ピンガ「俺が生き残る為にオリキャラ生やした」 作:ていとくン
これで終わり。次は多分シェリーです。シェリー終わったら原作入っていきます。
side:ラム
prrrrr prrrrr prrrrr
酒を片手に報告を待っていると、電話が鳴った。着信相手は、アルマニャック。どうやら彼は動くことにしたらしい。
ジンは嫌がっただろうな、と笑い、電話を取る。
「私です。どうしましたか?」
『……俺だ、ラム。今、ちょっといいか』
「……?えぇ、どうぞ」
違和感。
旦那、とついておらず呼び捨てなのはいい。元より敬称など求めていないし、恐らく周りに誰かがいるのだろう。敬称から己の性別が割り出されない為の些細な気遣いだと分かった。それはいい。
(
普段に比べ、アルマニャックの声に覇気がない。……思えば、先程こちらから報告の電話をした際もそうだった。あの時は怒り故と考えていたが。
些か、嫌な予感が鎌首をもたげる。
『裏切り者疑惑のスコッチを捕捉。問い質したところ、NOCであることを自白した。……鞍替えの意志は、ないとのことだったので……射殺した。……俺が、……始末した。……ジン、それに…………バーボンが、証人だ』
「……貴方、まさか…………」
彼は、今…………
「…………いえ、何でもありません。分かりました。ご苦労様でした」
『二つ……お願いがある』
「聞きましょう」
『簡素なものでいい。葬式の手配を、お願いしたい。…………スコッチを……弔いたい』
「ッ、貴方、は…………」
ラムは思わず天を仰いだ。ここに至り、
「…………成る、程。ですが他の構成員への建前もあります。本当に簡素なものしか用意出来ませんが、よろしいですか?」
『問題ない』
「分かりました。すぐに手配しましょう。他は?」
『ありがとう。二つ目は、葬式が終わってからでいい。……しばらく、任務を多めに入れて欲しい。……荒事なら、言うことはない』
「……毎日、という保障は出来ません。貴方に振れる程の事態など、早々発生しませんから」
『出来る限りでいい』
「……善処しましょう」
『ありがとう。……安心してくれ。わざと死ににいくようなことはしないから』
「ならいいです。……他に何かありますか?」
沈黙。一分程続いただろうか。
『いや……ない。大丈夫だ。夜遅くにすまなかった』
「……いえ、問題ありません」
『……それじゃ、また』
「えぇ……」
『………………連絡を』
「?」
『連絡を、くれたことは、感謝してる』
「ッ…………であれば、良かったです」
通話が終わる。ラムはしばらく瞑目していた。
(失態。とんでもない失態ですね)
アルマニャックは、スコッチの死を悼んでいた。悲しんでいた。……弔いなどという単語を、出すほどに。
彼の経歴についてはおおかた調べがついている。
あの"ジャバウォック"の過去をそこまで掘り下げられているのは世界でもラム位なものだろう。それほどの幸運だった。
そこからの調べで、彼が情に厚いことも知っていた。分かっていたつもりだった。
(裏切り者のスコッチとの間に、それほどまでに深い信頼を築いていたこと、これこそが最大の誤算)
電話先の彼が悲嘆に暮れていたのは明白だった。それどころか……
(今回の件で、分かったことがありますね)
アルマニャックの弱点は、情が深過ぎること。彼を暴力装置として運用する上で、
だが一方で、仲間がいるからこそ彼はこの組織にいるのもまた事実。
(全く、つくづく扱いづらい)
他を圧倒する、隔絶した暴力。それのみを求めて彼を勧誘した。蓋を開ければ期待以上の戦果を、戦禍を出し続ける彼にラムは大いに満足していた。あくまでこちらを上位者として立てようとする姿勢もラムの自尊心をくすぐるものだった。
だからこそ、彼からの大小様々な"おねだり"も基本全て受け入れていた。"あの方"はベルモットを随分と可愛がり特別扱いしているが、自分もアルマニャックのことを大概特別扱いしているつもりだ。
そして彼も、自分が特別扱いされていることを理解している。それを彼は恩や信頼と受け取っているのだろう。彼が組織に加入して早3年、任務を抜かったことはただの一度もない。……だから彼はラムのお気に入りなのだ。
今回、彼が便乗して裏切りに回らず、あくまで組織側に留まったのは、組織にいる友人の存在も然ることながら、ラムがこれまで築き上げてきた信頼故のものだと考えている。
それ故に、此度の一件はとてつもない失態になるかもしれなかった。仲を深めた友人を抹殺させるなど、これまで積み上げた関係性を無に帰す危険を孕んだものだった。
此度の収穫は二つ。アルマニャックがあくまで組織に残留する意志を見せたこと。彼の心が、ラムの想像を超えるほど繊細だったことを認識出来たこと。
彼は、戦場で幾人もの仲間を安楽死させてきた。凄惨な戦が続く中で、彼は仲間の喪失に慣れていた筈だった。
だが、今回たった一人の裏切り者を抹殺しただけで、彼の心に深い罅が入っていた。
(一度全てを喪ったからこそ、再び喪うことを何より恐れているということでしょうね)
