【完結】NGチルドレン【EVAFF】   作:ガルカンテツ

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Part-C

--赫き月

「ようこそ!赫き月江!Nervの諸君!」

 

 エレベータの終着地点でNervメンバーは、全てに圧倒された。

 

 まず風景。巨大な球状空間の内側に立っていた。遠心力ではない重力は球の外側に向かっている。以前、シンジが訪れた蒼き月と同じ構造のようだ。シンジの報告の語彙力では良く分からなかったが、実際体験してみると地上とは全く違う、大規模構造に圧倒される。

 

 蒼き月では、ほぼ自然だったらしいが、ここでは建造物が多く、研究所や工場のようなものも見える。まるで一つの町のようだ。公園もあり木々が風で揺れ、ここに空気があることを示している。空間の中央には疑似太陽まで浮かんでいた。その風景が360度、球状空間の内側全てに続いている。

 

 そして正面。Seeleの制服を着た渚カヲル似の少年。おそらくアダムと、2人の女性。1人は予想通り、赤木ナオコ。もう一人は、この場ではユイしか知らない人物だった。

 

 その背後には、EVAより巨大な赤い少女の像。目を瞑り祈っているようなポーズで佇んで、軽いウェーブが掛かった髪はとても長く足元まで続いている。石像ではないようだが、材質は分からない。強いて言うと、セントラルドグマのリリス。あれよりもずっと美しい印象だ。

 

 情報量が多すぎて誰も声が出ない。

 

 その中で知り合いを見つけた2人が反応した。

 

「マリさん!?」

「お久しぶりです。ユイさん」

 

「母さん!」

「りっちゃん!久しぶり!元気だった?」

 

 碇ユイと真希波マリ、赤木リツコと赤木ナオコが顔を見合わせる。

 

「うおっほん!まあ、久しぶりの再会で嬉しいだろうが、とりあえず落ち着いて。博士、見せたいものがあるんだろう?」

 

 最初の挨拶がスルーされた銀髪の少年アダムが取り成す。

 

「ええ、そうねアダム。りっちゃん、こっち来て」

「え?」

 

 ナオコはすたすたと歩き始めてしまう。困惑したリツコは言われるまま、付いて行ってしまう。ミサトはそれを見てちょっと考え込んだあと、作戦部メンバーに指示を出す。

 

「日向君!あたしは、リツコに付いていくわ。ユイさんの護衛お願い。数名付いてきて」

「了解!3名葛城少佐の護衛を頼む!」

 

 メンバーを選別し、この場に残るものと、リツコに付いていくものに分かれた。

 

 

--赤木ナオコの研究所ビル

「ああ、ソレ外していいわよ」

 

 ナオコのいうソレとはL.C.L満たされたヘルメットのことだ。確かにナオコは普通に呼吸している。手元のモニターでも空気に問題ないことが示されている。ちょっと考えて手首のスイッチを押す。

 ヘルメットの中のL.C.Lが吸い出され、肺に残ったL.C.Lを吐き出すと洗浄し、乾燥用の風がヘルメット内で吹く。乾燥が終了するとヘルメットを外す。空気は澄んでいて気温も丁度いいようだ。髪を纏めていたゴムを外し首を振る。

 

「リツコ!」

「大丈夫よ。ここまで大きな空間だとガスも意味ないわ」

 

 ちょっと困惑したが、ミサトと作戦部隊員もヘルメットを外す。

 

 ナオコはNervメンバーを連れて研究用ビルに入っていく。ビルの窓は開けっぱなしになっており、確かにガスなどでの攻撃はなさそうだ。

 

 しばらく廊下を歩くと、大きなドアの前に着いた。

 

「さ、この部屋よ」

 

 自動ドアが開き、ナオコが入っていく。リツコやミサト、作戦部隊員も後に続く。

 

 まず目に入ったのは、ガラス窓の向こうに見える大きな脳のようなものだった。配管がぐねぐねと曲がった巨大な脳のような装置と、その直下にある円筒状のガラスケース。

 

