ピンガ「俺が生き残る為にオリキャラ生やした」   作:ていとくン

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やっと原作入った……魚影まで我慢出来ないので、今後もどうにかしてちょくちょくピンガをねじ込んで行くつもりです。どのお話の、何処にどうぶち込まれるかも楽しみにしててください。
ちなみに今回は出てきません。



Overture ─宮野姉妹─
雉も鳴かずば撃たれまい


 

 

 

カタカタカタカタカタ

 

 

 

白を基調とした研究室。棚には様々な薬品が並べられており、そこかしこに大きな機材が置かれている。

どこまでも無機質な印象を抱かせる部屋の一角から、タイピング音が響いている。

 

ふと、ドアが開く音がした。足音が近づいてくるのを聞き、タイピング音が止まる。伸びを一つして立ち上がった彼女は、棚に向かうとカップを二つ取り出し、コーヒーを入れ始める。

 

 

 

「おはよ、志保」

「おはよう、アル」

「ちゃんと寝てるか?」

「寝てるわよ。一昨日は3時間も寝たわ」

「それは寝たうちに入らねェんだわ」

 

 

 

ため息をつく男の名前はアルマニャック。この研究室の主、シェリーこと宮野志保を監視する任務に就いている、組織きっての武闘派幹部だ。

尤も、志保にその感覚は一切ない。……事ある毎に研究室を訪れては、日がな一日漫画や本を読み、菓子を貪る武闘派幹部など、生憎志保は聞いたことがない。監視対象の眼前で堂々と昼寝を始める監視なども志保は聞いたことがない。よくもまぁこれで上から消されないものだと感心すらしている。

アルマニャックは志保からコーヒーを受け取ると、砂糖を入れつつ彼女の頭をわしわしと撫でる。

 

 

 

「ちょっと、髪が崩れるからやめなさいって言ってるでしょ」

「うるせェ。何回言ってもちゃんと睡眠を取らないお馬鹿な妹ちゃんにはちょうどいい罰だわ」

「貴方にお馬鹿ちゃん呼ばわりされるなんてこの上ない侮辱だわ。近い内に訴えるから慰謝料の準備をしておきなさい」

「その発言が既にこの上ない侮辱だとは思わないかな?」

 

 

 

軽口を叩いているうちに、志保の眉に寄っていた皺が解れてきた。それを微笑ましく見ているアルマニャックに気づいた彼女はむすっとした顔になる。

 

 

 

「成果を急かしている俺が言えた道理じゃないけどさ、ちゃんと寝ないと疲れは取れないし、仕事の効率だってかえって落ちるぜ?徹夜明けの戦は、いつも死亡率が高かった。経験則だからまず間違いない」

「……別に貴方が急かしてる訳じゃないでしょ」

「成果を急げって最初に言ったのは俺だぜ」

「それは……そうだけど」

 

 

 

志保の姉、宮野明美の紹介で組織に加入した諸星大こと"ライ"。彼がFBIの捜査官であることが発覚したのが2年前。

以降、明美はラムとアルマニャック連名の元で監視されつつ日々の生活を送っている。無論、これすら望外の待遇であることは明白だ。裏切り者を組織に手引した者が、監視がついた程度で今なおさしたる制限もなく外を出歩けるなど、普通なら有り得ない。粛清されて当然だ。

だが、アルマニャックは組織内部でもその名を轟かせる凄腕の殺し屋。ラムは組織のナンバー2。両名の名声と尽力によって、今なお彼女は生を謳歌出来ている。

 

だが、これはあくまで延命措置に過ぎない。このままではいずれ彼女は処刑されてしまうだろう。

それをさせない為の条件が、志保の行っている研究であり、パソコンの画面に出ている物がその結果だ。

 

 

 

「あれ?まだネズミでやってるの?次の段階行くんじゃなかったっけ?」

「実験結果が安定しないのよ。死亡するまでの時間に結構な差異があるのよね」

「最終的には人間に使うんだから、せめてヒトに近い動物で実験するのは駄目なんか?」

「そういうわけにも行かないの。実験っていうのはちゃんと段階踏まないといけないんだから」

 

 

 

それとなく次を急かす言い方に思わず志保の眉根が寄る。……否、分かってはいるのだ。彼が見せる感情は、一重に宮野姉妹の身を案じているが故の焦りであることなど。

研究を始めて2年。まずまずの形になったものの、そこからが上手く行かない。上層部からはしょっちゅう次の成果をせっつかれている。

このままでは不味い、という焦りが、彼女の睡眠不足を誘発していた。

 

 

 

「悪い、寝なさいって言ってるのに焦らせるとか本末転倒だよな。ごめん」

「……大丈夫、貴方が悪い訳じゃないわ。……そうね、ここ最近煮詰まってきたし、今日は一旦寝ようかしら」

「今日は、じゃなくて毎日寝て欲しいんだけどな」

 

