言葉を続ける。

 

「そうだ。地球統合政府からの正式な通達だ」

「しかし!」

「最後の使徒を倒したのだ。移送して封印することは規定路線ではあるだろう。葛城君、24機のEVA輸送の準備を始めてくれ」

「……はい」

 

 納得していなさそうなミサトをそのままに話を続けた。

 

「行先は、NervEU支部地下封印場……ではない」

「え?」

「ここだ」

 

 そういって総司令は、共有画面に地図を表示し一点を指し示す。

 

「そこは!」

「そうだ、君の情報を元に場所を特定できた。ここにSeeleの施設がある」

「でも、あの情報は渚カヲルの……」

「問題ない。裏が取れた。加持君によってな」

「加持が……」

 

 幽霊になってどこに行ったかと思っていたらそんなところに。自由とはそういう意味か。意気消沈していたミサトは俄然やる気を取り戻す。

 

 碇総司令はいつものポーズに戻り、幹部全員を見渡した。

 

「惣流、状況は?」

「キール・ローレンツ以外は、全て補足している。準備完了だ」

「うむ、ユイと赤木君はEU支部へ頼む」

「ええ、封印作業の名目で向かうわ」

「何があるか分からん十分気を付けてくれ。赤木君も頼む」

「はい」

 

「葛城君」

「はい!」

「EVAを切り離した後、狙われるのはチルドレンだ。彼らの扱いを慎重にな」

「はっ!」

「Seeleの次の目標は、私の殺害、MAGI.NETの中心である本部のMAGIの確保。つまり、ここ第三新東京市Nerv本部になるだろう。いつ強襲されるか分からない。秘密裏に計画を立ててくれ。どこにSeeleの目があるか分からんからな」

「分かりました。本部防衛のプランを立てます」

 

「頼む。冬月もサポートしてくれ」

「……」

「冬月?」

「あ、ああそうしよう」

 

「では諸君、時は来た。プラン(オー)改め Plan Objectを発動する。We object.(我々は反対する)だ 」





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