【完結】NGチルドレン【EVAFF】   作:ガルカンテツ

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第18話 常に『人間』らしく
Part-A


--Nerv本部 中央発令所

「月往復船、地球帰還軌道に入りました」

「分った。受け入れ準備を始めてくれ」

「はっ」

 

 オペレータである青葉シゲルに指示を出して、冬月総司令代理は一息ついた。

 

 報告ではクレーター2つを探索しどちらも外れ。残り2つの探索が始まったとのこと。EVAは12機破壊されたものの、チルドレンは無事であり、人的損害はなかったことは幸いだ。

 

 こちらとしては吉報を待つしかない。碇ユイを含む全員の安否が心配だった。

 

 そのとき、ここ発令所の最上部にエレベータ登ってきた。振り返ると、情報部長惣流・ゲルハルト・ラングレーが乗っており、車椅子を押して降りる。

 

「碇!大丈夫なのか?」

 

 病室に居るはずの碇ゲンドウが車椅子に座っていた。顔には見たことがないバイザーを付けている。

 

「大丈夫じゃないですよ。こいつ医者に絶対安静と言われているのにワガママ言いやがって」

「作戦が最終局面に入っているんだ。寝てなどいられるか」

 

 ゲルハルトが呆れた様子で冬月に答えるが、ゲンドウが不満そうに反論した。

 

「そうか、無茶はするなよ碇。ところでそのバイザーは?」

「片目になった視力を補強するためだそうだ。それより状況は?」

「ああ、2つクレーターを探索して両方はずれ、次の2つの探索を開始している。EVA12機破壊されたが、敵のErzengel(エルツエンゲル)も4機撃破だ。チルドレン含め全員無事だ」

 

 EVAの戦闘結果を伝えるとゲンドウは少し考え、さらに確認する。

 

「Erzengelのパイロットは?」

「出自が判明している4名だ。彼等のエントリープラグも回収したそうだ」

「そうか。実はな冬月、残りの3人の内、2人のことが分かった。惣流」

「ああ、Seeleの施設から情報を吸い出し、綾波レイとグラオベ・アンカーの情報を入手しました」

 

 ゲルハルトによると、Seeleの施設を探るうちにSeele内研究所のデータベースを入手、データ破損などを修復し回復させることができた。その中にはSeeleチルドレンの情報があり、マルドゥック機関の情報もある。

 

「7名のSeeleチルドレンの内、4名は調査通りです。どうやら薬で強化していたようですね。そして、綾波レイ。彼女は例の紅玉から作られたようです」

「赤木ナオコ君か……」

 

 赤木ナオコがNervを辞めたとき、あるものと共に消えた。Nerv本部がある黒き月の中心部にあった遺物。巨大なリリスの体と拳大の小さな紅玉。その内、紅玉は赤木ナオコが密かに持ち出したようだ。

 

「やはりあれは、リリスの欠片だったのだな」

「はい、そして綾波レイはリリスの欠片を元に作られた人造生命体です」

 

 赤木ナオコによれば、紅玉は高度な光コンピュータの一種らしい。紅玉の内部に極々微細な罅が無数に入っており、それが回路の役割をしている。現在の人類では再現できないそうだ。

 

 そして、その紅玉は魂を登録できるらしい。碇ユイの書いた碇レポートによると生物は親から魂を株分けのような状態で受け継ぐ。クローンを造る場合、人間の受精卵からしか魂が宿らず、0から化学物質だけで作られた場合、魂がなく生きる気力のようなものが生まれない。

 

 しかし紅玉から魂を受け継げば、0からの人造人間が生まれる。それが綾波レイ。

 

「では、Seeleいやキール・ローレンツはリリスの情報を入手しているのか」

「そうだ冬月。そしてもう一人グラオベ・アンカーは、シンジのクローンだ」

 

 

--ラングレヌス・クレーター EVA九号機エントリープラグ

 ラングレヌス・クレーターも、他のクレーターと同じく空気があり青空が見えている。そして重力は1Gだ。しかし草も無ければビルも無い。単なる月面だった。

 

 第二小隊と第四小隊のEVAが降り立ち配置に着く。作戦部の探索班は既に出発している。

 

「敵に警戒して。Erzengelが来るはずよ」

 

 この部隊のリーダーを任されている千歳カナメは5人に指示を出す。他のクレーターでは、Erzengelが襲来、撃退したが、最後に自爆し巻き込まれたEVAは全滅した。

 

