ピンガ「俺が生き残る為にオリキャラ生やした」 作:ていとくン
すみません、時間間違えちゃったので一旦消しました。失礼しました。
☆10:紅蒼様、コドラサン様
☆9:アルカロイド様、Popo助様、嵐蹄フェコルー様、彩乃うさぎ様、くらき様、tkzk様、ジャム猫様、心戯様、b_blood様
☆8:常盤2様
高評価を下さった方々、ありがとうございます!これだけの方に評価頂いているというのは嬉しくもあり、プレッシャーでもありますねw
10/15 1:30 日間ランキング33位
二次日間ランキング22位
10/16 18:00 日間ランキング88位
二次日間ランキング71位
小説情報に書きましたが、10日振りに記録更新……!皆様ありがとうございます!二次日間はまさかのトップ10入りとかマジか……
だけど、更新翌日とかならともかく、何でこのタイミングなんでしょう?ランキングには謎が多い……
さて、今回で今度こそ今章のメインストーリーは終わりです。書きたいこと全部詰め込んだので、またもやめっちゃ長くなってしまった……。後書き込みで15000字近くは書きすぎィ!許し亭許して……
現状は組織の一人勝ち。CIAがどうにかトントンで、公安とFBIが貧乏くじといった具合ですが、はてさて。
「よく戻ったな、キール」
「ええ、任務に穴を開けてしまってごめんなさい、ジン」
カーチェイス、という名の
ジン、ウォッカ、コルン、キャンティ、ベルモット、キュラソー、そしてアルマニャック。そして、キール。
バーボンとピンガを除いて、今回の案件に関わった全ての幹部が、改めて一堂に会していた。
「追手のFBIは全滅だって?アタイもついていけば良かったよ!アルが暴れてるところを見逃すなんて、馬鹿なマネしちまったねぇ!」
「私は運転席越しに見てたけど、惚れ惚れするほどの銃捌きだったわ。敵の方から弾丸に当たりに行ってるのかと思った位にね」
「近接だけじゃなくて銃を持っても化け物なのかい。やるねぇ!」
アルマニャックによる殲滅劇を見損ねたことを悔しがるキャンティに、その時の光景を思い出して呆れ笑いを隠せないキュラソー。それだけ馬鹿げた光景だったのだ。
そんな二人の談笑を聞いていたアルマニャックが苦笑いで訂正をする。
「全滅ってのは間違いだキャンティ。赤井秀一と、もう1台仕留めそこねちまったよ」
「赤井はともかく、もう1台?そいつは一体何者だい?」
「さァ……なんか
「なんだいそりゃ。凄いんだか凄くないんだか判断に困るね……」
「十分凄い。……アルの銃弾から、逃げ切った」
「それもそうだね」
コルンの同意にキャンティが肩をすくめる。
彼らの談笑を横目に、キールはベルモットに質問を投げていた。
「それで、任務はいつ再開するの?」
「任務?……あぁ、DJのこと?それならなくなったわ」
「……どういうこと?」
「彼は立候補を取り下げたのよ。首相になるならともかく、一議員程度をわざわざ暗殺する必要もないわ」
「……そう」
小さく胸を撫で下ろすキール。それを目ざとく見つけたジンがニヤリと笑う。
「どうしたキール。何を安心したんだ?」
「それは勿論、病み上がりで激しい運動をせずに済んだことよ」
「ほう?」
「私の失態で任務に遅れが出たのだから、それを取り返す為にも私は動かなければいけないし、これ以上は実行を引き延ばせないでしょう?今の体調で動くのは正直辛かったから、一安心って訳ね」
「クク、なるほどな。まぁ失態については安心しろ。挽回の機会など、いくらでも回ってくる。我々は多忙だからな」
「それは……喜んでいいのかしら」
キールの疑問に大きく鼻を鳴らすジン。ベルモットはその様子を見てくすくすと笑っている。
……ひとまず、疑われてはいないらしい。キールは今度こそ内心胸を撫で下ろした。
「さて、ほいじゃキール!」
「?なにかしら」
「情報共有といこう。キールがぶっ倒れてた間のお話だ。ちょっぴり事件もあったんでな」
「あら、それは助かるわね。お願い、アル」
「おう。一通り全部喋るから、何か質問あったらそこで聞いてくれな。まずはジン、頼むぜ」
