ピンガ「俺が生き残る為にオリキャラ生やした」   作:ていとくン

30 / 60

☆10:fairyalp様
☆9:ism様

高評価下さった皆様、ありがとうございます!なまじここまで来れたからこそ、平均評価9台を叩き出すssの凄まじさが改めて分かりました。
お辞儀をするのだポッター……偉大なる先達と、高評価を下さる方々には敬意を払わねばなるまい……



10/20 6:30 日間ランキング41位
      二次日間ランキング31位

いつもご愛顧感謝です!更新する度に大体ランキングに載せてもらってるの、畏れ多いけどめっちゃ嬉しい……



さて、今回はリクエスト回です。
活動報告より、【ワシボン】様から頂きました、「アルマニャックの言動(悪戯など)に対するジンニキブチギレシーン傑作選」をお送り致します。

お題からお分かりの通り、今回ジンニキはひでぇ目にあいます。地雷な方は全力で退避をお願い致します。






よろしいですね?では、どうぞ。



Interlude④ ウォッカといぐすり

 

 

 

 

 

 

ウォッカが倒れた。

 

このニュースは瞬く間に組織幹部の間を駆け抜け、少なくない衝撃をもたらしていた。

 

 

 

ウォッカという人物を語る上で欠かせない者が、1人。名は、ジン。

非常に優秀であり"あの方"からの覚えもいい男だが、同時に極めて猜疑心が強く、仲間であっても必要とあらば容赦なく引き金を引く冷酷さから、幹部の中でさえ彼を恐れる者もいる。

そのジンの脇を古くから固める側近が、ウォッカだ。

ジンからある程度の信頼を受けているという時点で、この男もまた並の悪党ではない。

優秀だが棘が多く、仲間ともしばしば衝突するジンと他の幹部との間に立って折衝をすることも多く、交渉能力の高さは周囲もまた認める程だ。ウォッカがいるから、あのジンが組織という集団でやっていけている、などという声すらある。

 

そんな男が倒れた。原因は不明だが、ともかくウォッカが倒れたともなればジンがどういった状態になるというのか。一部の幹部は戦々恐々とし、また一部の幹部はジンの寝首を掻く絶好の好機と舌なめずりをしていた。

所詮、"組織"も裏社会。弱肉強食の理が支配する世界で、弱みを見せた者から食われていくことは何ら変わらない。

 

 

 

だが、何事にも()()はいる。

 

純粋にウォッカの身を案じる者、ウォッカがいなくなったことでジンが周囲の者と起こす諍いを案じる者、そういった一部の比較的穏健派に属する面々が、ウォッカが収容された病院に駆けつけた。

 

そして、そこで一同は知ることになる。

 

 

 

ウォッカが、1人孤独に苦しみを抱え込んでいた事を。誰にも知られることなく、苦難の道を歩まされていたことを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おや?ピンガじゃないか。会うのは久しぶりだね」

「あん?……コルンにキャンティか。なんだ、お前らも来てたのかよ」

 

 

 

組織系列の病院。その廊下を歩いていたキャンティは、前を歩いていたピンガに声をかけた。彼は振り返り、知った顔を見ると軽く手を挙げて応える。

 

 

 

「ピンガ……来るとは、思わなかった」

「ちょうど潜入先で休暇だったからよ。噂を聞きつけて急いでやってきたぜ」

「そうじゃなくて、アンタがウォッカを心配してやってきたってのが果てしなく意外ってことさね」

()()?何を寝ぼけたこと言ってやがんだキャンティ」

 

 

 

ピンガがぐにゃりと口角を吊り上げる。嘲りを多分に含んだ笑みを浮かべた彼は、その目に野心と憎しみを爛々と光らせていた。

 

 

 

「ウォッカはジンの腰巾着だ。そいつが失墜したとなりゃ、そこからあの野郎の弱点が見つかるかもしれねぇ。なら、それを見に行かない訳にはいかねぇだろ?」

 

 

 