恐怖や絶望とは変化の動態。落差が激しいほど、恐怖や絶望の度合いは大きくなる。
一度仲間が全滅し、孤独を味わい続けたことで彼の心は砕け散った。そこから組織を通じて友人を作ったことで、今彼の心は緩やかに繋ぎ止められ、回復しているのだろう。
そこに今回の出来事。膝を屈するに十分な絶望だったはずだ。彼が今なお折れていないのは幸運でしかない。
今回は良かった。だが次回は?同じ案件が複数回続いた時、彼が組織に留まり続ける保障もなければ、彼が壊れない保障もなかった。
ラムは直属の部下を呼びつけた。
「コルン、キャンティ、キール。そしてピンガ。以上4名の素性とここ数年の活動を今一度徹底的に洗いなさい。万一、万一裏切りの兆候があった場合はそれが分かった時点で至急の報告を」
この4名は、組織に加入して以来アルマニャックが特に親しくしていると報告が上がっている幹部だ。
もしも、彼らの中から裏切り者が出てしまった場合、今度こそアルマニャックという存在を終わらせうる劇毒になりかねない。距離を取らせ疎遠にした上で、事故に見せかけ始末する。数年単位で動く必要が出てくる以上、調査は急務だった。
……本来はここにバーボンも入れるべきなのだが、最早その必要はないとラムは判断した。……
当然、それだけでは足りない。
(ジンとバーボンに報告させなければならない)
彼があの場で何を語ったか、何を為したか、どんな様子だったか。
アルマニャックという"人間"を、もっと知らなければならない。今後の関係を、円滑に保ち続ける為に。
(全く、これではどちらが尽くす側か分かったものではない。つくづく思い通りにいかないものです)
恩、義理、信頼。目に見えずあやふやで、容易く崩れ去る脆くてちっぽけなものを自分が重んじる羽目になるとは思ってもみなかった。
打算と恐怖。何より分かりやすい飴と鞭こそが最も効率よく人間を支配する方法であるとラムは今でも思っている。
だが、その法則が当てはまらない人間がラムの眼の前に現れた。とびきり優秀で、とびきりの問題児。
「
side:バーボン
スコッチが、死んだ。
……理解していたつもりだった。自分達が歩むのは修羅の道であると。一瞬の緩みが死をもたらす、極めて過酷なものであると。
その"理解"が実に甘いものであったということを、長年の友の亡骸を前にようやく思い知ったバーボンは、崩折れそうになる心を必死に支えていた。
バーボンに銃を向けていたジンは、スコッチの死を確認すると小さく鼻を鳴らして構えを解き、彼の亡骸へと向かっていった。アルマニャックは立ち尽くしている。
「……ん?チッ……この野郎、胸に携帯を仕込んでやがったのか。…………修復は、無理か。これじゃネズミの巣も分かりゃしねぇ」
てめぇが素直に頭を撃ち抜いていればこうはならなかったんだがな、と殺気を向けられたアルマニャックは尚も立ち尽くしている。
その様子にもう一度、不満げに鼻を鳴らすと、ジンはその場を後にする。最早この場に用はないと、そう言わんばかりに、足早に。
どれくらいそうしていたのか。ようやくアルマニャックが動きを見せた。懐からのろのろと携帯を出し、コールをかける。
コール相手はラムらしい。"あの方"と呼ばれるボスに並んで一切の素性が知れない大幹部。組織のナンバー2との通話内容など、バーボンからしたら喉から手が出る程欲しい情報だが、バーボンは動く気になれなかった。アルマニャックの姿を視界に入れる。
そのままぼんやりと彼を見ていたが、やがてその目が見開かれる。
「裏切り者疑惑のスコッチを捕捉。問い質したところ、NOCであることを自白した。……鞍替えの意志は、ないとのことだったので……射殺した」
(アル、貴方……)
「……俺が、……始末した。……ジン、それに…………バーボンが、証人だ」
(泣いて、いるのですか……)
アルマニャックの両目から、はらはらと流れ落ちる雫。
(ずるい、ずるいですよ、アル……)
これでは、
分かってはいるのだ。彼が決して、好き好んでこの結末を齎したのではないと。友情と恩義の板挟みに苦しんだ果てに下した、苦渋の決断なのだと。そんなことは分かっているのだ。
それでも手を下したのは彼なのだ。彼を恨むことに、彼に怒りの矛先を向けることに、何ら矛盾はない筈なのに。
気づけば、電話を終えたアルマニャックがこちらを見ていた。手元のリボルバーを差し出している。
「……どうしたのですか」
「これを、使っていい」
「は……?」
「俺より、ずっと長い付き合いだったんだろう、スコッチとは」
「……ええ」
「……スコッチは俺が殺した。なら、お前には、仇を討つ権利が、ある筈だ」
「な、にを……」
「これは俺の銃だ。これなら、俺の死は自殺になる。仇討ちをした後も、この組織に残れる。……バーボン、お前になら、殺されても、文句はない」
「〜〜〜〜〜ッッッ!!!」
もう我慢の限界だった。銃を引ったくるように奪い、額に突きつける。
「貴方は、貴方は!