『カナメ、来たみたい。9時の方向』

 

 EVA十一号機の龍驤ホノカから短い通信が入る。報告の方向を確認すると、銀色のErzengelが翼を羽ばたかせて飛んできた。

 

「あれ?1機?」

 

 他のクレーターでは2機ずつ来たようだが、Erzengel壱番機しか見えない。残り1機はErzengel弐番機だからアダムス・クレーター側だろうか。

 

 そんな思案をしていると、敵から通信が入った。

 

『なんだ碇シンジは居ないのか』

 

 通信ウィンドウには『Erzengel01 Glaube.Anker』と表示されている。金髪で青い目の少年が映しだされる。

 

「そうよ、残念だったわね。あなた1機で私達と戦うつもり?グラオベ・アンカーさん?」

 

 カナメは軽口で答えながら、裏で各員に攻撃準備の指令を出す。

 

『なんだ詰まらん。そうだ1機だけだ。お前らザコは俺一人で十分。そうだな、ハンデのため教えてやる』

 

 Erzengel壱番機は、翼を畳み背中の大きな十字架のような両手剣を手にする。

 

『これは、ゴルゴダの十字剣。ロンギヌスの槍と同じくA,T,フィールドを簡単に引き裂く。防御は無駄と思え。そしてこの機体の能力、裏コード:バイエルンの窓はこれだ』

 

 両手剣を正面に掲げた。Erzengelの頭部は銀という色以外は、EVA初号機と酷似している。ただEVA初号機のアンテナのような部分は、第3の目のようなものがついていた。

 

 その時、Erzengelの正面の空間が割れる。割れたところは、ステンドグラスのように色々な色のカラスで構成されているように見えた。そして、同じ空間の割れは、ちょっと離れたところでも発生する。

 

『例えば、この窓に剣を差し込むと』

 

 Erzengelの正面の窓に剣を差し込むと、もう一つの窓から剣先が出てきた。

 

『このよう別の場所を攻撃できる。理解できるか?』

 

 グラオベは丁寧に自分の能力のネタ晴らしをしてくる。EVA部隊としては、まずは探索の時間を稼ぐことが任務のため、カナメもそれに付き合う。

 

「べらべらと教えてくれてありがとう。その窓で空間を飛んで離れたところを攻撃できるってわけね」

『そうだ。そして距離は窓の大きさによる。例えばこの大きさだと100kmと言ったところか。窓が小さければ小さいほど遠距離に窓ができる』

「つまり窓を極少にすれば、いくらでも遠くにできるのね。以前の鯨のような使徒を倒したときのように」

 

 カナメの言っているのは、Seeleチルドレンが唯一倒した巨大なクジラのような使徒戦のことだ。あのとき精細なカメラが使徒と戦うErzengelを映していたが、それがこの能力。

 

『ほう、よく覚えていたな』

「ふん、つまりピンホールから覗きをしてたってことじゃない。このピーピングトム!」

『窓を経由して視線を移動させる能力だから。そうだな覗きだな』

 

 ピーピングトムは「のぞき嗜好のある男性」を意味する俗語。感情的にするため挑発してみるが、グラオベは冷静に返してきた。

 

『そして逆に大きくすると……』

 

 また、空間が割れた。今度はErzengelと同じ大きさの窓が開く。間髪入れずにErzengelが窓に入り込む。

 

「え?」

 

 Erzengelの姿が消えた。見回しても近くに居ない。

 

『うぉ!!!』

 

 急にEVA二十二号機の浅間ヒデアキから通信が入った。ヒデアキはこの場にはおらず、狙撃をしてもらうため、ラングレヌス・クレーターの大きな中央丘に姿を隠していた。

 

『すまん!!いきなり現れたやつにやられた!離脱する!』

「浅間!!」

 

 浅間ヒデアキのEVA二十二号機が破壊され、エントリープラグで脱出したようだ。

 

『と、このように移動もできる。ただ、距離はそれほどではないな。綾波の裏コード:ベトザタの回廊のように、どんな距離でも移動できたりはしない』

 

 また、同じ場所に戻り窓を閉じる。一見冷静に会話しているが、いきなり隠れていたEVAを攻撃してきた。どうやらさっきの挑発は効いていたようだ。返ってこちらが動揺している。

 

『こういうこともできる』

 

 そして、今度は中ぐらいの窓を2つ開ける。その窓を両手剣で薙ぎ払う。

 

『カナメ危ない!!』

「きゃ!」

 