 なんの装置か皆目見当が突かない面々をよそに、ナオコはコンソールに近づき、マイクを入れる。

 

「葛城博士。ミサトちゃんがいらっしゃったわよ」

『やあ、ミサト大きくなったね』

 

 それはミサトの記憶にある父親葛城ヒデアキの声そのものだった。

 

 

--赫き月 EVA弐号機エントリープラグ

 リツコ達が行った後、残されたのは、EVA3機とその足元に日向を初めとした作戦部部隊、そして碇ユイ副司令。対峙するのは赤い少女の像の前にいるErzengel弐番機、その足元に居るアダムと渚カヲルと、ユイにマリと呼ばれた少女。

 

 EVA初号機とEVA零号機は呑気に手なんか振っているが、作戦部部隊は油断なく銃を構えていた。そして弐号機のアスカも敵に集中している。目の前にいるのは敵の親玉。ラスボスだ。

 

 そのラスボスと一緒に居る少女が、先ほどからユイと会話している。知り合いだろうかとアスカが考えていると、ユイがこちらを向いて手招きしてきた。EVAの指向性集音マイクを設定し画像を拡大して女性をみる。どこかで見たような……

 

『アスカちゃん、こちら真希波マリさん。ドイツで会ったことあるそうね』

『久しぶりね。お姫様。マリアと仲良くしてくれてありがとう』

「ええっ!?」

 

 真希波マリとは、マルドゥック機関でEVA弐号機パイロット選抜時に会っている。同じ選抜試験者であるマリア・イラストリアスの保護者で、お姫様という呼ばれ方も当時のアスカが高飛車な態度を取っていたからであり、若気の至り?であったことを思い出す。

 

 マリアがEVAに取り込まれて以来会っていなかったが、確かに面影はある。しかし当時も若く見えたが、今はそれよりもずっと若くアスカと同じくらいに見える。

 

「本当にマリさん?」

 

 EVAの外部スピーカー越しに聞こえたようだ。マリが反応する。

 

『ええ、そうよ。この姿はEVAの呪縛なの』

 

 マリとユイの補足で説明してくれた内容は、マリアが仮設EVA弐号機に取り込まれたとき魂が繋がっているマリにも影響があったそうだ。仮設EVA弐号機は今もNervEU支部地下封印場に眠っている。アスカはマリアのことを思い出し、少し悲しくなった。

 

 そこにアダムが割り込んで来る。

 

『そうだ、そしてEVAの呪縛を解くためには魂の開放、人類補完計画が必要だ。ユイ君の考える別の方法とやらは彼女を救えるのかね?』

『ええ。私の考えた真・人類補完計画で、マリさんも救えます』

『ユイさん……』

 

 傍に居たマリがユイを見つめる。ユイはアダムの方を向き毅然とした態度で相対した。

 

『しかしアダム。どうしてあなたが人類の未来を憂うの?第一始祖民族のひとりであるあなたが』

 

 第一始祖民族とは確か南極で見つかった遺跡を造った人類よりも前の先史文明だったと言われている。そしてその人々は地球外から来たのではないかという説がある。敵は宇宙人だったのか?

 

 困惑するアスカをよそにアダムが笑い出した。

 

『あはははは!ちょっと違うなユイ君。第一始祖民族の一人ではなく、私が第一始祖民族そのものだ』

『え?』

『人類補完計画で目指すのは、群体として生き詰まった人類を、完全な単体生物へと人工進化させることだ。そしてその実証結果が私だ』

『なんですって!?』

『少し昔話をしよう。今から100億年前のことだ』

 

 アダムは両手を広げ滔々と語った。

 

 第一始祖民族は、高度な文明を持ち他の星へも進出するような広がりを見せた。しかし徐々に人口を減らしてしまい、生命としての行き詰まりを感じ始める。そこで当時六つあった民族の総力を結集して新たな生物に生まれ変わり新たな文明を築く計画を立てた。

 

