ピンガ「俺が生き残る為にオリキャラ生やした」   作:ていとくン

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前書きをいじりました。前のものだとあらすじもクソもなかったので……

章タイトルにサブタイトル、これセンス出ますよね。今まではside:○○で済ませていたので、前回も今回も足りない脳みそをこねくり回して頑張りました。



破鏡再び照らさず

 

 

 

「この扉の向こう側で、司令官がお待ちです」

「おう、ありがとさん」

 

 

 

迷彩服に身を包んだゲリラ兵に囲まれ、マラカイボから遥々十数時間。山中に築かれた重厚な要塞の最深部に連れられたアルマニャックは、両開きの重たい扉を両手で押し開ける。

 

ゴゴ、と開かれた扉の向こうには、簡素ながらも高級な家具や調度品が飾られている部屋。その部屋の奥に置かれた椅子に座るのは。

 

 

 

「久しぶりだな、()()()()()()()()

「うむ。壮健そうで何よりだ」

「司令官は少し痩せたんじゃないか?飯はちゃんと食わないと駄目だぞ」

「ははは、言いよるわ」

 

 

 

コロンビア革命軍(FARC)

 

本拠地コロンビアを中心に、ベネズエラ、パナマ、ペルー、ブラジルなど周辺諸国にも活動拠点を置く、中南米最大の反体制武装勢力。メデジン等の麻薬カルテルとも太いパイプを持つ彼らは、泣く子も黙る一大犯罪組織でもあり、左翼ゲリラらしく反米主義者の集まりだ。

 

そして、反米主義者であるが故に、"ジャバウォック"がCIA相手に起こした一件以来、彼らはあらゆる手を尽くして潜伏した"()()"を探し出し、自分の組織へと勧誘した。

勧誘こそ失敗したものの、ビジネス上の付き合いを得ることに成功した数少ない組織、それがFARCであり、その最高幹部が今アルマニャックの眼前にいる壮年の軍人だ。

 

 

 

「にしても、依頼書読んだが、こんなん俺じゃなくても出来るだろ?そっちの精鋭すら出す必要はない。新兵を戦場慣れさせる位の難易度だぞこいつは」

「たまには"英雄"の顔を拝んでおきたいのだよ。新しい幹部達にも面通しをしておきたいしな」

「よせよ、俺はあくまで私怨でカチコミかけただけさ」

「それすら出来ずに消えていく組織の何と多い事か。貴様はたった一人で世界にその名を轟かす米帝共の鼻をあかしたのだ。紛れもなく英雄だよ」

 

 

 

是非ともうちに来てほしかったんだがな、と言う司令官に対して苦笑するアルマニャック。

彼は思想的にはニュートラル。そもそも教養などほとんどなかった彼に資本主義だの共産主義だの言われたところで、ピンとこない。

 

 

 

「俺はアンタ達みたいに思想に燃える革命家じゃあない。ただ生きる為に殺していただけの人間さ。国の未来とか主権がどうこう言われてもよく分からんし、そういう奴を招いたところで、組織に不和を生むだけだろ?」

「うむ……やはり意思は変わらぬか。残念だ。それにしても、貴様が特定の組織に根を下ろしたと聞いた時は何かの冗談かと思ったぞ」

「あぁ、いい上司に巡り合ってな。司令官に負けず劣らずの器だ。……つまりは、肝の据わった筋金入りの極悪人ってことだな」

「ははは!!つくづく好き勝手言いよるわ!」

 

 

 

大笑いする司令官を見て驚いた顔をする側近達。厳格にして冷酷な軍人としての顔が強い彼が、アルマニャックとの会話では終始楽しそうにしている。

アルマニャックもこのまま会話を楽しみたいところだが、彼にはあまり海外で長居出来ない事情がある。話を進めた。

 

 

 

「それで、俺はいつ動けばいい?すまないが、今組織でちとデリケートな問題を抱えていてな。あまり海外で長居出来ないんだ」

「一昨年も同じことを言っておったな。まだ片付かないのか」

「だからデリケートなのさ。武力でどうこう出来ないからな。早けりゃあと2、3年で片がつくとは思うが」

「随分とかかるのだな……仕方ない、であれば明日には動いてもらおう。今日は休んでいけ」

「おう、世話になるわ」

 

 

 

そんな話をしていると、アルマニャックのポケットから振動音が響く。どうやら電話らしく、一言詫びて部屋の隅で通話を受け取る。

 