最悪ただ鼻で嗤ってやるだけでもいい、そう言い放ったピンガに対して、思わずため息をつくキャンティ。

ウォッカの病室にはほぼ間違いなくジンがいるだろう。諍いが起こることは火を見るより明らかだった。

普段であればウォッカが仲裁に入るものの、その彼が倒れているのだ。恐らく今回は自分がその役回りを担うことになるのだろう。

 

(キールがいたら押し付けられたってのに、運がないねぇ……)

 

彼女も見舞いに来る予定だったものの、直前で任務が入ってしまい、国外へと飛んでしまった。組織では極めて珍しく協調を重んじる性格の彼女は、裏社会にしては同じく珍しいことに、割と重宝されていた。その理由が、今の光景である。

 

(キールは揉め事をよく仲裁してくれるからねぇ……特にアル絡みのやつは)

 

彼女がおらず、ウォッカがダウンしている以上、キャンティがやらねばならない。

今はピンガだけなのでまだおとなしい方だ。ここにアルマニャックが来るともう収集がつかなくなる。そして、こういう時に必ずいるのがアルマニャックという男なのだ。困ったものである。

ジンとアルマニャックは放置していると()()()()()()()()()()()ので、止めなければ巻き添えすら喰らいかねないのだ。とんだ問題児達である。

知らず、ため息がとめどなく漏れていたらしい。コルンが肩を叩いてきた。

 

 

 

「キャンティ、頑張れ。応援……してる」

「アンタも手伝ってくれたっていいんだよコルン」

「俺には……荷が重い」

「よく言うよ」

 

 

 

そんなやり取りをしているうちに、ウォッカがいる病室へと着いた。ドアは閉じられているが、微かに話し声が聞こえる。内から漏れ出る気配はやや険悪だ。それを敏感に察したピンガはニタリと笑みを浮かべている。

ため息一つ。代表してキャンティが扉を開ける。

 

案の定、そこにはジンとアルマニャックがいた。ウォッカが寝ているベッドを挟んで会話をしている。

 

 

 

「いつまでここに居座るつもりだクソガキ。とっとと失せろ」

「俺だってウォッカを心配してんだ。ここにいて何が悪い。お前に命令される筋合いはねェよハゲ」

「誰がハゲだ消されてぇのか」

「あまり強い言葉を使うなよ、弱く見えるぞ」

「それが遺言でいいんだな?」

 

 

 

ほらこれだ。早速ジンがベレッタを抜いてアルマニャックの眉間に突きつけ、微塵の躊躇もなく引き金を引いた。キャンティが頭を抱え、ピンガがケタケタと嗤っていた。コルンは机に置いてあった折り紙で遊び始めた。

アルマニャックは残像すら見える速度で首をずらし、弾丸を避けた。その顔には悪意に満ちた笑みが浮かんでいた。

 

 

 

「おや?初撃を敢えて外して警告してくれるとは、随分と親切じゃないか。お優しい子供に育ってくれて、お前を産んだ売女のママもさぞお喜びだろう」

「人を不快にさせる技術は一級品だな。口と頭が釣り合えば長生き出来るかもしれねぇぞ?」

「親切な忠告、感謝感激だね。腕も頭も足りない人間に言われると確かに危機感というものが湧いてくるな」

「急に自己紹介なんざはじめてどうしたんだ?お前が欠落しかねぇお花畑のクソガキなこと位、今更言われなくとも知ってるさ……」

「うむ。まことに残念な話だが、お前は言語能力に著しく欠落があるらしい。それとも欠け落ちてるのはオツムの方かな?自分に投げかけられた言葉かどうかの区別もつかないとは……」

「スラム育ちの食い詰めにしちゃ随分と難しい言葉を知ってるじゃねぇか。少なめの脳みそでよく勉強したな。死んだ仲間に自慢してやれ」

「いい加減にしないかい二人とも!」

 

 

 

これ以上は流石に見ていられない。子供の喧嘩を延々と見せられるこっちの立場にもなって欲しいというものだ。

コルンは鶴を折っていた。ピンガは腹を抱えて笑っており、どちらも使い物にならない。キャンティは内心辟易しきっていた。

 

 

 

 