「早速放りやがったな、てめぇ」
「だって事務所にたどり着くまでは俺いないじゃん」
舌打ち一つ。そうして、まずはジンが語りだす。毛利探偵事務所に目をつけたこと、その理由を。
「キール、お前に盗聴器が付けられていたのさ……。さて、付けたのは誰だ?俺達と合流するお前が、直前に会っていた奴は、誰だ?」
「…………毛利小五郎、探偵ね」
「そういうことだ。だから俺達は事務所へ向かった。……奴が使っていた盗聴器は、かつてシェリーが俺につけたものと形状が酷似していたからな」
「関係を疑ったと?」
頷くと、説明を続ける。事務所向かいのビルに陣取り、背後に銃を突きつけた上で問いただそうとしたこと。
そこに、赤井秀一が狙撃をしかけてきたこと。
そこに、アルマニャックもやってきたこと。
「そこからは俺が引き継ごう。当時俺は装備の問題から赤井への攻撃手段を持たなくてな。奴を仕留めるのをコルンとキャンティに委ねて俺は時間稼ぎに徹したんだ」
「時間稼ぎ?どうやって?」
「死にかけではあったが黒鍵は何本か持っててな。あとはナイフで捌いた」
「フン、赤井からしたら悪夢だったろうよ。俺達を食い破る筈の銀の弾丸が、尽く無効化されたんだからな」
キールは大きく目を見開く。その顔には驚愕の一色に染められていた。
否。驚愕の裏、微かに滲むのは、絶望。
「……尤も、アルの時間稼ぎは無意味に終わっちまったんだけどね」
「俺達……二人とも、当てられなかった」
「いや、無意味じゃねェ。二人はあの日、確かに700ヤードの壁を越えたんだ。あまりに大きい戦果さ」
「……次は、外さないよ」
「俺も、必ず当てる。……必ず」
「ギハハ、その意気さ」
以降はキールにも予想が付く通り。赤井秀一が出てきたことでFBIの存在を察知、同時にキールがFBIの手に落ちたことも推測。
ピンガとバーボン両名の調査により居所が判明した為、アルマニャックが単身潜入し、キールが目覚めるのを待った。
「……それなら、何故あのタイミングだったの?私は2日ほど早く目覚めていたわよ」
「あ~やっぱり?そんな気配はしたんだが……なんせキールは頭ぶつけて昏睡状態だぜ?万一俺の勘違いで、動かして何かあったらコトだからよ。俺の目の前で動くまで待ってたんよ」
「……ずっと私を監視していた訳じゃなかったの?」
「俺は重たいからさ、ずっと同じ場所にいると天井抜けちまうんだ。こまめに移動しないといけなくてな」
「よくFBIにバレなかったわね…………」
「すごいだろ?」
フフンと胸を張るアルマニャックを見て、しかしキールの反応は薄い。常なら笑う筈のキールは、厳しい表情を崩さない。
「……どうした?もしかして、まだ体調が優れないのか?」
「!い、いえ、そんな……」
「いや、顔色が良くねェ。……おいジン。キールに任務って入ってるか?」
「さっきまで捕らえられてた奴に入ってる訳ねぇだろ間抜け」
「じゃあ、ほれ」
アルマニャックが投げ渡したものを咄嗟に掴む。見ると、番号の入った小さな鍵だった。
「このセーフティハウスは、鍵付きの部屋がいくつかある。一つ貸すから、しばらく休んでな。俺はここで番をしてるからよ」
「……でも……」
「共有しなきゃならん情報はおおかた喋った。……まだ病み上がりなんだ。ゆっくりしてな」
「…………ありがとう」
やはり表情が優れないキールは、ふらふらと扉へ向かっていく。リビングを出る前、背中越しにアルマニャックへ声をかけた。どこか、躊躇いがちな様子で。
「………………アル、気をつけて」
「?何を?」
「貴方の強みは卓越した戦闘能力だけじゃない。徹底した隠匿にあった筈」
「そうだね。その為の変装だ」
「でも、
「!」
「今まで、貴方が腕を振るった戦場に生存者はいなかった。……でも今回、貴方の戦い方という情報を知ったまま生き延びた敵が現れた」
「赤井、秀一……」
途端にキャンティとコルンが苦い顔をする。
「それは……アタイらの失態さ」
「確かに。アルの戦闘データ……流出。考えて、なかった」
