--赫き月 赤い少女像の前
「やれやれ行ってしまったね」
EVA初号機とErzengelが戦いに行ってしまいアダムは両手を上げ呆れを示すが、さほど困っていないようだ。
アスカは動かなくなったEVA弐号機を降りている。ミサトやリツコも戻ってきており、作戦部隊員もレイを保護してきた。
一部始終を見ていた日向は隊員に銃を構えるように指示を出す。先ほど光る紐でEVA初号機を明確に攻撃してきた。もはや排除する敵として応対するしかない。しかしユイが静止する。
「無駄よ。A.T.フィールドに阻まれるわ」
「しかし副司令……」
ユイはアダムを睨み、確認するように質問を投げる。
「アダム、EVA初号機をサードインパクトの依り代にするつもりだったのね」
「そうさ。リリスの体であるEVA初号機とリリスの魂の欠片である綾波レイを融合させようとしたが、失敗しちゃったね。初号機のままだとシンジ君の心が強すぎるからレイを使おうとしたんだ」
「そう。つまりサードインパクトは失敗ということかしら?」
「そうでもないさ。さっきも言ったろ?代わりが来たってな」
「代わり……Erzengel壱番機ね。あの子グラオベ・アンカーがシンジのクローンってとこかしら?」
ユイは資料にあったErzengel壱番機のパイロットの顔を思い浮かべる。
「ほう?調べたのか?」
「いえ、推測よ。顔もそっくりだし。リリスの体のコピーとシンジと似たクローンでサードインパクトを起こすつもりね」
「そうだ。人類は、これからイヴによって依り代を元に群体から単体になって外宇宙に出る。今の人類では太陽系外には出られない。そういう体のつくりになっている。ユイ君も分かっているのだろう?人類は『ゆりかご』からは出られないと」
「私は人類の生きた証を残したかっただけですわ。それより先ほどの質問に答えてくださらない?」
「質問?」
「人類をサードインパクトで単体生物にする。それは分かったわ。でも、あなた、いえ、あなた達第一始祖民族の目的は?どうしたいの?」
--Erzengel壱番機エントリープラグ
「くっ!こいつ急に動きがっ!」
EVA初号機の動きが急に変わった。先ほどまでは槍の扱いが素人のようにただ振り回すだけだったが、今はまるで槍の達人のように使いこなしている。
連続で槍を突き出したり、回転から薙ぎ払う様に攻撃したり自由自在だ。こちらの両手剣では、いなすのが精いっぱい。防戦一方になっていた。
苦し紛れに足払いを仕掛けるが、軽々と飛んで避け、鉄塔の先端に片足で降りる。
その身のこなしは、まるで舞を踊っているようだった。
EVA初号機は鉄塔から飛び立ち、体を反らせ捻りを加えながら伸身の一回転。着地と同時にErzengelへの攻撃を再開した。
「くそがああああ!!」
Erzengelは、両手剣で地面を薙ぎ払いアスファルトをまき散らし土煙を上げる。EVA初号機はバックジャンプで距離をとった。
「ああ、分かったよ。認めよう」
両手剣を放り投げた。EVA初号機を飛び越し後ろの地面に突き刺さる。
『グラオベ君、もう止めよう。これ以上戦っても意味ないよ!』
「そうだな。このままでは勝てそうにない。知っているか?俺はシンジのクローンだ」
『え?』
「だから俺はお前を超えないといけなかった。そうでないと生まれてきた意味がない」
『……』
「俺は俺で居たかった。しかしカヲルはシンジ、シンジ、シンジ、シンジ。シンジのことばかり!アダムも俺をシンジの代わりとしか見ていない!」
『何を言って……』
「そうだ、俺はお前を超えなきゃいけない。スーパーシンジとなるためにな!!」
Erzengelの第三の目。EVA初号機のアンテナのような部位の位置にある目が輝きだした。
「裏コード:ケルンの大聖堂!!」
グラオベの後ろにあるディスクが高速回転を始め、背中に座席から注射器が差し込まれた。薬液が注射されると体中の血管が浮き始める。全身が痛みで引き裂かれるようだ。頭も割れるように痛み、脳が爆発しそうになる。しかし脳からなにか力が沸き上がってきている。
