ピンガ「俺が生き残る為にオリキャラ生やした」 作:ていとくン
ピンガから発想を得たと言っておきながら、出てくるのがラムという体たらく……
次!次でピンガ出すよ!出なかったら木の下に埋めてもらって構わないよ!
「こちらアルマニャック。標的を殲滅した。ただその、数が多かったし急いでたんでな、ちょいと
『ご心配なく。処理班を既に派遣しています。片付けは彼らが担当するので、貴方は帰投してもらって構いません。お疲れ様でした』
「そっか。了解だ、ラムの旦那」
んじゃ、と言って切られた電話を置き、ラムは一息つく。
今回の件は急を要する仕事だった。組織に潜り込んでいたNOCによって抜き取られた情報の中には研究機関や装備の備蓄倉庫など、組織にとっての重要拠点などのデータが入っていた。
これらの情報がMI6に渡ってしまう前に、潜り込んだNOCと受け取り先の双方を潰さなければいけなかった。
NOCはまだいい。複数の幹部を向かわせ、既に始末したとの報告を受けている。しかし受け取り先の方はそう簡単にはいかなかった。
慎重に慎重を重ねたMI6は、情報を直接受け取るのではなく間にペーパーカンパニーを挟む方法を採っていた。これは組織にとっては朗報であったが、腐ってもMI6直下の隠れ蓑、その会社所有のビルには非正規特殊部隊が20名ほど所属している、ちょっとした軍事基地であったのだ。
組織の機密情報を入手出来るということで、既に警戒体制に入っており、加えてMI6が情報を受け取るべく部隊を率いて後詰めとして派遣されるとの情報も入っていた。
奴らが合流する前に、この団体を殲滅しなければいけなかったが、何せ敵が敵である。下っ端なぞ何人送ったところで時間稼ぎにもならない上、なにぶん急な事態であった為に部隊を編成して動かす余裕はない。
つまり単騎、あるいは極少人数で敵方を制圧しなければならないが、連中相手にそんなことが出来る人材など、裏社会に君臨する組織と言えどほぼ保有していない。……唯一の例外が、アルマニャックであった。
アルマニャックは完璧に依頼を遂行してくれた。敵を残らず殲滅し、機密データが入ったディスクも破壊した為、万一にも情報が漏洩することはなくなった。
組織で使われているデータ媒体には"
その為ディスクが敵方に渡る前に破壊する必要があったが、彼はそれもこなしてくれた。
「相変わらずの仕事の早さ……つくづく、彼をスカウト出来たことは組織にとって僥倖でしたね」
誰に言うでもなく呟いたラムは、愛飲している葉巻をくゆらせつつ、彼と初めて出逢った日に思いを巡らせる。
部下から上げられた報告書をパラパラと読んでいたラムは、ある部分を読んで思わず眉を顰める。
「最凶の殺し屋"ジャバウォック"……ですか。これはまた、陳腐な二つ名ですね」
組織において、"あの方"に次ぐ2番手であるラムの仕事は多岐にわたるが、中でも大事なものの一つが人材調達である。
優秀な人材などいくらいても困らない。組織も発足してからそれなりに息が長い為、若手の教育などにも力を入れており、まずまずの成果を上げてはいるが、それはそれとして外部で名を上げている優秀な人材をスカウトしてくることも重要だ。
その為、直属の部下には常日頃からそういった情報を集めさせているが、今回上がってきた情報はその中でもかなりの眉唾物であった。
任務達成率100%。まぁここまではいい。多少数字を盛る位はよくあることだ。しかし次がいけない。
曰く、CIAと2度に渡って衝突したと。1度目は彼らの拠点を一つ壊滅させ、二度目に至っては
はっきり言って、作り話もいいところである。裏社会に長く身を置いているラムをして、CIAは油断ならない怨敵であると認識している。彼らを相手に単騎で立ち回れる者など、ハリウッド映画の脚本の中にしか存在しない。