 

 

それが出来たら苦労はしない。アルマニャックの苦笑に同じく苦笑で応える志保。

机の方に歩いていき、ふと、パソコンの画面を見た志保の表情が変わる。

慌てて机に駆け寄り、画面を食い入るように見つめる。その後ろから、のんびりした声がかけられた。……彼と関わっていると、自分からも緊張感が失われるな、と志保は内心苦笑する。

 

 

 

「ん?どしたん?」

「ここ、これを見て」

「ん〜〜〜〜〜?俺には同じネズミにしか……いや、動いてるな?生きてるのか」

「それだけじゃないわ。このネズミ、()()()()()

「………………………………ほお〜〜〜?

 

 

 

アルマニャックが思わず目を細める。画面には何匹かのネズミが映っており、一匹を除いて皆死亡しているが、肝心の一匹はむしろ活発に行動している。志保曰く、若返っているとのこと。

 

 

 

「一応聞くね。()()()()、志保が望んでた結果はどっち?」

「馬鹿ね、聞くまでもないわ。当然、()()()よ」

 

 

 

志保が浮かべる悪い笑みに、アルマニャックも口角が上がる。

 

 

 

「志保、この薬いくつか俺にくれ」

「?……まぁ、貴方なら別にいいけど、何で?」

「望む結果が出たんなら、次のステージ行ってもいいだろ?そういえば近々、組織に喧嘩売ったマヌケなギャング共と遊ぶお仕事が入ってるから、そいつらで試そうかなって」

「あくまでまだ一例よ?それに人間での治験は数ステップ先。まだ早いわ」

「でも組織の連中はもう使ってるんだぜ?失敗しても毒薬としては使えるんだから大丈夫だろ?」

「………………なにそれ、聞いてないんだけど」

 

 

 

詰め寄る志保に思わず内股になるアルマニャック。それを見て頭を引っ叩くと、先程の発言について問い詰める。

曰く、組織は既に志保の作った試験薬を、「証拠の残らない毒薬」として実戦利用しているとのこと。

志保は怒りに震えていた。

 

 

 

「信じられない……まだ実用には早いってあれだけ言ったのに!しかも私に断りもなく!」

「ま、まぁまぁ落ち着いてくれよ。結果は良好らしいし、良かったじゃんか」

「よかないわよ!そもそも私は毒薬を作ってた訳じゃないの!さっきのネズミでも見せた通りよ!」

「そ、そんなこと俺に言われても……俺はまだ使ったことないし……」

「さっき私に薬をおねだりしてきたのは誰かしら?」

「それは遂に成果が出たって志保が言ってたから……つーか俺ならわざわざ毒飲ませるより素手で殺った方が早いし」

 

 

 

物騒な言い訳に大きくため息を吐く志保。分かってはいるのだ。新たな成果を人間で立証出来れば、それでこの薬は完成となるだろう。

だが、まだ早い。適切なステップを踏まずいたずらに実験を繰り返しては、その結果が一切想像が出来なくなる。ここまで進めておきながら博打を打ちたくはないのだ。

だが彼の焦りは、即ち自分達への情の深さの表れでもある。そう思えば怒りも収まった。

 

 

 

「とにかく、まだ実験は駄目。貴方がやらなくてもどうせ組織が勝手にやるだろうし、貴方そもそも実験における観察の仕方やデータの取り方とか分かるの?」

「あ~…………動画撮っとけばいいか?」

「却下。せめてネズミ位は安定した結果が出せるようになってからじゃないと駄目」

「…………分かった」

「貴方が心配してくれてるのは嬉しいわ。でも下手に焦って半端なものを出せば、それこそ私もお姉ちゃんも危ないもの。分かってちょうだい」

「……オッケー。ラムには「それなりに順調」って報告しとくから」

「ん、ありがとう」

 

 

 

んじゃ、と言ってコップを置き、アルマニャックは部屋を出ていく。ちゃんと寝ろよ、との言葉に手をひらひらと振って応えると、志保は研究室の隣りにある自室に向かった。

 

(コーヒーが効かない……流石にこれ以上は体が保たないわね)

 

無理すると監視役がうるさいし、と呟く志保の顔には緩やかな笑みが浮かんでいる。

 

自室のドアをパタンと閉める。

 

照明が自動で消え、研究室は静寂に包まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『それで、どうでした?研究の進捗は?』

