彼はいつもの様に縁側で特に理由もなくその小さな身体を横たえ軽く目を瞑っていた、眠る訳でも空を見上げる訳でも無く自然に身を任せるように。時折吹く風は大きな朱い鳥居を抜け本殿へ吹き込み戸を軽く揺らす。
「ん」
日の光に当たり、くつろいでいた彼を大きな影が覆う。目を瞑る前まで空は雲ひとつない快晴だった。天気が急変することも無い此処では妙だなと思い瞼を上げる。
「よお、1週間ぶりか?」
そこに居たのは小さな魔法使いだった。風で飛ばぬよう、身の丈に合わない大きな帽子を押さえて何時もの自信に満ちた顔で言った。
「もうそのくらい経つのか。霊夢は今出掛けてる、戻るまで中で待ってろよ。」
「いや、今日はお前に用があってきた。」
「俺に?」
「ああ、最近研究をしていたんだが家にあった魔導書の内容は研究し尽くして今手持ち無沙汰なんだ。ところでメリー、お前瞬間移動できるだろ?どの程度の距離移動できるんだ?」
なぜ魔法の研究と自分が関係しているのか分からなかったが詮索する必要も無いので彼は素直に答えた。
「正直自分でも分からない…が長距離の移動はできる。そうだな、幻想郷全土くらいは移動できると思うぞ。」
「そうか、今から紅魔館に行って魔導書を借りてこようと思ってな…魔導書は分厚く重いからメリーに運ぶのを手伝って欲しいんだ」
「何も俺が手伝わなくても魔法で本を浮遊させればいいだろう?」
彼は1度、彼女が魔法で荷物を運んでいるところを見たことがあるのだ。自分の身の丈程の大きさの荷物を軽々浮遊させたのでとても驚いたのを覚えている。
「まあまあ、手伝ってくれてもいいじゃないか。華奢な女の子に重いものを持たせる気か?」
「華奢って…俺とあまり変わらないじゃないか。」
彼は小柄で大して筋肉も付いていない。
「ま、いいか。使うのは筋肉じゃなく能力だしな。」
サンキュ、とラフに言う彼女に彼は安心感を覚えた。彼はここに来て1週間程だが、彼女には長年友人だったと想わせるナニかがあった。
「じゃあ早速行くか...ところでメリー、お前は空飛べたっけ?」
「飛べるよ、霊夢の能力コピったから…でも瞬間移動の方が楽じゃないか?」
彼は自身の能力である【ありとあらゆるモノを模倣する程度の能力】で霊夢の能力である【空を飛ぶ程度】を模倣していたのだ。
「そうだな、じゃあ紅魔館まで瞬間移動頼むぜ!」
「おっけ、しっかり掴まっとけ?」
「分かったぜ!」
「「他の人と一緒に瞬間移動するのはこれが初めてだからな、もしかしたら...頸くびが跳ぶかもしれねぇ」...え?」
彼は彼女が思考するよりも早く能力を発動した…