『まあ始祖民族と名乗っているが、その計画の元になったのは我らよりも先の文明の技術だがね。『光の国』と呼んでいた彼等は文明の痕跡しかなかった。もしかしたら別の宇宙に行ってしまったのかもしれないね』

 

 第一始祖民族は、他の第二から第六の民族と共に計画を進めた。その民族の名前はアダム、リリス、イヴ、アベル、カイン、エノクと言った。当初、アダムとリリスが対となり、それぞれ生命の実と知恵の実を持ち、新たな母なる惑星を捜して旅立つはずだった。

 

 しかし、アダムは第一始祖民族の派生である第三始祖民族のイヴに知恵の実を渡し、アダムは生命の実を独占したまま、旅立った。そこで慌てたのは他の民族だ。生命の実がなければ文明が発達しても生命体として不完全になってしまう。アダムとイヴを追った。

 

『我々アダムは白き月、イヴは赫き月の形状で50億年以上宇宙を漂った』

 

 そして45億年前にこの銀河にある地球をアダムが発見する。まだ出来立ての火の玉である惑星は新たな生命を根差すのに丁度よかった。

 

 アダムとイヴは、それぞれ地球の南極と北極から降り立ち儀式を始める。儀式は南極側に降りたアダムから生命の実を複数放ち、北極のイヴに最初に到達したものが、新たな生命として星に君臨する。そのはずだった。

 

 しかしアダムとイヴを追って来たリリス、つまり黒き月が赫き月に衝突した。この時の衝撃で赫き月は弾き飛ばされ、周囲の溶岩と共に衛星となった。それが今の月である。

 

『リリスのおかげで、計画が台無しさ。とんでもないことをしてくれたよ。他のアベル、カイン、エノクも遅れて来たが衝撃で壊れて今は遺跡として各所に残っているだけだ。リリスも衝撃で黒き月にひびが入って君らがL.C.Lと呼んでいる生命のスープが漏れ出し、地球の出来立ての海に流れ込んだ。それが地球の生命の源になったのさ』

 

 アスカは多すぎる情報に困惑しながら整理してみる。

 

(ええと、つまりアダムがイヴに浮気して逃避行、怒ったリリスが追って来た感じ?)

 

 なんかその部分だけだと安っぽい昼メロドラマのようだ。

 

『そう、興味深いわね。で、その後ろのイヴを利用して何をするつもりなのかしら?あなたの目的は何?』

 

 あくまで冷静にユイが受け答える。あの赤い少女像がユイから聞いていたイヴか。アスカは手に持っているソニックグレイブの柄を握りしめる。アダムはニヤリとしてこういった。

 

『まあユイ君慌てないでくれたまえ。綾波レイ』

『なに?』

 

 急にErzengel弐番機のパイロットである綾波レイに声を掛けた。碇の方のレイとそっくりな少女だ。同じ名前でややこしい。

 

『君は碇シンジと一緒になりたいんだったね』

『ええ』

『では願いを叶えてあげよう』

 

 そういうとアダムは指を鳴らした。するとErzengel弐番機の胸部装甲が剥がれ落ち、赤いコアが丸見えになる。そのコアから光る紐のようなものが伸びだした。

 

「あれは!!」

 

 第三新東京市で見た使徒とそっくりだった。その光る紐がEVA初号機を襲う。

 

『EVA初号機を運んで来てくれてありがとう。リリスは貰うよ』

 

 

--アダムズ・クレーター EVA十八号機エントリープラグ

 EVA十八号機に乗る長良ソウスケは、命令通り退路を確保するためクレーターの周囲を警戒していた。今のところ何も起きていない。

 

 同じ小隊の天城シズマが退屈そうに声を上げる。

 

『なあソウスケ、いつまで待たされるんや』

「探索隊が戻るまでだ。周囲を警戒しろ」

 

 ミサト達が降りて大分立つ未だに何の連絡もない。通信自体が封鎖されているようだ。このまま待つしかない。同じ小隊のシロツグ・ラーダット・ミズーリは黙って警戒している。

