ピンガ「俺が生き残る為にオリキャラ生やした」   作:ていとくン

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☆10:ぽりんちゅーりゅー様、外道学生様、県庁所在地様
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高評価を下さった皆様、ありがとうございます!たった一人、高い評価をくださるだけでもすごくすごく嬉しいのです。それがこんなに大勢の方に……励みにさせて頂いております!



10/11 13:30 日間ランキング76位
       二次日間ランキング57位

毎度ながら、ご愛顧に感謝します!更新頻度落ちた分が数字と回数に出てるなぁと思いつつ、複数回載せて頂いてるのに贅沢な悩みだなとも考えたり。



また、誤字報告をしてくださっている方々、大変助かっております。
自分でも書き終わってから数回チェック入れてるのですが、中々見落としを0には出来ないようで……報告頂けて大変ありがたいです。



さて、今回で今章のメインストーリーはおしまい……の予定だったのですが、長くなったので2話に分割しました。忙しい筈なのになんか筆が、正確に言えば指が乗ってしまって……
分割したので、ここ最近の中だと少々短めですね。
今回は、前回後書きでも書いた通り、戦後処理(前半)です。特にFBIと公安はてんてこ舞いですね。頑張れ〜



疾風に勁草を知る

 

 

 

 

 

 

「済まない、全て私の責任だ……」

「……あの場で仕留められなかった俺の責任です。ジェイムズ、貴方のせいではない」

「いや、私は君達の上司だ。君達は私の命令でこの地に足を運び、私の命令で奴らを追跡し、そして亡くなったのだ。……彼らの死に、私は責任を持たねばならない」

「…………」

 

 

 

椅子に深く腰掛けるジェイムズは、一晩で数十年も老けてしまったかのように、草臥れた風体をしていた。

ジョディとキャメルは、彼の姿から思わず目を背ける。信頼する上司の、こんな姿を作った一因は不甲斐ない自分達にあるのだと、まざまざと突きつけられているような気がした。

 

 

 

「18人……たった一晩、たった数時間で、これだけの殉職者を出してしまったことなど、FBIの歴史でも初の事例だろう。……皆、死んでしまった」

「……私達が、まだ生きているわ」

「あぁ、それは嬉しい。だが、最早私はそれを素直に喜べんよ。……皆、私にとって信頼のおける部下だった。一人として平凡な者などいない、優秀な捜査官だった」

「えぇ……そうね。皆、背中を預けられる仲間だった」

「彼ら全員の力をもってすれば、たとえギャングやマフィア組織が相手であっても一戦交えることが出来ただろう。精鋭の集まりだった。……それが全滅だ。我々は、一体何を相手にしていたのだろうな……」

「ジェイムズさん……」

 

 

 

しばしの沈黙が場を支配する。やがて顔を上げたジェイムズ。その表情は、ぞっとするほどの憔悴に満ち満ちていた。

その顔を痛ましげに見下ろす3名に、命令をくだす。……恐らく、上司としては最後になる命令を。

 

 

 

「……赤井秀一、アンドレ・キャメル、ジョディ・スターリング。以上3名は速やかに本国へ帰還したまえ」

「なっ!?何故です!?」

「私達はまだ戦えるわ!いいえ、戦わなくては!死んだ仲間達に顔向け出来ません!」

「これは命令だ」

 

 

 

キャメルとジョディが抗議に声を荒げるも、取り付く島もない様子のジェイムズ。

その中で、赤井だけは冷静に成り行きを見据えている。

 

 

 

「理由は何です!?到底納得出来ません!!」

「……これほどの事態、最早我々では隠蔽しきれない。そもそも隠蔽に動く人員が皆死んでしまったのだから。とすれば、どうなる?」

「日本の公安が、出てくるでしょう」

 

 

 

赤井の呟きに一つ頷き、ジェイムズは言葉を続ける。

 

 

 

「彼らからしたら面白くあるまい。自国内でアメリカの警察が勝手に捜査を行っておきながら大量の死者を出し、公道を破壊して事故車両を大量に転がした挙げ句、その隠蔽を丸投げという有り様だ。主権侵害も甚だしいどころか、我々が犯罪者として逮捕されてもおかしくはない」

「ッ、それは……!」

「彼らの追求がくる前に、君達は本国へ戻るんだ。そこで一度態勢を立て直す。今は、これが最善の手だ」

「貴方は、どうなるのです。ジェイムズ」

「日本の公安としても、責任を追求する相手は必要だろう?……どうにか私の首一つで収めてもらえるよう、精々頑張るとするよ。この老いぼれ最後の大仕事だ」

 