「アンタらはウォッカの見舞いに来てんだろう?病人の頭越しに下らない喧嘩してんじゃないよ!」

「この生意気なクソガキが居座るのが悪い」

「このクソ銀髪が喧嘩売ってきたのが悪い」

「お黙り!!」

 

 

 

「うぅ…………」

「「「「!」」」」

 

 

 

尚も喧嘩を続けようとする二人に、キャンティが本気で殴ってやろうか考えていると、今まで眠っていたウォッカが身じろぎをした。ややあって、目を開ける。

ふと、サングラスをしていないウォッカを見るのは初めてなことに気づいた。

 

 

 

「こ、ここは……」

「気づいたか。丸一日寝こけるとは、頑丈さが取り柄のお前らしくもねぇ」

「ジンの、兄貴……」

「組織管轄の病院だ。お前さんが突然腹を抱えて倒れたから、慌ててここへ運んできたんだ」

「アルマニャック……」

「アンタが倒れたって聞いてね、アタイらも駆けつけたのさ。んで、調子はどうなんだい?」

「お前ら……」

 

 

 

ウォッカの目が、大きく見開かれる。

"組織"に限らず、裏社会を生きる人間が誰かに情を出すことなど早々ない。ウォッカ自身それをよく理解していたが故に、今の光景は大きな驚きだった。

 

 

 

「ハッ……誰かに、見舞いをされるなんざ、思ってもみなかったぜ……」

「なんだかんだ人望あるもんな、ウォッカって」

「ケッ、そうかよ。……兄貴、すみません。兄貴の前で、こんな醜態、晒しちまって」

「そう思うんなら、とっとと体を治すことだ。俺はあまり気が長くねぇ。もたもたしてんじゃねぇぞ、ウォッカ」

「ジン!アンタ病人に向かって……」

「いいんだキャンティ。これは兄貴なりの激励さ。……身が締まる思いだぜ」

「……まぁ、アンタがそれでいいならいいけど」

 

 

 

ニヤリと笑うウォッカを見て、渋々引き下がるキャンティ。

そんな光景を白けきった顔で見ていたピンガが、つまらなさそうに口を開く。

 

 

 

「んで?なんでお前はぶっ倒れたんだよ。見たところ、怪我をしているようには見えねぇが」

「あぁ。それなら医者が言ってたな。重めの胃潰瘍?だってさ。穴が開いちゃってて大変だったんだと。なんでもストレス性がどうとか、胃薬の飲み過ぎがどうとか言ってたが……」

()()()()()……?」

 

 

 

ピンガの質問に答えたのはアルマニャックだったが、その内容に、ジンを含め一同が首をかしげる。

ストレスで胃を痛めるという現象そのものは理解出来る。それをウォッカがやらかしたということが、皆の理解を超えていたのだ。

だが、ただ一人。当のウォッカだけは違った。数秒硬直した後、表情をがらりと変えた。額には太い青筋を何本も走らせている。

 

 

 

「ってことはアルマニャック、テメェのせいじゃねぇかこの馬鹿野郎!!」

「えぇ!?俺!?」

 

 

 

ウォッカの怒声に本気で驚くアルマニャック。彼からすると完全に不意打ちだった。ジンでさえ小さく驚いていた。

キャンティが思わずウォッカに問いかける。

 

 

 

「一体どういうことなんだいウォッカ、なんでアンタの胃潰瘍にアルが絡んでくるのさ」

「おうおう聞きやがれ!!このクソ馬鹿野郎のせいで、俺は、俺はなぁ……めちゃめちゃ苦労してたんだよ!!