「あら、バレて何か不都合でもあるの?私も映像で見たことあるけど……あんなもの、知られたところでどう対処するのかしら」
ベルモットは薄く笑い、ジンやウォッカも軽く鼻で笑うものの、アルマニャックの顔に真剣さが宿る。この中で、キールの他に彼だけは、
「成る程。…………後でラムに相談しとく。ありがとう、キール」
「ッ!…………いえ、大丈夫……」
「おいおい本当にヤバそうだぞ?早く寝な」
「……ええ、そうするわ。……おやすみなさい」
それを最後にキールは部屋へと消えていった。それを不安げな目で見送るアルマニャック。
ドアが閉じた後、ウォッカがジンに話しかけた。
「兄貴」
「なんだ」
「赤井の話が出てから、キールの様子がおかしくありやせんでしたか」
「……確かにな。おいアルマニャック、心当たりはあるか」
「俺が見張ってた限りだが、赤井と何か話してる様子はなかったぞ。時折離れちゃいたが、流石に奴の気配を違えることはねェ。……もしかして、怯えてる?」
「ハッ、あの女に限ってそんなタマかよ。思ったより重傷ではあったみたいだがな。……まぁいい。キールはお前が見張ってろ」
「あぁ。どのみちラムから2週間の休養を命じられてる。しばらくここでダラダラするさ」
「ハッ、いいご身分だな、えぇおい?」
「そう噛み付くなよウォッカ。俺ァもう3ヵ月も働き詰めだったんだぜ」
それを最後に、各々セーフティハウスを後にする。ジン・ウォッカ・ベルモット・キュラソーは任務に、コルンとキャンティは本部のシミュレーションへと缶詰になりに、それぞれ出発した。
一人、リビングに残るアルマニャック。脳裏によぎるのは、先程のキールに浮かんでいた表情。
目をこらしても見えるかどうか。それ位に微かにしか浮かべていなかった感情に、あの場でアルマニャックだけが気づいていた。
(キール……)
故にアルマニャックは混乱する。あの場で彼女がその感情を浮かべる理由が、どれだけ考えても思いつかなかった。
(お前さんは一体、
「さて、それでは改めて、お話を伺いましょうか」
警察庁。その一室にて、ジェイムズ達FBIの生き残りは降谷と風間から取り調べを受けていた。
そう、ジェイムズ達は、である。
「……いいのかね?」
「何がです?」
「私はてっきり、全員違う部屋で個別に詰められるものだと思っていたのだが……我々全員で取り調べを受けても良いのかね?」
「取り調べ?我々は"お話"を伺いたいだけですよ?」
「……まぁ、君らがいいと言うなら我々に否はないが」
張り付けたとひと目で分かる笑みを浮かべる降谷に内心白々しさを感じるも、自分達にとってはむしろ助かる話だ。黙って受け入れる。
そうして始まった"お話"は、当初身構えていたジェイムズ達が拍子抜けするほど、普通のものだった。
「まず、昨晩の事件について、貴方がたの口から概要をお聞きしたい」
「ふむ……まず、我々はとある"組織"の幹部を一人確保していたのだ。……"組織"についての説明はいるかね?」
「不要ですが、"組織"についてFBIがどれだけ掴んでいるかはお教え頂きたいですね」
「ちょっと!それはいくらなんでも……」
「ジョディ君、座ってくれ」
「…………すみません、ジェイムズ」
降谷の要求につい反駁しようとしたジョディを諌めるジェイムズ。現在自分達の生殺与奪を握っているのは、間違いなく目の前にいる男なのだ。不用意に刺激するのは避けたい。
「と言っても、君等に話せるような独自の情報はあまりないが……そうだな。幹部は皆等しく酒の名前をコードネームとしており、現在我々は"ジン"と呼ばれる男を追っている。銀髪長身のヒットマンで、組織内において"あの方"と呼ばれるボスに直接仕えている男だ。彼さえ捕らえられれば、組織の全容まで一気に掴めるだろう」
ジェイムズの言葉に、一つ頷きメモを取る降谷。
その後も降谷の質問はありきたりなものだった。捕らえられた幹部の素性、その女性を奪還すべく襲撃してきた者の容貌、そして銃撃戦に至った経緯とその結果。事件の取り調べとして、あまりに普通だった。
普通過ぎるという"異常"に、赤井さえ顔に疑問を浮かべる中、降谷はメモ用紙とペンを置く。