 

 

儚げな笑みを浮かべるジェイムズ。顔を真っ青にしたキャメルとジョディが必死で引き止めるも、彼の決意は揺るがない。

そして、赤井も彼を止めはしなかった。……今の自分達にとって、最早取れる手段はそれしかないと、分かってしまっていたから。

 

 

 

「そんな、駄目です!我々には、まだ貴方が必要です、ジェイムズさん!」

「そうよ!貴方以外の指揮官で、奴らと戦えるとは思えない!責任というのなら、ここで諦めては駄目よ!」

「……ありがとう。その言葉だけで、救われる気分だよ。……さぁ、行きなさい。日本の公安は優秀だ、あれだけの騒ぎを起こした以上、一刻の猶予もない。早くアメリカに戻るんだ。そうすれば……」

 

 

 

 

 

 

「その必要はありませんよ、ジェイムズ・ブラック捜査官」

「!!」

 

 

 

ドアを開け入ってきたのは、スーツを着た二人の男。部屋にこそ入ってこないものの、背後には更に複数人が見える。

二人の男、うち一人に、赤井は見覚えがあった。……見覚えなどというレベルではない。そうだ、かつて同じ"組織"にいた人間。元より疑っていたが、やはり彼も潜入捜査官だったのかと得心が言った。

二人は懐から手帳を取り出す。日本警察が肌身離さず携帯する、黒い手帳を。

 

 

 

「警察庁公安部の、降谷です」

「同じく警察庁公安部、風見です」

「……FBI捜査官のジェイムズ・ブラックだ。ご存知のようだがね。こちらは部下のアンドレ・キャメル、ジョディ・スターリング、赤井秀一だ」

「ご丁寧にどうも。勿論存じ上げていますよ。……()()()()()()()

 

 

 

色の見えない無表情で返答する降谷を、赤井は意外に思う。

この男は、"組織"にいた頃は事ある毎に突っかかってきた筈だ。そこには強烈なライバル意識というか、敵対感を、対抗心を感じていた。

今の彼から、それを感じない。否、感じないレベルまで抑えられているということか。どちらにせよ、意外だった。

こちらの心境を知ってか知らずか、降谷は言葉を続ける。……半ば覚悟していた言葉を。FBIとしては事実上の死刑宣告となる言葉を。

 

 

 

「昨夜の銃撃事件について、お話を伺いたい。令状は()()ありませんが……同行、頂けますね?」

「…………これは私の独断だ。私もそろそろ年でね。引退前に大きな手柄が欲しかったのだ。部下は私に付き合わされただけに過ぎない」

「ジェイムズ!!」

「ジェイムズさん!!」

「それが蓋をあければこの様だ。いやいや、欲などかくものではないな。……つまり、今回の件は全て私の責任だ。連行は、私一人にしてもらえないか?」

 

 

 

ジェイムズの台詞に、僅かに目を細める降谷。だが、続く言葉はやはり冷徹なものだった。

 

 

 

「あくまで部下を庇おうとする姿勢はご立派です。そういう話も、是非こちらで。()()()には、()()()詳しくお話を伺いたいので。……いいですね?」

「……………………分かった」

 

 

 

最早、ジェイムズ達に言えることは、何もなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

杯戸中央病院の、一室。

 

そこで、江戸川コナンは打ちひしがれていた。理由は言うまでもなく、昨晩の一戦だ。

黒ずくめの組織、その幹部が一人にして、CIAの諜報員。"キール"と呼ばれる女性を確保したまでは良かった。彼女をエサに組織の幹部を引きずり出すことも、彼女とのパイプを繋ぐことで今後も"組織"の情報を得ることも出来た。

 

 

 

たった一人。あの黒いフードの男に全てをひっくり返された。

"キール"は奪還され、追跡したFBIは壊滅。3名を除いて皆殺しの憂き目に遭った。

何より、()()()()()()()()()()()()()()()

 

(俺の、俺のせいだ……!)