 

 

 

そうしてウォッカは語りだす。ジンとアルマニャックの確執を。その狭間で苦しみ続けた一人の男の苦悩を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エピソード①水鉄砲

 

 

 

「今回の任務は暗殺だ。組織に盾突いたマフィアの幹部を殺す。てめぇが正面から陽動を仕掛けろ。その隙に俺達が裏口から……」

「待て」

「?なんだ」

「何でお前はまた煙草を吸ってやがるんだ。お前今自分で言ったよな?暗殺だって。何でこっそり忍び込もうってやつがわざわざ臭いをつけてやがる」

「余計なお世話だクソガキ。その程度で俺が任務をしくじるわけガボボボボボボボ」

「兄貴!て、テメェ……何してやがる!」

「見ての通り、水鉄砲を撃ったんだが?俺は言った筈だぜ?任務の前に煙草なんか吸ってんじゃねぇとな」

「ふざけんな!にしたって言い方とかやりようってのがあるだろうが!」

「ゲホッ、ゲホッ!クソガキ、てめぇ……!!」

「兄貴!大丈夫ですか!?」

「ウォッカ、お前は引っ込んでろ。俺はこのクソガキを今から教育してやらなきゃならねぇからな……!」

「教育が必要なのはお前だアホ。殺し屋が仕事前に臭いなんかつけてんじゃねぇ」

「黙れ。俺のやり方にてめぇごときがケチつけてんじゃボボボボボボガボボガボボボ」

「あ、兄貴ィ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エピソード②バケツ

 

 

 

「今回は強襲だ。組織の取引を妨害した三流ギャング共を……おいクソガキ、話の途中でどこに行きやがる」

「安心しろ、すぐ戻る」

「おいアルマニャック!……すみません兄貴、後で俺がキツく言っとくんで」

「チッ、あの間抜けっぷりには苛つかされるぜ。あんなクソガキを重用するとは、"あの方"も奇特なもんだ」

「全くで。…………戻ってきやしたね。ん?両手に何か持ってやがるな」

「何だあれは。…………バケツ?」

「やべぇ!兄貴、下がってくだせぇ!」

「あぁ?何だいきなり。どういう意味だバァ」バシャーン

「よし、消えたな」

「あ、兄貴!おいテメェ、何しやがんだアルマニャック!」

「何って、火を消しただけだが?」

「だから何でテメェはいちいちやることが過激なんだ馬鹿野郎!!」

「……おい、ウォッカ」ポタポタ

「あ、兄貴!!今タオル持ってきやすんで、ちょっとだけお待ちくだせぇ!」

「…………タオルはいらねぇ。機関銃持って来い。今日という今日は、この馬鹿を蜂の巣にしてやる……!!」

「出来もしねぇことを言うんじゃねぇよアホ銀髪」バシャーン

「あ、兄貴ィ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エピソード③ソフトクリーム

 

 

 

「……てめぇ、何のつもりだ」

「?何が?」

「これから任務へ向かうっていう時に、何で呑気にアイスなんざ食ってやがるって言わなきゃ分からねぇか……?」

「アイスじゃなくてソフトクリームだぞ?」

「黙れ」

「つーか、お前に言われる筋合いねぇだろ。毎回注意しても煙草吸うのを辞められないニコチン中毒者が」

「兄貴はニコチン中毒者じゃねぇよ馬鹿野郎」

「どうだか。てか今も吸うのやめろ。臭いがつくしソフトクリームがまずくなるし……あっ、鼻が、ムズムズする……」

「てめぇに指図を受ける筋合いはねぇ。……まぁいい。任務の説明をする」

「ハックショイ!!」

「これから行くのはゴボッ」

「あ、兄貴!」

「ふ~。……ん、あれ?ソフトクリームがねぇぞ」

「テメェが兄貴の顔に投げつけたんだろうが馬鹿野郎!!」

「?……おぉ、くしゃみの拍子にすっぽ抜けちまったのか。って、あぁ!俺のソフトクリームが!!」

「兄貴の心配しやがれ!!兄貴!今拭くもの持ってきやす!!」

「高かったのに……美味しかったのに……」

「お前もう喋るな!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エピソード④消火器

 

 

 

