--中央発令所
「はー!やっと終わった!」
「お疲れさん」
大きく伸びをしているマコトをシゲルが労う。EVAの移送計画を立て、作戦部で実行を行ってきた。かなりの過密スケジュールで徹夜もしており疲労困憊だろう。
先ほど最後のEVA輸送機が飛び立ちNerv本部としては一段落したところだ。
「日向君お疲れ様!はいコーヒー。青葉君も」
「お、ありがとうマヤちゃん」
「さんきゅー」
マヤが丸いお盆でコーヒーが入ったマグカップを3つ持ってきてくれた。3人でコーヒー休憩をとる。
「マヤちゃんもありがとうね。封印用エントリープラグの用意とか」
「いえいえ、センパイの設計通りに作っただけなんで」
「それにしても静かになったな」
発令所の下の階層にいるオペレータの数が大分減っていた。第二種警戒態勢のままになっており、D級職員は本部施設の出入りが全面禁止になっている。最低限の人員だけしか作業していない。
「Nervはこれからどうなるのかしらね……」
マヤはコーヒーの入ったマグカップを見つめ不安そうにつぶやく。Nervは使徒殲滅を使命としてきた。最後の使徒を倒したことは目標を達成したということだ。
「それは元々の目的に戻るだけじゃないかな。地球統合政府の一員として情報を管理する組織に。シゲルの司令部は元より、マヤちゃんの技術部もMAGIの管理で必要だろ?あぶないのは作戦部の方さ。少なくとも対使徒戦術旅団は解体だな」
「まあ組織改編は必至だろうな。ただ最後の一仕事が残ってるだろ?」
シゲルの最後の一言は他に聞こえないように小声でつぶやく。マコトは眼鏡をクイっと上げて、「まあな」と返した。
--総司令専用会議室
『約束の時が来た』
仮想空間に浮かぶSeele01と書かれたモノリスがキール・ローレンツの声で点滅する。
『『『『約束の時が来た』』』』
円状に並んだ12枚のモノリスが一斉に点滅し、中央にいる碇ゲンドウを威圧する。しかしゲンドウはいつものポーズのまま微動だにしない。傍らにはいつもは居ない冬月が立っている。
『最後の使徒が消え、人類が権利を得た。最後の儀式を行う。だが、失望したぞ碇』
『さよう。裏切り行為は死に値する』
『碇ゲンドウに罰を与える』
次々とモノリスから非難を浴びる。ゲンドウは沈黙を守ったままだ。
『持ち出されたアダム、ダブルS2機関のEVA初号機、隠されたロンギヌスの槍、そして抜け殻のリリス。全てを握ったつもりか?碇。だが、代替はある。貴様の思い通りにはいかない。残念だったな』
「これまでのSeeleのシナリオとは違いますな」
発言したのは冬月だ。彼の存在に誰も咎めない。
『冬月先生、我らは人の形を捨ててまでEVAという箱舟に乗る事はない』
『これは通過儀式なのだ。閉塞した人類が再生する為の』
『滅びの宿命は新生の喜びでもある』
『神も人も全ての生命が死を以てやがて一つになる為に』
次々とSeeleのメンバーが発言する。どこか陶酔した様子が感じられた。
『儀式の妨げになるNerv本部には消えてもらう』
『なるべく穏便に済ませたかったが、MAGI.NETは手ごわいのでな。これよりNerv本部施設の直接占拠を行う』
Seele01が冷徹な声で宣言する。
『そして、碇、貴様には死を与えよう』
その言葉を機に冬月が拳銃を取り出し、碇ゲンドウの頭に向け発砲した。