いくつもの感情が入り混じり、噴火の如く湧き上がってくる。もう自分がどんな顔をしているか、何を思っているのかさえ分からない。
「死んで楽になるつもりか!俺に殺されて、裁かれて、それで満足か!!一人罪を背負って死んで、悲劇の英雄気取りかよ!!」
アルマニャックは黙したまま、何も語らない。それがまたバーボンの魂を刺激する。
「だんまりか、図星を突かれたんだろう。お前は結局独り善がりの人間だ。勝手に殺して勝手に悔やんで、最後はお涙頂戴の三文芝居か!巫山戯るな!!スコッチを殺しておきながら涙なんか流しやがって……泣けば赦されると思ったか!?一人で楽になるなんて、赦される訳がないだろう!!」
やめろ。これ以上の無様を晒すな。
「スコッチは、あいつは、大事な友達だったんだ。誰より長い付き合いの、優しい、優しい友達だったんだ。それを、それをお前は!!お前は!!」
やめろ。これ以上彼を罵倒するな。
「お前は!お前だって!!……お前だって、俺は……
「…………ごめんな、バーボン」
「!!」
ここでようやく、アルマニャックが口を開いた。出てきたのは、悔恨に満ちた謝罪の言。
銃を構えていた手が、力なく崩れ落ちる。もう、立っていられなかった。
座り込んだバーボンの手から銃を回収し、胸元にしまい込むと、階段へ向かって歩き出した。
「…………何故、恨まないのですか」
何を、とは言わなかった。何から恨めばいいのかなど、バーボンにも分からなかったから。
去りゆくアルマニャックの背に、座り込んだまま言葉を投げかけるバーボン。消え入りそうな程に小さな声だったが、彼の耳には届いたらしい。
「俺が、選んだから」
「!」
「組織に入るのも、二人と話すのも、仲良くなるのも、組織を選んでスコッチを殺すのも、全部俺が選んだから」
「それは、」
「好き好んで選んだ道で、誰かを恨むなんて、お門違いだろう」
嗚呼。
貴方は、あの状況で選ばされた選択を、好き好んで選んだと言うのですか。あくまで、自分の責任だと言うのですか。
(恨みます……恨みますよ、アル)
いっそ彼が心底悪党であったなら。血も涙もない悪漢であったなら。友情を嗤い義を蔑む畜生であったなら、心から恨むことが出来たと言うのに。
(恨みます。
返事を返す気力は、なかった。
二日後。葬儀を終え、スコッチは共同墓地に埋葬された。たった二人の参列者の、寂しい葬儀だった。……いや、分かっている。葬儀をやれるだけ、上等だと。スパイであることが露見し殺された者の弔いにしては、最上級のものであると。
「やあ、ヒロ。……これ、お前好きだったろ。特別に奢ってやるよ」
スコッチが好きだった酒を墓前に置き、座り込むバーボン。
「見てたか、ヒロ。……あいつ、泣いてたよ。みっともなくめそめそと。お前を殺した癖にさ」
常に笑みを浮かべる不敵な男の姿は、そこにはなく。草臥れた抜け殻のような姿が、そこにはあった。
「分かってるんだ。アルもまた、被害者なんだって。あいつも、スコッチのことを大事に思ってたんだって。……じゃあ、俺は何を恨めばいい?何から憎めばいい?怒りを、悲しみを、どこにぶつければいいんだ?」
組織、と言えばいいのだろう。事実、今回アルマニャックに引き金を引かせたのは組織なのだから。
勿論、公安として、警察として、平和を愛する一人の人間として、組織への憎しみはある。ただ、それは身を焦がす程の感情ではなかった。あくまで職務上の責務として、信念としてのものに過ぎなかったのだ。
理由は分かっている。やはり、これもアルマニャックのせいだ。彼が、何と天秤にかけてスコッチを摘んだのか。その時の血を吐くような情念を聞いてしまったからなのだろう。
激情のぶつける先を、拳を振り下ろす先すら分からず。あらゆる情念を内側に抑え込むバーボンの心は音を上げて軋んでいた。
「俺は、組織を潰すよ」
どれだけ座り込んでいたのか。ぽつりと溢すと、"降谷零"は立ち上がった。
「この世は負の螺旋そのものだ。人の悪意が憎しみと悲しみを生み、その憎しみと悲しみがまた新たな憎悪と悲哀を生み出している。数多の人間が、この螺旋に呑み込まれ、抜け出せずに藻掻いているんだ。今回の一件で、それを痛感したよ。……だから、俺はこの螺旋を壊す。終わらぬ連鎖を、終わらせる。……