「おいアルマニャック、お前が今手に持ってるソレは、何だ?」

「ん?見ての通りだろウォッカ。消火器だ」

「そうかそうか。俺の見間違いって訳じゃないみてぇだな。……で?何でそんなもん持ってやがるんだ?」

「またまた〜、そこのヤニ銀髪と違ってウォッカは頭がいいんだから、目的なんて分かってるだろ?」

「俺が聞きてぇのは目的じゃねぇ、毎回毎回どういうつもりだって聞いてんだよこの馬鹿野郎!」

「んなもんお前の兄貴分に聞いてくれよ。俺は毎回必ず注意してやってるんだぜ?任務前に、煙草を、吸うなと」

「兄貴の行動に口を出す資格なんかねぇよ!俺にも、お前にもな!」

「そうか。じゃあウォッカ、一つ覚えておくといい。……イエスマンだけが忠誠の形じゃねぇんだぜ」

「……さっきっから黙って聞いてりゃ好き勝手言いやがる。俺がそのふざけたオモチャを使わせるとでも思ってるのか?」

「お前の妨害ごときで、俺の行動を止められるとでも?」

「そうか……ならば死ね」ズダァン!!

「残念、そいつは残像だ」ブシャーーー

「ゴブブブブブブブブブ」

「あ、兄貴ィ!!」

「お~、真っ白。白ずくめの組織、ってな!」

「殺すぞクソガキ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エピソード⑤水風船

 

 

 

「……おい、何でビデオカメラなんて構えてやがる」

「あ~、これは約束でな。映像を取らなきゃいけないんだ」

「何だか知らねぇがやめろ。兄貴はカメラの類が嫌いだ。向けられることはもっとな」

「そこのバカ銀髪が煙草吸うのをやめたらやめるさ。……つーかよ、毎回毎回注意するのも流石に疲れるんだが。物覚えが悪過ぎるぜ、勘弁してくれ」

「黙れ。俺が何をしていようと、指図を受ける筋合いはねぇ。てめぇこそ、同じことを何度も言わせるなクソガキ」

「はぁ。なら仕方ない、今回はこれだ」 

「また下らねぇ悪戯を思いついたか。俺がそう毎回毎回食らってやると思ってるなら大きな間違いだゴバァ」バシャーン

「ナイスヒット〜」

「兄貴!おま、今度は何しやがった!」

「じゃじゃ~ん、水風船じゃ!これは人間にぶつけると破裂して水を撒き散らす優れものでな。色も全部で七色あるんじゃぞい!ほれ!」

「バブッ」

「兄貴!てめぇいい加減にしろよこのクソガキ……!!毎回毎回兄貴に下らねぇ悪戯しやがって!今日という今日は…………!」

「……ん?どうしたウォッカ」

「おいウォッカ、早く俺の車からランチャーを持って…………おい、ウォッカ?」

「ウッ!!」バタリ

「「!?」」

「お、お゙ぉ゙…………!!」

「おいウォッカ!!どうした!?」

「どけ!…………痛むのは、腹か」

「あ゙、あ゙に゙ぎ……お、お゙れ゙…………」

「喋るな。……毒ではなさそうだが…………チッ、ここじゃ埒があかねぇ。俺は車を回してくる。ウォッカを見てろクソガキ」

「言われなくても分かってる!医者の手配もしとくから早く車回せ!」

「俺に命令してんじゃねぇ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

話を聞いたキャンティは絶句していた。なんだ、そのガキみたいなやり取りは。

そして同時に、ウォッカが倒れた理由も把握した。兄貴と慕う男と組織最凶の男が、毎回毎回そんなガキみたいな喧嘩を繰り広げ、その間に挟まれ続けたのだと思うと、涙を禁じ得ない。

コルンは未だに折り紙を折っている。机の上には同じ形の鳥が数羽増えていた。

ピンガは笑い過ぎて呼吸困難により倒れ伏している。馬鹿さ加減に言葉も出ない。

 

男二人が揃いも揃って使い物にならない以上、この場を収められるのは自分しかいない。

キャンティはとびきり大きなため息をついた。

 

 

 

「ウォッカ。アンタがどれだけ苦労していたか、よーく分かったよ。……大変だったね」

「キャンティ……分かって、くれるか……!?」

 

 

 

ウォッカの目には涙が浮かんでいた。相当追い詰められていたのだろう。

彼もまた組織において名の知れた悪党。そんな彼が病人として床に伏した状態で目を潤ませている。その絵面がまた哀愁を誘った。

 