「以上で聞きたいことは
「…………本当に、これだけなの?」
「えぇ、取り調べは
"ほぼ"ということは、ここからが本題。その前に整理すべきことはあるか、という意味なのだろう。
ジェイムズは三人をちらと見る。ジョディとキャメルは首を横に振り、赤井は何やら考え込んでいる。
ジェイムズは、しばし悩んだ挙げ句、口を開いた。
「あくまで、そちらの許しがあればという但し書き込みで、の話だがね」
「何でしょう?」
「今回こちらから出た犠牲者の遺体を、引き取らせてもらえないだろうか。……せめて、本国で弔いたいのだ」
「ふむ……」
「君達にこの要求を飲むメリットがないことは承知している。事後処理を任せておきながら図々しいことを言っているのも分かっている。だが……」
「構いませんよ」
「…………自分から口にしておいて何だが、いいのかね?」
「えぇ。身元不明の死体に引取先が現れるというのは我々としても都合がいいので」
「………………何が望みだ、降谷零」
「赤井君……!」
遂に口火を切った赤井。張り付けた笑みを浮かべる降谷を正面から見据える。
「君達公安部としては、我々FBIは許可なく捜査をしている外国人。ただでさえ気に入らない連中が、自分では隠蔽出来ない事件を起こした。追い出すにせよ捕らえるにせよ、絶好のチャンスだ。にも関わらず、取り調べは実に手ぬるいどころか我々の要求すら呑んでいる。ここまで露骨なら思惑も分かるというもの。……我々に恩を着せて、一体何をさせるつもりかな?」
使い捨ての鉄砲玉になれというならお断りだ。そう締めくくった赤井を、やはり降谷は笑顔で見ている。
「いやいや……気に入らない、ときましたか。そんなこと……」
「当然に、決まっているだろう」
「「「!!」」」
「
「貴方、いくら何でもその言い方ってどうなの!?」
「ジョディ君!」
降谷の顔に浮かんでいた笑みなどとうに消え失せている。能面の如き無表情の中で只一ツ、その目には氷点下の怒りを漲らせていた。
「君の態度もそうだ。己の行いがどれだけ日本の警察を、この国の主権を侮辱しているのか、全く意識していない。……部下の躾がなっていないな、ブラック捜査官」
「貴方!」
「ジョディさん落ち着いて!」
「……部下がすまない。君の糾弾についても、返す言葉もない」
「貴方だけは辛うじて身の程というものを弁えているらしい。そうでなければとっくに拘置所に入れられていたことを、残りのお三方はよくよく理解しておくように」
鋭い眼でギンと睨まれ、思わず言葉に詰まるジョディ達。尚も怒りが収まらない彼は、赤井を睨みつけながら口を開く。
「ああそうだとも。日本を愛する人間として、一人の警察官として、俺はお前達FBIが嫌いだ。何の許可もなく潜り込んで捜査を行い、この国の主権を鼻で笑うお前達が大嫌いだ」
「では何故、俺達をここまでもてなす?」
「簡単だよ赤井秀一。
額に青筋を何本も走らせ、両手はわなわなと震えている。目を血走らせた降谷を見て、赤井でさえ僅かに目を見開く。
「我々公安が、何故ここまで速やかに君達を見つけられたと思う?…………
「ご同輩……?」
「CIAさ」
「なっ!?」
「分かるか……?あの忌まわしい
拳を机に叩きつける降谷は怒りに震えていた。金糸の髪が揺らめき、呼気にはマグマが揺蕩っていた。
最早視線だけで人を殺せそうな程に尖った目をジェイムズに向けて、降谷は詰問する。
「お前達を捕らえれば、CIAは両手を叩いて喜ぶだろう。それは、お前達が野放しになること以上に我慢ならないんでね……!そして、お前達をここに呼んだ理由は一ツ。CIAが介入してきた動機を答えてもらう為だ。……連中がここまで直接的に接触してきたのは初めてだ。ならば、そこには理由がある筈なんだ」
心当たりが、ないとは言わせない。そう締めくくった降谷が語った内容に、ジェイムズは酷く驚愕していた。
(何故CIAが我々を!?……我々の捜査が、国外での諜報行為に当たると判断された?だがそれだけでここまで直接的な手を打ってくるものか……!?)