 

 

 

 

ふと、司令官は()()()()()()()()。周りを見ると側近達も同じらしく、中には胸を押さえている者もいる。

何事かと思っていると、通話を終えたアルマニャックが此方を振り向き、歩み寄ってくる。

 

 

 

 

 

重力すら感じる程の威圧と共に。

 

 

 

 

 

つつ、と背中を冷や汗がつたう。あの通話で、何かよろしくないことがあったのだろう。

彼はこの場にいる者を威圧している訳では無い。当然だ、威圧される理由がない。この場に満ちているのは、あくまで彼から漏れ出た()()に過ぎない。

にも関わらず、全身に伝わる重力。アルマニャックと初めて会う者等はおこりのように震えてさえいた。それを横目で見た司令官の顔に、自然と凶悪な笑みが浮かぶ。

 

 

 

そうだ、()()だ。()()()()()、部下達に見せたかったのだ。

 

 

 

天下の星条旗(スターズ・アンド・ストライプス)すら下してみせた男が放つ、岩をも融かす怒りの奔流を。

 

 

 

「何かが、あったようだな」

「あぁ。せっかく招いてもらったのに、本当に申し訳ないが、すぐにでも帰らなきゃならなくなった」

 

 

 

 

 

「今すぐ任務を片付けたい。現場へ送ってくれないか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(くそっ、面倒なことになった)

 

任務をすぐさま片付け、帰りの手配をしてもらったアルマニャックは、飛行機の座席に腰掛け、思考を巡らせる。

 

(確かに、あのメールは裏切り者の証と見れなくはない。だが拡大解釈が過ぎる。これがこじつけであること位、ラムの旦那が分からん訳が無い)

 

一体どこの世界に、事前のお伺いを立てる裏切り者がいるのか。……あの底抜けにお人好しな明美さんならやりかねない、という思考は脳の片隅に追いやり見なかったことにした。

この2年間、彼女を庇い立てしていたのは自分だけではない。むしろ実務面においては、彼はラムに多くを頼っていた。

彼女を通じてシェリーを手中に収められるという恩恵は、ラムにとっても得難いものである筈。

ラムは善意や義理で動く人間ではない。自分に対してそのように見せているだけで、その行動理念は打算と忠誠。

ラムとはもう6年の付き合いだ、それ位はアルマニャックにも分かる。だが今回、宮野明美を殺すことでラムにとって生まれる利益など存在しない。で、あるならば。

 

("あの方(ボス)"からの命令か……!)

 

頭をがりがりとかく。口から物騒な文句が垂れているが、彼にそれを気にする余裕はない。

 

(となれば、普通に助けることは不可能!今回命を拾ったところでまた狙われることは明白だしな。それにラムの旦那と対立はしたくねェし、何だかんだ言って組織にゃ恩がある。まだ俺はそれを返しきれていない)

 

だが、宮野明美の申し出はアルマニャックにとっては裏切りには該当しない。

事前に伺いを立て、足を洗う為の条件を聞き出す。むしろ誠意を感じると彼は考えた。

 

(シェリーが絡んでいるという理由だけで、不義理を働いているのはむしろ組織の側!なら、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!)

 

だが問題はどうやって救うか。

あの程度のメールで抹殺を決意した訳では無いだろう。むしろ自分への弁明に使われたとすら、彼は感じていた。

組織は前々から宮野明美を殺したがっていた。切っ掛けは分からないが、いよいよ抹殺に踏み切るだけの何かがあったのだろう。であれば、明美さんが生きている限り、組織は絶対に彼女を逃がしはしない筈だ。

 

今回、組織の友人達は頼れない。恐らくラムが手を回している筈だ。「今回の件でアルマニャックから頼られたら即座に報告せよ」と。俺が連絡を取ったことはすぐさま組織に知られるに違いない。その先にあるのは、組織との全面戦争だ。

宮野明美を救うことを決めたものの、何も組織に表立って逆らいたい訳では無いのだ。今回組織が彼女やシェリーに対して働いた不義理と、自分が組織やラムから受けた恩義は別の話であるとアルマニャックは考えている。

つまり、組織には宮野明美が死んだと思わせつつ、己の関与を知られることなく密かに彼女の身柄を確保しなければならない。……誰のバックアップも受けずに、自分一人で。

 

 

 