 

 

「あぁ。……ジン、アルマニャック。二人とも、そこに正座しな」

「えっ、急にどうしたキャンティ」

「何で俺がそんなことしなきゃならねぇ」

「正座しな♡」

「はいただいま!」

「………………………………チッ」

「あ、兄貴!おいキャンティ、お前……!」

「ウォッカは寝てな。……ジンを慕うアンタの立場じゃ、言えないこともあるだろうさ。アタイが、全部この馬鹿どもに教えてやるから安心しな」

 

 

 

ウォッカに向け、にこやかな笑顔を向けるキャンティから底しれぬ圧力を感じて、思わずその場の男衆皆が口を噤む。

彼女はウォッカから視線を切ると、正座している二人に目を向けた。腰に手を当て仁王立ちする彼女を見て、アルマニャックの額を一筋の冷や汗がつたった。

 

 

 

「さて……まず、アル。アンタの悪戯についてだ。何か、言うことはあるかい?」

「俺が悪戯かましてたのはジンの野郎が煙草吸うのをやめねぇからだぜ?俺を責めるのはお門違いって……」

「やり過ぎだって言わなきゃ分かんないかい!!」

「ヘブッ!!」

 

 

 

瞬間、アルマニャックの頬をキャンティのビンタが襲った。音速を超える一撃に、100キロを優に超える彼の体が大きくのけぞった。

 

 

 

「組織で!起こる!揉め事の!大体は!アンタが!絡んでんだよ!いっつもいっつも!コトを!大きくして!間に立たされる!ウォッカの気持ちを!考えたことが!あるのかい!!」

「ブッ!ベッ!ビッ!バッ!ガッ!ボッ!ブベ!ゴボ!ベギ!あぎゃ!バビ!おげ!ヒギィ!」

「こんの……馬鹿アルがぁ!!」

「ひでぶ!!」

 

 

 

戦闘能力において、組織最強と謳われた男の姿など見る影もない。ビンタ一撃ごとに首を上下左右に大きく振り回され、情けない悲鳴を上げる肉塊がそこにはあった。

ウォッカはその目にありありと恐怖を浮かべ、ピンガは腰を抜かしている。ジンでさえ目を大きく見開いていた。

コルンはまだ折り紙で遊んでいる。

 

その後も数分程アルマニャックはサンドバッグにされ続けた。キャンティが疲労から肩で息をして、ようやく解放された頃には顔の大きさが2倍程になっていた。瞼が大きく腫れ上がり、糸の細さになった目から大粒の涙がポロポロとこぼれ落ちている。

 

 

 

「ずびばぜん゙でじだ」

「分かればいいんだよ。ウォッカにもちゃんと謝りな」

「ごべん゙な゙ざぃ゙」

「あ、あぁ……いいぜ……もう怒ってねぇからよ……」

「今後は悪戯するんでも限度ってのを弁えな。いいね?」

「あ゙い゙」

 

 

 

返事を一言、どうと倒れ伏したアルマニャックを一瞥したキャンティ。

さて、という言葉と共に、ジンへと向かい合う。彼の肩がびくりと揺れた。

 

 

 

「安心しな。アンタのことはここまでやるつもりはないよ。ウォッカの顔を立ててってのもあるし、これ以上アンタのキャラを崩すのは色々とまずいからね」

「キャラ……?」

「こっちの話だよ」

 

 

 

でもお説教はするさね。そう言ってビシ!と指を突きつける。

 

 

 

「アンタ、今度から任務中は煙草を吸うのをやめな」

「…………何故お前の指図を受けなきゃならねぇ」

「そうやって下らない意地張ったせいでウォッカがこうなっちまったってのが、まだ分からないのかい?」

「…………」

 

 

 

言葉尻こそまだ棘があるものの、どことなく気まずそうな雰囲気を出している。冷酷無情と謳われ、自分でさえ畏怖している男が初めて見せる姿にウォッカは心底驚いていた。

 

 

 

