Part-A
--F-3E『バスタードソードⅡ』コックピット
「タワー、こちらメビウス01。無線標識から12マイルの位置にいる」
『メビウス01、滑走路17番右側への着陸を許可します。風が150度方向から2ノットの速さで吹いています』
「メビウス01了解、着陸する」
『ようこそ、沖ノ鳥島ベースへ。あなたのようなエースオブエースが来て頼もしいです』
「こちらこそよろしく」
コールサイン『メビウス01』は、イースター島にある統合軍第四艦隊の東太平洋基地からSeele攻撃作戦に参加するため飛来した。
現在、Seeleは世界の敵として認識されている。
Seeleメンバーは12人中11人が拘束または抵抗したため射殺されている。
地球統合政府の公式発表では、全世界を巻き込んだセカンドインパクトの主犯としてSeeleなる秘密結社が挙げられていた。セカンドインパクトだけでなく、アメリカのワシントンDCにN2弾頭を使用したりなど、各地で国家の分断工作を行い、世界を支配する下地を作り上げる。
Seeleメンバーは、大富豪、大物政治家、宗教家、果てはマフィアのボスまで様々。世界をたった12人で牛耳り、地球統合政府を好き勝手に使っていた。
このSeeleの悪行が知れ渡ると世界中が激怒した。
自然現象として説明されていたため、災害では仕方ないと思っていた所に、実は人為的に起こされたと知られたのだ。セカンドインパクトでは人類の半数が無くなっており、残された人々の怒りは全てSeeleに向けられる。
Seeleメンバーは、ほぼ捕らえられたが、特務軍を初めSeeleシンパがかなりの規模で残っており、その残党狩りが行われている。
統合軍西太平洋基地である沖ノ鳥島ベースも、中央アジアにいる特務軍残党への攻撃作戦を準備中。
作戦に参加予定のコールサイン『メビウス01』のパイロットは、統合軍に編入される前は航空自衛隊の飛行教導群に所属していた。アグレッサー部隊でも特に傑出した戦闘技量を持つパイロットであり、統合軍に配属された後もエースとして活躍している。
そして彼の妻子はセカンドインパクトで亡くなっていた。
『ようやく敵討ちができるんですね』
「ああ、payback timeだ」
--東ヨーロッパ 統合軍第5陸戦師団第504戦車大隊臨時指揮所
「何!?無人戦車だと!?」
「はっ、鹵獲した車両に人が乗っていませんでした」
副官の報告を受けて504戦車大隊の大隊長は驚愕していた。
戦闘車両の無人化を研究していることは知っているが、実戦で使用できる段階とは知らなかった。あったとしても小型のタイプで、MBTクラスの物は聞いたこともない。しかも主砲はレールガンだ。そんなものまで実戦配備されていたのか。
統合軍で採用されている対戦車特化型駆逐戦車 Type-11G『タイガーシャーク』の全遊動式無人砲塔144mm滑腔砲がレールガンに換装され、それが無人戦車として動いている。
敵、特務軍の地上部隊では基本統合軍と同じ兵器が使用されているが、最新型か採用前の高価な装備ばかりであった。
「こちとら陸上部隊の予算がどんどん後回しにされてたりするというのに」
「まあ、統合軍は基本海軍ですからね……」
肩を落とす大隊長に副官がフォローになってないフォローを入れた。
改めて地図を囲み状況の確認をする。
「で、どうします?」
「ふむ、連中の歩兵部隊は?」
「確認されていません」
「では、無人戦車の射程ぎりぎりから半包囲して攻撃、徐々に距離を取って誘い出せ。必ず後方に無人戦車の制御をしている指揮車がいるはずだ。ここの林から裏に回って歩兵の携帯ミサイルで撃破しろ」
「はっ!」
大隊長のいう通り、後方に指揮車らしい車両をドローンで確認。
重装歩兵の持つ多用途ミサイルで指揮車を撃破すると無人戦車が動かなくなった。随伴歩兵が居なかったため、こちらの歩兵を牽制できなかったのだろう。