Erzengelの背後に、巨大な窓が現れた。その数は5つ。これまでの窓とは様子が違う。
「『洗礼者』!『三賢者』!『十字架降架』!『聖霊降臨』!『殉教者』!開け五つの窓!聖なる書に従い、バイエルンの紋章を持って、神の子を封ぜよ!!」
グラオベが叫ぶと、5つの大きな窓から強烈な光が放たれた。その光は青と白が混ざった光線となり、EVA初号機に襲い掛かる。同時にEVAの後ろに刺さっていた両手剣から木の根が伸び剣を纏い、巨大な木製の十字架になった。
『なんだこれ!』
シンジの叫びが聞こえ、EVAが槍で払おうとするが青と白が混ざった光が、EVAの頭、両手、両足に当たり、後ろの巨大な十字架に貼り付けにする。ロンギヌスの槍が地面に落ちた。
「その十字架は、かつての神の子を処刑したものを模している。シンジ、お前の乗っているEVAも神に近い存在なんだろう?」
EVA初号機は藻掻くが、頭と両手両足が十字架に張り付いて動けない。Erzengelはゆったりとした動作でロンギヌスの槍を拾った。持つと二股の槍が捻じれ、一本の鋭い槍になる。そのままEVA初号機に穂先を向けた。
「天に還れ!!!碇シンジ!!!神話になっちまえ!!!」
--赫き月 赤い少女像の前
「第一始祖民族の目的かぁ……そうだなぁ」
ユイの質問にアダムは腕を組み首を傾げ、言い淀む。
「君たちNervが戦っていた使徒の目的は何だったか分かるかい?」
「……リリスと融合しサードインパクトを起こすこと」
「ちょっと違うなユイ君。あれは生存競争だったんだ。生命体の頂点として星に選ばれるためのね。あ、タブリスは例外ね」
「星に選ばれる?」
「そう。使徒は地球に適合した生命体の姿を模索していたのさ。それで様々な姿かたちをしていたんだ。そして結果選ばれたのは君たち人類だ。ヒトの形。それがあの星が選んだ形だ」
「……それが第一始祖民族の目的とどう関係するのかしら?」
「君らが殲滅した使徒。彼らは別の形で再生した」
「別の形?」
「もちろんヒトの形さ。Adamsチルドレンと呼んでいる。第一始祖民族の後継者としてね。君ら人類は単体生物として、永遠に宇宙を漂う。残った地球でAdamsチルドレンは栄える。Win-Winじゃないか?」
「……そのAdamsチルドレンはどこに?」
ユイの質問にアダムは指で上を示した。上空にはずっと輪を描いて飛んでいる白い爬虫類のようなEVAが14体居た。
--EVA初号機エントリープラグ
(……兄さん聞こえますか?あれ?届いてない?……ファ●チキください)
「は?」
十字架に貼り付けにされ、槍で突かれる寸前、レイの声が聞こえてきた。通信ではなく脳内に直接だ。
(あ、兄さん。聞こえる?)
「なんだよファ●チキって」
(それはお約束ってことで。それより聞いて兄さん)
言葉使いは変わったが、相変わらずヘンなことをいうレイに、ちょっとほっとしたシンジだった。そのレイが言うには、2人が融合したことでリリスの主導権を握ったらしい。リリスは碇レイ、綾波レイ、EVA初号機で分けられていたが、その三分の二を得たことでEVA初号機に干渉できようになったとこのと。シンジは良く分からなかったがレイのいうことを信じた。
(初号機本来の力を解放するわ。ロンギヌスの槍で赤い少女像イヴを封印して!)
--Erzengel壱番機エントリープラグ
「くっ!刺さらない!?」
EVA初号機にロンギヌスの槍を突き立てる寸前動かなくなった。A.T.フィールドは効いていない。装甲が固い?いや槍自体がビクともしない。手を放してみると空中で槍が静止している。
「なぜ槍が?」
Erzengelを少し下げると、磔にされていたEVA初号機が動き出した。
EVAの顎部拘束具が弾け飛ぶと、口を大きく開け咆哮をあげる。その咆哮で、5つの大きな窓が消え去り、EVAを拘束していた十字架も消し飛んだ。
「な!?」
拘束から自由になったEVA初号機は、背にオレンジ色に光る翅を生やす。その数12枚。ロンギヌスの槍を掴み飛び立つ。そのとき突然綾波の声が聞こえてきた。
(グラオベ、聞こえる?)