「なるほど完璧な作戦ッスね〜〜不可能だという点に目を瞑ればよォ〜〜〜!!あ~ふざけんな!あれこれ考えるのは俺の領分じゃねェっつうのに!そもそも人質救出なんざ俺にノウハウがねェ!未経験者歓迎ってか!クソ!」

 

 

 

日本に到着するまでの旅路は半分を切っているが、妙案が彼の頭に浮かぶことはなく。

 

飛行機の車内には、バリバリと頭をかく音が響いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よろしかったのですか、司令官」

「何がだ」

「彼についてですよ。こんなに早く帰してしまって……」

「では聞くが、我々は何か損をしたかね?」

 

 

 

ハバナ産高級葉巻の芳醇な香りが漂う部屋で、司令官とその側近が話をしている。議題は当然、そろそろ日本に到着するであろう男についてだ。

しかめっ面をしている側近に対して、葉巻をくゆらせる司令官は、緩く口角を上げて楽しげだ。

 

 

 

「あ奴の手によって、敵カルテルの拠点が2つも潰された。此方の犠牲はなし。加えて、小さいものではあるがあ奴に対して"貸し"さえ作れた」

「貸し、ですか?」

「あの男は非常に義理堅い性格をしている。今回あ奴は、招きに応じておきながら接待すら受けずにとんぼ返り。それも組織への発覚を避けて迂遠なルートを選んでな」

 

 

 

アルマニャックは、飛行機でフィリピンへ向かい、更にそこから韓国を経由して日本へと帰国した。いずれもFARCの伝手によるものである。

司令官の顔に僅かな苦笑が浮かぶ。苦々しい、というよりは呆れ半分好感半分といったところか。

 

 

 

「私からしたら、だからどうしたという程度のことだがね。それでもあ奴にとっては"不義理"であり、それを許してもらったことは"恩"なのさ」

「はぁ、それはまた……」

「対して我々が今回払った対価は何だ?せいぜいが依頼の報酬に加え、往復の送迎の燃料費程度だろう。裏を疑う位の割の良さだ」

 

 

 

だからこれでいい、と司令官は言う。

 

 

 

「さて。我々が出来る範囲の助力はしたぞ。後は貴様の実力と運次第だ、太陽を墜とした男(テメロッソ・エル・ドラゴ)よ。見事、貴様が成すべき事を成し遂げてみせよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

町外れの寂れた倉庫街にて、一人の女と二人の男性が向かい合う。辺りに剣呑な空気が満ちる。

 

 

 

「ご苦労だったな、広田雅美……いや、()()()()

「ジン…………!」

「さて、金を渡してもらおうか」

 

 

 

妹と共に組織を抜ける。その代償として宮野明美が請け負った10億円強盗という大仕事。

組織の規模は裏社会に君臨するほど強大だが、それでもはした金とは到底言えない。10億円とはそれだけ大きな金額であり、手切れ金としてはあまりに高すぎる金額だ。

当然、それだけの金を組織に収めるのであればそれなりの歓待があって然るべきであり、相応の報酬があって然るべきだ。

 

だが、今彼女はジンに銃口を向けられている。隣にいるウォッカ共々、口元に浮かぶのは嘲りの笑みだ。

 

 

 

「その前に妹に会わせて。この仕事が終わったら、私と妹を組織から抜けさせてくれる、そういう約束だった筈よ」

「フフフ……そいつは出来ねえ相談だな。奴は……シェリーは組織でも有数の頭脳の持ち主。手放す訳には行かねぇな」

「なっ!」

「お前と違って、妹の方は組織に必要な人間なのさ……」

「約束が違うわ!まさか……さいしょからそのつもりで……」

 

 

 

そう、組織は端から宮野志保を、シェリーを手放す気などなかった。()()()10億で手放すには、彼女が持つ価値はあまりに重過ぎた。

そもそもこれは、宮野明美を抹殺する為の、偽りの任務。無理難題をふっかけ、失敗した彼女に責任を取らせる形で始末する。そういう筋書きだったのだ。

ジンや組織にとっては、無事成功してしまうことこそが想定外だった。

だが、たとえ想定外であったとしても、結末は変わらない。

 

 

「なら、10億は渡せない。約束を違えたのは、そちらの方よ!」

「おいおい、俺は言った筈だぜ。…………()()()()()()()だとな」

 

 

 

