--中央発令所
「何があったの!?」
ミサトが発令所に戻ったとき、オペレータ達がざわついていた。コンソールで確認しているマコトに問いただす。
「あ、葛城少佐!先程、地球統合政府からコードA-801が出ました!」
「A-801!?」
特令コードA-801は、Nervの特例による法的保護の破棄。及び、指揮権の剥奪。事実上の最後通告になる。
同時にネットワークの切断が始まっていた。
「どうやら地下及び海底のケーブルが物理的に切断されたようですね。衛星回線も強力なジャミングを受け通じていないようです……あれ一回線だけ残ってる?」
「多分それは総司令会議室の秘匿回線ね。Seeleからよ」
「ということは……」
「ええ、Seeleからの攻撃が始まったわ。思ったより早かったわね」
その瞬間、発令所の照明が落ち、非常灯に切り替わった。
「次は電源か。生き残っているのは?」
「正副予備、どれも0%です。これも物理的に切断されてますね」
「そう。では電源ルート”E”に切り替えて」
「了解」
マコトが操作すると、直ぐに照明が復帰した。電源ルート”E”とは、渚カヲルが残したErzengel参番機のS2機関からエネルギーを取り出し、それを電源としたものだ。
予備の予備として用意していたが、こんなに早く使うことになるとは思っていなかった。
「日向君。これを」
「これは?」
「これからの防衛プランよ」
マコトはミサトから渡されたUSBメモリをコンソールのコネクタに差し込んだ。メモリのプログラムが自動実行され、各所でプランに沿った防衛行動が実施される。
『警告。これより第一種警戒態勢に移行します。第3層までの全隔壁を閉鎖。全職員は第87経路にて待避してください』
合成音声によるアナウンスが流れた。本部職員が一斉に動き出す。
マコトはモニタで本部の状況を確認する。
「職員の退避は完了しています。全隔壁の閉鎖67%完了。後15分で完了の見込み。閉鎖した区画からベークライトの注入を開始します。これは完全に籠城ですね……」
「ええ、これで6時間くらいは時間が稼げるわ」
--強羅防衛線近く
「始めよう。予定通りだ」
黒ずくめの兵士が立ち上がり、第三新東京市方向を睨む。
--中央発令所
「装輪戦闘車の車列が、国道1号線から強羅防衛線に接近中!」
「御殿場方面からも国道138号線から2個大隊が接近中!」
「戦自!?」
オペレータからの報告にミサトは相手を確認する。マコトは国道を監視しているカメラ映像を分析していた。
「いえ、装輪戦闘車Type-12シリーズです。戦自の装備ではなく統合軍と同じですね。機動戦闘車、歩兵戦闘車、野戦救急車まで揃ってやがる。でもここまで何の連絡もないということは戦略自衛隊もグルということですかね」
「どちらかと言うと日本政府が指示しているのでしょうね。敵に回らないだけ、まだましだわ」
「ですね。……あ、監視カメラが破壊されました」
カメラ映像が砂嵐になった瞬間、大きな地響きが聞こえた。
「都市部がミサイルによる大規模攻撃を受けています。攻撃元は……海上からです!」
「第8から第17までのレーダーサイト、沈黙!」
「第104から206の無人監視ステーション爆破されました!」
「兵装ビルの84%が稼働不可です!都市外延部の兵装も爆破されています!」
潜水艦からのミサイルによって攻撃が開始された。まず兵装ビルを無効化するためだろう。同時に潜入した敵の工作員によって外の施設が次々に爆破されていく。
「どうやら完全に位置を把握されているみたいね」
「そうですね。元々使徒用の装備なので対人は考慮されていませんが。沖合に大型の潜水艦が浮上しています。これは潜水強襲揚陸艦ですね……」
「潜水艦主体か。やっぱり左手の軍ね」
「左手の軍?」
「特務軍の第十三遊撃特務艦隊。通称『
「例のSeeleの私兵ですか。私兵を艦隊で持ってるとは……」
4隻の潜水強襲揚陸艦の上部甲板が割れると前部には2隻の揚陸用ホバークラフト。後部には兵員輸送用ヘリコプターが出現し、湯河原町方面に向け同時に発進する。ホバークラフトには主力戦車Type-11A1『グレートホワイトシャーク』と随伴歩兵を搭載していた。
さらに沖合から黒く平べったい航空機が飛来してくる。潜水空母から発艦したZV-107『クナイ』は、以前ミサトが借りたF-7『ジャックナイフ』の発展型ステルス強化版だ。それが、ステルス度外視で主翼のパイロンにも爆装し、第三新東京市をしらみ潰しに爆撃する。やりたい放題だ。
--特務軍Nerv本部強襲部隊臨時指揮所
「地上施設99%沈黙しました」
「チルドレンの位置は把握できたか?」
「不明です。恐らく本部内かと」
「では、次の段階に移行する。第一目標はMAGIの占拠。第二目標はEVAパイロットの確保または殺害。その他Nerv職員は全員殺害。突入路の確保は?」
「21箇所確保しました。ただ守備要員がまったく居なかったのですが……」
「ふん、既に逃亡したのだろう。突入開始」
「ラジャー。突入開始!」