「俺に専門的なことなんて分からんが、とっかかりは掴めてるみたいだぞ?ただ……」

『ただ?』

「ありゃビビってるな。完璧なものを出さないといけないっていう思考に取り憑かれてるように見えた。姉の命がかかってるんだ、無理もないが」

『なるほど、それで二の足を踏んでいると』

「実験とかも、正しい手順?ってのを踏むことに拘ってたな。あと、勝手に毒薬として使われてることにキレてたぞ」

『あぁ。あくまで毒薬としての価値は副産物なのですが、体に残らないというのは中々魅力的でしてね』

「科学者としては未完成品をぽこぽこ使われるのが嫌らしい。自分に話が届いてないのも気に入らないってさ」

『文句を言う暇があったら開発に勤しんでもらいたいのですがね。我々がどれだけ手を尽くしてあの女を守っていることか』

「そこは適当に宥めておいたから安心してくれ。まァとにかく、まだしばらくかかりそうだ」

『分かりました。それと、貴方に依頼が届いています』

「依頼?任務ではなく?」

『えぇ。外のコネクションから貴方に依頼ですよ。久々に"ジャバウォック"として動くことになるのでは?』

「……ほう。それで、どこへ向かえばいい?」

『マラカイボ。ベネズエラ第三の都市ですね。そこに迎えを寄越すとのことです。目的地は……()()()()()

「………………成る、程。()()か。俺の数少ないお得意様だな。了解、すぐに向かう」

『貴方が彼らとコネクションを持っていたのは私としても、組織としても非常に有用なものでした』

白頭鷲(アンクルサム)が嫌いな奴らはみんな俺の友達だからね」

『フフフ、"ジャバウォック"は今や反米の象徴、という訳ですか。()()()にはよろしく伝えておいてください』

「おっけ、しっかり伝えとくよ。じゃあしばらく日本には帰れないから、その間彼女達をよろしく頼むよ」

『えぇ、お任せを。それでは』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

電話を切り、一息ついたタイミングで端末が震える。……"あの方"直通のアドレスが入っている端末だ。ラムの目が細くなる。

届いていたメールを読み上げる。あの方からの連絡は端的なものが多いが、今回は随分と長い。資料なども入っているようだ。

読み進めるうち、次第にラムの目が見開かれていく。最後まで読み終わったラムは大きくため息をつき、椅子に深く腰を沈めた。

 

(あぁ……最悪です。これは最悪ですよ。内容も、タイミングも)

 

ラムとしても、この2年の苦労が報われることなく終わるのは忍びない。忍びないが、"あの方"の命令は絶対だ。

だがアルマニャックは到底容認しないだろう。これを伝えれば、最悪彼との全面戦争に陥る可能性もある。

では黙ったまま事を進めるか。それも否だ。きっと彼は隠蔽されたことにこそ怒り狂うだろう。

即ち、彼の噴火は避けられない。だが彼との決定的な衝突も避けたい。

いつか来るかもしれない、そう恐れていた難題が降ってきたことにラムは頭を痛める。

 

らしくもなく頭をがりがりとかいていると、また端末が震えた。今度は、宮野明美に付けていた側近からの連絡だった。

報告にざっと目を通すと、幽かな光明が見えた気がした。

 

(これだ、これしかない)

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()退()()()()()()

 

 

 

 

 

愚かな女だ。恐らくこちらに命を握られ続ける状態に恐れを成したか。いや、案外負担をかけ続けることを申し訳なく思って、などという下らない理由かもしれない。……この申し出こそが、自らの死刑執行書にサインをする行為に他ならないことにも気づかずに。

これなら、多少強引だが裏切りの証拠として使える。

 

(これを見せれば、アルマニャック相手にも最低限の名目が立つ)

 

脱退の条件として、無理難題をふっかける。それで死ねば良し。生きていても任務をしくじったなら、それを口実に始末すればいい。

万一成功された場合だが、その時は()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

ラムの脳内で計画が高速で練り上げられていく。任せる人員もピックアップしたところで、最後の問題が立ちはだかる。

 

(アルマニャックに、()()伝えるか)

 

タイミングをしくじれば、その時点で全ての作戦は瓦解する。彼が手伝って尚達成出来ない荒事など、ラムでも早々用意出来ない。

あちらで任務に取り掛かる直前、それが最善だろう。今回に限っては、彼が間に合ってしまっては困る。

 

 

 

「私は十分義理を果たしたでしょう?……悪く思わないでくださいね」

 

 

 

アルマニャックに謝罪してから、ラムは各所に通達を行った。

 

 

 

 

 

宮野明美を始末せよ、と。

 

 

 

 





今回はだいぶ短め。今後もお話の長さは結構不安定になると思います。平均文字数というデータが役に立たない……

書き溜めがあったのは最初の2、3話。以降は書いては投稿を繰り返してるので、投稿間隔もブレがあるとは思いますが、どうか今後もお付き合い頂けたらと思います。



最後までお読み頂き、ありがとうございました。よろしければ、感想・評価・お気に入り登録の程よろしくお願いいたします。
特に感想は本当に嬉しいです。全て大切に読ませて頂いておりますし、作品を作る上で大変励みになります。よろしくお願いします。
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