見ていてくれ、ヒロ。そう言って、墓前から立ち去ろうとした時、こちらへ向かう足音が耳に入った。
やってきたのは、アルマニャックだった。喪服を着て、花束を携えやってきた彼は、バーボンの姿を見て僅かに目を見開く。
「やぁ、貴方も墓参りですか」
「……あぁ。どの面下げてって、我ながら思うが……」
「いえ。少なくとも、スコッチは喜ぶでしょう」
「……そう、かな。そうだな、あいつは、そういう奴だった。裏で生きていくには、優しすぎる奴だった」
「貴方がそれを言いますか」
「……そうだな。殺した立場で、何を言ってるんだか」
「そういう意味ではないんですけどね……」
墓前に花束を添えた彼は、黙って佇んでいた。その姿を見届けて、バーボンは静かに立ち去ろうとした。
「行くのか」
「えぇ。僕はもう挨拶を終えましたから」
「そうか……」
「えぇ、では。……さようなら、
「!………………あぁ、
今日この日を、友を
バーボンは、もう振り返らなかった。
これにてスコッチ・バーボン編は終わりです。長かった……
以下、本文中では説明しきれなかった部分を順にお話していきます。
Q.動きの時系列が分かりません。
A.各々の動きは下記の通りです。
スコッチ→原作ママ
一般構成員→律儀に背後から追跡
ジン→逃走ルートを推理して先回り
ライ→高所からスコッチを捜索(バーボンが目撃したのは高所に上る最中のこと)、発見した後ビルから降りて対峙
バーボン→原作ママ
アルマニャック→ラムから連絡を受けて、逃走ルートを推定して一点張り待機
Q.なんでジンがいるの?
A.アルマニャックへの対抗心です。
原作と違い、本作にはアルマニャックという幹部が存在します。彼は組織随一の武闘派として非常に高い評価を受けています。
ジンからすれば、言うことは聞かないし生意気言ってくるし喧嘩売ってくるしでクソムカつく男が、自分と同等以上の評価を受けているという状況な訳です。
ジンにとっては非常に腹立たしい状況ですが、同時に彼もアルマニャックの仕事の腕だけは評価している為、対抗心からネズミ探しの頻度と精度が向上しています。
それ故に、スコッチは見つかってしまいました。アルマニャック(が存在した)のせいです。
Q.ライは結局何してたの?
A.覚悟完了したスコッチに伸された後、目覚めた時点で全ては終わっていました。アルマニャック(がスコッチに与えた装備)のせいです。
Q.ライとバーボンの因縁はどうなったの?
A.アルマニャックがほぼ全て持っていきました。
ライならスコッチを助けられた筈なのに殺した→許せない!が原作ですが、本作ではアルマニャックがスコッチを葬っているので、そこ絡みの因縁が消滅しています。
元々ライに対してライバル意識を抱いていたバーボンですが、この一件以来、彼は常時傷心気味になる為、ライと小競り合いする気力がありません。
FBIと公安という対立軸こそあるものの、それ以外の対立理由は最早残っていないと言っていいでしょう。
Q.キールはラムの追求から逃れられるの?
A.逃れられます。
ラムは本気でキャンティ・コルン・キール・ピンガの背後を洗いに行きます。
一方、CIAも本気です。本作では、"組織"に潜入している捜査官がキール一人になっていることに加え、CIAにとっての怨敵であるジャバウォックの調査という至上命題が与えられています。その分組織の総力を上げて本気で後方支援に徹しているので、流石のラムもキールの正体を見抜くことは出来ませんでした。
他の三人はNOCでも何でもないので、ラムは最終的に「問題なし」と判断します。
スコッチとバーボンは善意と打算からアルマニャックに近づき、アルマニャックは好奇心から二人と関係を結びました。やがて何気ない日々の積み重ねとスコッチの善意から三人の関係はより深化し、事件当日を迎えます。
アルマニャックは善意からスコッチに各種武装を提供し、ラムも善意からアルマニャックに情報を提供しました。
様々な善意が結びついた結果、今回の結末となり、生き残った人全ての心に傷を残しました。今回の一件は後々まで後を引くことになります。
ここ以降、原作が音を立てて崩れ始めますね。ピンガ生存の時点で原作も何もないと言えばそれまでですが。
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