加えて、それだけの大きな事件が起きたというのなら、何故今まで自分の耳に入ってこなかったというのか。隠蔽したという線もなくはないが、この規模の事件を隠蔽しきるのはほぼ不可能と言っていい。信じられる訳がなかった。
しかし、この報告書を持ってきた部下は長らくラムの側近として仕えてきた者である。出来の悪い冗談を言ってくる人間ではないことも、確度の低い情報を持ってくるような人間ではないことも分かっている。
「一応裏取りでもしておきますかね」
CIA云々は眉唾にしても、他の仕事を見る限りそれなりに使える人材ではあるようなので、スカウトする際に備えて部下に一連の件に関する情報収集を命じておく。
何か出てくれば儲けもの、その程度の認識だった。
2ヵ月後、部下が数枚のディスクと共に報告書を提出してきた。えらく時間がかかったな、と聞くと、CIAのデータベースの中でこの情報だけセキュリティレベルが異様に高く、バレないように突破することが大変だったとのこと。
たかが一人の殺し屋に関する情報にそこまでのセキュリティをかけているということに疑問を覚えたが、とりあえずディスクを読み込んでみた。どうやら映像が入っているらしい。僅かな好奇心と共に、再生ボタンを押す。
そこには、地獄が広がっていた。
銃撃の真っ只中を突き抜ける一人の男。信じられないことに、両手に持つナイフで弾の向きを僅かに逸らし弾くことで銃弾の雨の中を突っ切っているらしい。
これだけでも既に人間技ではないが、その後の光景はラムをして度肝を抜かすものであった。
人が、
右腕の一振りで首をもぎ取られた人間が、男の蹴りで胴体を吹き飛ばされている。すぐ隣にいた者は、仲間の凄惨な最期に反応する暇もなく左手の正拳による一撃で顔面を
時に敵の体を盾にしつつ、時に壁や天井を飛び回りながら、銃弾の雨をくぐり抜けその圧倒的な膂力で敵兵を文字通り粉砕していく。最新の武装に身を固めた兵士達が、たった一人の男の手によって次々とその命を、肉体を散らせていく。
なるほど、確かに彼は"ジャバウォック"の名に相応しい怪物だろう。或いは生きた災害か。どのみち到底人間技ではない。否、ヒトが出来る所業ではない。地獄のような光景だった。
気がつけば、銃声は止んでいた。スプラッター映画もかくやと言わんばかりの血肉の海の真ん中に立つ男。映像が始まった時は小隊規模でいた敵兵も、今や一人も生きてはいない。
男はそのまま立ち去る間際、落ちていたアサルトライフルでこちらを目視することなく的確にカメラを撃ち抜いた。映像は、ここで終わっていた。
(
余りもの衝撃にしばらく呆けていたラムが最初に思ったことは、それだった。
あの男が仮に敵として我々の前に立ちふさがった際、どうすればいいか。どう対処したらいいか。ラムには答えが出せなかった。
歩兵で無理なら装甲車を、戦車を、戦闘ヘリを使えばいい。兵士には勝てても兵器には勝てる筈がない、当たり前のことだと、そう思う一方で、そういった"常識的な手法で"あの男を始末出来るのか?という疑問が頭から離れなかった。
と同時に、この事件が自分の耳に入らなかった理由も理解出来た。こんな映像を見せられても普通は本物とは思わない。思えない。誰もが、過激なスプラッター映画のワンシーンだと思うに違いない。これが実写などと、あまりに疑わしすぎるが故に自分の元まで情報が上ってこなかったのだろう。
加えて、天下のCIAが、たった一人の人間にここまで一方的に蹂躙されたなどと知られる訳にはいかない。極めて厳密な緘口令が課されたことが容易に想像出来る。この情報が広く出回る前に知ることが出来たのは幸運以外の何者でもなかった。
そう、問題は彼が敵に回ってしまった時である。殺し屋である以上、組織の人間がターゲットになることもあるだろう。末端ならばいい。だが幹部が狙われたら?自分が狙われたら?……"
最悪の未来を想定してしまったラムは冷や汗が止まらなかった。
(それだけは、それだけは避けなければならない)