「……その声は綾波か?無事だったのか?」
(ええ、兄さん……いえシンジさんに後は任せて)
「……シンジだと……綾波お前もシンジなのか?どいつもこいつもシンジ、シンジ、シンジ、シンジ、シンジ、シンジ、シンジ、シンジ、sigsigsigsigsigsigsigアアアアア!!!!!」
(グラオベ!?)
Erzengel壱番機エントリープラグの中のグラオベ・アンカーが解けて消えた。
--赫き月 赤い少女像の前
「始まったようだ」
上を指していたアダムが呟く。ユイは何のことか?と訝った瞬間、咆哮が聞こえてきた。
「ひっ!?」
「なんだ!?」
作戦部隊員が悲鳴を上げる。この咆哮は覚えがある。EVA初号機の最初の暴走だ。
咆哮と同時に上空の白いEVAが動き出した。2匹がEVAとErzengelが戦っていた方に向かう。
「さあ、リリスのお出ましだ!!」
両手を広げ高らかに宣言するアダム。その言葉とともに12枚の翅でEVA初号機が飛翔してきた。手にはロンギヌスの槍を持っている。
『母さん!みんな!下がって!イヴを封印する!』
EVA初号機が槍を構え、赤い少女像イヴに向けた。
その瞬間白いEVA12匹が、初号機に襲い掛かる。
『うわっなんだこれ!?』
白いEVAは、赤い唇の大きな口を広げ12枚の翅に食いつき翅を引きちぎった。
「そうだ!欲しかったのは、その12枚の翅!ありがとうリリン!!」
翅を引きちぎられたEVA初号機は、飛行できずに落下する。しかし地面に落ちずにいきなり開いた大きな黒い穴に落ちていく。その穴はErzengel弐番機の裏コード:ベトザタの回廊と同じだった。
『うわー-!?』
「シンジ!」
「もう用済みのリリスにはご退場願う」
「シンジをどこにやったの!」
「とても遠いところさ。さあ、Adamsチルドレン!儀式の準備を!!」
翅を引きちぎった白いEVAは、赤い少女像の前に集まる。その場所に2匹の白いEVAに両腕を噛まれながら運ばれてたものがあった。
銀色のErzengel壱番機。意識がないのか、ぐったりしている。両腕を噛んでいた2匹の白いEVAが形を変え始め融合し、Erzengelの背に十字架を形成。Erzengelを磔にした。
翅を咥えていた12匹も姿を変え翅と同化し、Erzengelに群がる。
後に残ったのは、十字架に貼り付けにされ12枚の翅を生やしたErzengel壱番機。
「準備は全て整った」
アダムは胸に手を当て感無量の表情を浮かべた。
「何の準備!?」
両腕を広げ高らかに宣言する。
「ユイ君、決まっているじゃないか。サードインパクトだよ!」
その瞬間、アダムの胸から光る剣が生えた。血が噴き出す。
「がふっ、何をしているタブリス」
先ほどまで黙っていた渚カヲルがアダムの背後に周り、胸をA.T.フィールドの剣で貫いた。その剣の先にはアダムの胸にあった紅玉が刺さっている。アダムの口から血が流れた。
「アダム、わざとHerr Ankerの心を壊したのかい?」
「そうさ、サードインパクトの核として必要だ」
「アダム、もう止めよう。リリンに全てを返そう」
「タブリス、もう遅い。イヴは目覚めた。そして私を殺しても意味ないぞ。体はただの器だ」
「アダム!!」
「さあ!人類補完計画を始めよう!!さようなら
アダムの叫びと同時に紅玉が砕け、アダムがL.C.Lとなり飛び散った。
そして赤い少女像が動き出す。
石像のように固いように見えていた像が、滑らかに腕を動かしErzengelを抱きしめる。
オカエリナサイ
Erzengelはイヴの中に消えた。
巨大だったイヴはさらに大きくなり始める。
ユイ達は慌てて逃げるがイヴに吸収され消えた。
後には誰も残らない。