 

あの時、コナンが咄嗟に放った麻酔針。あれを返された赤井秀一は腕を撃つことで眠気を飛ばしたものの、麻酔の影響は当然ながら残っている。撃ち抜いた腕に走る激痛も大きなビハインドだ。

薬品による眠気と、激痛。赤井秀一に大きな枷を嵌めたのは、他ならぬ自分の失態だ。

コナンは詳細な戦局を聞いていない。敵を逃がしたこと、捜査官が壊滅したことを聞かされたのみだ。

故に、厭な想像が止まらない。自分の邪魔さえなければ、あの赤井秀一が獲物を逃がすなどあり得るものかと。犠牲者の数も、もっと少なく出来たのではないかと。

嘆いたところで時は戻らず、犠牲者も還って来ない。分かってはいても、齢17歳の子供にとって、仲間側がほぼ死に絶えたという現状は、素直に受け止めるにはあまりに重過ぎた。

 

そんな中、隣に座っていた本堂瑛祐が、言葉をポツリと溢す。

彼もまた、昨晩の出来事を衝撃と共に受け止めさせられた人物だ。長年追いかけてきた実の姉に、ようやく会えたと思ったら目の前で連れ去られてしまったのだから。

 

 

 

「コナン君、ちょっといいかい?」

「……………………なぁに、瑛祐兄ちゃん」

「聞きたいことがあってね。……僕の姉さんを連れ去ったアイツは、一体何者なの?」

「アイツらは……」

「……ううん、違う。姉さんは自分からアイツに着いて行ってた。あれは、何者?姉さんは、何をしているの?」

 

 

 

少し迷ったが、コナンは瑛祐に知っていることを話すことにした。

探偵として、真実を隠したくないという欲求もあった。本来それを止めるべき赤井が側にいないというのもある。

現状を受け止めるだけで精一杯で、それ以外の事象について考えを及ぼす余裕がなかったというのも、大きい。

とにかく、コナンは話した。彼女こそが本堂瑛海であること、彼女はCIAの諜報員であり、今はとある大規模な秘密犯罪結社に潜入し、内情を探っていること。コナンが現状ほぼ確実だと考えていることを、全て隠さず伝えた。

全てを聞いた瑛祐はしばし瞠目した後、儚げな笑みを浮かべた。

 

 

 

「そうか、そっか。……僕は、姉さんのこと、なんにも知らなかったんだな」

「……仕方ないよ。お姉さんは、瑛祐兄ちゃんを危険な目に遭わせたくなかったんだ。だから全てを隠すしかなかった」

「酷いよね。家族を大切に思っているのは、危険な目に遭ってほしくないって思ってるのは、僕だって同じなのにさ」

「瑛祐兄ちゃん……」

「ちょっと、外に出てくるよ。……少し、頭を冷やしたいな」

「…………気をつけてね」

 

 

 

ありがとう。そう言って席を立った瑛祐は、そのまま部屋を後にする。

 

入れ替わりのように、二人の人間が入ってきた。その顔を見て、コナンの顔に色が戻る。

 

 

 

「博士……!灰原も!」

「無事じゃったか、新一」

「大まかな話は、ジョディさんから聞いたわ。……大変、だったわね」

「俺が、赤井さんの足を引っ張らなければ……俺さえ……」

 

 

 

再び、頭を抱えて項垂れるコナンを痛ましげに見る二人。

しばらくして、ふとコナンが顔を上げる。その目は、灰原を見ていた。

 

 

 

「黒フードにガスマスク……心当たりはないか?」

「えっ?」

「"組織"の一員だ。キールを、水無怜奈を取り戻しに来たのはそいつだったんだ。肌を全て隠してたから人種は分からないし、声も変声器でいじってた」

「……続けなさい」

「そいつは、少なくとも数日はこの病院の天井裏に潜み、キールが目覚めるのを待っていた。彼女が目覚めるや否や、奴は天井裏から降りてきて、彼女を攫って逃げ去った」

「…………」

「俺が撃った麻酔針を、後ろ手で、見ることもなく掴んでた。FBIの追手を、たった一人で壊滅に追いやったのも、恐らくは奴だ。……それと、赤井さんを恨んでた。尋常じゃない殺気を放つ位に」

「!」

「…………該当しそうな幹部に、心当たりはないか?」

 

 

 

灰原から、表情が消える。しばらく押し黙った後、口を開いた。

 

 

 

「埒外の戦闘能力と、それに似合わない臆病なまでの慎重さ。そして、赤井秀一への恨み、ね……。そうね、一人だけ、心当たりがいるわ」

「そいつは!」

「尤も、()()()()()()()()()()()()()()()

「……どういうことだ?」

「私が、最後に見た彼の姿は、…………血溜まりに沈む姿。"組織"に逆らい粛清されそうになっていた、()()()()()()()()()を庇って、幹部を幾人も相手取って戦い、ジンとウォッカの弾丸を何発も食らって倒れた姿」