ジェイムズには本当に心当たりがない。だからこそ焦りを隠せない。だが恐らく降谷にその言い分は通じないだろう。
どう言葉を繕ったものか、本気で頭を悩ませていると、赤井があぁ、と呟いた。
「なるほど、水無怜奈か」
「何?」
「俺達は水無怜奈を捕らえた。彼女は組織では"キール"と呼ばれているが…………
「なっ………………」
降谷が驚愕を露わにする。内容そのものはそこまで驚く程のものではないのに、彼は本気で動揺している。
赤井は内心疑問を抱いたが、そこには触れずに話を続けた。
「我々が"キール"を捕らえたことで、"組織"に繋がる諜報員を失うことを恐れた。だが自分達が直接介入すれば、そこから彼女の所属が"組織"に露見してしまう。そこで、君達を動かした」
「…………なるほど、
「流石だな。君達公安が我々FBIを見つければ、確実に騒動になる。そうでなくとも、君等が大々的に動いて何かを捜索している様子を、"組織"は見逃さないだろう」
「何を探しているのか、それが判明すれば後は"組織"に奪還してもらうだけ……か。成る程」
「だが理由としては弱いな」
「何?」
「CIAがそこまで水無怜奈を重用する理由が分からない。確かに"組織"幹部という情報源を失うのは痛いが、日本の公安を敵に回してまで手を出すほどのものか……?」
赤井が顎に手を当てて思案する。その言葉を受けて降谷も思考を巡らせた。CIAが躍起になる理由を。
CIAも大所帯だ。加えて
CIAがそこまでして拘る物とは、必死になるものとは何か。
そこまで思考が巡った時、ジェイムズは一つだけ思い当たるものがあった。
「まさか……」
「何か、思い当たることがありましたか?ブラック捜査官」
「…………一つだけ。私も初めて聞いた時は、話した者の正気を疑った程の内容だ。映像がここにない以上、君にも俄には信じてもらえないとは思うが……」
「続けて」
降谷に続きを促されたジェイムズは、数秒躊躇った後、とある名前を口にする。
「"
「な、なっ…………!?」
「………………はぁ?」
ジョディ達が驚きを露わにする中、降谷は思わず眉を顰めた。あまりに眉唾が過ぎる話を出してきたからだ。
あり得ない。そう言おうとした降谷は、しかし固まった。
(…………
本当に自分はそれを"あり得ない"と断じられるのか?本当に、
(いや、まさか)
自分の脳裏に、一人の人物が浮かび上がってきたことに、降谷自身が驚いていた。
常軌を逸した戦闘能力を持つ男を。
その力で以て単騎で戦場を駆ける男を。
たった一人で組織すら潰してのける男を。
降谷は知っている。……
そこまで思い至った時、彼は世界の残酷さを、心の底から呪った。
もし
(なんて、
そこまで考えて、思わず心内で自嘲した。……
(あぁ、きっと自分は地獄へ堕ちるのだろうな)
彼を思索から引き上げたのは、赤井の言葉だった。
「その、"ジャバウォック"についての特徴は?」
「あぁ、彼は身体能力が常軌を逸している。私が見た映像では、
「…………成る程。であれば、俺はその正体に心当たりがあります」
「なに?」
ジェイムズの言葉を聞き、降谷は"ジャバウォック"の正体について確信を得る。やはり、
赤井も同じなのだろう。果たして、彼の口から出た言葉は、おおよそ想像通りのものだった。
「毛利探偵事務所前でジン達を狙撃した時に、俺のライフル弾を奇妙な形の短剣で弾いていた人物がいました。そして昨晩、俺は車を破壊される間際、襲撃犯だった黒ずくめのフード男に銃弾を放ったところ、やはりナイフで弾かれました。……恐らく両者は同一人物でしょう」
「その男こそが"ジャバウォック"だと。……成る程、彼は"組織"に飼われていたのか」
「恐らくは」
「つまりCIAは、"ジャバウォック"に繋がりうる唯一の糸を切られることをこそ、恐れていたということか」