ラムは頭脳をフル回転させる。数多の対処法を考えては否定する。たかが数十分程ではあったが、ラムにとっては永劫に等しい時間であった。
検討に検討を重ねた末、ラムが出した結論はスカウトだった。敵に回られて困るのであれば、こちら側に抱え込めばいい。獅子身中の虫となる可能性もあるが、野放しにするよりかは億倍もマシである。
殺す、という選択肢は採れなかった。
だが、たった一人の為にそこまでの手間と戦力を割くなど、余りにも割に合わない。
加えて疲弊したところを競合組織や諜報機関、表の警察などにつけ込まれる可能性を考えれば、最早答えは一つしか残されていなかった。
このスカウトは必ず成功させなくてはならない。そう決意したラムは"ジャバウォック"に関するあらゆるデータを調べ上げた。素性は無論、これまで受けてきた仕事や戦闘の様子、またそれらの情報から推察される彼の嗜好や性格に至るまで。
実に半年もの期間を準備に捧げた後、ラムは"あの方"に全ての情報を提出し、"ジャバウォック"のスカウト許可を要請した。
翌日、"あの方"から来た返信には、"スカウトを許可し、全てをラムに一任する。確実に成功させよ"と記されていた。
そこから更に数日かけて準備を行った後、ラムは"ジャバウォック"に一件の依頼を出した。
君を我々の組織にスカウトしたい。詳細な説明は対面で行いたいので、よかったら一度私と会ってはくれないか。
答えは、"是"であった。
「伝説の殺し屋"ジャバウォック"。まさか、ここまですんなり会ってもらえるとは思っていませんでしたよ」
とあるバー。その奥にある個室席で二人の男が会話をしている。片や禿頭の男性"ラム"、片や焦げ茶色の髪をした若者"ジャバウォック"。
どちらも裏社会に身を置く者特有の雰囲気を醸し出している。最初に口火を切ったのはラムであった。対面に座るジャバウォックはラムの疑問に答える。
「今まで、俺をスカウトしようという連中は大勢いた。それなりにデカい組織もいたよ。そんで、ほとんどの組織が上からの物言いだったんだ。お前をうちに「入れてやる」だとか、俺達が手を「組んでやろう」だとか、ね。ムカつくから全部断ったんだ」
一旦言葉を切ったジャバウォックは、酒で口を湿らせつつ、ラムの顔を見る。
「しまいにゃ俺の仕事先に下っ端を派遣してきて契約を迫る有り様だ。まぁその組織は潰してやったが」
「えぇ、知っていますよ。貴方を取り巻く過去の事案から、貴方は誠意という物を重んじる人間らしいと、私は判断しました。だからこの場にいるのです」
「そこだよ。下っ端寄越した位で人を引き抜こうってのがそもそもナメてるんだ。裏社会にだって通すべき"筋"ってのがあるだろう?その点あんたは違う。一目見りゃ分かるが、組織の中でもそれなりに上の立場なんじゃないか?」
「一応組織では"あの方"、すなわちボスに次ぐ地位におりますよ」
その言葉を聞いたジャバウォックは目を見開く。流石にそこまでの大物だとは思っていなかったようだ。彼の意表を突けたことに、ラムは内心笑みを浮かべる。
「ナンバー2!マジか、そこまで偉いやつが出てくるとは思ってなかった。でも、その分本気度も、誠意も伝わってくる。だから俺もこの場にいるんだ」
「なら良かった。怖い思いを我慢してここまできた甲斐があったというものです」
怖い思い?と首をかしげるジャバウォックを見て、ラムは思わず苦笑いを浮かべる。
短いやり取りだが、眼の前の青年があの惨劇を起こしたとはとても思えない。感情をあっさり表に出すその有り様は、容姿も相まって何なら好青年にさえ見える。
無論、交渉の場で感情を表に出すほどラムという男は迂闊ではない。内心にしっかり蓋をしつつ、敢えておどけた様子を演じる。
「それは怖いですとも。勧誘にあたって貴方のことをそれなりに調べさせてもらいましたから。そうしたら出るわ出るわ武勇の数々。当然、ラングレーの連中に対する案件も確認しましたよ」