戦車と歩兵はお互いを補完するのが不可欠だ。無人戦車の実戦投入は前例がないため特務軍にノウハウがなく、歩兵を軽視した作戦運用自体が失敗である。
「戦線の一部突破を確認しました」
「うむ。浸透し北の部隊を包囲しろ。機甲部隊としての経験の差を見せてやれ」
「はっ!予算は負けていますが経験は負けていません!」
「……悲しいことをいうな」
--カリブ海西側海中
統合軍第一艦隊所属の攻撃潜水艦 SS-512『サウンド・オブ・ミュージック』は、この海域に潜んで3日になる。
ここに来るまでも細心の注意を払って、最小限の動力で海流などを利用しながら移動してきた。
この潜水艦は核融合炉ではなく通常動力であるディーゼル発動機で発電しており、その電力を全固体バッテリーに充電して動作する。核動力と比べて稼働時間が短いが静寂性は優れていた。
そろそろバッテリーが厳しくなってきて移動しようとしたとき、上方で微かに音がしたのを水測員が聞き取る。音紋から特務軍の潜水艦で間違いなさそうだ。
「ようやくお出ましか……」
「はい、時間的にぎりぎりでしたね」
小声で艦長が水測員と会話する。息をひそめて3日。撤退する場合の移動も考えるとギリギリだった。乗員も持たない。
統合軍の潜水艦部隊は、血眼になって第十三遊撃特務艦隊の潜水艦基地を捜していた。
特務軍の艦隊は全てが潜水艦で構成されており、攻撃潜水艦だけでなく潜水空母や、潜水強襲揚陸艦、はては潜水輸送艦まで持っている。
この規模の潜水艦隊で基地がないはずがないが、神出鬼没でどこから現れてどこに消えていくのが分からなかった。構成する潜水艦もスクリューでなく最新技術の超電導電磁推進を使用しており騒音もほぼ無い。積極的な潜水艦の追跡を諦めかけていた。
統合軍は推測で各地に潜水艦を配置し、網を掛ける作戦に出たが、その作戦が功を奏す。
「落石する音が聞こえます……これは……岩盤が開いているようです」
「そこが出入口か。よくやった。ようやくしっぽを出したな。ゆっくりと離脱するぞ」
潜水艦の基地発見を連絡し大規模攻撃を仕掛けるため、その場を慎重に離れる。
「あんなところ、どうやって攻撃するんでしょうね。魚雷も爆雷も岩盤には効かなそうだし」
「あれだ。『東洋のジャンヌ・ダルク』方式だ」
「ミス葛城式ですか。また戦艦の艦長が泣いちゃいますね」
冗談もひそひそ声だ。早くここから離れ大声で喜びたい。
--種子島宇宙センター
『打ち上げ一分前』
『全システム準備完了』
『9,8,7,6,5』
『メインエンジンスタート』
『3,2,1,0』
『SRB点火、リフトオフ』
HーⅡBロケットが種子島の夜空を明るく照らしながら宇宙に向かって進んでいく。
--中央発令所
「HーⅡBロケット、リフトオフ以降、管制は吉信発射管制塔から竹崎総合司令塔に引き継がれています」
「SRB燃焼終了。SRBジェットソン」
「第一段ロケットジェットソン」
「第二段エンジン、燃焼開始」
「カーゴ分離。軌道に乗りました。軌道輸送機接触まで48分」
現在、衛星軌道に向けて大量の資材を輸送していた。SSTOは数が少ないため、種子島だけでなくフロリダ、バイコヌール、ギアナなど既存のロケット場も総動員だ。
統合軍がSeele掃討作戦を行っている裏で、Nervはまた別の大規模作戦を進めている。
Nerv本部が襲撃を受けて以来、3週間が経過していた。
--(3週間前)地中海上空
「機長!不明機が接近してきました!」
「来たか」
EVA輸送機ウィングキャリア04の操縦席に緊張が走った。
輸送機は現在EU支部への空路を外れ、Nerv情報部からの指示で死海に向かっている途中だ。
「後方カメラで確認。機影からFQ-7『グラディウス』と分析されました。最新の自律型無人戦闘機ですね」
「情報部の資料にあったやつか」