「はい、そして俺は"ジャバウォック"のコードネームにも心当たりがあります」
「な、誰だねそれは!?」
赤井曰く、"組織"潜入時代、一つの噂を聞いたと。
直接会ったことはなく、その業績も一切流れてこない、
だが、一部のコードネーム持ちは、その人物こそが、あのジンすら差し置いて"組織"における最強だと語っていたという。
その、幹部の名前は。
「
そう言い切った赤井は、降谷と向き合った。その目には、熱い決意が揺らめいていた。降谷は小さく息を呑む。
「降谷君、協力しないか」
「…………………………はっ?」
「なに、仲良しこよしという訳じゃない。あくまで"ジャバウォック"捕縛の為だけの同盟という訳だ」
「……何を、言い出すのです。我々が、いや、俺が、お前と共闘など……」
「アイツは、強かった」
「!!」
「昨晩、最後まで追いすがって分かったよ。奴は強い。事実、俺一人では手数が足りなかった。……きっと、奴は一人では届かない領域にいるのだろう。……敗北を認めたのは、生まれて初めての経験だ」
「シュウ……」
「赤井君……」
「赤井さん……」
ジョディ、ジェイムズ、キャメル。3人の気遣わしげな視線を受けて、フッと笑った赤井は、動揺を隠せない降谷に語りかける。
「俺は、どうしても奴を捕らえたい。仲間の仇を討ちたい。だが、戦力が足りない。FBIとして大々的に動けば、またCIAが横槍を入れてくるだろうからな。君達が、いや、君が力を貸してくれるなら百人力だ。……此方からは、"ジャバウォック"に関する情報を出そう。だから、降谷君」
どうか、力を貸してくれないか。
そう言って、
「やめろ!!!!」
降谷はほとんど絶叫していた。
「俺の前で、お前が、頭を下げるな!!お前は、お前はもっと強く、傲慢で、冷静で、スカしてて、鼻持ちならない男で!…………………………
赤井は目をぱちくりさせていた。他の3人も同様だ。
やがて赤井は笑い出した。何の屈託もない、明るい笑い声で。
「ハッハッハ!!……君は、随分俺という人物を高く買ってくれていたんだな」
「当たり前だ!こんなことを俺に言わせるな!!」
「ハッハッハッハッハ!!……それで、どうだ?」
大笑いをする赤井を見て降谷は肩を怒らせていたが、ややあって息を落ち着かせた。
数十秒。たっぷり時間をかけて、彼は考えた。何が最善の選択肢かを。何を、優先すべきかを。
"組織"の撃滅。これは最優先事項だ。今更語るまでもない。
"アルマニャック"の逮捕。これも降谷としては外したくない。これを為さない限り、バーボンとスコッチは前に進めない。
"赤井秀一"の打倒。これも捨てがたい。あのいけ好かない顔に拳の一発でも入れられたら、どれほど痛快だろうか。何なら今すぐ入れてやりたい。
さて、この中で、優先順位が高いものはどれか。
一番は、当然"組織"の撃滅だ。個人の感情と大義を、はかり違えてはならない。警察官としては当たり前だ。
では。"アルマニャック"の逮捕と、"赤井秀一"の打倒。これはどちらを優先すべきか。
そこまで考えた時、最早自分に選択肢は残されていないことを認識した。……赤井秀一は勿論、アルマニャックも、誰かを相手にしながらの片手間で戦える相手ではない。つまり、FBIを敵に回す余裕はない。
そこまで考えた降谷は、心底嫌そうな顔で答える。
「俺は、お前が嫌いだ」
「知っている」
「そういうスカした態度が心底気に入らない」
「成る程。だがこれが俺という人物だ」
「……協力してもらう気があるのか?」
「ある」
「………………二つ、条件を出す」
「聞こう」
「だから何でお前はそんなに偉そうなんだ……。……お前達には、我々公安の指揮下に入ってもらう。そして、"ジャバウォック"の身柄は、我々公安が、日本警察がもらい受ける」
「ちょっと!そんなのあまりに一方的じゃない!!私達だって仲間の仇を討ちたいのよ!!」