ラングレーの名前を出した途端、ジャバウォックの目がスッと細まる。その鋭さに一瞬息を呑むが、無言で先を促された為話を続ける。
「正直に言いましょう。
「……もしかして、スカウトの理由ってのは……」
「ご明察の通り、単純な話ですよ。つまり、貴方が敵に回ることが恐ろしいのなら、敵にしなければいい。味方になって貰えばいい、そう考えたのです」
ジャバウォックという男の情報を洗うにつれ、分かったことがあった。それは虚偽と傲慢をとことん嫌うということだ。
虚偽の情報をもとに依頼を持ってきた人間は残らず殺されている。また先に本人の口から出ていた通り、傲慢なやり取りで彼を引き抜こうとした組織は壊滅の憂き目にあっている。
ただでさえ凶悪な戦闘力を持っている男が、性格まで気難しいときた。そんな彼を勧誘するにはどうしたらいいか。迷った末に、ラムは一番危ない橋を渡ることにした。
つまり、自らが直に赴き、理由を全て明確に話した上で組織に勧誘するということだ。
表社会ならいざ知らず、裏社会に置いては全てが己の身を危険に晒す行為に他ならない。
特にラムの素性など、組織においても最上級の機密事項だ。素顔を晒すなど論外でしかない。
だが、危ない橋に見えるこのやり方こそが、ことこの男を相手にする上では一番安全な方法なのではないか。ラムはそう決断を下したのだ。
最後の最後まで不安ではあったが、目を丸くする彼の様子を見る限り、かなりの手応えはありそうだ。ラムはここで畳み掛けることにする。
「貴方が我々の仲間になってくれれば、我々は
「ハ、ハハハハハハハハハ!!ここまで、ここまでおもしれェ誘い文句は初めてだわ!仮にも裏社会にいる奴が、それもナンバー2ともあろう奴が、そこまで明け透けに喋っちまっていいのかよ!?」
「構いませんとも。貴方をこちら側に引き込めるのなら、釣りの上に特典まで付きますからね」
「ギハハハハハハハ!!たまんねェ!最高だ!!一本取られたぜちくしょうめ!」
敢えておどけるラムに、尚も爆笑するジャバウォック。ようやく笑いが収まった彼が涙を拭きつつラムに質問を投げかける。その顔は満面の笑みだ。それを見て思わずラムの顔にも笑みが浮かぶ。
「いくつか、条件がある。俺のポリシーに関わるものだ」
「伺いましょう」
「まず、俺はガキとカタギには手を出さないことにしている。ぬるいと思われるかもしれないが、こいつは譲れない」
のっけから意外な条件が出てきたことに驚くラム。とはいえこの程度の条件であれば融通は効かせられる。
「なるほど、分かりました。とはいえ我々も犯罪組織。そういった事案がないとは言えませんが……」
「俺も裏の人間だ。綺麗事だけで世の中成り立たないこと位は分かってる。あくまで俺にそういう依頼を振らないでくれればいい。他のメンバーがそういう依頼をこなしていても何も言わん。協力は出来ないが邪魔もしない。落とし所としてはこれでいいか?」
「でしたら問題ありません。"あの方"にもその旨を伝えておきましょう」
「助かるよ。こんなのは偽善ですらない自己満足だが、これを超えちまうと俺が俺でなくなる、そんな気がしてな」
「個人のこだわりに口を出すほど、我々は狭量ではありませんのでね。他にはありますか?」
「次は装備についてだが……」
彼は他にもいくつか条件を提示してきた。いずれも組織の力であれば容易いものであったので、ほぼそのまま快諾する形となり。それが決め手となって、ラムは"ジャバウォック"の勧誘に成功した。
「では、これにて契約成立ということで。これからよろしくお願いしますよ」
「こちらこそよろしくな、ラムの旦那」
お互い笑顔で握手を交わす。当初の懸念とは裏腹に、実にスムーズに交渉が完了したことで思わず安堵のため息がこぼれる。ついでにラムは気になっていたことを質問することにした。
「いや、上手く収まって本当に良かった。何故、ここまですんなりとスカウトを受けてくれたのですか?」