 カナメは瑞鶴リョウコのEVA十号機に突き飛ばされた。倒れた九号機の背後に開いた窓から剣先が出てきて、カナメの上を通過する。間一髪助かった。

 

「リョウコ!ありがt」

『ごめん!離脱します!』

 

 カナメはリョウコに感謝を伝えようとしたが、EVA二十三号機のジャンが同じ攻撃でやられたようだ。

 

『同時に複数の窓を開けることもできる。どうだ?』

「どうだじゃない!なにすんのよ!」

 

 一気に2機のEVAがやられた。既に戦闘は開始されている。残りの3機に指示を出す。

 

 残りは鞍馬ソウイチロウのEVA二十一号機、リョウコとホノカ。剣術を得意とする3人だ。

 

 3機はErzengelを三方から囲むように抜刀してにじり寄る。

 

『ほう、あのときシンジにやられた十、十一、二十一号機じゃないか!』

 

 以前第二中隊のEVAが全機浸食型の使徒に乗っ取られて、シンジに助けて貰った。あの件は最上級の気密情報だったはずだが、情報漏れしている。

 

『確かシンジはナイフ一本で勝ってたな。ならば俺はこれだ』

 

 Erzengelは、両手剣を背中に仕舞い、肩のウエポンラックからナイフを取りだず。その形状はバタフライナイフだった。

 

 三方に囲まれたErzengelがバタフライナイフを構えると、いきなりソウイチロウの方に詰め寄る。

 

 3機同時に攻撃するつもりだったため虚を突かれたが、ソウイチロウは冷静に正眼の構えから袈裟切りで応戦。その刀の軌道をバタフライナイフで受け流し、どんどん詰め寄る。何度も打ち合い接近した状態で鍔迫り合いになった。刀とナイフで火花を散らす。

 

『終わりだ』

 

 Erzengelはナイフを巧みに操り一気に刃を返しEVAの腕を切断、その返す刀で首を跳ねる。

 

 ソウイチロウは相当の剣術の腕を持っているが、グラオベの方が上だった。しかもバタフライナイフは本来作業用で、武器ではない。

 

『くそ!すまん離脱!』

 

 いつもは冷静なソウイチロウは、珍しく感情を現し悔しがりエントリープラグで脱出した。

 

『ほい次』

 

 Erzengelは、ナイフを捨て腕を組んで棒立ちになる。

 

「リョウコ!ホノカ!」

『こんのやろう!!!』『はっ!!!』

 

 リョウコとホノカが、十号機、十一号機で両側から襲い掛かる。

 

『うわ!?』『え?』

『さっき見せただろ?こんな風に防御にも使える』

 

 Erzengelは微動だにしなかったが、2機のEVAは串刺しになっていた。お互いの刀で。

 

 Erzengelの両側にはいつの間にか窓が開いており、その窓を通してお互いのEVAを攻撃したことになる。Erzengelは無傷。

 

『くそー!ふざけんな!』『カナメごめん!』

 

 ダメージ限界になり、2機のEVAからエントリープラグが射出される。残ったのは千歳カナメのEVA九号機のみ。

 

『さあ、残るのは君だけ。女は攻撃しない主義だ。降参しな』

「たった今、2人攻撃したじゃない!」

『今のは自滅だろ?俺は手を出していない。さあ俺がシンジより上だと認め降参しろ』

「……なんでそんなに碇君に拘るのよ」

『俺はシンジを超えないといけない。いや既に超えている。俺はスーパーシンジだ!』

 

 一瞬きょとんとするカナメ。

 

「あはは!!ばっかじゃないの!スーパーシンジとかネーミングだっさ!!あんたなんか碇君の足元にも及ばないわ!このクズ!最低の蛆虫!!ダニ!じじいの(ピー)!(ピー)があるなら、この場で(ピー)してみろ!ファ(ピー)!」

 

 遂には、とある友人の女性から教わった海兵隊式新兵向け罵り語録まで飛び出した。

 

『……』

 

 無言でErzengelに切り捨てられた。EVA九号機からエントリープラグが射出される。

 

「(ピー)!(ピー)!(ピー)!(ピー)!(ピー)!」

 

 最後まで罵りが聞こえてきた。

 

『下品でうるさい女は嫌いだ。もの静かで大人しい方がよい。綾波のようにな。さて、アダムス・クレーターに向かうか。待ってろ碇シンジ。俺が上だと思い知らせてやる』

 

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