「嫌ならお前達は拘置所行きだ」
「貴方ねぇ……!!」
赤井は答えず、ジェイムズに視線を向ける。彼は両手で頭を抱えて唸りだした。
どれほど唸っていたか、よろよろと頭を上げると、やや恨めしげな目で赤井を見る。
「君の独断専行を私はこれまで許してきたが、これは流石にいくら何でもやりすぎじゃないかね?」
「すみません」
「はぁ………………"ジャバウォック"は我々にとっても仇だが、それがCIAによって仕組まれたとなれば、私にも思うところはある。それに……捕縛後の身柄は公安に任せることも異論はない」
「何故ですジェイムズ!」
「アメリカ本国で彼を捕らえ続けるのは不可能だ。CIAは、必ず"ジャバウォック"を殺しにくるだろう。そして、死刑にしてしまえば彼らの思う壺だ。
それを成しうるには、アメリカでは駄目だ。その言葉に、ジョディとキャメルは渋々納得した。同じアメリカ人として、時にCIAが取りうる手段の悪辣さを知っているからだ。
赤井は一つ頷くと、ジェイムズに内心詫びつつ、降谷の方を向いた。
「その条件、呑もう。"ジャバウォック"捕縛まで、よろしく頼む」
「…………仕方なくだ。我々は"ジャバウォック"の情報を知らないし、CIAから情報を引き出すのも難しい。苦渋の決断だということを、忘れるなよ」
「あぁ分かった」
「本当に分かっているのか……?」
何故か笑顔で自信満々な様子の赤井。
降谷は、特大のため息をついた。
深夜。セーフティハウス。自分以外は誰もいない一室。
そこで、キールは絶望に打ちひしがれていた。
脳内でリフレインするのは、先程の会話。
"黒鍵は何本か持っててな。あとはナイフで捌いた"
"赤井からしたら悪夢だったろうよ。俺達を食い破る筈の銀の弾丸が、尽く無効化されたんだからな"
(見られた。
赤井秀一に、アルマニャックの戦い方を見られてしまった。これはキールにとってこそ、特大の悪夢だった。
何故か。それは彼がFBI所属であるからだ。……自分と違う組織ではあれど、同じアメリカの一員にして、同じく"組織"の捜査に関わっていた捜査官。つまり、自分が知りうる情報であれば、彼もまた知りうる可能性があるということ。
彼は腕利きにして切れ者の捜査官として有名だ。与えられる情報さえ正しければ、そこから隠された真実にもたどり着くだろう。つまり、そこから導き出される事実は。
(アルマニャック=ジャバウォックという事実に、彼が気づいてしまう……!)
FBIがそれに気づいたことは、早晩CIAにも知られるだろう。
当然、疑問に思う筈だ。FBIは断片的な事象から真実へたどり着いたというのに、キールは長らく彼の側にいながらその事実に気付けなかったのかと。
CIAにとって"ジャバウォック"は逆鱗だ。ここに絡む仕事でしくじったり下手な情を見せた人間を、上層部は決して許しはしないだろう。
自分は、消される。それだけではない。弟の瑛祐も危ないだろう。そして、自分が消されるということは、
(父さんが命懸けで私に託してくれた、その思いが、覚悟が、無駄になってしまう……!)
キールが生き残る道はただ一つ。一刻も早く、アルマニャックこそが"ジャバウォック"であることを、上層部に知らせること。それしかない。
しかしそれは、アルマニャックへの裏切りに他ならない。4年もの間、自分を幾度となく助けてくれた戦友を。……世界でただ一人、自分の苦しみを掬ってくれた人を。裏切り、その死刑執行書にサインをするということだ。
過酷な潜入生活で、彼だけは常に自分の味方でいてくれた。彼の優しさに、何度心を救われたか分からない。彼がいたからこそ、自分は諜報員として頑張ってこれたのだ。
だが。そもそも自分が諜報員として生きていく目的とは何だったか。
"諦めるなよ、瑛海。待ち続ければ必ず味方が現れる。俺の代わりに任務を全うしろ!"