「あんたが誠意を見せたことが一つ。理由を正直に話したことが一つ。もう一つが、
思わぬ理由に目を見張るラム。自分が感情を表に出していたことは紛れもなく失態だが、それが何故成功に結びつくのか理解が出来なかった。
「なぜ、それが理由になるのです?」
ジャバウォックは笑みを浮かべつつ疑問に答える。親しみと不敵さと、どこか敬意が入り混じったようなその笑みは、ラムの心にいいようもないざわめきをもたらした。
「目を見りゃ分かる。あんたは、俺を本当に恐れてた。この場で
「………いえ」
「あんたは恐怖に打ち克ったんだ。死という分かりやすい恐怖に心を侵されながら、それでも勝利の為に戦ったのさ。偉くなった人間は大抵が保身バカか保守バカに成り下がる。でもあんたは違った。ナンバー2の地位にありながらだ。部下をいたずらに犠牲にするんじゃなく、自ら先陣に立って見せた。無論、大いに打算あってのことだろうよ。俺を相手どるならそれが一番いいって思ったからそうしたんだろうさ。でも、頭で分かっていてもそれを行動に移すってのは簡単なことじゃない。恐怖は理屈じゃないからな。あんたはそれを成し遂げた。格好いいじゃないかよ。俺が首を縦に振ったのは、それが理由さ。……あんたみたいなのが上官だったなら、あいつらも、あるいは……」
最後の方の発言は小声でよく聞こえなかった。
尤も、どのみちラムの耳には入っていなかっただろうが。
ラムは込み上がる笑いを抑えることが出来なかった。恐れられたことはある。敬われたこともある。だが……
「格好いい……フ、フフ、フハハハハハ!!格好いいときましたか!それなりに長く生きていますが、そんなことを言われたのは初めてかもしれません!」
「だとすりゃ周りの人間に見る目がないな。目玉を新しく作り直した方がいい」
「フハハハ!!どうやら今度は私が一本取られたようですね……!」
ここ十年で間違いなく一番の大仕事を無事こなせただけではない。腹の底から笑ったことなどいつ以来だろうか。今日は良い日だ。ラムは心からの言葉を投げかける。
「貴方とは、なるべく長い付き合いがしたいものです」
あれから1年。組織への加入を果たした彼は即座に"あの方"から"アルマニャック"のコードネームを与えられた。
以降は八面六臂の大活躍。こと殲滅という手段において、組織は極めて強力な切り札を手に入れたこととなった。
その分、彼を危険視する声もあった。彼が仮に裏切り者となった際、どうやって始末するのかと。ラムは思わず鼻で笑ってしまった。
そんな方法、
スカウトに際して、彼の仕事っぷりには改めて目を通している。意外にも彼の痕跡はそれなりに存在しており、監視カメラに戦闘中の映像が残っていることすらままあった。全ての映像がにわかには信じがたいものではあったが、中でも毒ガスの中を平気で突き進んでいたのには驚かされた。後ほど本人に聞いてみたところ、
身体能力全てがヒトを逸脱した、天性の怪物。それがアルマニャックという男だ。
あれ程の暴虐を止められる者など、この世に存在するものか。ラムは本気でそう思っている。
結局アルマニャックは"あの方"並びにラム直属という特例中の特例扱いになることでそういった声は下火になった。
無論、直属にした位で彼を制御出来る訳ではない。だが彼は結構義理堅い性格をしている為、こちらから不義理を働かない限り、彼が我々に牙を剥くことはない。
そこら辺の機微が分かるのは組織でも自分位だろうから、結果的に彼は自分の下にいることになっているに過ぎない。
ラムにはアルマニャックを制御しているつもりなどこれっぽっちもなかったが、それ故に彼を制御出来ているという奇妙な状況が生まれている。おかげで組織における自分の発言力も一段と上がり、彼のおかげで取れる手段も増えた。
基本的に良い事づくめではあるものの、細やかな問題は存在している。それがラムの手元にある報告書だ。思わず濃いため息が漏れる。