 

『でもよう……』

 

 シズマが不満そうに答えようとしたとき、

 

「天城!!後ろだ!!」

『え?』

 

 いつの間にかシズマの乗るEVA十九号機の後ろに、銀色のErzengelが立っていた。

 

『なんだ。シンジは下か』

 

 Erzengel壱番機のパイロット グラオベ・アンカーからオープン通信が入る。警戒していたがErzengelが飛んでくる様子はなかった。突然現れたように見える。

 

 Erzengelは、残り2機で1機は先ほど降りて行った。このErzengelは別のクレーターに居たはずだ。それがここにいるということは……

 

『てめぇ!!リョウコをどうした!!!』

『うるさい邪魔だ』

 

 シズマが激昂して詰め寄るが、Erzengelが巨大な剣でEVA十九号機を袈裟切りにした。一瞬のできごとでA.T.フィールドを中和した気配もない。A.T.フィールドごと切られたようだ。

 

『うがあ!!』

 

 シズマの悲鳴と共にエントリープラグが射出され上空に退避する。

 

『シンジ以外は興味がない。消えろ』

 

 ソウスケはそれには答えず、パレットガンでErzengelを撃った。が、空間が割れて窓が現れ全ての弾丸が吸い込まれた。Erzengelの特殊能力だろうか。

 

『無駄だ。どけ』

 

 飛び道具は全て防がれてしまう。ならばと近接格闘戦に切り替えるべくプログレッシブナイフを装備するが、相手は巨大な両手剣を持っている。よほど接近しないとダメージを与えられない。

 

 決定打に欠けるため躊躇していると、Erzengelが羽交い絞めされた。

 

『僕ごと貫け!!』

 

 シロツグのEVA二十号機がいつの間にかErzengelの背後に回っていた。羽交い絞めにして自分を犠牲にしてでもErzengelを倒すつもりだ。

 

 この一瞬を無駄にしないためソウスケはナイフを腰だめにして突進する。

 

『無駄だと言っただろう』

 

 Erzengelは両手剣で自分を刺した。

 

 ように見えたが剣は例の窓に吸い込まれている。

 

『ぐっ!』

 

 背中にも出現した窓を介して、EVA二十号機を串刺しにしていた。エントリープラグが射出されシロツグが離脱する。これで後はソウスケだけだ。

 

『どけ』

「否定だ」

 

 Erzengelは、無造作に近づいて来た。EVA十八号機は、ナイフを右手、ハンドガンを左手に装備して一気に詰め寄り、ナイフを突き刺す動作を見せる。

 

『無駄だというに』

 

 ナイフの先に窓が現れナイフが吸い込まれようとした瞬間、引いて今度はハンドガンで窓以外の場所を攻撃した。Erzengelは窓を出せず、なんとか剣で弾丸を弾く。

 

『ほう、少しは工夫できるようだな』

 

 空間の窓は開くのに少しタイムラグがある。その瞬間を狙えば有効打を当てられそうだ。今の一撃を防がれたのは痛いが、相手に対策される暇を与えないように攻撃を続ける。

 

 ナイフとハンドガンを駆使して連続攻撃をする。近未来SFアクション映画に登場するガンカタのようだ。

 

『ふん!』

 

 防戦一方のErzengelは、突然両手剣を放り投げた。理由は謎だが、これで無防備だ。一気にけりを付けようと接近するが、いきなりEVAの両手を掴まれる。

 

「!?」

 

 Erzengelの両手が虚空に消えている。窓経由でEVAの両手を塞ぎに来た。

 

 身動きできないEVAの上にさらに窓を開く。先ほど放り投げた両手剣が窓から真っ直ぐ落ちて来る。

 

「くっ!任務失敗!」

 

 落ちてきた両手剣に貫かれ、EVA十八号機が大破した。ソウスケはエントリープラグで脱出する。

 

 Erzengel壱番機はクレーターの入り口を見つめる。

 

『待ってろシンジ。お前は俺が倒す』

 

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