(父さんの、遺志を、継ぐこと……)
いつか、こんな未来が来ることは分かっていた。我々CIAにとって、彼は大敵なのだ。必ず殺さねばならない巨悪なのだ。この裏切りと、いつか来る別れは必定だった。
今更、揺らぐ訳には行かない。父さんの遺志も、弟の命も、どちらも
その為にも、今、伝えなければならない。
そう、割り切れればどんなに楽だったか。
「うぅ、うぅぅぅぅぅぅ…………!!」
両の眼から大粒の涙がこぼれ落ちる。胸の張り裂けそうな痛みが止まらない。
これは罰だ。いずれ訪れる破局から目を背け、偽りの安寧に身を委ねようとしたことへの。父の遺志から目を背け、任務を疎かにし続けたことへの。
何より友を、信頼を重んじる彼を、裏切ることへの。裏切ると分かっていながら、信頼を得てしまった自分への。
それでも自分の手は携帯を開き、指の震えを抑えつつ文言を打ち込んでいく。
単に事実を述べるだけ。数十秒程で打ち終え、送信する。
終わった。それと同時に体はベッドの上に崩れ落ちる。
(ごめんなさい……ごめんなさい……!でも、これ以上、隠し通せない……!!)
メールを送った携帯を握り締め、キールは、本堂瑛海は、ただただ嗚咽を漏らしていた。
from:エージェント本堂
件名:ジャバウォックについて
本文:正体が判明。コードネーム"アルマニャック"が"ジャバウォック"、これは確定事項である。
はい、という訳でFBIと公安部が手を組みました。まぁ、そうでもしないとアルマニャック擁する組織と戦いにならないというか……
バチバチ対立する安室さんと赤井さんは偉大なる先達の方々がたくさん書いてくださっていますし、であれば比較的珍しいこっち√でもいいかな…………なんて嘘です。指が乗るまま思いつくまま書いてて、ふと気づいたらタッグ組んでました。想定外です。これ純黒の悪夢どうすんだよ……
ついでに、いよいよアルマニャック=ジャバウォックが知られてしまいましたね。すぐに大きな動きはありませんが、いやはや。
前回の感想にて、「哀ちゃん、アルマニャックに恩義感じてるって言ってるけど割とペラペラ喋ってね?」というご意見を頂きました。確かに一回で明かす情報にしちゃ多すぎましたね……。
コナン君とアルマニャックが対峙するにあたって、アルマニャックには悪党にならざるを得ない状況にあったことは分かった、「だけど、それでも」探偵として許す訳にはいかない、という部分を書きたかったんですよね。
一応哀ちゃんが明かした情報は、バレたところでどうということはないものばかりです。
・コードネーム:アルマニャックという幹部がいることは各国諜報機関にとっては周知の事実。黒フードガスマスク=アルマニャックという事実は掴んでたりなかったり
・性別:変装している時も男性モードの方が圧倒的に多いので、アルマニャック=男性というのは周知
・過去の一部:少年兵はそもそも出生届が出てなかったり戸籍がなかったり。なのでそこから彼の正体に辿られることはない(と哀ちゃんは考えている)
・ポリシー:対"組織"の戦場にしゃしゃり出てくる子供なんてコナン君位なので問題なし
と言った具合です。
後は哀ちゃんの情緒ですが、彼女はコナン君のことを「世界でただ一人同じ境遇であり、現状唯一の運命共同体」だと捉えています(ソース:高山みなみさんの過去発言、だった気がする……)。
なので、アルマニャックに死んでほしくないのと同じ位コナン君には死んでほしくないんですね。
でも放置してると無策のまま突っ込んじゃう。哀ちゃんの心はぐちゃぐちゃです。しゃあなしに与える情報制御してコナン君の向かう先をコントロールしようとしました。
という理由でした。哀ちゃんの情緒については明確に描写不足でした。これは反省です……。次回以降に気をつけます。
随分長くなってしまいました、すみません。次回は閑話ですね。元々自分で書きたかったお話があるので、まずはそっちを書きます。頂いたリクエストはその次以降に。
活動報告にて、多くのアイデアを頂きました。ご協力頂いた皆様、誠にありがとうございます!
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引き続き、活動報告にてお題を募集中です。お力をお貸し頂けたら幸いです。
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