発砲音。ややあって、崩れ落ちる宮野明美。彼女の腹部から血が溢れ出し、地面に広がった。

すかさずウォッカが駆け寄り、彼女の体を探る。程なくして、ニヤリと笑った彼がコインロッカーの鍵を掲げる。

 

 

 

「よし。俺達としても、あまりモタモタしている訳にもいかない。あの()()()()()()()に嗅ぎつけられる前に片をつけろとの命令だからな」

 

 

 

確実に止めを刺すべく、倒れ伏す彼女の脳天に銃口を突きつけるジン。引き金を引こうとした、その時だった。

 

 

 

ファンファンファンファン

 

 

 

遠方から聞こえるサイレン音に、二人の顔色が変わる。

 

 

 

「まさか……サツか!」

「チッ、このアマ……前もって通報してやがったのか!どうしやす、兄貴!」

「……仕方ねぇ、目標は達成した。止めを刺せねぇのは残念だが、どの道この傷だ。直に死ぬだろう。ずらかるぞ!」

「へい!」

 

 

 

立ち去る二人。腹から血を流して倒れる彼女だけが残された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(私……死ぬのね)

 

薄れゆく意識。自分の命が、流れ落ちていくのをぼんやりと知覚しながら、彼女が思うのは、大切な家族。

 

(貴女を、この組織から救いたかったのに、結局この有り様。駄目なお姉ちゃんで、ごめんね、志保……)

 

自らが死んだ後、志保は無事でいられるだろうか。彼女の心配事はただそれだけだった。

 

(いえ、きっと大丈夫。アル君なら、志保を守ってくれる……私のことだって、ずっと守ってくれてた)

 

私の死を知った彼は、きっと傷つくだろう。……裏社会で生きるには、彼は優しすぎる人だったから。

 

(ずっと、貴方が、私達を守ってくれてたのに、ごめんね……!どうか、これからも、志保をお願い……!)

 

血を流し過ぎたか、いよいよ意識が持たなくなってきた。重たい瞼を閉じようとした、その時。

 

 

 

 

 

息を切らせて自らの傍に立つ、一人の影。

 

 

 

 

 

「え………………?」

 

 

 

影は。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え〜、次のニュースです。昨日夕方、発砲音がするとの通報を受けて○○町外れの倉庫街に警察が向かったところ、腹から血を流して倒れている女性が発見されました。救急隊がかけつけ、その場で死亡が確認されました。遺留品などの状況証拠から、彼女は10億円強奪事件の主犯、広田雅美容疑者であると警察は断定。これで先の強盗事件に関わった犯人全員が死亡したことになります」

「先に殺害された二人は、広田雅美容疑者によって殺されたとの見方が強かったですが、彼女は誰に撃たれたのでしょうか?」

「傍に落ちていた拳銃からは、広田雅美容疑者の指紋しか検出されなかったことから、警察は、10億円を独占すべく共犯者を殺害したものの捜査から逃げ切れないと悟り自殺した、との見方を示しています」

「仲間割れの末、最後は自殺ですか。ですが、一般市民に被害が出なかったのは不幸中の幸いですね」

「警察は引き続き、10億円の隠し場所を捜索しているとのことです」

 

「では次のニュースです。指定暴力団の泥参会系二次団体、出酸組が保有する事務所の一つが昨日何者かの襲撃を受けたことが分かりました。この襲撃により組員11名が死亡、3名が行方不明とのことです」

「行方不明?どういうことです?」

「襲撃当時、事務所には14名の組員がいたとのことですが、男性組員2名と女性組員1名の計3名は未だ連絡が取れないとのことです。事務所からは現金や貴金属が無くなっていることから、警察は金目の物を盗んで高飛びする為に他の組員を殺害したのではないかと考えているそうです」

「最近は物騒なニュースが多いですね……明るい話が聞きたいですねぇ」

 

「次のニュースは明るいお話ですよ!米花動物園でパンダの赤ちゃんが誕生しました!現地の水無怜奈アナウンサーと中継が繋がっています。水無さ〜ん!」

「は~い、水無です!今私は米花動物園に来ています。見てくださいこの人だかり!産まれたてのパンダの赤ちゃんを一目見ようと、多くの方が駆けつけています!早速お話を聞いてみようと思います!…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カタカタカタカタカタ

 

 

 

宮野明美:死亡

 

 

 

「っと、これで今回の仕事も終わりだ。お待たせしやした、兄貴」

「よし、行くぞウォッカ。次の仕事だ」

「へい!」

 

 

 





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