「まさか、その科学者って……!?」

「……えぇ、そうよ。彼は私を庇って瀕死の重傷を負った。一応治療を行ってたみたいだけど、あの出血量……死んでいてもおかしくはなかった。私はその後死ぬつもりで薬を飲んだから、先のことは知らない」

 

 

 

生きていてくれたなら、嬉しいけど。物憂げな顔でそう締めくくる灰原を信じられない気持ちで見るコナン。博士も同じような表情をしていた。

組織を、組織に所属する幹部の存在を恐れていた彼女から、組織のメンバーに対して肯定的な言葉が出てくるとは、思いもしなかった。

とにかく、一切の素性が不明なあの男について知ってる人間がいたのは僥倖だった。コナンは早速素性を尋ねる。

だが、返ってきた返答もまた、信じられないものだった。

 

 

 

「じゃあ、灰原はそいつを知ってるんだな?知ってることを教えてくれ!」

「嫌」

「…………は?」

「嫌と言ったの。彼のことについて、話すつもりはないわ。これまでも、これからも」

「ッ〜〜〜!何を言ってんだ!」

 

 

 

思わず灰原の胸ぐらを掴む。慌てて博士が引き剥がしに入ったが、尚もコナンの怒りは収まらない。

 

 

 

「なんでだよ!何で話してくれないんだ!」

「私の話を聞いていなかったの?彼は私を庇って死にかけたの。……それだけじゃない。お姉ちゃんのことも、彼はずっと守ってくれてた」

「!!……明美さんのことか」

「そうよ。……結局、組織に殺されちゃったけど、彼は最後の最後まで手を尽くして守ってくれた。そして、私のことも。私達姉妹にとって、彼は足を向けて寝られない恩人よ。そんな彼を、売れる訳ないでしょう?」

 

 

 

彼は、きっとそれを否定するでしょうけど。心の中だけで、彼女はその言葉を飲み込んだ。

そう、宮野志保はアルマニャックに大きな負い目がある。後先考えない己の行動のせいで彼を限りなく死に近づけたという、負い目が。

世間一般では、彼が悪人と称されるのも分かっている。……任務帰りの彼は、常にむせ返るほどの血の香りを漂わせていた。きっと自分が知らないところで、数え切れない程の人間を殺めてきたのだろうということも。

 

それでも、あの荒涼とした血腥い世界でただ一人、()()()()最後の最後まで自分達姉妹を守り続けてくれたのも、また事実なのだ。

 

 

 

「……18人だ。アイツは、たった一晩で18人も殺したんだぞ」

「……彼なら、造作もないでしょうね」

「たとえどんな理由があろうと、これだけの人間の命を、終わらせていい理由になんかならねぇ!!」

「………………向かってきたから、殺す。彼にとって、それは普通のことなのよ」

「ふ、ふざけんな!!そんな普通があっていい訳ねぇだろ!!」

 

 

 

今度こそ声を荒げるコナン。対する灰原も辛そうな顔をするものの、彼側に立つスタンスを変えるつもりはないらしい。

ただ、このままだとコナンはそのまま"彼"に突撃してしまいかねない勢いだ。それは灰原にとっても望むところではない。……コナンにだって、死んでほしくないのだから。

やむなく、彼を構成する要素の一つを、開示することにした。

 

 

 

「それが普通の世界で、彼は生まれ育ったのよ」

「…………どういうことだよ?」

「……少年兵(チャイルドソルジャー)。それで、分かるかしら」

「……ッッ!!」

「向かってくるならそれは敵。敵は全て殺す。そうじゃなきゃ生き残れない……自分も、仲間も。それが彼のルーツなの。平和な世界で生まれ育った私達には、多くの愛に囲まれて育った貴方達とは、根本から違う世界の人なの」

「んだよ、それ……」

 

 

 

コナンも、少年兵という単語は知っていた。年端も行かぬ子供に武器を持たせて戦わせるという、数ある社会問題の一つとして。

いざ、事実として突きつけられると、全く違う。日本人として、探偵として、彼が持つ倫理観や道徳観を、そもそも()()()()()()()()()()()()。そういった人間と直面した経験は、コナンにはなかった。

故に、反論の言葉にも、いつもの覇気がない。

 

 

 

「だとしても、ここは戦場じゃないだろ……」

「それを決めるのは彼よ。そして彼は、今も戦場を生きているんでしょうね」

「PTSD、ってやつかよ……」

「…………あるいは、えぇ」

「……………………アイツは、自分にたどり着く物を何も残さなかった。直接対峙した赤井さんですら、ほとんど何も分かってねぇんだ」

「…………」

「それを知ってるなら、話してくれよ!……アイツが根っからの悪人じゃねぇってのは、分かった。そうなるしかない世界に生まれちまったってのも、分かった。なら俺は、尚更アイツを止めなきゃならない!」