「アンタを兄貴と慕う男が、アンタとあのおバカのせいで胃袋に穴まで開けてんだよ。流石に自重しようとは思わないのかい?」

「……ウォッカが勝手に着いてきてるだけだ。嫌なら失せればいい」

「それ、言ってて恥ずかしくないのかい?いい年こいた大の大人がさ」

「チッ………………」

「ウォッカはアンタを兄貴と呼び、()()()()()()()()()()()()。ならアンタには、兄貴分としての義務ってのがあるんじゃないかい?」

「………………」

「ジン、()()()()()()()()()()()()()()()。愛想つかされる前に、一度しっかり反省しな。……アタイからは、それだけさ。そいじゃね。お大事に、ウォッカ」

「あ、あぁ……ありがとよ……」

「コルン、アンタもいくよ。……いつまで折り紙で遊んでんだい」

「鶴、折ってた」

「鶴?」

「キール、言ってた。日本人……病気になったら、鶴を折る。良くなるおまじない」

「………………遊んでたんじゃなかったのかい。ピンガも行くよ」

「お、おう……」

「ウォッカ、お大事に。……これ、鶴」

「……あ~、ありがとさん……」

 

 

 

コルンとピンガを引き連れたキャンティは、気絶したアルマニャックの片腕を掴んで引きずりつつ部屋を後にした。

部屋には静寂が満ちる。ふと、ジンが立ち上がった。そのまま黙って部屋を立ち去ろうとする。

その背中に、思わずウォッカは声を投げかけた。

 

 

 

「兄貴!」

「……………………なんだ」

「俺は、俺は……たとえ何があろうと、最期まで兄貴のお側にいやすから!……いや、勿論、迷惑じゃなければですが……」

 

 

 

ジンは黙って立ち尽くす。ウォッカも、それ以上声をかけることはない。

どれほどそうしていたか、やはり黙ったまま部屋の扉に手をかける。

立ち去る間際、その背中越しにジンが言葉を投げかけた。

 

 

 

「俺についてきてぇと言ってる奴が、ベッドで寝込んでるようじゃ世話ねぇな」

「兄貴……」

「…………早く復帰しろ。置いていかれたくねぇならな」

「!あ、兄貴……!!えぇ、すぐ治しやす!ちっとばかしお待ちを!!」

「フン……物好きな奴だ」

 

 

 

今度こそジンは部屋から出ていった。再び部屋が静かになる。

だが、ウォッカの心は昂っていた。

 

(置いていかれたくねぇなら、か……兄貴がああも直接言ってくれたことなんて、初めてだぜ)

 

きっかけを作ってくれたキャンティには感謝しなければなるまい。兄貴を正座させた時は流石に頭に血が上ったが、あの時怒鳴り散らさないで良かったと心の底から思った。

気力が全身に満ちていくのを感じる。復帰して兄貴に会うのが、もう楽しみで仕方ない。

体を治すその為と思えば、不味い病院食でさえご馳走に見える。

 

 

 

「兄貴……すぐそちらに伺いますから。待っててくだせぇ……!!」

 

 

 

ウォッカの目が、不敵に煌めいた。

 





悪戯シーンばかり並べてハイおしまいは流石にssとしてどうなの?って思ったので一応お話っぽく落とし込んだら、肝心の悪戯シーンが比率的に少なくなってしまった……



改めて、お題を下さった【ワシボン】様、ありがとうございました!
今後も活動報告にてお題をゆるりと募集しておりますので、ご協力頂けたら嬉しいです!



今章はこれで終い。次話からはまた本編に戻ります。新しい章に入りますね。
ズバリ、次章は『純黒の悪夢』編でございます。原作との相違点がかなり多いおかげで結構ガッツリお話を改造しないといけないので、既に頭を悩ませています。〆だけは決めているのですが、道中がねぇ……
お楽しみ頂けるよう、全力で書き上げていくので、応援のほどよろしくお願い致します!



最後までお読み頂き、ありがとうございました。よろしければ、感想・評価・お気に入り登録の程よろしくお願いいたします。
特に感想は本当に嬉しいです。本当に励みになります。どうかよろしくお願いします。
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