乱雑な字でぐちゃぐちゃと書かれた報告書はアルマニャックから提出されたものである。そう、
戦闘において比類なき力を発揮する彼にも弱点はあった。それは、
組織に加入した時点で判明したことだが、そもそも彼は読み書きが出来なかった。どうやら彼が育った環境は想像以上に劣悪なものであったらしい。
ラムは慌てて読み書きを教えることとなった。その中で新たに判明したことが、機械類全般が使えないということである。
「読み書きの勉強と合わせたものとはいえ、まさか1年も研修を行ったのにも関わらずWordすら使えないとは……」
アルマニャックが組織に加入する際に受けた1年間の研修内容は、読み書きと基本的な機械類の使い方の2つ。
読み書きの方は1年かけてどうにか義務教育程度にまで持っていくことが出来たが、機械類、特にパソコンの使い方に関してはどうにもならなかった。
「今日び、人差し指でキーボードを打つ人間なんて実在したんですねぇ……」
辛うじて携帯電話は使えるようになったが、それも電話とメール程度。パソコンを用いての報告書作成など全て遠き理想郷であった。これには"あの方"も思わず苦笑い。
仕方ないので彼だけは手書きで報告書を作らせているのだが、これがまた読みにくい。単純に字が汚いのだ。つい去年まで自分の名前すら書けなかった以上無理もないし、これでも最初期よりかはだいぶマシになったのだが、そろそろ老眼に差し掛かっているこの目にはいささか厳しいものがあった。
いっそ代筆させればいい、と思ったが、彼が請け負う任務の中には組織内においても内密にすべき案件もしばしばある為、安易な人材を充てることが出来ない。
随分しょうもないことで頭を悩ませている自覚はあるが、とはいえ放置も出来ない。
それなりに迷った末、ラムはアルマニャックの補佐に付ける人材を決めた。近々コードネームを貰う予定のあの男は電子戦に、即ち機械の扱いに長けている。代筆は無論、機械に弱い彼の背中を支える点でも良い組み合わせだ。自分の側近でもある為機密保持の点で見ても問題はない。近々長期の潜入任務をさせる予定ではあるものの、他に人材がいない以上仕方ない。
「ピンガにやらせますか……」
一人の人間のブラック労働が決まった瞬間であった。
回想最後らへん、ラムの口調変だったかな……?キャラ毎の口調をトレースするのって中々難しいですね。
という訳で、ピンガと接点を作るべくアルマニャック君に新たな個性をくっつけました。機械音痴の程度としては、炊飯器や電子レンジがだいぶ怪しい位に思って頂ければ大丈夫です。今後はピンガの仕事に「アルマニャック君の介護」が加わります。大変ですね。
これ、アルマニャック君はラムの側近なの?と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、答えは"否"です。
文中でも述べている通り、ラムは自分がアルマニャック君を制御出来るとはこれっぽっちも思っていません。自分の右腕"程度"で収まる器じゃないとさえ思っています。当然、制御出来ない人材を右腕に据える訳がありませんね。
ラムの役割は窓口です。"あの方"直々に連絡を取ることもありますし、アルマニャック君も"あの方"への直通回線を持ってはいますが、基本的にアルマニャック君へ任務を出す際はラムを通すことになっています。アルマニャック君はあくまでラムを認めたから組織に入るのであって、依頼ならともかく任務を自分に出す資格があるのはラム一人のみだ、と考えている訳です。めんどくさい奴ですね。
次回はいよいよピンガの登場です。なんせ劇場版+wikiの情報しかないので、オリ設定が多々ぶち込まれるかもしれません。ご笑納頂けたらと思います。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。よろしければ、感想・評価・お気に入り登録の程よろしくお願いいたします。