「それは絶対に駄目!」

「ッ!?」

 

 

 

急に声を荒げた灰原に驚くコナン。必死の形相で彼の肩を掴む彼女の圧に、ただただ圧倒されていた。

 

 

 

「彼に立ち向かっては駄目!!貴方の見た目は子供だけど……()()()()知られたら、()()()()()()()()()()()()()()!彼は、敵と断じた者を決して逃さない。間違いなく殺されるわ!」

「……中身まで?どういうことだ……?」

「……………………子供は殺さない。それが、彼のポリシーなの。そして、彼からすると17歳は、もう子供じゃないわ」

「……なら、アイツがお前を庇ったのは、違う理由か?」

「………………もう、聞かないで」

 

 

 

"彼"に関して話す度に辛そうな顔をする灰原。

その顔を、指が白くなるほど握り締められた拳を見て、コナンはこの場で問い詰めることを遂に諦めた。ここで無理に聞き出そうとすれば、彼女との決定的な決裂を招くことになる。そう感じたのだ。

 

 

 

「……名前は」

「なに?」

「せめて、アイツの名前だけ教えろよ。毎回アイツ呼ばわりじゃ、紛らわしくて仕方ないだろ」

 

 

 

たっぷり1分間。沈黙を続けた灰原は観念したかのように、ため息と共にその名を口にする。

 

 

 

「……………………()()()()()()()。それが、彼のコードネームよ」

「アルマニャック……コニャック、カルヴァドスと並ぶ世界三大ブランデーの一つ。コードネームが蒸留酒っつーことは、やっぱりアイツは男性か……」

「これ以上は、言えない。言いたくない。彼を、これ以上……裏切れない」

「………………わーったよ。この場じゃ聞かねぇ」

「この場じゃなくても話さないわよ」

「わーったわーった」

 

 

 

手をひらひらと振り、降参の合図をするコナン。それを軽く睨むと、灰原は部屋を後にしようとする。博士も慌てて後を追う。

 

 

 

「約束して」

「?」

「アルに……アルマニャックに、万一相対してしまったら、全てを捨てて逃げなさい」

「……約束は、出来ねぇ」

「なんで!?」

「俺は、探偵だから」

「!」

 

 

 

コナンの目は、真っすぐだった。海色の双眸は、どこまでも真っすぐ見据えていた。真実を、自分がこれから歩むべき道を。

 

 

 

「俺は探偵だ。誰に強制された訳でもない。自分から()()()()()()って、心から思ったんだ。そう思って、そう生きて、俺の今がある。だから俺は、謎から、犯人から、()()()()()()()()()()()()()()()()()()。いや……()()()()()()()()

 

 

 

博士はやれやれと肩をすくめている。工藤新一という人間を、良く知る人間としての、反応だった。

対して、灰原は、泣きそうな顔をしていた。……失うことへの恐怖に、揺らいでいた。

 

 

 

「安心しろって。俺だって死にたい訳じゃ無い。アイツに立ち向かう時は、しっかり勝ち筋を掴んでからにするさ」

「…………忠告はしたわ。好きにしなさい」

 

 

 

ぷいと顔をそむけ、灰原は今度こそ部屋を後にする。

二人が部屋を去った後、コナンは椅子に倒れ込む。

今日は、コナンをしても精神を疲弊させる出来事が目白押しだった。肉体は精神に引きずられる。今の彼の肉体は小学一年生。流石の彼も、体力が持たなかった。

微睡みに落ちる中、頭に浮かぶのは、先程聞いた名前。

 

(アルマニャック……)

 

 

 

 

 

 

「お前は、俺が絶対に、捕まえてやる」

 

 

 

 

 

 





コナン君は黄金の魂を持つ男なので、不幸な生い立ちに同情することはあっても、探偵としての自身のスタンスを崩すことはありません。
どんな理由があれど、殺人は許さない。これこそが江戸川コナンの、工藤新一の探偵としてのアイデンティティなので。

ようやくコナン君とアルマニャックの因縁を結ぶことが出来た……ここから物語がまた大きく動き出す、そんな感じがしますね。



活動報告に、今後の閑話についてお題募集をさせて頂きました。よろしければそちらを覗いた上で、皆様のお力をお貸し頂けたらありがたいです。



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