--EVA弐号機エントリープラグ
『ありゃ、リリスはダメになっちゃったか。EVA初号機を依り代にするのは無理だな』
アダムは髪を掻きつつボヤく。さしたる問題でもないように。
『どうやら目的は果たせなったみたいね。後はイヴさえ封印すればいい』
そういってユイはEVA弐号機アスカの方を向いた。これが合図だ。
「はい!おばさま!!」
アスカは弐号機が持っているEVAサイズの薙刀ソニックグレイブの刃を外すと、柄を持って構える。ソニックグレイブは、変形し二股の槍になった。
『ロンギヌスの槍だと!?』
打って変わって焦りの声を出すアダムの声を聴きつつ、投擲のフォームから巨大な赤い少女の像イヴに向かってロンギヌスの槍を投げつける。
「これで封印できる!」
--EVA零号機エントリープラグ
「はい……はい日向さんよろしくお願いします」
作戦部のマコトとの通信を切る。アスカ達の元に戻らないといけないが、ぐったりとしたレイをそのままにはしておけない。
「作戦部の人が来るってさ」
「そう」
レイから大まかのことは聞いたが、まだ信じられない。
綾波と妹レイが同じ魂で融合したとか。レイに過去のことを色々聞いてみたが記憶ははっきりしているようだ。寧ろシンジが忘れていたことさえ覚えている。そして綾波としても記憶があるようだ。
記憶は共有しているようだが、性格はどうも安定しない。言葉使いは妹レイとも綾波とも違うようだ。融合したてで混乱しているという。表情も硬いままだ。
「こういう時、どんな顔をすればいいのか分からないの……」
「笑えばいいと思うよ」
それは、綾波レイの無表情ではなく、妹レイのにぱーっとしたものでもなく、初めて見た綺麗な笑顔だった。シンジは妹の初めて見た表情にちょっと顔を赤くする。
「じゃ、じゃあアスカ達のところに戻るね」
「ええ、行ってらっしゃい兄さん」
--EVA弐号機エントリープラグ
『ああ、よかった。代わりの依り代が来たようだ』
アダムの呟きと同時にイヴの前で、空間が割れた。
EVA弐号機が全力で投げたロンギヌスの槍が、窓から出現した腕に掴まれる。
「え!?」
もちろん巨大な赤い少女像には届かなかった。イヴの封印に失敗した。
その窓から銀色のErzengelがのっそりと出てくる。その手にはロンギヌスの槍。
『シンジはどこだ』
Erzengel壱番機から少年の声が聞こえてきた。確認するようにゆっくりと辺りを見回す。その視線の先にErzengel弐番機が残した装甲板が散らばっている。
『貴様!!綾波に何をした!!!!』
激昂する少年グラオベ・アンカーは、その場に居る唯一のEVA。EVA弐号機のアスカを睨む。
アスカは咄嗟に防御態勢を取るが、武器がない。ウエポンラックからブログナイフを取ろうとしたとき、空間の窓から、さらに出てくるものがあった。
それは白い爬虫類のようなEVAだった。Erzengelのように翼を持ち、ばさばさと羽ばたいて窓から出る。その数14体。そのまま上空に飛び上がり、旋回を始めた。
EVA弐号機の目に、その白いEVAが映りこむ。その姿はまるで獲物を狙うハゲタカのよう。
「え!?」
その姿を見た瞬間から弐号機が硬直した。
「EVAが動かなくなった!?違うっ『アスカ』が恐怖してる!」
EVAの中に居るもう一人の『アスカ』の心が逆流してきた。あの沢山の白いEVAの姿を見たとき、『アスカ』のトラウマが蘇ったようだ。
「動け!動け!動け!動け!動け!動いてよ!!」
アスカは必至にレバーを動かすが、硬直したEVA弐号機は全く反応しない。その間にも正面の銀色のErzengelがロンギヌスの槍をこちらに向ける。
『誰だか知らんが死ね』
槍をこちらに投擲。飛んでくる槍がスローモーションのように見えた。左眼を串刺しにされるさまを幻視し、激痛を予感する。
しかし、その痛みは来なかった。
『アスカに何をした!!!』
EVA弐号機に映ったのは、ロンギヌスの槍を空中で掴んたEVA初号機の姿だった。
--EVA初号機エントリープラグ
レイを作戦部スタッフに任せ、戻ってきたところ、EVA弐号機が槍で攻撃されていた。
アスカは普段であれば余裕で避けるはずだが、様子がおかしい。EVA弐号機に当たる前になんとか槍を止めることができた。
「アスカに何をした!!!」
シンジは珍しく激昂している。攻撃先をみると銀色のErzengelだった。搭乗者であるグラオベ・アンカーから通信が繋がる。
『シンジ!シンジ!シンジ!シンジ!シンジ!シンジ!ようやく会えたな!碇シンジ!』
グラオベは歓喜の声を上げる。『蒼き月』で会った時と様子が違う。別人のようだ。
この場ではユイなども居るので戦闘はできない。レイが居る方向と逆に誘導する。
「こっちだ!!」
『決着を付けるぞ!!シンジ!!』
槍を持ったまま、銀色のErzengelと距離を取りつつ、EVA弐号機と通信を繋ぐ。
「アスカ!大丈夫!?」
『シンジ?だめEVA弐号機が完全に停止しちゃった』
「じゃあEVAを降りて!こっちはErzengelを引き付ける!」
『分かった。気を付けてね』
「うん」
研究都市のような街並みを走る。人は居ないようだがなるべく被害がでないように開けた場所を探す。
大通りのような開けた場所でErzengelと対峙する。
「グラオベ君!なんでアスカを傷つけようとしたんだ!」
『あん?赤いやつのことか?あれは綾波が……いや、シンジ!お前をおびき出すためだ!怒れ!怒りを俺にぶつけろ!俺と戦え!!』
一瞬とぼけた感じだったが、途中から挑発的な声を出してきたグラオベ。先ほどの悲痛なアスカの声。そして目の前で潰されたカヲルの姿がフラッシュバックするシンジ。
「そんなことのために!グラオベ君!!」
『シンジィィィィ!!!』
ゴルゴダの十字剣とロンギヌスの槍が激突する。火花が盛大に飛び散る。
二回三回と打ち合わせた後に、EVA初号機との間で空間が割れた。
『くらえ!』
Erzengelが空間の窓に剣を差し込む。が、EVA初号機が咄嗟に窓を槍で突くと消滅した。
『なに!?』
「あれ?」
シンジは何か意味があって槍で突いたわけではなく、嫌な予感からした行動だった。Erzengelは正面だけなく背後や上にも窓を造るが、全てロンギヌスの槍で消滅させられる。
『なるほど、それもA.T.フィールドも無効化するんだったな!やるなシンジィ!』
「なにがだよ!」
グラオベは小細工をやめ、純粋に剣術だけで勝負に来た。
シンジは槍は慣れておらず、どうしても防戦一方になる。EVA初号機のパワーでなんとか抑えているが、このままではジリ貧だ。
シンジは誰かの動きを参考にしようと仲間たちを思い浮かべる。そのなかでアスカの姿を思い出した。訓練で使徒戦でソニックグレイブを自在に操るEVA弐号機。
(アスカだ。アスカになりきるんだ!)
「アンタばかぁ!!」