操縦席の窓からも、すぐ横を飛行している無人機が見えた。機体は有人機の三分の二くらいの大きさ。本来操縦席がある場所に可動式の大型球体光学センサがあり、まるで目玉のようにギョロリとこちらを見ている。
「なんか気味悪いな……あ、機体の下に潜りました」
「恐らくEVAの確認だろう。ちゃんと封印用エントリープラグが刺さっているかをな」
EU支部から24本の封印用エントリープラグが送られてきた。それを使ってEVAを封印状態にしてEU支部の大深度地下に安置するらしい。エントリープラグの先端に十字架のようなアンテナが付いている。もちろん人は乗れないようになっていた。
「国際緊急周波数で通信が入りました。スピーカーに回します」
『我々は地球統合政府所属の特務軍です。貴機は領空を侵犯しようとしています。西に変針して下さい』
抑揚のない機械音声が流れてきた。やはり特務軍の無人機のようだ。同じメッセージを各国語で繰り返している。
「どうします?」
「無視しろ。後、洞木少尉に連絡だ」
「了解」
無人機は警告音声を繰り返していたが、反応がないとみると距離を開けてきた。
『警告に従わない場合、攻撃を行います。繰り返します……』
「おっと、撃って来るようですよ」
「ほっておけ」
その時、敵機のレーダーの照射を検知し、警告音が鳴り響いた。
『アラート!敵対機からのレーダー照射を受けています。アラート!……』
機体のレーダー警報受信機からアラートが鳴り、HUDのシンボルが脅威バンドに切り替わる。しばらくすると空対空ミサイルの発射を探知し短い連続音と共にシンボルが点滅した。
本来であればフレアやチャフなどをバラまいて回避行動をするところだが、ウィングキャリア04は、微動だにしない。
しかし最接近したミサイルは途中で爆発した。赤く光る壁に阻まれて。
「これがA.T.フールドですか!」
「ああ、心強いな」
敵無人機が攻撃失敗を確認すると再び攻撃位置を取ろうとする。
そのとき輸送機に吊られているEVA四号機が動き出した。右手を持ち上げパレットガンを無人機に向け射撃。2機居た無人機はバラバラに砕ける。
封印用エントリープラグの十字架型アンテナが爆発ボルトで根元から外れ落ちていく。アンテナが外れたことでEVAの首の後ろにあるエントリープラグカバーが閉じられた。
「ありがとう洞木少尉。助かった」
『いえ、無事でなによりです機長』
「これより目標上空に侵入する。準備してくれ」
『了解です』
EVAに挿入されていたエントリープラグは、封印用ではなく、チルドレンが搭乗する本物だった。EU支部から封印用が届いたときに、技術部が徹夜でエントリープラグを偽装した。
そして本来Nerv本部に待機しているはずのチルドレンは偽の封印用エントリープラグに搭乗したまま地中海まで来ている。
目的地はもちろんSeeleの基地。死海。
--EVA弐号機エントリープラグ
「全機全周警戒!連中が来たら小隊単位で迎撃するのよ!」
24機のEVA輸送機からEVA24機が死海を囲むように降り立つ。アスカはEVA大隊全機に向けて命令する。敵はSeeleチルドレンの操るErzengelだ。あれにはEVAでしか対応できない。
しかし一向にSeeleチルドレンは現れない。来て欲しくないときにはホイホイくるのに。
「何かあったのかな」
アスカは警戒を緩めずに周囲の様子を伺う。その時通信が入った。
『アスカ!聞こえるか!』
「パパ!?」
通信は情報部長の惣流・ゲルハルト・ラングレーからだった。居るとは思ってなかったのでびっくりした。
『アスカ、EVA部隊は撤退だ。ここは目的地じゃない。後、シンジ君はいるか』
『はい、おじさん!』
『ゲンドウが頭を撃たれた!今救護員が運んでいるが、直ぐに手術が必要だ!』
『そんな……』
『状況は追って知らせる!』
「おじさまが……あ、パパ!ここが目的地じゃないってどういうこと!?」
『ああ、ここは目的地、赫き月じゃない。赫き月は上にある』
「え?」
『地球の衛星。月だ』